2009年4月12日にソマリア沖で起きた”マースク・アラバマ号事件”の当事者である船長リチャード・フィリップスとステファン・タルティによる、2010年に発表された著書”A Captain’s Duty”を基に製作された作品。 ソマリアの海賊に襲われた貨物船”マースク・アラバマ”船長リチャード・フィリップスと乗組員の戦いを描く、監督ポール・グリーングラス、主演トム・ハンクス、バーカッド・アブディ、キャサリン・キーナー他共演のサスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ポール・グリーングラス
製作
スコット・ルーディン
マイケル・デ・ルカ
デイナ・ブルネッティ
製作総指揮
エリ・ブッシュ
グレゴリー・グッドマン
ケヴィン・スペイシー
原作
リチャード・フィリップス
ステファン・タルティ
”A Captain’s Duty”
脚本:ビリー・レイ
撮影:バリー・アクロイド
編集:クリストファー・ラウズ
音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演
リチャード・フィリップス:トム・ハンクス
アブディワリ・ムセ:バーカッド・アブディ
アダン・ビラル:バーカッド・アブディラマン
ノール・ナジェ:ファイサル・アメッド
ワリド・エルミ:マハト・M・アリ
シェーン・マーフィー:マイケル・チャーナス
アンドレア・フィリップス:キャサリン・キーナー
マイク・ペリー:デヴィッド・ウォーショフスキー
ケン・クイン:コーリイ・ジョンソン
ジョン・クローナン:クリス・マルケイ
フランク・カステラーノ:ユル・ヴァスケス
Navy SEALs指揮官:マックス・マーティーニ
ネモ:オマール・バードゥーニ
ウィリアム・リオス:マーク・ホールデン
アサド:モハメド・アリ
フーファン:アイザック・ファラー・サマター
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
2013年製作 133分
公開
北米:2013年10月11日
日本:2013年11月29日
製作費 $55,000,000
北米興行収入 $106,957,100
世界 $218,791,800
■ アカデミー賞 ■
第86回アカデミー賞
・ノミネート
作品
助演男優(バーカッド・アブディ)
脚色・音響編集・録音・編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
2009年3月28日、バーモント州、アンダーヒル。
マークス海運のリチャード・フィリップス(トム・ハンクス)は、貨物船”マースク・アラバマ”の船長としてオマーンからケニアへの物資を運搬するために旅立つ。
フィリップスは、妻アンドレア(キャサリン・キーナー)と共に空港に向かう途中、世の中のことや子供達について語り合う。
空港に着いたフィリップスは、アンドレアに愛を伝えて別れる。
ソマリア、エイル。
海外漁船の乱獲で仕事がなくなってしまった漁師達は、彼らを支配するボスから海賊行為を強要されていた。
青年アブディワリ・ムセ(バーカッド・アブディ)は、その場を仕切るフーファン(アイザック・ファラー・サマター)の指示で、リーダー格のアサド(モハメド・アリ)と共に海に向かうため人員を選ぶ。 ムセは、少年アダン・ビラル(バーカッド・アブディラマン)、船が操縦できるワリド・エルミ(マハト・M・アリ)、腕っ節の強いノール・ナジェ(ファイサル・アメッド)らを選ぶ。 漁船を装ったフーファンの監視船と共に2隻のボートに分かれて沖に出たムセは、何かと徴発してくるアサドの態度を気にする。 オマーン、サラーラ港。 ブリッジに向かったフィリップスは、出航前の状況や航路を一等航海士シェーン・マーフィー(マイケル・チャーナス)とチャックする。 フィリップスはセキュリティについてなどの注意を与え、シェーンに出航時間を伝える。 予定通りマースク・アラバマは出航し、フィリップスは船員の気が緩んでいるこを知る。 その頃、レーダーで襲う船を選んでいたフーファンは、単独で航行する船(マースク・アラバマ)を襲うことを決める。 ソマリア海域を通ることで海賊を警戒するフィリップスは、その件についてをインターネットで調べる。 翌日フィリップスは、予告なしの非常事態訓練を実施する。 その時、レーダーに写った二隻の船を確認したフィリップスは、それをシェーンに伝え緊急体制を敷く。 フィリップスは、機関長マイク・ペリー(デヴィッド・ウォーショフスキー)に、エンジンの出力を上げるよう指示する。 