故郷に戻った大学生が興味を持った事件に巻き込まれる姿を描く、鬼才デヴィッド・リンチ監督、脚本、主演カイル・マクラクラン、イザベラ・ロッセリーニ、デニス・ホッパー、ローラ・ダーン他共演によるサスペンスの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:デヴィッド・リンチ
製作総指揮:リチャード・ロス
製作:フレッド・カルーソ
脚本:デヴィッド・リンチ
撮影:フレデリック・エルムス
編集:ドウェイン・ダンハム
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
出演
ジェフリー・ボーモント:カイル・マクラクラン
ドロシー・ヴァレンズ:イザベラ・ロッセリーニ
フランク・ブース:デニス・ホッパー
サンディ・ウィリアムズ:ローラ・ダーン
ジョン・ウィリアムズ:ジョージ・ディッカーソン
エイリアムズ夫人:ホープ・ラング
ベン:ディーン・ストックウェル
レイモンド:ブラッド・ドゥーリフ
ポール:ジャック・ナンス
アメリカ 映画
配給 De Laurentiis Entertainment Group
1986年製作 120分
公開
北米:1986年9月19日
日本:1987年5月2日
製作費 $6,000,000
北米興行収入 $8,551,230
■ アカデミー賞 ■
第59回アカデミー賞
・ノミネート
監督賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ノース・カロライナ州、ランバートン。
のどかな田舎町に、大学生のジェフリー・ボーモント(カイル・マクラクラン)が帰郷する。
ジェフリーは、庭で倒れた父を見舞い、帰りに、野原で人の片耳を発見して、それを、警察のジョン・ウィリアムズ刑事(ジョージ・ディッカーソン)に渡す。
検視官がそれを調べ、耳を切断された者が生きている可能性も分かり、その発見場所で捜査が始まる。
事件に興味を持ったジェフリーは、その夜、ウィリアムズの家を訪ね、帰り際に、彼の娘のサンディ(ローラ・ダーン)に呼び止められる。
父ジョンの話声を聞いていたサンディは、ある女性歌手の名前が出たことをジェフリーに伝え、二人は、彼女が住むアパートに向かう。
その場所だけを確認した二人は、帰り道で意気投合する。
父の経営する金物店を手伝い始めたジェフリーは、高校生のサンディを誘う。
ジェフリーは、アパートの女性ドロシー・ヴァレンズ(イザベラ・ロッセリーニ)の部屋に忍び込むために、サンディに協力を求める。 害虫駆除業者を装い、ドロシーの部屋に向かったジェフリーは、疑われることもなく作業を始めて、ある鍵を持ち去る。 サンディが宗教の勧誘で部屋に現れるはずだったが、男が現れたためにそれができず、ジェフリーはその夜、アパートに忍び込むことを決めて、彼女も手伝うことになる。 ドロシーのクラブで食事をした二人は、彼女の歌う”ブルー・ベルベット”を聴き、その後、アパートに向かい、サンディが見張りをしてジェフリーが鍵を使い彼女の部屋に忍び込む。 間もなくドロシーが戻ってきたため、サンディがジェフリーにクラクションで合図をするが、彼はトイレを流した音でそれが聞こえない。 ドロシーが戻ったことに気づいたジェフリーは、クローゼットに隠れて様子を窺う。 ”フランク”という男からの、電話を受けたドロシーは動揺するが、ジェフリーに気づき、ナイフで脅して名前を聞き出す。 その後ドロシーは、ジェフリーに服を脱ぐように命じて愛撫し始めるが、誰かが来たために、彼にクローゼットに隠れるよう指示する。 現れたフランク・ブース(デニス・ホッパー)は、卑猥な言葉を口にしてドロシーを罵り、酸素吸入器を使い、青いベルベットを咥えながら彼女を犯す。 フランクが帰った後、ドロシーを気遣ったジェフリーは、彼女には夫と息子がいるらしいことを知る。 翌日の夜、サンディと会ったジェフリーは、ドロシーの夫と息子が、フランクに監禁されていることを伝える。 ドロシーの体が目的のフランクは、抵抗した夫の耳を切ったのだった。 ドロシーの元に向かったジェフリーは、お互いが惹かれ合っていることを確認して愛し合う。 ある夜ジェフリーは、クラブでドロシーの歌を聴いたフランクが店を出た後をつけて、彼の住まいを見つける。 翌日、サンディに会ったジェフリーは、フランクが、ドロシーの部屋に現れた男と会っていたことを話す。 その後その男は、ある男と共に工場に向かい、麻薬の密売人の殺人現場を見ていたことも話す。 ジェフリーは、サンディに好意を寄せていることを態度で示してキスした後、ドロシーのアパートに向かい彼女と愛し合う。 何もかも知っているというたジェフリーが、それを警察に報告すると言ったために、ドロシーは取り乱しそうになりながらも二人は再び愛し合う。 しかし、帰り際に、ジェフリーはフランクに見つかってしまい、ドロシーと共に、ゲイのベン(ディーン・ストックウェル)の家に連れて行かれる。 