サイトアイコン That's Movie Talk!

ブラック・サンデー Black Sunday (1977)

1975年に発表された、トマス・ハリスBlack Sunday”の小説を基に製作された作品。
スーパーボウルの大観衆の命を狙うパレスチナのテロ組織とイスラエルの諜報員の攻防を描く、監督ジョン・フランケンハイマー、主演ロバート・ショウブルース・ダーンマルト・ケラー他共演のサスペンス。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト
監督:ジョン・フランケンハイマー

製作:ロバート・エヴァンス
製作総指揮:ロバート・L・ローゼン
原作:トマス・ハリスBlack Sunday
脚本
アーネスト・レーマン
ケネス・ロス
アイヴァン・モファット
撮影:ジョン・A・アロンゾ
編集:トム・ロルフ
音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演
デイヴィッド・カバコフ少佐:ロバート・ショウ
マイケル・J・ランダー:ブルース・ダーン
ダリア・イヤッド:マルト・ケラー
サム・コーリー:フリッツ・ウィーヴァー
ロバート・モシェフスキー:スティーヴン・キーツ
オガワ:クライド・クサツ
ムハマド・ファジル:ベキム・フェーミュ
E・ムツァイ:マイケル・V・ガッツォ
ハロルド・ピュー:ウィリアム・ダニエルズ
リアト大佐:ウォルター・ゴテル
ナジーブ:ヴィクター・カンポス
ファウラー:ウォルター・ブルック
ファレリー:トム・マクファデン

アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1977年製作 143分
公開
北米:1977年4月1日
日本:未公開
北米興行収入 $15,769,320


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
11月12日、ベイルート
パレスチナの過激派組織”黒い九月”のメンバー、ダリア・イヤッド(マルト・ケラー)が空港に到着する。

ベトナム戦争中に捕虜だったアメリカ海軍パイロットのマイケル・J・ランダー少佐(ブルース・ダーン)に目を付けたダリアは、彼を自分に服従させる自信があることをムハマド・ファジル(ベキム・フェーミュ)やナジーブ(ヴィクター・カンポス)ら仲間達に伝える。

ライヅル・ダーツ(フレシェット)を使い、アメリカで人が集まる場所を攻撃すると言うダリアは、国民に自国の状況を知らせるため、明日、全世界に声明を発表することを伝える。

日本の過激派から、22万発ものダーツを調達するのは難しいが何とかすると言われたダリアは、マリア像(プラスチック爆弾)を渡される。
...全てを見る(結末あり)

その頃、モサドの特殊部隊を指揮するデイヴィッド・カバコフ少佐(ロバート・ショウ)らが現地入りする。

ナジーブと愛し合ったダリアは、アメリカを非難する声明の録音を始める。

カバコフらはダリアらのアジトに侵入し、その場にいた者達を容赦なく射殺する。

シャワーを浴びていたダリアを見逃したカバコフは、情報を入手して爆弾を仕掛けて、反撃を受けながらその場から逃げ去る。

無事だったダリアは、ランダーのフィルムは焼却したことを確認するが、録音テープの行方は分からなかった。

11月14日、ロサンゼルス
グッドイヤー”の飛行船パイロットのランダーは、NFLの試合の模様をネットワーク・テレビへ提供していた。

11月17日、ワシントンD.C.イスラエル大使館。
カバコフは、奪った録音テープ(ダリアの声明)をFBI捜査官のサム・コーリー(フリッツ・ウィーヴァー)らに聴かせる。

アメリカがイスラエルへの援助を止めるまで”黒い九月”が報復を続けるという、テロ後に出す声明だったとの見解をカバコフは伝える。

”新年の流血事件”という言葉に注目したカバコフは、今回の襲撃により、それを防げたのかという大使の質問に、声の主である女はまだ生きていると答える。

自分が見逃してしまったことを伝えたカバコフは、殺すべきだったと言って後悔する。

ロサンゼルス
入国してランダーの家に着いたダリアは、3日も遅れたことで動揺するランダーに銃を向けられる。

全て順調だと言うダリアは、聖母像に見せかけたプラスチック爆弾を渡し、間もなくそれが大量に到着すると伝えてランダーを落ち着かせる。

カバコフに同行したロバート・モシェフスキー(スティーヴン・キーツ)は、女の消息は依然不明で、アメリカに住み誰かと同居したこともあると考えられていることを報告する。

