1958年に発表されたトルーマン・カポーティの同名小説の映画化。 不幸な過去を引きずり成長仕切れない女性が青年作家との出会いで新たな人生を掴むまでを描く、監督ブレイク・エドワーズ、主演オードリー・ヘプバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール共演によるラブ・ロマンスの秀作。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:ブレイク・エドワーズ
製作
リチャード・シェファード
マーティン・ジュロウ
原作:トルーマン・カポーティ
脚本:ジョージ・アクセルロッド
撮影:フランツ・プレイナー
編集:ハワード・A・スミス
美術・装置
ハル・ペレイラ
ローランド・アンダーソン
サム・コマー
レイ・モイヤー
衣装デザイン
イデス・ヘッド
ユベール・ド・ジバンシィ
ポーリン・トリジェール
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演
オードリー・ヘプバーン:ホリー・ゴーライトリー
ジョージ・ペパード:ポール・バルジャック/フレッド
パトリシア・ニール:フェーレイソン夫人
バディー・イブセン:ゴーライトリー医師
マーティン・バルサム:O.J.バーマン
ミッキー・ルーニー :Mr.ユニオシ
ホセ・ルイス・デヴィラロンガ:ホセ・ダ・シルヴァ・ペレイラ
アラン・リード:サリー・トマト
ジョン・マックガイバー:ティファーニー接客係
スタンリー・アダムス:ラスティー・トローラー
猫:オレンジー(調教/フランク・イン)
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1961年製作 114分
公開
北米:1961年10月5日
日本:1961年11月8日
製作費 $2,500,000
北米興行収入 $8,000,000
世界 $14,000,000
■ アカデミー賞 ■
第34回アカデミー賞
・受賞
音楽(ドラマ・コメディ)・歌曲賞(ムーン・リバー)
・ノミネート
主演女優(オードリー・ヘプバーン)
脚色・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク。
ホリー・ゴーライトリー(オードリー・ヘプバーン)は、金持ちのパトロンとの豪遊で、朝帰りの途中、ティファニーのウインドウを眺めながら朝食をとることが度々あった。
ホリーは、アパートで名無しの猫と暮らし、鍵を何度もなくしたり、部屋で騒ぎを起こし、階上の日本人カメラマンのユニオシ(ミッキー・ルーニー)に怒鳴られてばかりいた。
ある日、ホリーのアパートに青年ポール・バルジャック(ジョージ・ペパード)が引っ越してくる。
ホリーに電話を借りようとしたポールは、彼女が、シンシン刑務所の囚人で、マフィアのボスのサリー・トマト(アラン・リード)に面会に行くというのを聞き驚いてしまう。 サリー・トマトに面会し、彼から教えられた天気予報を弁護士に伝えるだけで、ホリーは100ドルを貰えるというのだ。 ポールの心配を気にせず、ホリーはそそくさとタクシーを呼び止める。 しかし、そのタクシーから、ポールの愛人らしき富豪夫人フェーレイソン(パトリシア・ニール)が現れる。 ホリーは二人の親密な関係に驚きながら、タクシーに乗りシンシンに向かう。 その夜、ホリーは、家に連れてきた男が酒を飲み、乱暴されかけたため、窓からポールの部屋に向かう。 フェーレイソン夫人が帰ったのを確認して、ポールに事情を話し、部屋に入ったホリーは、優しい物腰の彼を弟に投影し”フレッド”と呼ぶようになる。 ポールが作家だと知ったホリーは、軍に入隊したフレッドが、除隊するまでにお金を貯めて、二人でメキシコに行く予定だということをポールに話す。 朝方だと知ったホリーは、友達としてポールのベッドに入り、そのまま眠ってしまうのだが、たちまちフレッドの夢を見てうなされてしまう。 それを心配したポールに、目覚めたホリーは、干渉しないでと言って部屋に戻ってしまう。 翌日ポールは、ホリーからの謝罪とパーティーへの招待のメッセージと共に、タイプライターのリボンが郵便受けにあるのに気づき安心する。 パーティーに招かれたポールは、芸能エージェントの.O.J.バーマン(マーティン・バルサム)やブラジルの大富豪ホセ・ダ・シルヴァ・ペレイラ(ホセ・ルイス・デヴィラロンガ)らと知り合いになる。 