廃坑問題で揺れる田舎町の唯一の希望である名門ブラスバンドが苦境を乗り越えようとする姿を描く、監督、脚本マーク・ハーマン、ピート・ポスルスウェイト、ユアン・マクレガー他共演による心温まる感動のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:マーク・ハーマン
製作:スティーブ・アボット
脚本:マーク・ハーマン
撮影:アンディ・コリンズ
編集:マイケル・エリス
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
出演
ダニー・オーモンドロイド:ピート・ポスルスウェイト
アンディ:ユアン・マクレガー
グロリア・マリンズ:タラ・フィッツジェラルド
フィル・オーモンドロイド:スティーブン・トンプキンソン
ハリー:ジム・カーター
サンドラ:メラニー・ヒル
ヴェラ:スー・ジョンストン
ジム:フィリップ・ジャクソン
アイダ:メアリー・ヒーリー
アーニー:ピーター・マーティン
グリーズリー:ケネス・コリー
リタ:リル・ラフリー
イギリス/アメリカ 映画
配給
Channel Four Films(イギリス)
ミラマックス(北米)
1996年製作 107分
公開
イギリス:1996年11月1日
北米:1997年5月23日
日本:1997年12月20日
製作費 ₤2,800,000
北米興行収入 $2,560,470
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1990年代。
イングランド、サウス・ヨークシャー、グリムリー。
炭坑の町は閉鎖問題で揺れ、創立100年以上の伝統ある楽団”グリムリー・コリアリー・バンド”のメンバーも、リストラが迫る中、解散を覚悟していた。
そんな故郷に戻ったグロリア・マリンズ(タラ・フィッツジェラルド)も、音楽を愛する女性だった。
問題を抱えながらも、バンドに人生と情熱を傾けるリーダー、ダニー・オーモンドロイド(ピート・ポスルスウェイト)は、息子フィル(スティーブン・トンプキンソン)が、妻サンドラ(メラニー・ヒル)に不満をぶつけられるのも気にせず、彼と共に練習に向かう。
不安を抱えるメンバー、アンディ(ユアン・マクレガー)、ハリー(ジム・カーター)、ジム(フィリップ・ジャクソン)、アーニー(ピーター・マーティン)、フィルらと共に演奏を始めたダニーは、全く身が入っていないことを指摘する。 炭鉱閉鎖の不安を訴えるメンバーに、ダニーは、彼らの気持ちは理解しつつ、全国大会の準決勝を勝ち抜けば、ロンドンの”ロイヤル・アルバート・ホール”で演奏きると言って彼らを励ます。 今は音楽に集中するべきだと付け加えたダニーは、メンバーから会費を集めようとするが、ジムらはそれを拒む。 そこに、”フリューゲルホルン”を持参したグロリアが現れ、バンドに参加することを希望する。 ダニーは、よそ者が入れないことを伝えるが、グロリアは、自分が街の出身者だと答える。 名前を聞いたダニーは、亡くなった楽団メンバーの孫娘だと知り彼女を歓迎する。 ジムらは仕方なく会費を払い、アンディは、グロリアが自分の名前を覚えていなかったことを気にするが、美しい彼女に心惹かれる。 グロリアは、ロドリーゴの”アランフェス協奏曲”を奏でて聴かせ、ダニーを満足させてメンバー達も称賛の拍手を贈る。 ダニーは、グロリアの出現で演奏活動に希望を見出すが、咳き込んだ際に吐血したことに気づく。 炭坑労働者の集会が開かれ、代表のグリーズリー(ケネス・コリー)は、地質調査で石炭の埋蔵量を調べ、その結果で閉鎖を受け入れるか、上乗せ分を含めた退職金と特別手当を受け取り、今すぐ廃坑を受け入れるかという提案をする。 しかしグリーズリーは、炭坑局の妥協案には応ずることなく、炭鉱存続を訴えることを労働者に求める。 ジムの妻ヴェラ(スー・ジョンストン)やアーニーの妻アイダ(メアリー・ヒーリー)は、グロリアがバンドに入ったことを知り、演奏会に向かう夫らが、彼女目当だと疑い始める。 フィルは、サンドラに4人の子供達の世話をするよう命ぜられて、仕方なく演奏会に連れて行くことになる。 