ジェラルド・クラークによる、作家トゥルーマン・カポーティの伝記を基に製作された作品。 学歴もない不幸な生い立ちながら天才作家としてその名を残したトゥルーマン・カポーティが、 実際に起きた一家惨殺事件を題材にした”冷血”で”ノンフィクション小説”という新ジャンルを生み出す瞬間を描く、監督ベネット・ミラー、製作、主演フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー、クリフトン・コリンズJr.、クリス・クーパー、ブルース・グリーンウッド、ボブ・バラバン共演によるヒューマンドラマの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ベネット・ミラー
製作総指揮
ダン・ファターマン
フィリップ・シーモア・ホフマン
ケリー・ロック
ダニー・ロセット
製作
キャロライン・バロン
マイケル・オホーヴェン
ウィリアム・ヴィンス
原作:ジェラルド・クラーク
脚本:ダン・ファターマン
撮影:アダム・キンメル
編集:クリストファー・テレフセン
音楽:マイケル・ダナ
出演
フィリップ・シーモア・ホフマン:トゥルーマン・カポーティ
キャサリン・キーナー:ネル・ハーパー・リー
クリフトン・コリンズJr.:ペリー・スミス
クリス・クーパー:アルヴィン・デューイ
ブルース・グリーンウッド:ジャック・ダンフィ
ボブ・バラバン:ウィリアム・ショーン
マーク・ペルグリノ:リチャード・ヒコック
エイミー・ライアン:マリー・デューイ
マーシャル・ベル:マーシャル・クラッチ
R・D・レイド:ロイ・チャーチ
アダム・キンメル:リチャード・アヴェドン
アメリカ 映画
配給 ソニー・ピクチャーズ
2005年製作 114分
製作費 $7,000,000
北米興行収入 $28,747,600
世界 $49,233,160
■ アカデミー賞 ■
第78回アカデミー賞
・受賞
主演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)
・ノミネート
作品・監督
助演女優(キャサリン・キーナー)
脚色賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1959年11月15日、カンザス州西部、ホルコム。
裕福な農場主クラッターと、家族3人が惨殺されるという事件が起きる。
”ニューヨーク・タイムズ”の”クラッター事件”の記事を見た、作家トゥルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、雑誌”ザ・ニューヨーカー”の編集長ウィリアム・ショーン(ボブ・バラバン)に連絡を取る。
小説”ティファニーで朝食を”を発表した直後のカポーティは、新鋭作家として名を知られていたが、”ザ・ニューヨーカー”にも席を置き、この事件に興味を持ち現地に取材に向かう。
幼馴染の作家ネル・ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)と列車で合流したカポーティは、現地で州捜査局のアルヴィン・デューイ(クリス・クーパー)に面会する。 カポーティは、いかにも都会人という服装や物腰などを奇異な目で見られ、その後、デューイの記者会見に出席する。 翌日、地味な服装に変えたカポーティは、惨殺現場の第一発見者の少女に会う。 その後、デューイの妻マリー(エイミー・ライアン)が、大のカポーティファンだということで、彼とリーは、デューイの自宅に招かれる。 友好的なマリーに対して気難しいデューイだったが、食事の後に、被害者の写真や情報を提供され、和やかな雰囲気で4人は時を過ごす。 ホテルに戻ったカポーティは、パートナーでもある作家のジャック・ダンフィ(ブルース・グリーンウッド)に電話をかけ、リーの新作”アラバマ物語”が出版されることを知らせる。 クリスマスの夕食に、再びデューイ宅に招かれたカポーティとリーは、デューイの部下が,犯人の手がかりを見つけたことを知る。 1960年1月6日。 