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東京スパイ大作戦 Blood on the Sun (1945)

田中上奏文”の流布に関する日本政府の対応とその陰謀に巻き込まれるアメリカ人記者の活躍を描く、監督フランク・ロイド、主演ジェームズ・キャグニーシルヴィア・シドニーポーター・ホールジョン・エメリーロバート・アームストロング他共演のサスペンス。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト
監督:フランク・ロイド

製作:ウィリアム・キャグニー
原案:ギャレット・フォート
脚本:レスター・コール
撮影:セオドア・スパークル
編集:ウォルター・ハネマン
美術・装置
ウィラード・イーネン
A.ローランドフィールズ
音楽:ミクロス・ローザ

出演
ニック・コンドン:ジェームズ・キャグニー
アイリス・ヒリアード:シルヴィア・シドニー
アーサー・ビケット:ポーター・ホール
田中義一首相:ジョン・エメリー
東條英機陸軍大佐:ロバート・アームストロング
オリヴァー”オリー”ミラー:ウォレス・フォード
イーディス・ミラー:ローズマリー・デキャンプ
オオシマ警部:ジョン・ハローラン
ヒジカタ:レオナルド・ストロング
チャーリー・スプレイグ:ジェームズ・ベル
ヤマダ警部長:マーヴィン・ミラー
ジョセフ・カッセル:リス・ウィリアムズ
タツギ殿下:フランク・プーリア
ジョニー・クラーク:ヒュー・ボーモント
ジョンソン:エメット・ヴォーガン

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1945年製作 94分
公開
北米:1945年4月26日
日本:未公開
製作費 $750,000
北米興行収入 $3,400,000


アカデミー賞
第18回アカデミー賞

・受賞
美術賞(白黒)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
世界でドイツの”我が闘争”が注目されていたころ、東洋のヒトラー田中義一”の存在を知るものは少なかった。

東京。
田中義一首相(ジョン・エメリー)がアメリカ侵攻を計画しているという文章が見つかり、それが報道される。

東京クロニクル。
その記事について日本側からの抗議を受けた編集長のアーサー・ビケット(ポーター・ホール)は、25年間、日本政府を支持してきたことを伝える。

オオシマ警部(ジョン・ハローラン)から、日本の名誉を傷つけた検閲無視だと言われたビケットは、編集局長のニック・コンドン(ジェームズ・キャグニー)に確認しようとする。
...全てを見る(結末あり)

記者のチャーリー・スプレイグ(ジェームズ・ベル)から、ニックが外出したことを知らされたビケットは、呼び戻すよう指示する。

柔道の練習後に入浴していたニックは、ビケットと共に現れたオオシマらから、情報提供者を教えることを強要される。

それがアメリカのマスコミであり、既に報道されていると言うニックは、日本のイメージを傷つけたりしないことを伝えて納得させる。

今後のことを心配するビケットから、記事を撤回しろと言われるものの気にしないニックは、同僚のオリヴァー”オリー”ミラー(ウォレス・フォード)に調べさせると伝えて彼を捜す。

