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血と砂 Blood and Sand (1941)

1908年に発表された、ヴィセンテ・ブラスコ・イバニェスの小説”Blood and Sand/Sangre y arena”を基に製作された作品。
夢を叶え闘牛士として頂点に立った青年の波乱の人生と恋を描く、製作ダリル・F・ザナック、監督ルーベン・マムーリアン、主演タイロン・パワーリンダ・ダーネルリタ・ヘイワースアラ・ナジモヴァアンソニー・クインジョン・キャラダインリン・バリ他共演の恋愛ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ロマンス)

アンソニー・クイン / Anthony Quinn / Pinterest


スタッフ キャスト
監督:ルーベン・マムーリアン

製作
ダリル・F・ザナック
ロバート・ケイン
原作:ヴィセンテ・ブラスコ・イバニェス”Sangre y arena”
脚本:ジョー・スワーリング
撮影
アーネスト・パーマー
レイ・レナハン
編集:ロバート・ビスコフ
美術・装置
リチャードデイ
ジョセフ・C・ライト
トーマス・リトル
音楽:アルフレッド・ニューマン

出演
ファニーリョ”フアン”ギャラルド:タイロン・パワー
カルメン・エスピノーサ・ギャラルド:リンダ・ダーネル
ドーニャ・ソル・デス・ミューア:リタ・ヘイワース
アウグスティアス・ギャラルド:アラ・ナジモヴァ
マノロ・デ・パルマ:アンソニー・クイン
ガラバート:J・キャロル・ナイシュ
エンカルナシオン・ギャラルド:リン・バリ
ナシオナル:ジョン・キャラダイン
ナタリオ・クーロ:レアード・クレガー
アントニオ・ロペス:モンティ・バンクス
ギタリスト:ヴィンセンテ・ゴメス
ピエール・ローレン大尉:ジョージ・リーヴス
ドン・ホセ・アルバレス:ペドロ・デ・コルドバ
ペドロ・エスピノーサ:フォルトゥニオ・ボナノヴァ
司祭:ビクター・キリアン
パブロ・ゴメス:チャールズ・スティーヴンス
エンカルナシオン・ギャラルド(少女期):コラ・スー・コリンズ
フアン・ギャラルド(少年期):レックス・ダウニング
カルメン・エスピノーサ(少女期):アン・E・トッド

アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1941年製作 125分
公開
北米:1941年5月22日
日本:1952年1月4日
製作費 $1,115,200


アカデミー賞
第14回アカデミー賞

・受賞
撮影賞(カラー)
・ノミネート
美術賞(カラー)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
スペインセビリア
亡き父の後を継ぎ闘牛士になることを夢見る少年ファニーリョ”フアン”ギャラルド(レックス・ダウニング)は、掃除婦の母アウグスティアス(アラ・ナジモヴァ)と姉エンカルナシオン(コラ・スー・コリンズ)と共に貧しい暮らしをしていた。

夜中に部屋から抜け出し酒場に向かったフアンは、闘牛士のガラバート(J・キャロル・ナイシュ)を絶賛する批評家のナタリオ・クーロ(レアード・クレガー)が父を侮辱したために、酒瓶で彼の頭を殴る。

騒動になったその場から逃げたフアンは、郊外に向かい川を泳いで渡り、貴族ドン・ホセ・アルバレス(ペドロ・デ・コルドバ)の牧場に向かいう。

そこを管理するペドロ・エスピノーサ(フォルトゥニオ・ボナノヴァ)は、度々現れ牛を相手にするフアンに気づき、ドン・ホセは彼の演技に感心する。
...全てを見る(結末あり)

ペドロに呼ばれて注意されても気にしないフアンは、父のことを知っているドン・ホセと話す。

その様子を見ていたペドロの娘カルメン(アン・E・トッド)は、フアンと互いに惹かれ合う仲だった。

フアンの才能を見抜いたドン・ホセは、将来ぜひ代理人をやらせてほしいと彼に伝えてその場を去る。

カルメンと話したフアンは、父を侮辱した男を殺したためにマドリードに向かい、世界一になるまで戻らないと伝える。

富と名声を得て戻り結婚することを約束したフアンは、カルメンに別れを告げてその場を去る。

翌朝、町に戻ったフアンはエンカルナシオンに叱られ、それを気にすることなく、掃除をする母アウグスティアスと話をする。

闘牛士の妻として辛い思いをした母の気持ちを察しながらも、夢を諦める気のないフアンは、旅立つために仲間のマノロ・デ・パルマたちの元に向かう。

マドリードまで600kmもあるため、馬に乗り出発しようとしたフアンは、自分の馬だと言うマノロを叩きのめして納得させ、従うと言うセバスチャン、ルイス、パブロと共に旅立つ。

