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影なき殺人 Boomerang! (1947)

1924年にコネチカットブリッジポートで実際に起きた殺人事件を参考にした、フルトン・アースラー(アンソニー・アボット)の原作を基に製作された、製作ダリル・F・ザナック、監督エリア・カザン、主演ダナ・アンドリュースリー・J・コッブジェーン・ワイアットアーサー・ケネディカール・マルデンエド・ベグリー他共演の社会派ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)


スタッフ キャスト ■
監督:エリア・カザン

製作総指揮:ダリル・F・ザナック
製作:ルイ・ド・ロシュモント
原作:フルトン・アースラー(アンソニー・アボット)
脚本:リチャード・マーフィ

撮影:ノーバート・ブロディン
編集:ハーモン・ジョーンズ
音楽:デヴィッド・バトルフ

出演
ヘンリー・L・ハーヴェイ:ダナ・アンドリュース

ハロルド・F・ロビンソン警部:リー・J・コッブ
マッジ・ハーヴェイ:ジェーン・ワイアット
ジョン・ウォルドロン:アーサー・ケネディ
アイリーン・ネルソン:カーラ・ウィリアムズ
デイヴ・ウッズ:サム・レヴェン
マック・マクリーリー:ロバート・キース
T・M・ウェイド:テイラー・ホームズ
ポール・ハリス:エド・ベグリー
ホワイト警部補:カール・マルデン
ドゥーガン巡査部長:バリー・ケリー
ジム・クロスマン:フィリップ・クーリッジ
ジョージ・ランバート神父:ワイリー・バーチ

アメリカ 映画
配給 20世紀FOX

1947年製作 88分
公開
北米:1947年3月5日
日本:1947年9月


アカデミー賞 ■
第20回アカデミー賞

・ノミネート
脚本賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
コネチカット州。
ごく平凡な町で、市民に愛されていたジョージ・ランバート神父(ワイリー・バーチ)が、多数の目撃者の前で何者かに射殺されてしまう。

多くの人々が、町のために尽力したランバート神父の死を悼んだ。

しかし、寛大なランバート神父ではあったが、犯した罪については頑なまでに厳しい態度を取ったことも事実だった。

多くの人々が神父の葬儀に参列し、警察もその場で市民の動きを観察する。

7人もの目撃者が犯人を見ていたため、事件は早期終結する可能性も高かった。

先走るホワイト警部補(カール・マルデン)に対し、ハロルド・F・ロビンソン警部(リー・J・コッブ)は慎重に捜査を進める。

手掛かりも見つからないまま、ロビンソン警部は地方検事ヘンリー・L・ハーヴェイ(ダナ・アンドリュース)の元に向かう。
...全てを見る(結末あり)