2隻の小型ボートを確認したフィリップスは、ドバイのMTO(イギリス海運貿易オペレーション)に連絡を入れるものの、漁船と判断される。 ボートは近づき、フィリップスは無線で武装機の援護を装い、それを聴いていたフーファンやムセ、アサドは上空を警戒する。 アサドのボートは引き返し、ムセは尚も全速でマースク・アラバマを追うがエンジンが故障してしまう。 船員を集めたフィリップスは、危機を脱したことで皆の働きを評価し、今後も海賊が現れた場合は同じように対処するよう伝える。 労働時間が増えることや不安から、組合員のジョン・クローナン(クリス・マルケイ)は、海賊と戦う契約はしていないことなどをフィリップスに伝えて意見する。 航路変更もていあんされるものの、積荷を早く届けることが任務のフィリップスは、指示に従えない者は下船を申し出ろと伝えてその場を去る。 部屋に戻ったフィリップスは、アンドレアへのメールで、船員の扱いに苦労していることだけを伝え、海賊については書かなかった。 その夜、フーファンの船に戻りエンジンなどを修理していたムセは、自分を侮辱するアサドに言いがかりをつける。 憤慨したアサドは拳銃を手にして脅すが、ムセはレンチで彼を殴り倒す。 翌朝、シェーンからの連絡でブリッジに向かったフィリップスは、ボートが再び接近したため警戒態勢をとる。 アメリカ海事局に連絡を入れたフィリップスは、停止を求めるムセらを無視して速度を上げる。 フィリップスは発砲されたため放水を始め、一つのホースの故障をシェーンが直す。 その間、フィリップスは発煙筒で応戦するが、ムセらは梯子を使って船に乗りこむ。 武装した4人が乗りこんできたことを船員に伝えたフィリップスは、人質に取られないよう警戒させる。 仲間達とブリッジに押し入ったムセは、金を渡すようフィリップスに伝える。 船がアメリカ船籍であり、フィリップスがアイルランド系だと知らされたムセは、彼を”アイリッシュ”と呼ぶ。 積荷が食料で現金が金庫に3万ドルあるだけだと知ったムセは、その金額に納得しない。 ペリーは電源を切り、船員は機関室に身を潜める。 フィリップスは電源が故障したと説明し、ムセは制御盤を操作してみるが復旧しない。 ムセは、船員にこの場に来るよう伝え、1分以内に現れない場合は舵手ケン・クイン(コーリイ・ジョンソン)を殺すと言って脅す。 フィリップスは何とかムセを説得し、自分も船員の居場所を知らないため、船内を探すことをムセに提案して案内を始める。 機関室にいたシェーンは、主甲板の電源を切ることをペリーに指示し、食堂の水を取りに行く。 貨物用デッキを調べようとしたフィリップスだったが、機関室が怪しいと言うムセの従うことになる。 空調が止まっている機関室が暑いと考えたフィリップスは、食堂の水を取りに行くことを提案してその場に向かう。 キッチンにシェーンが隠れていたことに気づいたフィリップスは、ムセに付き添うピラルの裸足が危険だと、シェーンに聞こえるように話す。 シェーンは機関室のクローナンに連絡して、その場に向かう海賊の中に裸足の者がいることを伝え、ガラスを砕いて撒くよう指示する。 機関室に入ったピラルはガラスを踏んでしまい、事故だと言うフィリップスに、ムセはこの場を隅々まで調べることを伝える。 ペリーは、見張りのエルミの目を盗みながら主甲板の電源を切る。 補助電源も消え、痛みに苦しむピラルのことを心配したフィリップスは、ブリッジに向かい現金を手に入れて全てを終わりにするべきだとムセを説得する。 ムセは、ピラルとナジェを交代させるようフィリップスに指示してブリッジに向かわせる。 クローナンらは、一人になったムセに襲いかかり拘束し、ブリッジに戻ったフィリップスとナジェらは無線でそれを知らされる。 ナジェは自分を助けるようムセに指示され、フィリップスは、3万ドルを受け取り船の後尾の救命艇で逃げるよう提案する。 ムセはそれに同意し、拘束された彼を確認したナジェは、フィリップスを強引に救命艇の中に入れる。 内部の説明をしたフィリップスだったが、ムセが入った直後にナジェが発砲し、操縦席に座ったエルミは救命艇を海面に落下させてしまう。 アメリカ海軍・ミサイル駆逐艦ベインブリッジ(DDG-96)。 ムセは、自分達のボスが保険会社などと交渉を始めることなどをフィリップスに伝え、マースク・アラバマが後を追ってきたことで、更に大金が手に入ると考える。 3万ドルが通行税だと言うムセには、フィリップスが公海を航行する正当性を語っても通用しない。 大型船が魚を乱獲するため、自分達の仕事が奪われると答えるムセらが漁師であることをフィリップスは知る。 フィリップスは、ピラルの足の治療を許可されるが、持っていたナイフを奪われる。 