スーとアイダも、夫達が見張るために同行することになり、バンドは賞金を得て活動資金にするため、各地の演奏会に出場する。 演奏旅行は散々な結果に終わり、無様なメンバーをダニーは非難する。 メンバーは、再び炭鉱閉鎖のことを口に出し、ハリーが、その場合はバンドも解散するべきだと意見する。 しかし、町の希望である伝統あるバンドを、ダニーは解散させる気はなかった。 ダニーはフィルに、才能を生かすために新しい楽器を買うよう助言する。 解散を口に出され興奮したダニーは、再び吐血していたのだが、それを知ったフィルは、父が塵肺であることに気づく。 ダニーの態度に感心したグロリアは、アンディとの食事に付き合う。 グロリアは、アンディも気づいていた通り、自分が炭坑局の地質調査員だということを伝える。 アンディは、それを確認してショックを受けるが、グロリアは炭坑閉鎖には反対であり、労働者の味方だという立場を伝える。 しかし、建前で周囲が動いているだけで、自分は反対するものの、閉鎖は既に決定事項であることをアンディは語る。 本音を語り合った二人は打ち解けて、グロリアは志願して故郷に戻り、名前を知らないふりをしたことをアンディに伝える。 そしてグロリアは、戻った理由として、アンディのことが忘れられなかったことも付け加え、同じ気持ちだった二人は愛し合う。 父ダニーの言葉を聞き、楽器を盗もうとしたフィルだったが、前科のある彼の行為をジムとアーニーが制止する。 グリーズリーの提案で決まった投票が始り、それと、自分の調査が、無駄な行為ではないかということをグロリアは上司に確かめる。 ジムとアーニーは、グロリアが炭鉱局にいることに気づき、彼女と親しげなアンディにそれを追求する。 アンディは、投票で廃坑に賛成する理由ができたとジムに嫌味を言われるが、その場は押さえる。 フィルは、子供達を相手にするピエロのバイトを始め、妻のサンドラは生活費に困るが、スーパーのレジ係りのヴェラに手を差し伸べられる。 楽器を手に入れたフィルだったが、借金の取立てにも遭い追い詰められる。 廃坑を決める投票も始まり、バンドは地区大会の準決勝が行われる演奏会に向かう。 バンドが演奏をしている頃、投票結果で廃坑賛成が多数となる。 サンドラは、フィルがトロンボーンを借金で手に入れたことを知り、その後、取立て屋に家財を没収される。 演奏会の結果、”グリムリー・コリアリー・バンド”が優勝し、彼らは、ついに”ロイヤル・アルバート・ホール”行きを決める。 しかし、町に戻ったダニーらは廃坑決定を知り、ハリーも、不仲だった妻リタ(リル・ラフリー)から、8割もの労働者が廃坑を支持しことを知り落胆する。 直後にダニーが路上で倒れ、駆け寄ったフィルとメンバーは救急車を呼び彼を病院に運ぶ。 様態を気にするメンバーは、ダニーへの見舞金を集めるが、ジムはグロリアを裏切り者扱いして、味方だという彼女をアンディも無視する。 サンドラは、引き止めるフィルの言葉も聞かず、子供達を連れて家を出る。 ハリーは、そんなフィルを呼び寄せ、メンバーと共にダニーを励ますために、病院の外で”ダニー・ボーイ”を演奏する。 ダニーを見舞ったメンバーは、彼にタクトを贈り、フィルは、ハリーらに促されて、バンドを解散することを父に伝えようとする。 しかしフィルは、決勝を楽しみにするダニーに、それを話すことはできなかった。 調査書を上司に提出しようとしたグロリアは、それを確認する気のないことに気づき意見する。 今回の件が、自分の考える以上の茶番劇だったことを知り憤慨したグロリアは、その場を立ち去る。 グロリアと話し合ったアンディだったが、お互い歩み寄ることはできず、彼女は、資金難のバンドが、ロンドン行きも諦めたことを知り心を痛める。 フィルは、バンド解散のことをダニーに言えなかったことをアンディに知られてしまい、病院に向かう。 しかし、決勝の日を待ち焦がれ、徹夜でチャックした楽譜を咳き込むダニーに渡されたフィルは、再び解散のことを言いそびれてしまう。 思い悩んだフィルは、家族も失い絶望して自殺を試みるが失敗し、病院に運び込まれる。 それに気づいたダニーは、落胆するフィルから、バンドが解散したことを知らされてショックを受ける。 