フランクは、ドロシーをそこに囚われている息子に会わせて、早々に引き上げる。 車の中で逆らったジェフリーは、車を止めたフランクに痛めつけられる。 翌朝、置き去りにされて目覚めたジェフリーは、家に戻り、連れ去られたドロシーを想いながら涙する。 サンディと電話で話したジェフリーは、今回の件を、彼女の父ウィリアムズに話すことを伝える。 警察に向かったジェフリーだったが、そこに、フランクと会った男がいたために驚いてしまう。 ジェフリーは、麻薬の密売人の殺害現場にいた、その男”ゴードン”が、麻薬を全て奪ったというフランクの話を思い出してその場を去る。 ウィリアムズ刑事の自宅を訪ねたジェフリーは、自分が調べた監禁事件ことを話し、同僚のゴードンが映った写真を見せる。 ジェフリーは、サンディは何も知らないと言い残してその場を去るが、ウィリアムズは娘の身を案ずる。 数日後、サンディをデートに誘ったジェフリーは、ウィリアムズを迎えに来たゴードンを見て驚く。 ジェフリーとサンディは、パーティーに行った帰りに、彼女のボーイフレンドに追われる。 しかし、ジェフリーの家から全裸のドロシーが現れたため、彼とサンディは彼女を介抱する。 サンディは、ドロシーを自宅に連れて行き、母親(ホープ・ラング)に救急車を呼んでもらう。 しかしサンディは、ジェフリーとドロシーの様子から、二人が愛し合っているいることを知りショックを受ける。 ジェフリーに失望したサンディだったが、愛している彼を許し、父にドロシーのアパートにお向かうよう連絡を入れようとするがつかまらない。 ドロシーの部屋に向かったジェフリーは、ゴードンと耳のない男の死体発見して、警察に任せようと考えその場を立ち去る。 変装したフランクが現れたことに気づいたジェフリーは、部屋に戻り、ゴードンの無線でウィリアムズを呼び寄せる。 ゴードンの拳銃を手にしたジェフリーは、自分に気づいたフランクを、クローゼットの中から射殺する。 その直後に、サンディと共にウィリアムズが現れ、事件が解決したことをジェフリーに伝える。 サンディとジェフリーは、その場で愛を確かめ合う。 町には平和が戻り、ジェフリーとサンディは、家族を含めた親交を深める。 そして、ドロシーは、息子を取り戻して幸せを実感する。
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*(簡略ストー リー)
ノース・カロライナ州、ランバートン。
大学生ジェフリー・ボーモントは、父親が倒れたことを知り、帰郷して家業の金物店を継ぐことになる。
父を見舞った帰り道、ジェフリーは人の耳を発見して、警察のウィリアムズ刑事に渡し、捜査は始まる。
ジェフリーは、ウィリアムズの娘サンディから、女性歌手ドロシーが事件に関係していることを聞き、彼女のアパートに忍び込む方法を考える。
サンディとの親交を深めながら、ジェフリーは、彼女の協力で、ドロシーの部屋に忍び込むことに成功するものの見つかってしまう。
そこに現れたフランクという男は、卑猥な言葉を口にしてドロシーを罵り、酸素吸入器を使い、青いベルベットを咥えながら彼女を犯す。
それを隠れて見ていたジェフリーは、ドロシーの夫と息子が、彼女との関係を強要するフランクに監禁され、耳が、抵抗して切り落とされた夫のものだということを知る。
その後、ジェフリーは事件を調べながら、ドロシーに惹かれ、やがて二人は愛し合うようになるのだが・・・。
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ゆったりした、ボビー・ヴィントンの甘い歌声と共に映し出される冒頭の花壇のシーン、のどかな町の風景から一転、いきなり登場する草むらの多数の虫、切除された人の耳、脅迫や暴力、狂気の犯人像を強烈に印象付ける、退廃的な映像の連続・・・。
単に、カルト・ムービーの鬼才と言う言葉では片づけられない、デヴィッド・リンチの感性や映像感覚には驚かされるばかりだ。
全体的な仕上りも丁寧で完成度も高く、批評家の評価も非常に高い作品。
第59回アカデミー賞では、デヴィッド・リンチが監督賞にノミネートされた。
主人公を圧倒する存在、病的な悪党を演ずるデニス・ホッパーは、本作をきっかけに、2か月後に公開される「勝利への旅立ち」(1986)でアカデミー助演賞候補になり、復活した作品として印象深い。
度々セリフにも出てくるが、整った顔立ちが印象的な、デヴィッド・リンチの申し子とも言える主人公カイル・マクラクラン、デヴィッド・リンチの世界観、”官能と倒錯”の象徴的存在である女性歌手イザベラ・ロッセリーニ、主人公と愛し合うようになる協力者ローラ・ダーン、その父親である刑事ジョージ・ディッカーソン、その妻で、懐かしいホープ・ラング、人質を預かるゲイ、ディーン・ストックウェル、フランク(D・ホッパー)の手下でブラッド・ドゥーリフ、「イレイザーヘッド」(1977)の主人公を演じたジャック・ナンスなども共演している。