ウエストコースト・ジャズを代表するミュージシャンとして一世を風靡したチェット・ベイカーの転落と再起を描く、製作、監督、脚本ロバート・バドロー、主演イーサン・ホーク、カルメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・バドロー
製作
ロバート・バドロー
ジェニファー・ジョナス
レナード・ファーリンジャー
ジェイク・シール
脚本:ロバート・バドロー
撮影:スティーヴ・コーセンス
編集:デヴィッド・フリーマン
音楽
ディビッド・ブレイド
トドール・カバコフ
スティーヴ・ロンドン
出演
チェット・ベイカー:イーサン・ホーク
ジェーン・アズカ/エレイン:カルメン・イジョゴ
リチャード”ディック”ボック:カラム・キース・レニー
リード保護観察官:トニー・ナッポ
チェズニー・ベイカーSr.:スティーヴン・マクハティ
ヴェラ・ベイカー:ジャネット=レイン・グリーン
ダニー・フリードマン:ダン・レット
マイルス・デイヴィス:ケダー・ブラウン
ディジー・ガレスピー:ケヴィン・ハンチャード
サラ:ケイティ・ボーランド
ヘンリー・アズカ:ユージン・クラーク
エルシー・アズカ:バーバラ・エヴァ・ハリス
ニコラス:トニー・ナルディ
ジャネッレ:バーバラ・ママボロ
アメリカ/カナダ/イギリス 映画
配給 Entertainment One
2015年製作 97分
公開
イギリス:2016年7月25日
北米:2016年3月25日
日本:2016年11月26日
製作費 $6,500,000
北米興行収入 $830,130
世界 $2,003,340
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1966年、イタリア、ルッカ。
逮捕拘留中のジャズ・ミュージシャン、チェット・ベイカー(イーサン・ホーク)を、ハリウッドの映画監督ニコラス(トニー・ナルディ)が釈放させる。
__________
1954年、ニューヨーク、”バードランド”。
人気絶頂のチェットは、マイルス・デイヴィス(ケダー・ブラウン)とディジー・ガレスピー(ケヴィン・ハンチャード)の前で演奏する。
マイルスとディジーの演奏が始まり、その場にいたジャネッレ(バーバラ・ママボロ)を部屋に連れて行き、妻エレイン(カルメン・イジョゴ)がいないことを確認したチェットは、ヘロインを打ってハイになる。 そこに戻ってきたエレインは憤慨し、ジャネッレを追い出す。 1966年、ロサンゼルス。 その日の撮影が終了となったチェットは、ニコラスから、アドリブは大歓迎だと言われる。 スタジオを訪れていたレコード・プロデューサーのリチャード”ディック”ボック(カラム・キース・レニー)は、チェットがイタリアの刑務所にいると思っていたために驚く。 様々なことがあった二人だったが再会を喜び、チェットがドラックを断ったことを確認したディックは、再び組んでレコードを作ろうという話になる。 チェットに誘われたジェーンは、ドラッグ中毒である彼が、どん底に落ちた理由を尋ね、ドラッグは幸せになれて楽しいからだと言われる。 強引なチェットと付き合う気になったジェーンだったが、ドラッグ・ディーラーに袋叩きにされたチェットは、全ての前歯を折り顎も砕けてしまう。 重傷を負い病院に運ばれたチェットは、二度とトランペットは吹けないと言われ、映画の製作は中止となり、復帰は不可能だと思われた。 チェットの乱れた生活に愛想を尽かし、もう誰も助けてくれないと考えるディックは、ドラッグはやめろと忠告して彼を見限る。 退院後チェットは、保護観察官から”メタドン療法”を勧められたために鎮痛剤を処方してもらえず、顎や出血する口の痛みに苦しみ、トランペットを吹くことなどできるはずがなかった。 そんなチェットは、演奏はなかなか良かったと評価したマイルスから、”金や女のために吹く者は信用しない、このクラブには早いので修業してで直せ”と言われたこと(1954年、ニューヨーク、”バードランド”)を思い出す。 ドラッグをやめられないチェットに、始めたきっかけを尋ねたジェーンは、”チャーリー・パーカー”に認められた時の話をされる。 チャーリーもジャンキーだったと伝えたジェーンは、チェットから、彼は自分しか傷つけなかったと言われる。 チェットを心配するジェーンは、メタドン療法で治すことを勧めて、彼と共に旅立つ。 