1957年に発表された、ジョン・D・マクドナルドの小説”The Executioners”を基に製作された作品。 犯罪者に恨まれる弁護士一家に襲い掛かる恐怖と戦いを描く、監督J・リー・トンプソン、主演グレゴリー・ペック、ロバート・ミッチャム、ポリー・バーゲン、マーティン・バルサム、テリー・サヴァラス他共演によるサスペンス・スリラーの秀作。 |
・グレゴリー・ペック / Gregory Peck / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:J・リー・トンプソン
製作:サイ・バートレット
原作:ジョン・D・マクドナルド”The Executioners”
脚本:ジェームズ・R・ウェッブ
撮影:サミュエル・リーヴィット
編集:ジョージ・トマジーニ
音楽:バーナード・ハーマン
出演
グレゴリー・ペック:サム・ボーデン
ロバート・ミッチャム:マックス・ケイディ
ポリー・バーゲン:ペギー・ボーデン
ロリ・マーティン:ナンシー・ボーデン
マーティン・バルサム:マーク・ダットン警察署長
テリー・サヴァラス:チャールズ・シーヴァース
ジャック・クラスチェン:デイヴ・グラフトン弁護士
バーリー・チェイス:ダイアン・テイラー
エドワード・プラット:判事
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1962年製作 105分
公開
北米:1962年4月18日
日本:1962年11月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ジョージア州。
裁判所で弁護士のサム・ボーデン(グレゴリー・ペック)を捜していたマックス・ケイディ(ロバート・ミッチャム)は、彼がいる法廷に向かう。
退廷したボーデンが乗った車のキーを抜いて話しかけたケイディは、8年前のボルティモアの話をする。
ケイディのことを思い出したボーデンは、要件は何だと訊き、会いに来ただけだと言われる。
キーを渡せと言ったボーデンは、まだ恨んでいるのかと尋ね、ケイディは、笑いながら時間がかかりそうだと答える。
ボーデンが無視して走り去ろうとしたため、ケイディは、妻と娘のことを話しながら彼を牽制する。 妻ペギー(ポリー・バーゲン)と娘のナンシー(ロリ・マーティン)と共に、ボーデンは平穏な暮らしをしていた。 その夜、家族でボーリングを楽しんでいたボーデンの元に、再びケイディが現れる。 ケイディに気づいたボーデンは彼が気になり、声をかけられて、家族を見ておきたかったと言われる。 警察署に電話をしたボーデンは、マーク・ダットン署長(マーティン・バルサム)と会う約束をして彼の家に向かう。 ケイディのことを伝えたボーデンは、8年前にボルティモアに出張した際の話をする。 男が揉み合っている女が悲鳴を上げているのを目撃したため警察に通報し、警官が現れると男は暴れ始めたとボーデンは話す。 その男がケイディであり、強姦罪で服役して出所した彼は、有罪になったのは自分の証言のせいだと決め付け、復讐する目的でこの町に来た可能性があることを、ボーデンはダットンに伝える。 署に電話をしたダットンは、前歴者であるケイディが届け出をしているかを確認し、彼を連行するよう部下に命ずる。 ダットンに感謝したボーデンは、その場を去る。 バーにいたケイディは、現れた警官に抵抗することなく指示に従い、その場にいたダイアン・テイラー(バーリー・チェイス)に、待っているようにと伝えて連行される。 ダットンの取り調べを受けたケイディは、ボーデンが現れても驚くことなく、所持金が少ないことを指摘され、町を出て行くよう指示される。 通帳をチェックするようにと伝えたケイディは、5400ドルの残高を確認したダットンから、何の金だと訊かれる。 銀行の預託金係に聞けば分かると言うケイディは、町に居座り続けるることをボーデンに伝える。 自分の家族には近づくなと言ってケイディに警告したボーデンは、その場を去る。 翌日、愛犬が吠えるのを気にするボーデンは、ダットンからの電話を受ける。 銀行に問い合わせたことを話すダットンは、ケイディが農場を5900ドルで売却したことを知らせて、問題ないと判断したために釈放したとボーデンに伝える。 