ホリーは、彼女に付きまとう富豪達を自宅に招き、夜な夜なパーティーを催し、金持ちの男を物色していた。 パーティーは盛り上がり、当然のごとくユニオシが抗議の電話を入れ、警察を呼ぶと言い出す。 地位や家名に傷がつくのを恐れたホセは、ポールの手助けで非常口から脱出する。 次の木曜日、ポールはホリーに付き合い、シンシンのサリー・トマトの面会に行く。 ホリーは、サリー・トマトに自分の家計簿を見てもらい、彼は、それをネタに小説を書くようポールに助言して、いつものように意味不明の天気予報をホリーに伝える。 ポールは、奔放だが、どこか寂しげで弟思いのホリーに興味を持ち始める。 洗練されて都会的ではあるが、純粋さを失っていないポールに、ホリーも惹かれていく。 ある日、フェーレイソン夫人が探偵らしき男につけられていると知り、ポールはその男を探ってみることにする。 しかし、探偵だと思った男は、なんとホリーの夫だった。 男は、テキサスの獣医兼農場主ゴーライトリー(バディー・イブセン)で、ホリー、本名”ルーラメイ・バーンズ” の恵まれない過去をポールに話し始める。 ゴーライトリーは、家出したホリーを連れ戻す手助けをしてくれとポールに頼む。 人の良さそうなゴーライトリーの話を聞いて、ポールは戸惑いながらも、二人の中を取り持つことにする。 しかし、ホリーはテキサスに帰ることを拒み、ゴーライトリーを見送りに行く付き添いをポールに頼む。 そしてホリーは、もう自分は”ルーラメイ”ではないということをゴーライトリーに告げる。 失意のゴーライトリーは、ホリーを連れ帰ることを諦め、独り寂しくバスに乗りテキサスに向かう。 その後、ホリーとポールは、ストリップバーに行った後で、泥酔して帰宅し、彼女は、大富豪ラスティー・トローラー(スタンリー・アダムス)と結婚すると言い出す。 確り者のテキサスの田舎娘”ルーラメイ”と、富豪夫人になることばかり考えている今のホリーに、 複雑な思いで接するポールだった。 その後、トローラーが4度目の結婚をすることが決まり、ホリーは何事もなかったかのように、次の”獲物”を狙おうとする。 自分の原稿が50ドルで売れたポールは、それをホリーに伝え、二人でそれを祝うため”初体験”尽くしの一日を過ごそうとする。 街に繰り出した二人は、早速ホリーのお気に入りの店ティファニーに向かう。 ポールは、リボンのお返しに、10ドル以内でホリーに何かをプレゼントしようとする。 二人は、接客係(ジョン・マックガイバー)にはっきりと予算を言うが、ロマンチックなものが見つからない。 ポールは、店内の商品でないのを承知で、ゴーライトリーからもらった、お菓子のおまけの指輪に名前を彫ってもらおうとする。 今も昔と変わらずに、お菓子におまけがついていることに感心した接客係は、”お客様のご要望に応えるのがティファニーです”と言って、それを快く受ける。 そんなティファニーの対応に、ホリーは感激する。 図書館でポールの著書を確認し、万引きまでしてアパートに帰り、そして二人は結ばれる。 ポールはフェーレイソン夫人と縁を切り、ティファニーで指輪を受け取り、行き先が知れないホリーを捜す。 その後、図書館でホリーを見つけたポールは、彼女に愛を告げる。 気まぐれなホリーが、今度はホセに目を付けけていると知ったポールは呆れてしまう。 ポールは、今まで付き合ってくれたチップだと言って、原稿料の50ドルの小切手をホリーに渡し、その場を立ち去ってしまう。 その夜、ホセと豪遊して帰宅したホリーは、弟フレッドの死を知り取り乱してしまう。 時は流れ、気を取り戻したホリーは、引っ越していたポールに連絡を取り彼を呼び寄せる。 ポルトガル語を習い始め、ホセとのブラジル行きの準備を進めていたホリーは、ポールに別れを告げる気だった。 ホリーはホセと結婚すると言うのだが、ポールはホセが彼女と本当に結婚する気があるのか疑問だった。 外出してアパートに戻ったホリーは、サリー・トマトとの面会が、麻薬取引に関与していたことが発覚して逮捕されてしまう。 ポールは、ホリーのパーティーで会ったハリウッドの芸能エージェントのバーマンに協力を要請し、彼女を保釈させる。 ホリーをタクシーで迎えに行ったポールは、保釈中にも拘わらず、ブラジルに向かおうとするホリーに、ホセからの手紙を渡す。 ゴシップを嫌うホセから見捨てられても意地を張るホリーに、ポールは愛を告げて彼女を引きとめようとする。 しかし、ホリーは連れていた飼い猫を放り出してしまい、ポールはついに彼女に愛想を尽かす。 