オクラホマ州、イエール。 チェットは、自分のことをよく思わない父チェズニー(スティーヴン・マクハティ)から嫌味を言われる。 保護観察官のリード(トニー・ナッポ)からの連絡を受けたチェットは、メタドンのことなどを話し、定職に就くようにと言われ、ガソリンスタンドで働くようになる。 ロサンゼルスに戻ることにしたチェットは、昔バンジョーで弾いてくれた曲”Born to Be Blue”のレコードをチェズニーに渡す。 女のように歌う理由を訊かれたチェットは、曲は大ヒットしたと言って、チェズニーが音楽をやめてしまったことを話す。 自分は家族に迷惑をかけず、ベイカーの名を汚してはいないと言われたチェットは、父に別れを告げて旅立つ。 その後、チェットはジェーンのバンで暮らし、練習を続けていた腕試しのつもりで、小さな店で演奏する。 何とか演奏はできたチェットだったが、バンド・リーダーからもう少し練習してきてほしいと言われたため、ショックを受けて店を出る。 ジェーンから、チェット・ベイカーだと言われたバンド・リーダーは驚き、彼も終わりだと思う。 女優としてオーディションを受け続けるジェーンだったが、役はつかなかった。 ディックの家を訪ねたチェットは、仕事が欲しいと言って、保護観察官に見張られ、ジェーンも妊娠したと伝える。 力になれないと言われたチェットは、妊娠がウソだと分かったディックから、クリーンでいるようにと忠告されて追い払われる。 その後、チェットの演奏は次第に評判となり、ファンのサラ(ケイティ・ボーランド)から声をかけられたチェットは誘惑される。 その様子を見て気にするジェーンは、チェットがドラッグを受け取ったことを知る。 そこに保護観察官のリードが現れ、チェットは、今週中にまともな仕事を見つけるようにと指示される。 ジェーンからドラッグをどうするのかと訊かれたチェットは、捨ててほしいと頼む。 信じているので自分で捨てるようにとジェーンから言われたチェットは、ドラッグをビール瓶に押し込む。 その後チェットは、何でも引き受けて仕事を続け、ジェーンの助力でディックも彼を助ける気になる。 チェットが毎日、演奏の他にも雑用などの仕事をしていることを、ディックはリードに伝える。 労働時間が足りないことをリードに指摘されたチェットは、今夜の仕事も見届けたいと言われる。 ジェーンの両親に会う約束があると言うチェットは、納得しないリードのような人間が”ビリー・ホリデイ”を殺したと伝えて席を外す。 レコーディングに戻ったチェットの様子を見ながら、ジャンキーのミュージシャンでこれほど熱心に働く男はいないと話すリードは、ジェーンとディックから、大目に見てほしいと言われて納得する。 ジェーンの両親ヘンリー(ユージン・クラーク)とエルシー(バーバラ・エヴァ・ハリス)に会ったチェットは、海岸で話をする。 チェットは、自分のことを調べ上げて、ジェーンに求婚することでも意見するヘンリーに、音楽の才能などを語ることは受け入れられないと伝える。 ヤク中であることを指摘されたチェットは、ヘンリーから、自分の娘の相手なら結婚させるかと訊かれ、何も答えず泳いでくると言ってその場を去る。 しかし、ジェーンのチェットへの愛は変わらなかった。 技術の衰えが音に深みを増したと判断するディックは、チェットの復活を認めて、ディジーのプロモーターであるダニー・フリードマン(ダン・レット)を紹介する。 ダニーからツアーに参加することを提案されたチェットは、ディックの考えで、この場でセッションをすることになる。 それをジェーンに知らせようとしたチェットは、彼女がニコラスと出て行ったことをディックから知らされる。 ニコラスとの浮気を疑うチェットは、誤解だと言うジェーンから妊娠したことを知らされて喜ぶ。 バルブ・リングを手にしてジェーンに求婚したチェットは、父が初めて買ってくれたトランペットのものだと伝える。 結婚に同意してくれたジェーンに、リングにチェーンをつけて渡したチェットは、彼女と愛し合う。 ジェーンやリード、ダニーらが見守る中、レコーディングを始めたディックは、チェットの演奏に満足する。 その場に現れたディジーとの再会を喜ぶチェットは、いい演奏だったと言われる。 ダニーからバードランドに出演することを提案されたとディジーに伝えたチェットは、あそこは特別な場所だと言われるものの、口利きを頼む。 