ダットンから、法律の範囲内でケイディを町から追い出せると言われたボーデンは、ペギーから、愛犬が倒れていることを知らされる。 ペギーとナンシーと共に獣医師の元に向かったボーデンは、愛犬は”ストリキニーネ”により毒殺されたことを知らされる。 帰宅したボーデンは、ケイディの存在と関係を正直に家族に話すが、不安は日増しに高まっていく。 その後ケイディは、やり手の弁護士デイヴ・グラフトン(ジャック・クラスチェン)を雇い、前歴者というだけで迫害されて精神的虐待を受け、まともな場所に住めないことを理由に警察を訴えようとする。 法律では、ケイディが犯罪を犯さない限り、追放もできない状況だった。 ダットンの助言で私立探偵のチャールズ・シーヴァース(テリー・サヴァラス)を雇ったボーデンは、ケイディを監視させる。 その後、ダイアンを連れてホテルに向かったケイディ尾行したシーヴァースは、警察に通報して、今ならわいせつ罪で逮捕できると伝える。 部屋に押し入った警官は、暴行されたダイアンを見つける。 シーヴァースから、ケイディを逮捕するための協力を求められたダイアンだったが、復讐を恐れ恥をかくことになる彼女はそれを拒む。 現れたボーデンに謝罪したダイアンは、何も語ることなく町を去る。 シーヴァースは、金次第の男達を雇い、ケイディに力ずくで言うことを聞かせる手もあるとボーデンに助言する。 そこまではできないとシーヴァースに伝えたボーデンだったが、ケイディがナンシーに近づく。 それに気づいたボーデンは、ケイディから、ビールを飲んでいただけだと言われる。 愛犬やダイアンのようにはいかないと伝えたボーデンは、ナンシーとペギーの話をするケイディを殴る。 挑発には乗らないと言うケイディは、その場は引き下がる。 しかし、その後もケイディにつきまとわれたナンシーは、逃げようとして車に轢かれそうになる。 軽傷で済んだナンシーだったが、ペギーの前で取り乱してしまう。 それを知ったボーデンは拳銃を持ち出し、金を渡して解決するべきだと言う彼女の提案も聞かずに、ケイディの元に向かおうとする。 思い止まったボーデンは、ケイディを呼び出して2万ドルで解決しようとするが、彼はその話に乗らなかった。 帰宅したボーデンはペギーと話し、ケイディの目的は金ではなくナンシーであり、裁判でさらし者になることを嫌う被害者と家族の心理を逆手にとった行動だと考える。 しかし、ケイディはそんな脅しが通用する相手ではなく、男達を叩きのめしてボーデンに電話をする。 電話に出たペギーは脅され、代わったボーデンは、ケイディから妻子を酷い目に遭わせると言われる。 仕方なくボーデンはケイディの殺害を考え、ナンシーをおとりに使うと知ったペギーに反対されるものの、完璧な作戦で対処すると伝える。 グラフトン弁護士を使い襲われた男に自供させたケイディは、ボーデンの弁護士資格を剥奪する要求を出させる。 自分の手でケイディを始末することを決意したケイディは、ダットンに協力を求める。 ペギーとナンシーをおとりに使うと言うボーデンは、”恐怖岬/ケープ・フィアー川”のボートハウスにケイディを誘き寄せる計画を話す。 ダットンとシーヴァースの協力を得たボーデンは、計画通りにペギーとナンシーをボートハウスに残し、グラフトンの指示に従い倫理審査会に行くと見せかけてアトランタに向かおうとする。 ボーデンを監視していたケイディは、彼が間違いなくアトランタに向かったことと帰る日を空港で確認する。 物音に気づいたペギーは警戒するが、保安官補のカーセクと共に密かに戻ったボーデンだった。 ペギーの気持ちを聞きシーヴァースに電話をしたボーデンは、彼を見張っているケイディの行動を読み、明日、決行することをペギーに伝える。 翌日、行動を開始したシーヴァースは、ケイディが尾行している気配がないことを電話でボーデンに伝える。 つけていなければやり直しても無駄だと言うボーデンは、シーヴァースをボートハウスに呼び寄せる。 ボートで川を下るシーヴァースを監視したケイディは、戻ってきた彼を確認にして下流に向かう。 ボートハウスのペギーとナンシーを確認したケイディは、川に入り対岸に向かう。 ボーデンとカーセクは、ボートハウスを監視する。 