バーに向かったニックは、上海から来た記者ジョセフ・カッセル(リス・ウィリアムズ)を紹介され、記事の件について話す。

ニックは、国内問題から関心をそらすために、中国が反日に傾いていると言うカッセルの話を聞く。

そこに酔ったオリーが現れ、大金を手に入れた彼は、仕事を辞めて船で帰国することを友人らに伝える。

ニックから金の出所を訊かれたオリーは適当に答え、妻イーディス(ローズマリー・デキャンプ)と共にナガタ丸で帰国することを伝える。

この国は危険だと言うオリーは、自分たちのことを心配するコンドンに、今夜、船の部屋に来るようにと伝えてその場を去る。

その様子を監視していた秘密警察のヒジカタ(レオナルド・ストロング)は、オリーのことを電話でオオシマに伝える。

ニックはオリーのアパートに向かい、帰国の準備をするイーディスと話し、オリーからは金についての詳しい説明がないことを知る。

本を書く契約で印税を前払いされたらしいというイーディスは、理由はともかく、帰国できればいいとニックに伝える。

心配しているだけだと言うニックは、今夜、船で会うことをイーディスに約束して立ち去る。

その夜、船に向かったニックは、その場にいたオオシマやヒジカタらに声をかけられ、ミラー夫妻に会いに来ただけだと伝えて乗船する。

警官が出てきたことを気にしながら船室に向かったニックは、荒らされた部屋でイーディスが殺されていることを知り驚く。

その場から逃げる女(シルヴィア・シドニー)を捕らえようとしたニックは、ドア越しに彼女の指輪を確認する。

船員に手を掴まれたニックは、彼を殴り倒して女を追うものの、車で逃げられる。

チャーリーに電話をしたニックは、大使に連絡するよう指示し、オリーが自分を捜していたことを知る。

オリーが自分の家に行ったことを知ったニックは、電話を切って急行する。

銃撃され倒れたオリーをベッドに運んだニックは、瀕死の彼から、田中の計画が書かれた文章(田中上奏文)が入っている封筒を受け取る。

イーディスの死を知らないオリーは、彼女によろしく言ってほしいとニックに伝えて息を引き取る。

その様子を、船にいた女アイリス・ヒリアードが目撃していた。

ニックは、封筒を”昭和天皇”の肖像画の裏に隠す。

そこにヒジカタとオオシマが現れ部屋に押し入り、オリーの遺体を確認して家宅捜索を始める。

天皇陛下の肖像画を保護したオオシマは、何も見つけられず、話を聞くためにニックを警察署に連行しようとする。

ヤマダ警部長(マーヴィン・ミラー)は友人だと言うニックは抵抗するが、オオシマに殴られて記を失う。

留置場から出されニックは、ヤマダと話をする。

パーティーを開き騒ぎを起こし、近所の苦情と警察の警告を無視し、2人の女性と過ごし、酔って警官を追い出そうとしたため、逮捕して留置所に入れたと言われたニックは、不思議に思いながら釈放されることになる。

チャーリーに電話をしたニックは、カメラを持って迎えに来てほしいと伝える。

現われたオオシマに、昨夜アメリカ人を2人殺したはずだと伝えたニックだったが、ヒジカタから、家族と桜を見に行ったと言われ、その場は納得して立ち去る。

チャーリーと共に家に向かったニックは、荒れていたはずの部屋はすべて元に戻され、封筒はなくなっていることを確認する。

外務省のハヤシが現れ、ニックは田中首相の元に向かうことになる。

田中と話していた皇族のタツギ殿下(フランク・プーリア)は、その場にいたアイリスが去ろうとしたために引き止める。

東條英機陸軍大佐(ロバート・アームストロング)に関係する仕事にアイリスを巻き込んでしまったと言う田中は、その件を尋ねる殿下に、東條の考えに同意していると伝える。

殺された女性(イーディス)の所持品を調べさせたアイリスから、もうしたくない仕事だと言われた田中は、二度とさせないことを約束する。

その場を去ったアイリスのことを殿下から訊かれた田中は、母親が中国人だと伝える。

計画は既に天皇陛下に伝えてあると言う田中は、今後を不安視する殿下に、軍事力の必要性を説くものの、日本を破滅に導く考えだと言う殿下と意見が食い違う。

ハヤシに案内されたニックは田中の元に向かい、東條と秘密警察のカジオカを紹介される。

東條から記事はデマだと言われたニックは、世界制覇の考えを否定する田中から、そのデマが広がれば抑え込むことができなくなると言われ彼の考えを探る。

カジオカは、偽装文書をオリーが国外に持ち出す計画に気づいたため、行動を起こしたことをニックに伝える。

強引に取り戻すこともできると言う田中は、オリーを説得することをニックに頼もうとする。

オリーと妻は昨夜、殺されたと伝えたニックは、2人が乗船しているという、ナガタ丸の船長からの電報を見せられる。

文章を取り戻すために田中が多額の金をオリーに渡したことを知ったニックは、2人を殺したオオシマとヒジカタが、有罪判決を受けたとアメリカ大使館に伝わった時に文章が出てくるかもしれないと言ってその場を去る。