FBIに捜査を任せるとイスラエル側に言われたコーリーは、女の入国に関して調査し情報を集めようとする。

ダリアは、情緒不安定気味のランダーが、間違いを起こし計画を台無しにすることがないよう気を遣い、彼を復員局、軍人更生病院に向かわせる。

輸出入業者のE・ムツァイ(マイケル・V・ガッツォ)の元に向かったダリアは、聖母像の件について話をする。

待たされて医師ハロルド・ピュー(ウィリアム・ダニエルズ)と面会したランダーは、家族や離婚、そして退役した理由などを聞かれる。

離婚の理由を詳しく聞かれたランダーは、妻が浮気したことを話す。

11月22日、ワシントンD.C.
様々な情報を基に女を捜すカバコフらだったが、何も掴めなかった。

11月23日、ロングビーチ
貨物船”スマ丸”に向かったダリアとランダーは、船長のオガワ(クライド・クサツ)の協力で積み荷を降ろすが、沿岸警備隊に気づかれ、追跡されながらも逃れる。

カバコフとモシェフスキーと共にリビア籍船スマ丸を調べたコーリーは、異常ないことを確認する。

電話会社の作業員に扮したランダーは、船に細工をする。

その場にいたムツァイは、積荷がクリスマス用品だと話し、オガワやリビア領事は取り調べを拒否し、不審なボートの件も問題ないと伝える。

納得いかないモシェフスキーはFBIを批判して苛立つが、カバコフは冷静に対処する。

その夜、上陸したオガワの帰りを船で待っていたカバコフとモシェフスキーは、殺すと脅して彼から話を聞く。

カバコフはモシェフスキーに外で待つよう指示し、オガワは、受け取った金の流れやボートの男女のことなどを話す。

覆面を被っていたために特徴は分からず、男はアメリカ人で女は口をきかなかったことと、50~100キロの木箱を12個降ろしたことを、オガワはカバコフとモシェフスキーに伝える。

その時、電話に出たオガワは、仕掛けられていた爆弾で死亡する。

木箱の中のマリア像を確認していたダリアとランダーは、オガワの爆死事件のニュースをテレビで見て、その場にいたイスラエル国籍のカバコフが、ショック症状で病院に搬送されたことを知る。

回復したカバコフに会ったコーリーは、過激な手段に出ることに対して警告を発し、自分達に従えなければ国外退去させることを伝える。

モシェフスキーにも同じことを伝えたコーリーは、船長室から指紋は検出されなかったという連絡を受け、それをカバコフに知らせてその場を去る。

建国当時から戦い続けたカバコフは、何も変わらない世界を見てきたことで、自分の使命も終わったとモシェフスキーに伝える。

看護師に扮したダリアは病院に侵入し、カバコフのカルテを調べ、面会には報告が必要であることを知る。

襲撃で女を殺さなかったことを未だに後悔するカバコフに、今でも殺せるか分からないと言われたモシェフスキーは、コーリーと話し合い、こちらの言い分を聞かせると伝えてその場を去る。

カバコフの病室に入ろうとしたダリアに気づいたモシェフスキーは、彼女に声をかけて入室禁止だと伝える。

警備室に行って確認すると言うモシェフスキーは、それに従うダリアと共にエレベーターに乗る。

モシェフスキーを殺害したダリアは、その場から逃れる。

報告を受けたコーリーはカバコフの病室に向い、モシェフスキーが、変装した看護師に塩化カリウムを注射されて殺されたことを知らせる。

ショックを受けたカバコフは、友人だったモシェフスキーの遺体が祖国に戻るのを見守り、行動を開始する。

ムツァイのオフィスに押入ったカバコフは、船積明細書が偽造だったことを問い詰め、銃を向けて脅し、降ろされた木箱の中身がプラスチック爆弾であることを聞きだす。

女のことも聞かれたムツァイは、トリポリに住んでいるエジプト人の紹介だということも話す。

12月3日。
カリフォルニア州、モハーヴェ砂漠
軽飛行機である飛行場に着陸したランダーとダリアは、大企業の依頼で撮影に来たと言って、その場にいた男を実験台に、準備した殺傷兵器を試す。

無数のダーツ(フレシェット)が発射される装置の成功に興奮するランダーは、22万本のダーツが8万人を殺せるとダリアにに伝え、その場に火を放ち飛び立つ。

12月6日、ワシントンD.C.
KGBのリアト大佐(ウォルター・ゴテル)に会ったカバコフは協力を求め、それが叶わない場合は多くのアメリカ人が死に、録音テープの声明を発表すると伝える。