法廷で、両被告は予審の権利を放棄し、カポーティはその真意を知るために、保安官事務所に拘束されているスミスに接触する。 編集長ショーンに連絡を入れたカポーティは、スミスに何かを感じることを伝える。 カポーティは、ショーンに送金を頼み、写真家リチャード・アヴェドン(アダム・キンメル)を呼び寄せる。 その後、被告人に判決は下り、スミスとヒコックは有罪となり、死刑が言い渡される。 ランシングに移送される二人に、面会人リストに入れるよう頼み、カポーティとリーはニューヨークに戻る。 いつものように社交の場に戻ったカポーティは、事件を題材にしたノンフィクション小説を書き始めようとする。 スミスに面会するため、ランシングに向かったカポーティは、刑務所長マーシャル・クラッチ(マーシャル・ベル)に賄賂を渡し、その場で面会を許可される。 カポーティは、一ヶ月絶食しているというスミスに、離乳食を持参して友人として接する。 スミスの子供時代が自分の境遇に似ているため、カポーティは、さらに彼に親近感を感じる。 カポーティに心を許したスミスは、虚言癖のあるヒコックに利用されないよう忠告する。 そして、カポーティは、スミスから個人日記を貸りて、彼の全てを知った上で、小説を書き始める。 デューイに会ったカポーティは、小説の題名を”冷血”にしたことを告げ、デューイの捜査記録を見せてもらおうとする。 取材を続けるため、スミスとヒコックに優秀な弁護士をつけたカポーティに、デューイは不快感を示す。 スミスに面会したカポーティは、執筆もせず本の題名も決めていないことを告げ、有名人からの誘いも断ったことを話し、必要な情報を得ようとする。 ダンフィは、執筆のためスペインに向かうことになり、それにカポーティを誘うが、彼はスミスの元を離れる気になれなかった。 しかし、一旦、ニューヨークに戻ったカポーティは、ダンフィの後を追い、スペインのコスタ・ブラヴァに向かう。 1年後。 リーがコスタ・ブラヴァのカポーティを訪ね、彼がスミスを利用し、そして愛していると、ダンフィが思い込んでいるという話を聞かされる。 カポーティは、スミスと自分が、同じ家で育ったような気がすることをリーに伝える。 帰国したカポーティはスミスに会い、執筆が進んでいないことを伝える。 しかし、新作”冷血”の朗読会の日を迎えたカポーティは、著書の一説を朗読し、観客から喝采を浴びる。 ”ザ・ニューヨーカー”の編集長ショーンは、”冷血”を絶賛して、10月に完成できることをカポーティに確認する。 カポーティは、処刑が近づくスミスの元に向かうが、彼とヒコックの刑が延期されたことを知る。 スミスはカポーティに感謝するが、犯行前日のことは話したがらず、カポーティは早々にその場を引き上げ、スミスの姉の家に向かう。 姉は、スミスが繊細で傷つきやすいように見せ、容易く人を殺すことをカポーティに語り、警戒するよう伝える。 スミスの元に戻ったカポーティは、彼が、新作の題名にショックを受けていることを知る。 それは、出版社が付けた仮の題名だと説明したカポーティは、友人だということを強調して、姉からだと言ってスミスに写真を渡す。 そしてスミスは、1万ドルがあるというクラッター家を襲撃した経緯と、犯行の一部始終をカポーティに話す。 事件から4年の月日が流れるが、カポーティは小説の結末が書けないことで苦しみ、スミスらの処刑も延期され続けていた。 暫くスミスに会っていないカポーティは、弁護士を探すよう彼に頼まれるが、助けになれないという簡単な手紙をスミスに送る。 ピューリッツァー賞を受賞した、リーの小説”アラバマ物語”の映画化作品の試写会で、犯人スミスらの刑が延期されているため、精神的に限界に達していることを、カポーティはリーに話す。 二人の控訴が棄却され正式に処刑日が決まり、独房に移されたスミスは、カポーティに電話を入れる。 会いに来られるかというスミスの問いかけに、カポーティは返事が出来ない。 1965年4月14日。 スミスとヒコックに面会したカポーティは、出来る限りのことはしたと涙を流し、二人に別れを告げる。 処刑場に連行されたスミスは、立ち会ったデューイと握手して、彼は、カポーティに見守られながら処刑される。 そして、カポーティはスミスの個人日記を受け取り、ニューヨークに向かう。 ”冷血”により絶大な名声を得たトゥルーマン・カポーティは、その後、著書を残さなかった。 彼の未完に終わった作品の巻頭には、”叶わない祈りよりも、叶う祈りに感動を覚える”とある。