困惑するフィルは、様子を見に来たアンディらに、金欲しさに賛成票を入れたことを知らせる。 アンディらとパブに向かったフィルは、ダニーが病気とバンドのことで傷心の身であること伝える。 そこにグロリアが現れ、バンドの決勝への出場資金3000ポンドを提供する。 ジムは、尚もグロリアに皮肉を言うが、これが自分のやり方だと言って、彼女はダニーのためにそれを使うよう伝える。 グロリアの気持ちを理解したジムは優勝を決意し、彼女の演奏もそれに貢献できると言って意気込みを見せる。 アンディは、ビリヤードの賭けで手放した楽器を、再び勝負して取戻す。 フィルは、ダニーに伝言で決勝出場を伝え、バンド・メンバーは、町の人々の声援を受けながらロンドンに向かう。 ”ロイヤル・アルバート・ホール”に着いたバンドは、出場の順番を迎え、フィルの伝言を受取ったダニーは、病室から姿を消してしまう。 バンドは、ハリーの指揮でロッシーニの”ウィリアム・テル”の演奏を始め、フィルは、会場にサンドラや子供達がいることに気づく。 ステージ裏からダニーも現れ、演奏を終えた彼らは、大喝采を受け、そして”グリムリー・コリアリー・バンド”は見事に優勝する。 壇上に上がったダニーは、トロフィーを受け取らずスピーチを始め、音楽そのものが宝であることを語る。 優勝を返上することを伝えたダニーは、廃坑を意図的に企んだ政府の政策を痛烈に批判する。 炭坑のことだけでなく、それに関わる人々の生きる希望も奪い取り、動物以下の扱いを受けた自分達には、何も残っていないことも付け加える。 演奏が素晴らしいことは認めるものの、それが何になるのかとも語るダニーは、言葉を詰まらせながらその場を去る。 観客は総立ちになりバンドに対して拍手を贈り、ジムはダニーの言葉を無視してトロフィーを持ち去る。 バンドは、夜の街の観光を楽しみながら、エルガーの”威風堂々”の演奏を始める。 イギリス国内では1984年から140もの炭坑が閉鎖され、25万人もの人々が失業者した。
...全てを見る(結末あり)
__________
*(簡略ストー リー)
1990年代。
イングランド、サウス・ヨークシャー、グリムリー。
炭鉱の町は廃坑問題で揺れ動き、人々は苦境に立たされていた。
町の人々の希望である、創立100年以上の名門楽団”グリムリー・コリアリー・バンド”に情熱を捧げるリーダーのダニー・オーモンドロイドは、不安を抱えるメンバー、アンディ、息子のフィル、ハリーやジムらに、地区大会を勝ち抜きロンドンの”ロイヤル・アルバート・ホール”で演奏する夢を語り彼らを励ます。
労働者は炭坑局との話し合いで、投票により廃坑を決めることになっていた。
そんな時、地元出身者のグロリアが町戻り、元バンドメンバーの孫娘である彼女は、見事な演奏を披露してバンドに迎えられる。
アンディは、美しいグロリアの帰郷を喜ぶのだが、彼女が地元に戻ったのには、ある理由があったのだった・・・。
__________
イギリス映画お得意の、苦難の時代の市民奮闘ドラマは、単なる成功物語ではなく、社会性を含めた問題を鋭く捉えた力作に仕上がっている。
繁栄の時を経て、その後、見る影もなくなった町の様子や人々の生活を見事に描写した、マーク・ハーマンのヒューマニティー溢れる演出は見ものだ。
きれいごとばかりではなく、人間の醜い部分もストレートに映し出す、生々しい映像も注目だ。
人生の頂点とも言える、全国優勝の栄光を手にしながら、音楽だけを称え社会を批判して立ち去る姿に心打たれる、バンドに・リーダーを熱演するピート・ポスルスウェイト、若い炭鉱夫でありバンド・メンバーの、スターになる予感を感じさせるユアン・マクレガー、炭坑局の調査員という立場ながら、地元出身者として労働者を支えてバンド活動に貢献するタラ・フィッツジェラルド、個性溢れる、愛すべき労働者でありバンド・メンバーのスティーブン・トンプキンソン、その妻メラニー・ヒル、メンバーのジム・カーター、その妻リル・ラフリー、メンバーのフィリップ・ジャクソン、その妻役スー・ジョンストン、メンバーのピーター・マーティン、その妻メアリー・ヒーリー、労働者代表のケネス・コリー等が共演している。