タクシーを降りたポールは、人は皆愛し合い、現実を見て生きていくもので、それに目を背けるホリーを意気地なしだと言い放つ。 そしてポールは、ティファニーで名前を入れた指輪をホリーに放り投げて立ち去ってしまう。 ホリーは、自分を真剣に愛してくれるポールの気持ちを理解し、雨の中、猫を捜すポールの元に駆け寄る。 猫をみつけて優しく抱きかかえたホリーが、愛を知った一人の女性として、その心を取り戻したことを知ったポールは、安堵の表情を浮かべる。 そして、2人は愛を確かめ合い固く抱き合う。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ニューヨーク。
自由奔放に暮らし、富豪との結婚を夢見て毎日を過ごす女性ホリー・ゴーライトリーのアパートに、青年作家ポール・バルジャックが越してくる。
ポールは、パトロン兼愛人である富豪夫人フェーレイソンに養われていた。
ホリーは、同世代のポールとの親交を深めるのだが、相変わらず富豪との結婚しか頭になかった。
ある日、ホリーに年老いた夫がいることを知ったポールは、彼女の恵まれない過去などを夫から聞かされ、彼女への労わりの気持ちが、次第に愛情へと変わっていく。
ポールの気持ちは察するものの、現実と真実の愛を受け入れられないホリー。
何が目的かも定まらず、虚栄を求め続けるホリーを、ポールは、厳しい言葉で突き放そうとするのだが・・・。
__________
早朝、人影のない五番街57丁目のティファニー、さっそうとタクシーで乗り付ける主人公。
粋で洒落たオープニング・・・。
今では簡単に行けるニューヨークも、当時の日本人にとっては、その洗練された雰囲気などが驚きとして受け止められたのではないだろうか。
コメディを得意とするブレイク・エドワーズの、随所ににユーモアを混じえながらの繊細な演出、美しく優雅、そしてもの悲しいヘンリー・マンシーニのテーマ曲”ムーン・リバー”も、効果的に挿入されている。
第34回アカデミー賞では5部門でノミネートされ、音楽(ドラマ・コメディ)・歌曲賞(ムーン・リバー)を受賞した。
・ノミネート
主演女優(オードリー・ヘプバーン)
脚色・美術賞
「ローマの休日」(1953)でアカデミー主演賞を授賞して、周囲を驚かせたオードリー・ヘプバーンだが、キャリアを積んだ本作がその受賞に相応しかったかもしれない。
既に30歳を過ぎていたオードリーだが、成熟しきれない心と、輝きを放つ美しさのアンバランスが、なんとも知れない魅力を醸し出す。
彼女は出演作の少なさや、後年、慈善活動に没頭する姿からみて、周囲が期待するほど、芸能活動には思い入れがなかったようにも思える。
富豪との生活を諦め、平凡な生活を選ぶ結末も、実際の彼女が投影されているかのようでもある。
ドラマのワンポイントとなる、主人公のお気に入りの宝石店”ティファニー”店内での撮影と、接客係ジョン・マックガイバーの対応は宣伝効果抜群で、その名を一層高めた。
主演のオードリー・ヘプバーンをはじめ、衣装はイデス・ヘッドが担当し、そのデザインは、もちろんユベール・ド・ジバンシィ、そしてポーリン・トリジェールも参加している。
原作者のトルーマン・カポーティを彷彿させる、清潔感溢れるジョージ・ペパードも、好感度のある青年を熱演している。
その新鋭作家を援助するパトリシア・ニールの、当時30代半ばとは思えない、子供を手玉に取るような、貫禄さえも感じる富豪夫人役の好演も印象に残る。
テキサスの獣医を演ずるバディー・イブセンの、やり切れない悲しげな表情も印象的だ。
ミュージカル映画で活躍した彼は、名作「オズの魔法使」(1939)で当初かかし役を演ずるはずだったのだが、その後ブリキ男に変更され、撮影開始9日目にアルミニウムの銀色のメイクにアレルギーを起こし、結局この世紀の名作に出演することが出来なかったという裏話もある。
かつてのミュージカルの大スター、ミッキー・ルーニーが、奇妙な日本人役で出演するのだが、”出っ歯でチビでメガネ”という日本人のイメージは今でもあまり変わっていない気もする。
大物芸能エージェント、名脇役のマーティン・バルサムと、スペイン出身のホセ・ルイス・デヴィラロンガが大富豪役で登場する。
一場面だけの登場だが、その人情味に誰もがうなずくだろう、ティファニー本店の接客係ジョン・マックガイバーも印象深い。
マフィアのボス、アラン・リード、そしてドラマで重要な役を演ずる猫は、何作もの映画に出演したオレンジーで、調教はフランク・インが担当している。