ディジーから、心配なのは演奏ではなく心だと言われたチェットは、本当に復帰できるかと訊かれる。 自信を示すチェットに努力してみると伝えたディジーは、警告はしたと言って健闘を祈る。 ニューヨークに向かうことをジェーンに伝えたチェットだったが、オーディションがある彼女は、数日なら一人で大丈夫だと言って残ることを伝える。 バードランド。 緊張するチェットは吐いてしまい、メタドンが切れたことをディックに伝える。 驚くディックは、動揺するチェットを落ち着かせてステージに向かう。 チェットが現れないために様子を見に行ったディックは、メタドンを手に入れて楽屋に向かうが、彼がヘロインを打とうとしていることを知る。 ジェーンを失うと警告するディックは、やらないと吹けないと言うチェットに、それなら演奏するなと伝える。 演奏するならメタドンを飲むようにと伝えたディックは、このステージが成功すればヨーロッパ・ツアーのチャンスが掴める可能性があると考えるチェットから、人生を取り戻し音楽をやりたいと言われる。 これが最後のチャンスだと言うチェットに、空っぽな演奏はしてほしくないと伝えたディックは、自分で決めさせることにしてその場を去る。 時間の無駄だと言って席を立とうとするマイルスを、ディジーが引き留める。 ステージに上がったチェットの演奏をディックと共に見守るジェーンは、彼がヘロインを打ったことに気づく。 涙しながらバルブ・リングをディックに渡したジェーンは、残念だと言われ、自分を哀れまないでほしいと伝えてその場を去る。 演奏を終えたチェットは、マイルスとディジー、そしてディックの拍手を受けながら、”Born to Be Blue”と呟く。
...全てを見る(結末あり)
演技を続けたチェットだったが、エレイン役のジェーン・アズカは、脚本と違い過ぎると言い出し、シーンはカットされる。
故郷に戻ったチェットは、母ヴェラ(ジャネット=レイン・グリーン)に歓迎されてジェーンを紹介する。
ディックに迎えられたチェットは、ディジーと共にマイルスがいることに気づく。
__________
*(簡略ストー リー)
1966年。
ドラッグに溺れイタリアで逮捕拘留されていたジャズ・ミュージシャンのチェット・ベイカーは釈放さる。
自伝映画の製作を提案されたチェットはハリウッドに向かい、妻役を演ずるジェーンと親交を深める。
そんなチェットは、ドラッグ・ディーラーに袋叩きにされてしまい、前歯の全てと顎を砕かれ二度と演奏ができない状態になる。
自分を育ててくれたレコード・プロデューサーのディックにも見放されたチェットは、ジェーンと共に故郷のオクラホマに戻りガソリンスタンドで働く。
音楽と演奏することを諦めきれないチェットはドラッグを断ち、ジェーンの協力を得ながら再起を目指すのだが・・・。
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ウエストコースト・ジャズを代表するミュージシャンとして一世を風靡しながら、ドラッグに溺れてどん底を経験して再起したチェット・ベイカーの苦悩を描く、カナダ人監督ロバート・バドローが製作と脚本も担当した実録ドラマ。
才能だけでは人を魅了することができないと判断し、それを心でカバーできずにドラッグに頼ってしまう、人間の弱さが切実に描かれた物語で、主人公以外のアーティストも同じ道を歩む現実なども含め、多くを考えさせられる内容に心が痛む。
拡大公開もされず、一か月で打ち切りとなった作品ではあるが、批評家からは高く評価された作品。
主演のイーサン・ホークは、再起不能と言われるものの音楽を諦めきれず、苦悩しながら人生を見つめ直す主人公のチェット・ベイカーを深い演技で好演している。
共演女優から恋人となり主人公を支え続けるカルメン・イジョゴ、同じく、一旦は突き放すものの主人公を見捨てないレコード・プロデューサーのリチャード”ディック”ボックを演ずるカラム・キース・レニー、主人公の保護観察官トニー・ナッポ、主人公の両親スティーヴン・マクハティとジャネット=レイン・グリーン、マイルス・デイヴィスのケダー・ブラウン、ディジー・ガレスピーのケヴィン・ハンチャード、そのプロモーター、ダン・レット、主人公を誘惑するファンのケイティ・ボーランド、ジェーン(カルメン・イジョゴ)の両親ユージン・クラークとバーバラ・エヴァ・ハリス、映画監督のトニー・ナルディ、女優のバーバラ・ママボロなどが共演している。