駆逐艦ベインブリッジ。 更にカステラーノは、それが成功しない場合は、出動させた”SEALs”に指揮権を渡すように指示される。 スピードも上がらずフーファンとも連絡がとれないムセらは焦りを見せ始め、助けが来る可能性があるため、換気をするハッチも開けることができない。 夜になりフーファンと連絡がとれるものの、単独で戻るよう言われたムセは苛立つ。 去年600万ドルを奪ったと言うムセの話を聞いたフィリップスは、それが誰のものになったかを問う。 その言葉に腹をを立てたナジェがフィリップスに言い寄るが、その時、駆逐艦ベインブリッジの警笛が鳴る。 ムセらは驚きフィリップスは安堵し、艦長カステラーノは人質引き渡しの交渉を始める。 ソマリア出身の兵士ネモ(オマール・バードゥーニ)が無線で救命艇に話しかけ、1000万ドルの身代金を要求される。 努力はすると答えたネモは、食料と水を渡すことを伝えムセはそれに応じる。 マースク・アラバマのシェーンは交戦区域となることをベインブリッジの兵士に知らされ、護衛と共にその海域から離れることになる。 ネモは補給物資を届けるために救命艇に近づき、フィリップスの様子を確認する。 姿を見せたフィリップスは、家族に連絡していることを知り、自分が”座席15”に座っていることを伝える。 ムセは食料などより現金に拘り、興奮したナジェはフィリップスの耳元で発砲してしまう。 カステラーノはネモらを退避させ、救命艇内は言い争いとなる。 ムセはアクシデントだと説明し、カステラーノの交渉を無視してソマリアに向かおうとする。 その後、援護のアメリカ海軍強襲揚陸艦”LHD-4 ボクサー”とミサイルフリゲート艦”FFG-40 ハリバートン”が現場に到着する。 それを知ったフィリップスは、アメリカ海軍に抵抗しても勝ち目がないと言って説得するが、今更手を引けないとムセは答える。 用を足したいと言って外に出たフィリップスは、監視のピラルを海に突き落として自分も飛び込む。 それを制止したムセは、フィリップスを外に出して拳銃を突きつけ、上空のヘリコプターに向かって発砲する。 内部に戻ったムセは人質を殺すと言って脅し、その状況をフィリップスからも伝えさせる。 そこに交渉人を装ったSEALs指揮官(マックス・マーティーニ)からの連絡が入り、現金引き渡しに関しての話し合いを求められる。 指揮官は、ムセらの詳細な身元まで調べ上げていることを伝え、彼らを動揺させる。 部族の長老らが交渉のために到着し、現金と人質を交換することを指揮官は伝える。 指揮官は救命艇の燃料が少ないことを指摘し、取引地点まで曳航する間に誰かがこちらに来ることを要求し、ムセはそれに応じる。 駆逐艦ベインブリッジ。 ムセは、欲を出したことで大ごとになったとフィリップスに指摘されるが、ボスの要求が厳しいと答える。 漁師が人を襲わなくても、他に生きていく方法があるはずだと語るフィリップスだったが、それはアメリカでなら通用する話だとムセは答える。 海軍兵士が救命艇に近づき、曳航ロープを繫ぎ盗聴器をセットしてフィリップスの様子を確認する。 兵士はフィリップスに着せるシャツを渡し、ムセを連れて船に戻る。 SEALs指揮官は、狙撃手の準備をさせて”ハイスピード作戦”を開始する。 多数のライトが点灯され曳航は始まり、SEALsの狙撃兵は救命艇の三人を狙い待機する。 何かが起きることを察したフィリップスは渡されたシャツを着るが、動くと殺すと言ってナジェに脅される。 救命艇が波で揺れたためナジェらは動揺し、フィリップスは、落ちていたペンと紙を拾い家族に遺書を遺そうとするが、ピラルに危険だと言われる。 それに気づいたナジェに紙を取り上げられたフィリップスは、彼に襲いかかる。 ピラルは、エルミに指示されてフィリップスを殴り、彼をロープで縛ろうとする。 SEALs指揮官は、人質に危害を加えた場合は取引を止めると警告する。 フィリップスは、ロープで手を縛られ痛めつけられて悲鳴を上げ、目隠ししようとするピラルに諦めるよう伝える。 混乱するフィリップスは、家族への最後の言葉と限界であることを伝える。 SEALs指揮官は状況を見守り、全てのターゲットを確保するよう命ずる。 ナジェは、現金が手に入ると言うピラルとエルミの言葉を聞き入れず、フィリップスに銃を向ける。 指揮官は曳航を停止させ、3人のターゲットを捉えたことを確認して銃撃を命ずる。 ナジェ、ピラル、エルミは同時に射殺され、目隠しされていたため状況が分からないフィリップスは、3人が殺されたことを知り絶叫する。 救命艇に入ったSEALs隊員はフィリップスを救出し、ベインブリッジに着いた彼は身体検査を受けることになる。 