500kmほど来た地点で列車を止めたフアンは、機関士を説得して乗せてもらう。

10年後、夢を叶えて闘牛士となったフアン(タイロン・パワー)は、列車で故郷のセビリアに向かう。

同じ闘牛士のマノロ(アンソニー・クイン)やナシオナル(ジョン・キャラダイン)に、自分の記事が新聞に載っていることを伝えたフアンは、誰も読み書きができないために、乗客にそれを読んでもらう。

”新人(フアン)の長所は度胸だけで演技は自殺行為・・・”というクーロの批判記事を読んだ乗客は、絶賛している内容だとフアンに伝えて彼を喜ばせる。

気分を良くしたフアンは、駅に着いたためにその記事を持って列車を降りる。

ホームに集まる人々が自分を歓迎しているのではないことを知ったフアンは、迎えに来てくれた母アウグスティアスとの再会を喜ぶ。

その夜、町のパーティーに参加したマノロは独立を考えるが、ナシオナルらはフアンと別れる気はなかった。

姉エンカルナシオン(リン・バリ)と話したフアンは、婚約者のアントニオ・ロペス(モンティ・バンクス)が結婚を迷っていることを知り、商売を始めるための開業資金を結婚祝いで出すことを約束して、二人を喜ばせる。

二人の結婚を人々に発表したフアンは、皆に土産を配る。

大きな箱を持ってカルメンの元に向かおうとしたフアンは、今は落ちぶれたガラバートと再会し、助手にしてほしいと頼まれ、それを承諾する。

酒場に向かい楽団を引き連れたフアンは、カルメン(リンダ・ダーネル)の元に向かい話をする。

将来の希望を語るフアンは、クーロの新聞記事をカルメンに見せる。

その内容を見て驚いたカルメンは、記事を読んだのかフアンに尋ねる。

読んだと言うフアンが、実は読み書きができないことを知ったカルメンは、彼が手紙をよこさなかった理由を理解する。

それを読んでもらったフアンは、”新人の長所は度胸だけで演技は自殺行為・・・”という内容にショックを受け、結婚を迫るカルメンに、国で一番の闘牛士になって戻ってくると伝える。