その後、バーにいたニックは、現われたチャーリーから辞職する理由を訊かれ、大使館の指示でワシントンD.C.に向かわされることを伝える。

その場にヒジカタがいることに気づいたニックは、大使館が身の安全を保障してくれたと言いながら、自分が10日後に出国するという記事を書くようチャーリーに指示する。

そうすれば、文章を持っているものが連絡してくる可能性があると言うニックは、心配するチャーリーに後のことを任せる。

そこに、アイリスと共にカッセルが現れ、ニックは、上海から来たという彼女を紹介される。

昨夜、船で着いたアイリスを疑ったニックは、彼女がはめている指輪を確認するものの、オリーの部屋で見た女のものとは違っていた。

カッセルは席を外し、自分に興味があると言うアイリスを牽制するニックは、上海の友人チャン・プーリンに紹介されたことを知る。

10日後に発つことをアイリスに伝えたニックは、彼女と楽しむことにする。

田中の元に向かったアイリスは、その場にいた東條とカジオカに、ニックに気に入られたことを伝える。

旅立つ予定のニックが文章を持っていると考える東條は、アイリスがそれを探るつもりであることを確認する。

翌日、オフィスにいたニックは、外務省のハヤシを見かけたために、カッセルを自分の後任に考えるビケットが、日本側の要請を受け入れたと考える。

カッセルが腹黒い男だということを知っていたニックは、後任はチャーリーにするようにと言って出かける。

アイリスを誘い食事することにしたニックは、尾行するヒジカタをからかい、日本料理店に向かう。

チャン・プーリンのために、仕事で日本女性を研究していると言うアイリスは、抑圧されている女性を助けるのが目的だとニックに話す。

アイリスは、日本の女性が変われば、田中東條を止められる可能性があると考え、ニックは、しつこいヒジカタがいることに気づく。

店を出たニックはアイリスの部屋に向かい、追ってきたヒジカタを再びからかう。

ヒジカタは、オオシマがいる隣りの部屋に向かう。

惹かれ合うようになったニックとアイリスは、楽しい時間を過ごす。

中国を騙した男として、自分を非難する記事をニックに書かれたカッセルは東條の元に向かい、指示通りにしたにも拘らず、評判を落としたことで困惑する。

政府は関りがなかったことにすると言われたカッセルは、東條に意見を聞いてもらえなかった。

ニックに会ったカッセルは、中国を友好的に思っていると伝えて、話を聞こうとしない彼を買収しようとする。

カッセルがアイリスを紹介したのは田中のためだと知ったニックは、母国を売ったと言われたために彼を殴り倒す。

アイリスの元に向かったニックは、宝石箱にあった例の夜の指輪を見つけ、田中と組み自分を騙した彼女を非難し、カッセルがすべてを話したことを伝える。

イーディスを殺したと言われたアイリスはそれを否定し、犯人の名前を訊くニックに、いくらなら文章を売るか尋ねる。

持っている文章に命をかけられると言うニックの言葉を信じないアイリスは、自分が持っていることを伝えてそれを見せる。

オオシマとヒジカタは、2人の会話を盗聴していた。

オリーが襲われた日に現場にいたアイリスは、天皇陛下の肖像画の裏にあった文章を奪ったことをニックに伝える。

田中の狙いは世界征服だと言うアイリスは、文章を中国とアメリカに届ける必要があると考える。

偽造か陰謀と思われる可能性があるため、真実と思わせる方法を考えるニックは、アイリスから、政府内部の者の署名をもらえると言われ、それを信じる。

アイリスは、中国のために使命を果たしたいとニックに伝える。

訪ねて来た田中と話したアイリスは、文章は既に手に入れているのではないかと訊かれ、政治や陰謀には関わりたくないと伝える。

それを聞き入れた田中はアイリスにネックレスを贈り、ユダの銀貨と同じで裏切りの報酬だと言って、殺しはしないと伝える。

東條には裏切りも計画の一部だと言ってあるとアイリスに伝えた田中は、内部の協力者の名前を聞き出そうとする。

2時間の猶予を与えた田中は、話さなければ身柄を東條渡すとアイリスに伝えて脅し、その場を去る。

東京クロニクルに電話をしたアイリスだったが、田中意外にはつなげてもらえなかった。

その後、連絡がないため、田中は、苦痛を与えながらアイリスを処刑するよう東條に指示する。

計画の失敗を認めた田中は、天皇陛下の名誉を傷つけた責任を取ることを東條に伝える。

計画を東條とヤマモト大尉に任せた田中は、2人にそれを遂行することを誓わせる。

その後、田中は、東條とヤマモトの前で自害する。

カッセルに電話をした東條は、名誉挽回のチャンスを与えて、彼に記事を書かせる。

カッセルの記事を読んだニックは、チャーリーと共に連絡が取れないアイリスの元に向かう。

アイリスの姿はなく、ニックは彼女が逃げたと考える。

その後、出発の準備をしたニックは、荷物を運び出す運送屋から、アイリスのメモを渡される。

アイリスが波止場で待つというメモを確認したニックは、チャーリーから行くべきではないと言われるものの、彼女を見捨てるわけには行かなかった。