ランダーとダリアは、ダーツと爆弾を飛行船に取り付ける装置の準備を始める。

リアトは、今回の一件に関与していると思われる、”黒い九月”のメンバーであるダリアの情報と顔写真をカバコフに渡す。

12月31日、マイアミ
ボートに見立てた装置を車で牽引して運び込んだダリアは、滞在するホテル名をランダーに知らせて、翌日、空港まで迎えに行くことを伝える。

ホテルに現れたファジルと部屋に向かったダリアは、アメリカ側に正体がバレたことを知らされる。

録音テープを奪われたためで、直ぐに逃げないと危険であり、計画は中止だと言われたダリアは納得できない。

完璧に準備し、ランダーならやり遂げられるというダリアは計画を実行するとことを伝えるが、ファジルはそれを認めない。

ランダー自身の計画であり、組織の思惑は関係ないことを伝えたダリアは、自分はどうなってもいいと言ってファジルを説得する。

1月1日、ワシントンD.C.
ダリアがマイアミのホテルに滞在しているということをコーリーから知らされたカバコフは、現地に向かう。

マイアミ
コーリーと共にホテルを監視するカバコフは、ダリアと同じ部屋にいる男が、ミュンヘン・オリンピック事件に関与したファジルだということを確認する。

いつでも狙撃できると言われたカバコフは、ダリアを捕えるエサにするため、危険な男であるファジルを注意して監視するよう指示する。

買い物で外出しホテルに戻ったファジルは、ロビーの異変に気づき、発砲して捜査官を殺し、女性を人質に取って逃げる。

生け捕りにするよう周辺の捜査官に命じたカバコフは、ファジルを追って路地に向かう。

女性を救った捜査官を射殺したファジルは、ビーチで追い詰められる。

説得するコーリーが撃たれると考えたカバコフは、仕方なくファジルを射殺する。

部屋を調べたカバコフは、その場にあったパンフレットを見て、”スーパーボウル”が何かをコーリーに問う。

スーパーボウル”会場で、ダリアがテロを計画していることにコーリーは気づく。

コーリーと共に、第10回スーパーボウルの会場である”オレンジボウル”の警備を確認したカバコフは、”マイアミ・ドルフィンズ”のオーナー、ジョー・ロビーに、どんな準備をしても通用しない相手だと伝える。