贈り物がウェディングドレスだと知ったカルメンは喜び、フアンと抱き合う。

その後、カルメンと結婚したフアンは、闘牛士として頂点に立ち、ドン・ホセを代理人として富と名声を手に入れる。

クーロは、史上最高のマタドールだと言ってフアンを絶賛し、かつて瓶で殴られた傷も名誉だと彼に伝える。

ガラバートはフアンの助手として彼を支え、義兄アントニオは彼に出資していた。

今の地位を失えば、無学な自分から皆離れて行くとナシオナルから忠告されたフアンは動揺し、闘牛場に向かう前はいつも恐怖を感じることをガラバートに伝える。

観衆の前に出るとそれが消えるとガラバート伝えたフアンは、常に見守ってくれるカルメンとの愛を確かめる。

神に祈りを捧げ闘牛場に向かおうとしたフアンは、社交界の花形であるドーニャ・ソル・デス・ミューア(リタ・ヘイワース)が気になる。

観客席のクーロは、様々な噂が絶えないドーニャ・ソルがパリから戻ったことを知る。

恋人ピエール・ローレン大尉(ジョージ・リーヴス)と共に席に着いたドーニャ・ソルは、ドン・ホセからフアンの説明を受ける。

猛牛を相手に見事な演技を見せるフアンは、ドーニャ・ソルから花を受け取り、牛の死を国中の美女に捧げると言って、彼女に闘牛帽を投げ渡す。

フアンが牛を倒し止めを刺す姿を見た観客は熱狂し、ドーニャ・ソルも彼に惹かれる。

殺された牛は解体されて市民に配られ、その様子を見たナシオナルは闘牛に嫌気がさし、やめることを考える。

翌朝、”牛を美しい女性に捧げる・・・”と寝言を言うフアンを起こしたカルメンは、そのことを彼と話す。

名士たちといた女性のことを話したフアンは、君以上の人はいないとカルメンに伝えながら、闘牛帽がないと言われる。

どこかに忘れたと言うフアンは、ガラバートが持ってきた手紙をカルメンに読んでもらう。

牛を捧げた女性からだと言われたフアンは動揺し、闘牛帽を返すので来てほしいという招待だということを知る。

興味がないように見えるフアンに、住所からすると侯爵の屋敷なので取りに行くことを勧めたカルメンは、彼から行かないと言われる。

安心するカルメンの前で手紙を破ったフアンだったが、その夜、ドーニャ・ソルの屋敷に向かう。

ピエールや来客、そしてフアンと共に食事をしたドーニャ・ソルは、皆が友人のコンサートに向かおうとするものの、頭痛がすると言って遠慮する。

フアンと屋敷に残るドーニャ・ソルとは別れる時が来たと考えたピエールは、彼女に指輪を返してその場を去る。

フアンと話し、ギターを弾き歌うドーニャ・ソルは、彼が眠ってしまったために寝室に向かう。

夜中に目覚めたフアンは、ドーニャ・ソルが寝室で眠っていることに気づく。

翌日、カルメンに高価なネックレスをプレゼントしたフアンだったが、右手にはドーニャ・ソルの指輪がはめられていた。

その後、フアンはドーニャ・ソルの屋敷に入りびたりになり、カルメンは、そのことを話すエンカルナシオンとアントニオに、悪口は言われたくないと伝える。

フアンを非難する二人に激怒したカルメンは彼女らを追い払い、家から出て行きたいとアウグスティアスに伝える。

正しくない考えだと言うアウグスティアスは、フアンが牛の角に突かれるように祈っているのだが、それは闘牛士の末路から逃れさせるためだとカルメンに伝える。

母親を苦しめる男の子も生まれないように祈っていると言うアウグスティアスは、カルメンと共に祈りを捧げる。

聖母”ラ・マカレーナ”に祈りを捧げるカルメンは、ドーニャ・ソルをどうしたらいいのかを問う。

フアンを虜にしたドーニャ・ソルは、訪ねて来たカルメンを歓迎する。

非難しに来たのではないと言うカルメンは、自分は教養もなく家柄もよくないことを話す。

父はドン・ホセの牧場の管理人をすると伝えたカルメンは、何か国語も話し何人もの男を知っているドーニャ・ソルに、自分は母国語しか話せず夫しか知らないと伝える。

夫を失いたくないと言うカルメンは、このことはフアンは知らないとドーニャ・ソルに伝える。

ドーニャ・ソルに呼ばれたフアンが、彼女にキスする姿を見たカルメンは、自分に気づき動揺する彼の元を去る。

帰宅したフアンは、ベッドの上にネックレスを残し、カルメンが去ったことを知る。

牧場に向かい父の元に戻ったカルメンは、フアンのことを想う。

翌朝フアンは、起こしてくれたアウグスティアスから、口論となったガラバートを解雇したため、彼は去ったと言われる。

マノロに誘われて助手となったガラバートを非難するフアンは、アウグスティアスから、この家には借金取りしか来ないと言われて苛立つ。

訪ねて来たドン・ホセから、カルメンに会ってきたと言われたフアンは、彼女を愛していることを伝える。

ドン・ホセは、幼いころから知っているドーニャ・ソルのことを話す。

何一つ長続きしないドーニャ・ソルは、新しいおもちゃも飽きれば捨ててしまう少女だったと言うドン・ホセに、フアンは、仕事の話なら聞くが私事には口出すなと伝える。

憤慨したドン・ホセは、現れたアントニオに代理人を譲り、フアンの請求書を渡してその場を去る。

エンカルナシオンから浪費を非難されたフアンは、彼女とアントニオも追い出す。

今シーズンでやめるつもりだったナシオナルは、怯えるフアンに、恐怖に支配されているので銃で牛を殺せばいいと皮肉を言う。

憤慨したフアンはナシオナルを殴り、彼が出て行った後で、牛の剥製を銃撃する。

その後、牛に突かれたナシオナルは重傷を負い、苦しむ彼に寄り添うフアンは、自分は這いまわり血と砂にまみれたと言われる。