...全てを見る(結末あり)
そして、事件の犯人、ペリー・スミス(クリフトン・コリンズJr.)とリチャード・ヒコック(マーク・ペルグリノ)が逮捕される。
”冷血”執筆も進んでいたが、スミスの控訴が棄却され、死刑執行が近いことが知らされる。
その後、カポーティはスミスからの電話や電報も受け取ろうとしなかったが、リーに説得されて刑務所に向かう。
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フィリップ・シーモア・ホフマンが設立した映画制作会社”クーパーズ・タウン・プロダクション”の、第一製作作品でもある。
*(簡略ストー リー)
カンザス州の田舎町で起きた、一家惨殺事件に興味を持った新鋭作家トゥルーマン・カポーティは、幼馴染みの作家ネル・ハーパー・リーと共に現地に向かう。
カポーティは、事件そのものを小説にすることを考え、リーと取材を続け、そして逮捕された犯人ペリー・スミスに接触する。
同じような境遇に育ったことを知ったカポーティとスミスは、その後、親交を深めていく。
しかしカポーティは、スミスからようやく聞き出した、事件の動機や犯行の様子を知っても、彼の処刑が延期され続ける間、結末を書くことが出来ないことで苦しんでしまう・・・。
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繊細な心の持ち主に見える、犯人の背後に潜む残忍な犯行、その取材を通して、新たな小説のジャンルを生み出そうとする主人公の苦悩、育った境遇が酷似する二人の、屈折した生き様や関係を、監督2作目で、初の長編映画を手がけたベネット・ミラーは、大胆な視線で見事に描き切っている。
カポーティのセリフが、哲学的な言い回しが多いのだが、その洗練されたユーモアや洞察力、さらには強かさも見せる、彼の人間味豊かな人物像が再確認できる。
また、このような質の高い作品を見ると、派手なものだけを作ってはいない、ハリウッドの底力を感じる。
第78回アカデミー賞では、フィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
助演女優(キャサリン・キーナー)
脚色賞
愛嬌のある、軽い脇役が多かったカポーティ役のフィリップ・シーモア・ホフマンは、本人の話し方や物腰を研究し尽くして特徴を捉え、見事に主人公を演じている。
ハーパー・リーを演ずるキャサリン・キーナーや他共演者、特にクリス・クーパーの、多くを語らない抑えた演技もいい。
一家惨殺犯を演ずるクリフトン・コリンズJr.の好演も印象に残る。
キャサリン・キーナーが、オスカーにノミネートされたのとは対照的に、意外に彼の評価は低かったようだ。
出演場面の少ない、地味な役のキャサリン・キーナーは、「大統領の陰謀」(1976)で同じアカデミー賞の助演候補になった、ジェーン・アレキサンダーの時を思い起こさせる。
「レッズ」(1981)での、わずかな出演でオスカーを獲得したモーリン・ステイプルトンも同様だ。
カポーティの幼馴染のネル・ハーパー・リーは、1960年の小説”アラバマ物語”でピューリツァー賞を受賞し、それは作品中でも登場する。
その登場人物ディルは、カポーティがモデルだ。
原作は映画化された。*「アラバマ物語」(1962)
カポーティのパートナーで、小説家のジャック・ダンフィのブルース・グリーンウッド、”ザ・ニューヨーカー”編集長ウィリアム・ショーンのボブ・バラバン、犯人の一人リチャード・ヒコック のマーク・ペルグリノ、捜査局員デューイ(クリス・クーパー)の妻エイミー・ライアン、刑務所長役マーシャル・ベル、写真家リチャード・アヴェドンのアダム・キンメルなどが共演している。