カーセクに気づいて殺したケイディは、ボートハウスのロープを外す。 ボートハウスが動き始めたためにそれに近づいたボーデンは、カーセクを捜し、水中に沈んでいた死体を見つける。 陸の小屋にいたナンシーに、保安官に電話をするようにと指示したボーデンは、ボートハウスを追う。 ケイディはペギーに迫り、目的だったナンシーと共に犯すことを伝える。 止まったボートハウスの中に入り、怯えるペギーを見つけたボーデンは、彼女は脅されただけで、ケイディがナンシーを狙っていることを知る。 小屋に押し入りナンシーに襲いかかるケイディは、現れたボーデンと格闘になる。 水中で窒息したと見せかけたボーデンは、石で彼を殴り倒す。 ナンシーを逃がしたボーデンは、迫るケイディから逃れて、落した銃を拾い銃撃する。 止めをさせというケイディに対しボーデンは、一生、刑務所で罪を償わせせて苦しめると言い放つ。 翌日、ボーデンは、ペギーとナンシーと共にボートハウスを離れる。
...全てを見る(結末あり)
打つ手がなくなったボーデンは、男達を雇いケイディを痛めつけさせる。
*(簡略ストー リー)
弁護士サム・ボーデンの前に、彼の証言により服役したため恨みを持つマックス・ケイディが現れる。
ケイディは、ボーデンや彼の家族を牽制し、平穏だった一家の生活は一変してしまう。
ボーデンは、警察署長ダットンの協力を得てケイディを追い詰めようとするものの、犯罪を犯さない彼に手出しが出来ない。
逆にケイディは、弁護士グラフトンを雇い警察とボーデンに対し訴えを起こそうとする。
そこでボーデンは、ケイディを監視させるために私立探偵シーヴァースを雇う。
その後ボーデンは、ケイディがダイアンという女性に乱暴した現場に駆けつけるが、彼の復讐を恐れた彼女は証言を拒み、町を去ってしまう。
この件を金で解決しようとするボーデンだったが、ケイディはそれを拒む。
仕方なくボーデンは、男達を雇いケイディを痛めつけようとする。
そんなことでは屈しないケイディは、逆にボーデンの弁護士資格を剥奪する要求を出す。
そして、行き場のなくなったボーデンは、妻子をおとりにして、自らの手でケイディを始末する決心をするのだが・・・。
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ジョン・D・マクドナルドの原作”The Executioners”は、増刷分からタイトルが「Cape Fear/恐怖の岬」となった。
1991年に「ケープ・フィアー」がリメイクとして公開された。
本作の主演グレゴリー・ペックとロバート・ミッチャムは、リメイクの「ケープ・フィアー」(1991)にもゲスト出演している。
前年の「ナバロンの要塞」(1961)に続き、グレゴリー・ペックとコンビを組んだJ・リー・トンプソンの、アクション作品を得意とする彼らしい、逞しい(肉体的、精神的)男同士の戦いを前面に出した演出は、異色サスペンス・スリラーとして十分に楽しめる仕上がりになっている。
ヒッチコック作品でお馴染みのバーナード・ハーマンによる、恐怖を煽る主題曲は出色だ。
冒頭からイントロなしでいきなり流れるこの曲は、一度、聴いたら忘れられないほどインパクトがある。
もちろん、リメイク作でも効果抜群で使われている。
豪華な顔ぶれの中で、悪に敢然と立ち向かうグレゴリー・ペックは、リメイクのニック・ノルティのように弱音を吐かないところがいい。
また、狂気の復讐鬼を演じたロバート・ミッチャムの熱演が光る。
この時代ロバート・ミッチャムは、「眼下の敵」(1957)や「史上最大の作戦」(1962)などで、好感度抜群の役柄をこなしていたことを考えると、本作で新境地を開拓したとも言える。
その凄まじい迫力ある演技は見ものだ。
若き日と言っても40歳の、スキンヘッドでないテリー・サヴァラスの、隙がなく知的な雰囲気漂う私立探偵役も印象に残る。
恐怖に怯えるものの、逞しさも見せる主人公の妻ポリー・バーゲンと娘のロリ・マーティン、警察署長のマーティン・バルサム、ケイディに雇われるやり手の弁護士ジャック・クラスチェン、ケイディに暴行される女性役のバーリー・チェイス、判事のエドワード・プラットなどが共演している。