ハーヴェイは、マスコミが事件を政治利用しようとしていることに警戒感を示す。

その後、事件の解決の糸口は見えず、市民の苛立ちは募り警察捜査に不安感が高まる。

新聞社”モーニング・レコード”社主T・M・ウェイド(テイラー・ホームズ)は、事件解決に手間取る革新市政や警察の無能さを徹底的に叩く。

その後、議会が警察を非難し、そのしわ寄せがロビンソン警部にきたため、嫌気がさした彼は辞職を考えていることをハーヴェイに伝える。

しかし、ハーヴェイは困難な捜査に立ち向かう気力をロビンソンに与え捜査を続けさせる。

ロビンソンは、容疑者を捜して地道な捜査を始めるのだが、マスコミが煽り立てる情報で、黒のコートと淡い色の帽子というだけで、犯人らしき者は虱潰しに警察に逮捕された。

加熱の一途をたどる犯人捜しだったが、町を3日前に出て、拳銃を所持した男がオハイオ州で拘束されたという連絡が入る。

その男ジョン・ウォルドロン(アーサー・ケネディ)を署に連行したロビンソンは、目撃者の面通しで確認させ拘束する。

ロビンソンとホワイトは、徹夜でウォルドロンを尋問し、彼がランバート神父と会っていたことが分かる。

職を探して神父を訪ねたウォルドロンは、パンフレットを渡されただけでその場を去ったことを話す。

ウォルドロンのアリバイを知るはずの、元恋人アイリーン・ネルソン(カーラ・ウィリアムズ)も、彼に不利な証言をして立ち去る。

ハーヴェイが、ウォルドロンの拳銃と犯行の銃が一致したことをロビンソンに伝え、ついに彼は犯行を自白してしまう。

その後、早急に裁判の準備が始められ、審問が行われ事件は地方裁判所に移される。

ウォルドロンに面会したハーヴェイは、尚も無実だと言い張り、自白も強要されたという容疑者の様子が気になる。

そして裁判が始まり、多くの証拠から、被告ウォルドロンが有罪であることが明らかだと、検事のハーヴェイは陳述する。

しかし、先入観を捨てた公平な調査から、ハーヴェイはウォルドロンの無罪を主張し起訴を取り下げてしまう。

法廷は騒然となり判事は休廷を告げ、ウォルドロンをリンチにかけようとする住民だったが、警察が彼を守ろうとする。

帰宅して、妻マッジ(ジェーン・ワイアット)に迎えられたハーヴェイを、知事選出馬を持ちかけてきていた議員ポール・ハリス(エド・ベグリー)が待ち構えていた。

次期選挙に勝つためには、ウォルドロンを有罪にしなければならないというハリスを、政治の圧力に嫌気がさしていたハーヴェイは追い出そうとする。

不動産業も営むハリスは、利権が絡む市の土地買収計画がなくなれば、自分が破滅することをハーヴェイに伝える。

ハリスはハーヴェイに銃を向け、彼の妻マッジも自分の開発計画に出資していることを告げ、スキャンダルになると脅す。

ハーヴェイはハリスが帰った後、マッジに彼への投資のことを聞き、知事の公邸に住みたくないか彼女に尋ねる。

その後ハーヴェイは、事件のことには疑問が残ると答え、苦悩する胸の内をマッジに伝える。

翌日、法廷は再開され、ハーヴェイは前日の意見を修正し、再び証拠などを確認しようとする。

ハーヴェイは疑問点を一つずつチェックし、スタッフを使った綿密な事件の再現で、犯人役の者の顔が確認できなかった事実を語る。

さらにハーヴェイは、ウォルドロンを見かけたという元恋人アイリーンを証言台に座らせる。

そしてハーヴェイは、アイリーンのいたカフェからは、通りの通行人の顔が確認できなかったことと、彼女が8000ドルの懸賞金の手続きをしていたことを問い詰め、証言の曖昧さを認めさせる。

他の目撃証言の不確実さも立証したハーヴェイは、被告ウォルドロンの自白を強要した精神科医と、ロビンソンも証言台に座らせる。

法廷内では、ハリスの不正を嗅ぎつけた”モーニング・レコード”の記者デイヴ・ウッズ(サム・レヴェン)が、傍聴席の彼に口止め料を要求しようとするメモを渡す。

ハーヴェイは、神父の頭から摘出された銃弾を、専門家の協力で徹底的に調べ、ウォルドロンの銃から発射されていないことを証明する。

ウォルドロンの拳銃を取り出したハーヴェイは、判事に実弾を込めさせ、助手に事件を再現させ自分を銃撃させる。

しかし、その銃は撃針が壊れていて、銃弾を発射するのが不可能だった。

傍聴席からは、ハーヴェイの命がけの実証に拍手が起きるが、直後に銃声がして、ハリスが床に崩れ落ちる。

裁判は終わり、政治的な圧力に屈しなかったハーヴェイを”モーニング・レコード”のウェイドは評価する。

ロビンソンもハーヴェイの見事な検証を称え、彼を政治家呼ばわりし非難したことを謝罪する。

ウォルドロンは釈放され、ハーヴェイに感謝し法廷を去っていく。

その後、生前のランバート神父に叱責されたことがあるジム・クロスマン(フィリップ・クーリッジ)が、不審な事故で死亡する。

事件は未解決のまま、自由の身になったウォルドロンを、未だに犯人だと信じる者もいる。
__________

検事のヘンリー・L・ハーヴェイのモデルは、コネチカット州出身の弁護士ホーマー・S・カミングスである。

カミングス弁護士は州知事にはならず、1933年、第55代司法長官ルーズベルト大統領から任命される。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ある平和な町で、人望ある神父のランバートが人通りも多い通りで射殺される事件が起きる。
犯人捜査は難航し、市や警察が焦る中、拳銃を所持していたウォルドロンという男が逮捕される。
ウォルドロンは、自白を強要されて、裁判では有罪が確実視される。
しかし、慎重に検証を進めた検事ヘンリー・L・ハーヴェイは、訴える身でありながら、容疑者ウォルドロンの犯行を立証できず、起訴を取り下げてしまう。
やがて、事件の裏に、怨恨と思われる政治や利権の絡む策謀が見え隠れし始める・・・。
__________

殺人と、その容疑者の冤罪事件を中心に、それに関る政治家対マスコミの泥仕合や権力の圧力の犠牲になる弱者、そして、それらに立ち向かう者達の人間模様を鋭く描いた、エリア・カザン快心の社会派ドラマの秀作。

エリア・カザン自身は、同年の11月に公開される、同じ社会派ドラマの傑作「紳士協定」で、初のアカデミー監督賞を受賞することになる。

ニュース・フィルムを巧みに使用したセミ・ドキュメンタリー・タッチは新鮮味があり、実話の緊迫感を一層高めている。

第20回アカデミー賞では、脚本賞にノミネートされた。

前半は、政治家や警察、そしてマスコミのプライドを懸けた”権力闘争”のような展開で、後半は、そのいずれにも関る検事の、正義を証明する闘いを描く、密度の濃いドラマ内容となっている。

序盤は事件にやんわりと関与する程度なので、主役として物足りなさを感じていると、後半は、展開を一手に引き受けドラマの舵を取るダナ・アンドリュースは、公開当時、存命の司法長官ホーマー・S・カミングスがモデルだけに、その実直な人柄と、正義感ある役柄を見事に演じている。

前半の主役と言っていい、難航する捜査に苦悩する警部を好演するリー・J・コッブ、主人公の妻ジェーン・ワイアット、無実の罪で逮捕される容疑者を熱演するアーサー・ケネディ、その元恋人でありながら、懸賞金欲しさに容疑者を陥れるカーラ・ウィリアムズ、新聞社社主テイラー・ホームズ、用意周到な同社の記者サム・レヴェン、利権絡みの開発計画に関与し自滅してしまうエド・ベグリー、警部補でまだ若いカール・マルデン、真犯人だったのかが謎の、事故死するフィリップ・クーリッジ、そして、被害者の神父役ワイリー・バーチなどが共演している。


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