スーパーボウル”を中止するべきだとカバコフに言われたジョー・ロビーは、国民行事の試合であるため不可能だと伝える。

8万人が殺されることを伝えたカバコフは、中止できないのなら、当日の旅客機を含めて欠航し上空の飛行を禁ずるよう指示する。

それは手配済みだったが、”グッドイヤー”の飛行船がテレビ用の撮影をすると知らされたカバコフは、警察と大統領のヘリコプターが上空を飛行すると言われる。

コーリーは、大統領の観戦を中止させることを考える。

ロサンゼルス
ランダーの家に戻ったダリアは、飛行船の操縦を交代させられたことをランダーから知らされる。

ダリアは、運が悪かったと言って簡単に諦めるランダーに失望する。

軍服姿のランダーは、英雄だった自分が6年間の捕虜生活の末に帰国し、妻にも捨てられ全てを失い、病人扱いされた辛さを語る。

その話が理解できないダリアに、自分を不幸にした全ての人間に思い知らせたかったと伝えるランダーは、やり遂げるべきだと言うダリアから、協力を求められる。

グッドイヤー”の飛行船をチェックしたカバコフとコーリーは、操縦予定のパイロットに会い質問する。

1月8日、マイアミ
ダラス・カウボーイズピッツバーグ・スティーラーズの選手達が到着し、ランダーとダリアも現地入りする。

大統領の観戦を中止させることができないコーリーは苛立ちながら、考えられる限りの警備を行い、夜を徹してスタジアム内を調べさせる。

翌日、厳戒態勢の中、重装備の警官やFBIシークレットサービスなどが配備され、カバコフとコーリーはスタジアム周辺の監視を始める。

ルームサービスを装ったダリアは、飛行船パイロットのファレリー(トム・マクファデン)を射殺する。

クルーにファレリーと操縦を交代したことを伝えたランダーは、飛行船に乗り込み飛び立つ。

選手達はフィールドに姿を現し、大統領も到着する。

飛行船は上空に現れ、国歌斉唱が始まる。

試合は始り、ダリアは、ボート型の爆弾を車で牽引して飛行場に向かう。

飛行船のパイロット、ファレリーがホテルの部屋で殺されていることを知らされたカバコフは、CBSの中継車に向かう。

飛行船の位置を聞いたカバコフは、エンジンの故障で飛行場に戻ったことを知らされる。

飛行場に着陸し、局から電話があったことを知ったランダーは、中継車に戻ったスタッフを射殺する。

到着したダリアが運んだ装置(爆弾)を飛行船に取り付けるようクルーに指示したランダーは、彼女と共に乗り込む。

クルーを射殺したランダーは、ダリアにテレビ用の機材を捨てさせ、それに気づいたスタッフは彼女に射殺される。

駆けつけた警官達も射殺され、到着したカバコフとコーリーは飛行船を銃撃し、ダリアが応戦する。

死体を捨てて船体を軽くして何んとか浮上したランダーは、スタジアムに向かう。

カバコフとコーリーは、ヘリに乗って飛行船を追う。

ランダーは、自分が殺された場合の起爆方法をダリアに教える。

警察のヘリが近づき、警告を無視したダリアは銃撃して撃墜する。

カバコフのヘリが近づき、コーリーはダリアの銃撃を受ける。

飛行船に接近したカバコフは、銃を構えたダリアとランダーを銃撃する。

飛行船はそのまま進み、カバコフは、ヘリに積載されていたフックを引っ掛けようとする。

ダリアは死亡し、銃弾を受けたランダーは何とか操縦席に着き、操縦してスタジアムに向かう。

ロープで降下したカバコフは、飛行船にフックを掛けようとする。

飛行船はスタジアムの照明塔に激突し、観衆はパニックとなる。

ランダーは導火線に着火し、カバコフはフックを掛け、飛行船を引き上げるようコーリーに指示する。

海上に達したため、カバコフはフックを外し、ロープにしがみついてその場を離れる。

飛行船は爆発し、ダーツは海面に発射される。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
ベイルート
モサドの特殊部隊を指揮するデイヴィッド・カバコフ少佐は、パレスチナの過激派組織”黒い九月”のアジトを襲撃し、ある声明の録音テープを入手する。
それを録音した”黒い九月”のメンバー、ダリアは、ベトナム戦争中に捕虜であったアメリカ海軍パイロットのランダーに目を付けて、アメリカ国内で大規模のテロを計画していた。
テープをモサドに奪われたダリアだったが、アメリカに入国して予定通り計画の実行を進める。
一方、カバコフもアメリカに向い、FBI捜査官のコーリーと協力して、襲撃で殺さなかった声明の女(ダリア)を捜そうとする。
ランダーと共に準備を始めたダリアは、国内に運ばれた大量の爆薬などを受け取る。
イスラエル側の動きを知ったダリアは、計画を阻止しようとするカバコフらを抹殺しようとするのだが・・・。
__________

羊たちの沈黙」(1991)などの”ハンニバル・レクター”シリーズで知られるトマス・ハリスの処女作”Black Sunday”の映画化で、社会派でもあるジョン・フランケンハイマーの力感溢れる演出が光るサスペンスの秀作。

本作でテロを実行する設定になっている、パレスチナの過激派組織”黒い九月”が計画した”ミュンヘン・オリンピック事件”から数年しか経過していない時期に製作された作品で、活動が減っていた組織の動きも注目され、物議を醸しだした問題作でもある。

また、日本の過激派組織が計画の武器を手配する大きな役割を果たしている点も興味深い。

8万人の観客が詰めかける”第10回スーパーボウル”の会場”オレンジボウル”がクライマックスの舞台になるが、当時、大ブームとなっていたパニック映画の要素は殆どない。

計画実行の準備を着々と進めるテロ組織の行動と、それを阻止するためにアメリカ入りしたモサドの諜報員との攻防を描く、緊迫感ある一級のサスペンスに仕上がっている。

日本ではテロ予告があり、劇場公開が中止されたという曰くつきの作品。

本作公開の1年前に行われた”第10回スーパーボウル”の実際の映像やその雰囲気を見事に描写した映像も見もので、主人公のロバート・ショウが”オレンジボウル”を調べる場面で、”マイアミ・ドルフィンズ”のオーナー、ジョー・ロビーが登場するのも興味深い。

ジョン・ウィリアムズのダイナミックな音楽も印象に残る。

イスラエル建国以来の戦いに疲弊しながらも、史上最悪の大規模テロを阻止するモサドの諜報員ロバート・ショウ、アメリカ社会に怒りを感じテロ実行計画を進める元海軍パイロットを好演するブルース・ダーン、彼と共にテロを実行しようとする”黒い九月”のメンバー、マルト・ケラー、主人公に協力するFBI捜査官フリッツ・ウィーヴァー、主人公の友人でもある同僚スティーヴン・キーツ、日本の貨物船船長クライド・クサツ、”黒い九月”のメンバー、ベキム・フェーミュ、輸出入業者マイケル・V・ガッツォ、医師ウィリアム・ダニエルズ、主人公に情報を渡すKGBの大佐ウォルター・ゴテル、飛行船パイロットのトム・マクファデンなどが共演している。


モバイルバージョンを終了