拘束されたムセは、アメリカで裁判を受けることと、フィリップスが救出され仲間が殺されたことを知らされる。 ムセは海賊行為により逮捕され、権利を伝えられる。 医務室に向かったフィリップスは、看護師長の質問に対して動揺しながら答える。 看護師長はフィリップスの傷などを調べ、混乱する彼を仰向けに寝かせて落ち着かせる。 フィリップスは感謝して家族のことを尋ね、看護師長は、無事を連絡済みだと伝え、処置後に電話ができると付け加える。 そしてフィリップスは、全てが終わったと言われ安堵する。 2009年4月17日、リチャード・フィリップスはバーモントに戻り家族と再会した。 アブディワリ・ムセは33年の懲役刑を言い渡され、インディアナ州テレホートの連邦刑務所で服役中である。 2010年7月25日、フィリップス船長は海上勤務に復帰した。
...全てを見る(結末あり)
”マースク・アラバマ”に着いたフィリップスは、船内各部が施錠もされていないことに気づく。
艦長フランク・カステラーノ(ユル・ヴァスケス)は、対海賊作戦本部からマースク・アラバマの船長が人質になったという報告を受け、無人偵察機を飛び立たせて現場海域に向かう。
偵察機の情報を分析した艦長カステラーノは、ソマリア到着前に人質を救出するよう作戦本部から命ぜられる。
艦長カステラーノは、到着したSEALsに指揮を委ねる。
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*(簡略ストー リー)
2009年4月。
マークス海運のリチャード・フィリップスは、貨物船”マースク・アラバマ”の船長としてオマーンを出航する。
大型船の乱獲で仕事を失ったソマリアの漁師は、支配するボスの命令で海賊行為を行っていた。
青年ムセらは、単独航行のマースク・アラバマに狙いを定め武装して接近し、一度は諦めるものの再度襲撃して船に乗り込みその場を制圧する。
武器もない状況で乗組員を機関室に避難させたフィリップスは、ムセら4人の海賊に対し冷静に対応するのだが・・・。
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実際に起きた海賊事件であるため、リアリズムを追及する映像が見もので、アメリカ海軍及びマークス海運の全面協力による本物の迫力を味わえる、ポール・グリーングラスの切れのいい演出も冴える作品は見応え十分。
その点を考慮してか、ハンディ・カメラを使ったドキュメンタリー映画のような雰囲気で映し出される映像と、残虐非情な海賊に対抗する、無防備な貨物船乗組員が生身の人間として映し出される描写などが効果を上げリアルさを感じる。
それとは対照的に、軍が主導する作戦開始と同時にまるで別世界に突入したような展開となり、精鋭部隊”Navy SEALs”の隙の無い作戦は、ミリタリー・ファンを含め玄人受けする内容となっている。
このような精鋭部隊他軍人が、市民のために命を懸けて戦うことが当然であると考えるアメリカの国家体制は実に羨ましい。
映画だからと寝ぼけたことを言っているどこかの国の国民は、これが事実だったと思いながら本作を観たのだろうか・・・。
単なる威勢のいい漁師が武器を手に行動しているというその集団に、指揮系統があるというのは何とも不思議だ。
また、主人公が救命艇の”15番席”に座っていると援軍に知らせ、海賊はそれを聞いていながらその席に座らせておくという、ご都合主義的な脚本がやや気になる。
北米興行収入は約1億ドル、全世界では2億1900万ドルのヒットとなった。
第86回アカデミー賞では、作品、助演男優(バーカッド・アブディ)、脚色、音響編集、録音、編集賞にノミネートされた。
それほどヒーロー的に描かれていないところに注目したい、主人公リチャード・フィリップスを演ずるトム・ハンクスは、拘束中の奮闘よりも、救出後の身体検査のシーンで、ショック状態を演ずる姿に演技者としての実力を感じた。
海賊アブディワリ・ムセを熱演しアカデミー助演賞候補となったバーカッド・アブディ、その仲間で少年のバーカッド・アブディラマン、同じく気性の荒いファイサル・アメッド、やや冷静なマハト・M・アリ、主人公の妻キャサリン・キーナー、一等航海士のマイケル・チャーナス、機関長デヴィッド・ウォーショフスキー、舵手コーリイ・ジョンソン、三等機関士クリス・マルケイ、船員マーク・ホールデン、ミサイル駆逐艦ベインブリッジ(DDG-96)艦長フランク・カステラーノのユル・ヴァスケス、Navy SEALs指揮官マックス・マーティーニ、ソマリア出身の兵士オマール・バードゥーニなどが共演している。