読み書きを学べなかったことを後悔するナシオナルは、自分はやめると言いながら、フアンに身守られて息を引き取る。

フアンを凌ぐマタドールとなったマノロは、酒場で、自分を絶賛するクーロの記事に気分を良くし、その場にいた彼に感謝する。

そこに、ドーニャ・ソルを伴ったフアンが現れる。

日曜の闘牛に来なかった理由をドーニャ・ソルに尋ねたフアンは、”頭痛”がしたと言う彼女の言葉が気になる。

二人のテーブルに向かったマノロは、ドーニャ・ソルに挨拶してフアンを牽制し、彼女の気を引く。

マノロに誘われたドーニャ・ソルは彼と踊り、その姿を見て憤慨したフアンは、指輪を捨てて店を出る。

それを拾ったマノロに自分の指輪だと伝えたドーニャ・ソルは、彼とテーブルに戻る。

帰宅したフアンは、アウグスティアスが床掃除をしていたために驚く。

やめさせようとするフアンに、これが自分の真の姿であり、去る時にはきれいにすると言うアウグスティアスは、明日、立ち退くと伝える。

闘牛士をやめてほしいと言うアウグスティアスは、今は頂点でもあとは下り坂だと伝えるものの、フアンは納得しない。

引っ越して最高の暮らしをすると言いながら、手が震えていることに気づいたアウグスティアスに同情されたフアンは戸惑う。

カフェにいたフアンは、隣の席で自分と父親を侮辱するクーロにワインを浴びせかけ、その場を去る。

日曜日、祈りを捧げたフアンは、その場にカルメンがいることに気づき、見捨てずに待っていたと言われる。

互いの愛を確認したフアンは、これで最後にして闘牛をやめることをカルメンに伝えて喜ばせる。

フアンは闘牛場に向かい、カルメンは祈りを捧げる。

登場したフアンは、観客にブーイングで迎えられる。

一方、ドーニャ・ソルは、ロマノの雄姿を見守る。

牛に立ち向かうフアンは、見事な演技で観衆を魅了し、クーロやドーニャ・ソルも彼に拍手を送る。

観衆の声援に応えるフアンだったが、背後から牛に突かれてしまい、場内は騒然となる。

重傷を負い運ばれるフアンを見つめながら、ガラバートは、ケダモノは観衆だと言って嘆く。

カルメンに回復すると伝えたフアンは、牧場を買い母と共に暮らすつもりだと話す。

一緒に暮らせるなら小さい牧場でいいと言うカルメンに、読み書きを教えてほしいと伝えたフアンは、彼女に見守られながら息を引き取る。

司祭(ビクター・キリアン)から勇気を持つようにと言われたカルメンは、その必要はない、フアンの勇気を持ち続けると伝える。

カルメンは、初めて出会った時のまま、フアンは自分の中で永遠に生き続けると司祭に伝える。

見事な演技を見せてドーニャ・ソルやクーロ、そして観衆の声援に応えるマノロの足元の砂は、フアンの血で染まっていた。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
スペインセビリア
亡き父の後を継ぎ闘牛士になることを夢見る少年ファニーリョ”フアン”ギャラルドは、心を寄せる少女カルメンに、富と名声を得て戻り結婚することを約束してマドリードに旅立つ。
10年後、友人マノロやナシオナルと共に闘牛士となったフアンはセビリアに戻る。
そして、約束通りカルメンと結婚したフアンは、闘牛士として頂点に立つ。
そんなフアンの前に、社交界の花形であるドーニャ・ソルが現れ、彼はその美貌の虜になってしまう・・・。
__________

スペインの世界的な小説家ヴィセンテ・ブラスコ・イバニェスの原作を基に、ダリル・F・ザナックが製作し、舞台、映画で活躍するグルジア(現ジョージア)出身のルーベン・マムーリアンが監督した作品。

父の後を継ぎ国内一の闘牛士になる夢を叶えた青年の波乱の人生を描く内容に加え、教養もなく世間も知らない主人公の悲哀なども、ルーベン・マムーリアンの繊細な演出が見どころの作品。

幼馴染との一途な愛と共に、主人公を惑わす貴婦人の存在などを含めた内容は、終盤に向かいメロドラマ・タッチとして展開する。

第14回アカデミー賞では、撮影賞(カラー)を受賞し、美術賞(カラー)にノミネートされた。

随所に効果的に挿入される哀愁漂う主題曲”愛のロマンス”は、後に「禁じられた遊び」(1952)でも使われたことで知られている。

主演のタイロン・パワーは、闘牛しか知らないために道を誤るものの、妻の愛に支えられながら短い人生を生き抜く青年を熱演している。

主人公を愛する妻を好演する、撮影当時17歳とは思えない大人の雰囲気漂う美しさのリンダ・ダーネル、魔性の女として主人公や男たちを惑わす妖艶な魅力のリタ・ヘイワース、主人公を見守る母親アラ・ナジモヴァ、主人公の幼馴染でありライバルとなる闘牛士を印象的に演ずるアンソニー・クイン、落ちぶれた闘牛士であり主人公の助手になるJ・キャロル・ナイシュ、主人公の姉リン・バリ、その夫モンティ・バンクス、主人公に人生を語る友人で闘牛士のジョン・キャラダイン、著名な批評家レアード・クレガー、ギタリストのヴィンセンテ・ゴメス、ドーニャ・ソル(リタ・ヘイワース)の恋人ジョージ・リーヴス、主人公の代理人である貴族のペドロ・デ・コルドバ、彼の牧場の管理人であるカルメン(リンダ・ダーネル)の父親フォルトゥニオ・ボナノヴァ、司祭のビクター・キリアン、主人公の友人チャールズ・スティーヴンス、主人公の姉の少女期コラ・スー・コリンズ、主人公の少年期レックス・ダウニング、カルメンの少女期アン・E・トッドなどが共演している。


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