そこに大使館のジョニー・クラーク(ヒュー・ボーモント)が現れ、ニックは、匿名で電話があったことを知る。

スパイ容疑で逮捕状が出ているため、港まで送ると言われたニックは、一人でその場を去る。

ヒジカタは、車で出かけたニックを追う。

尾行をまいたニックは、アイリスの使用人にある場所に案内される。

その場にいたアイリスを信じたニックは、彼女と共にタツギ殿下の元に向かい、文章に署名してもらう。

文章をニックに渡した殿下は、軍国主義の下で勝つよりは負ける方がいいと伝えて、彼と握手してその場を去る。

アイリスにキスしたニックは、釣り船が港まで連れて行くので一緒に来てほしいと言われ、大使館に電話をしたのは彼女だと気づく。

タツギ殿下は、待ち構えていたオオシマに射殺される。

騒ぎに気づいたニックとアイリスは、迎えに来た釣り船に乗ろうとする。

文章をアイリスに渡したニックは、追っ手を食い止めると伝える。

ニックは、一緒に逃げるつもりのアイリスに、使命を果たすようにと言って説得し、港に向かわせる。

現われたオオシマに銃を向けられたニックは、男らしく素手で戦えと言って挑発する。

オリーとイーディスを殺したことを認めたオオシマは、銃を捨ててニックと格闘になる。

ニックに叩きのめされたオオシマは、海に落下する。

警官に追われたニックはそれを振り切り、ヒジカタに銃を向けられるものの、トラックに飛び乗り姿を消す。

ヒジカタからの連絡を受けたヤマダは、ニックが現われると思われるアメリカ大使館の前で待機する。

トラックを降りたニックは、何人もの警官に囲まれるものの、大使館に向かう。

発砲されたニックは走り出し、銃弾を受けて倒れる。

ニックに近づいたヤマダは、文章を見つけることができない。

そこにジョニーが現れ、ニックを銃撃したヤマダに、過失では済まされないと言って非難する。

ニックは敵だが日本人は寛容だと言うヤマダは、友好的に別れようとする。

互いに許し合おうと言って握手を求めるヤマダに対し、借りを返した後だと伝えたニックは、ジョニーと共に大使館に向かう。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
東京。
田中義一首相アメリカ侵攻を計画”なる文章が見つかったという記事を掲載した”東京クロニクル”の記者ニック・コンドンは、日本側か非難され監視されることになる。
帰国する同僚オリーと妻が殺され、それが文章と関係していると考えるニックに、謎の女アイリスが近づく。
上海から来たアイリスを牽制しながら親交を深めたニックは、田中首相、東條英機陸軍大佐が首謀する陰謀に巻き込まれていく・・・。
__________

2回のアカデミー監督賞を受賞しているフランク・ロイドの監督作品であり、製作は、主演のジェームズ・キャグニーの弟ウィリアム・キャグニーが担当した。

撮影が太平洋戦争末期の1944年10月に行われたため、軍拡に進んだ日本を、”悪者”として極端に描いている内容が気になる。

偽造文書である、日本が世界征服をするための計画書と言える”田中上奏文”を題材にした作品で、事実と大きく違う点が多々ある。
ドラマチックな演出として田中義一首相が切腹する場面が登場したり(死因:急性の狭心症)、東條英機太平洋戦争の最大の責任者と決めつるアメリカが悪魔のような人物に描いているのも、いかにもその時代を感じさせる。

戦争の当事国であるために現地で撮影できるはずもないが、描写される人物のメイクなどを含めた日本文化は、”コメディ”と言えるほど日本人にとっては違和感がある。
それでもセットなどは評価され、第18回アカデミー賞では美術賞(白黒)を受賞したというのだから、いかにアメリカが日本文化に興味がなかったかということが分かる。

主演のジェームズ・キャグニーは、柔道など格闘技なども披露する敏腕記者を存在感ある演技で熱演し、ヒロインのスパイを演ずるシルヴィア・シドニーは、中国人との混血の雰囲気を出し魅力的に演じている。
無駄のない軽快なジェームズ・キャグニーの身のこなしは観ていて痛快でもあり、クライマックスでの、日本人の設定にしては大柄な警部(ジョン・ハローラン)とアメリカ人としては小柄な彼との凄まじい迫力の格闘は見ものだ。

主人公の上司である編集長ポーター・ホール田中義一首相のジョン・エメリー東條英機陸軍大佐のロバート・アームストロング、主人公の同僚で陰謀に巻き込まれて殺されるウォレス・フォード、その妻ローズマリー・デキャンプ、主人公を監視する警部のジョン・ハローラン、同じく秘密警察のレオナルド・ストロング、主人公の同僚ジェームズ・ベル、警部長のマーヴィン・ミラー、日本側に協力する記者リス・ウィリアムズ、計画に批判的な皇族のフランク・プーリア、アメリカ大使館員ヒュー・ボーモント、記者のエメット・ヴォーガンなどが共演している。


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