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黒水仙 Black Narcissus (1947)

イギリス映画界の至宝マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガー製作、監督、脚本による、1939年に発表されたルーマー・ゴッデンの同名小説を基に製作された作品。
イギリス人の尼僧たちのヒマラヤの宮殿での活動と苦難の日々を描く、デボラ・カーフローラ・ロブソンジーン・シモンズのドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督

マイケル・パウエル
エメリック・プレスバーガー
製作
マイケル・パウエル
エメリック・プレスバーガー
原作:ルーマー・ゴッデン
脚本
マイケル・パウエル
エメリック・プレスバーガー
撮影:ジャック・カーディフ
編集:レジナルド・ミルズ
美術・装置
アルフレッド・ジュネ
音楽:ブライアン・イースデイル

出演
シスター・クローダー:デボラ・カー
シスター・フィリッパ:フローラ・ロブソン
ハサンプル”カンチ:ジーン・シモンズ
ディーン:デヴィッド・ファーラー
トゥダ・ライ将軍:エズモンド・ナイト
ディリップ・ライ将軍:サブー
シスター・ルース:キャスリーン・バイロン
シスター・プライオニー:ジュディス・ファース
シスター・ハニー:ジェニー・レアード
アング・アヤ:メイ・ハラット

イギリス 映画
配給 General Film Distributors
1947年製作 100分
公開
イギリス:1947年5月26日
北米:1947年12月
日本:1951年3月17日
製作費 £280,000


アカデミー賞 ■
第20回アカデミー賞

・受賞
撮影(カラー)・美術賞(カラー)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
聖公会の尼僧であるシスター・クローダー(デボラ・カー)は、ヒマラヤ山麓のモプ宮殿に派遣されることになる。

シスター・クローダーは、宮殿に学校を開設したトゥダ・ライ将軍(エズモンド・ナイト)の代理人で、イギリス人であるディーン(デヴィッド・ファーラー)からの依頼内容を知らされる。

エベレスト他の山々に囲まれた、厳しい環境の宮殿には、アング・アヤ(メイ・ハラット)という管理人だけがいた。

ライ将軍は、食料などを宮殿に運び、ディーンとアヤに後のことは任せて立ち去る。

院長となるシスター・クローダーは、シスター・フィリッパ(フローラ・ロブソン)、シスター・プライオニー(ジュディス・ファース)、シスター・ハニー(ジェニー・レアード)、そして、少々問題を抱えていたシスター・ルース(キャスリーン・バイロン)と共に宮殿へと向かう。
...全てを見る(結末あり)

使命感を感じながら職務に就いたシスター・クローダーは、シスター・ルースに厳しく接し、今回の計画が無謀だというディーンに、困難に立ち向かう意思伝える。

宮殿が、元はハーレムだったというディーンの皮肉にも、シスター・クローダーは動ずることはなかった。

その後、診療所を兼ねる宮殿に現れる人は増える一方で、シスター・ルースは体の不調を訴えていた。

シスター・プライオニーは、眠れないというシスター・クローダーに、他の者と同じ発疹ができていることを確認して、それが水のせいだと指摘する。

ライ将軍が、村人に金を払って宮殿に通わせていたのだが、ディーンは、重病人を診て死んだ場合には、恨まれることなどをシスター・クローダーに伝える。

また、水が悪いというシスター・クローダーに、良過ぎて体質に合わないことも付け加える。

そこに、自分の判断で、傷を負った女性を治療してしまったシスター・ルースが興奮して現れるが、シスター・クローダーはそれを非難する。

しかしディーンは、知人を救ってくれたと言ってシスター・ルースに感謝する。

ある日ディーンは、自分が面倒を見ているものの梃子摺っている、年頃の娘ハサンプル”カンチ(ジーン・シモンズ)を、暫く修道院で預かってもらおうとする。

一旦はそれを断ったシスター・クローダーは、仕方なくカンチを預かることにする。

そんな時、シスター・クローダーは、シスター・フィリッパの異変に気づき、彼女が、俗世を思い出し信仰の道に迷いが生じていることを知る。

シスター・クローダーは、シスター・フィリッパらと祈りを捧げるものの、自分も恋人との過去を思い出してしまう。

その後、ライ将軍の息子で、イギリス留学から戻ったディリップ(サブー)が修道院を訪ねる。

ディリップはシスター・クローダーに挨拶して、自分も学びたいことを伝える。

シスター・クローダーは、女子の修道院だと言ってそれを断るが、勉学に意欲を燃やすディリップの態度に感心し、ライ将軍の機嫌も損ねるわけもいかず彼を受け入れることを決める。

それをシスター・クローダーから知らされたディーンは、彼とカンチのことを心配する。

宮殿の敷地内の森にいる、信者を迎える”聖者”が気になっていたシスター・クローダーだったが、彼がライ将軍の叔父で、立派な将軍だったこと知らされる。

学校に通うようになったディリップは、真面目に勉学に励むのだが、黒水仙の匂いを漂わせるスカーフを持参したりもしていた。

クリスマス。
ミサを開いたシスター・クローダーは、恋人からの贈り物のことなどを思い出してしまう。

シスター・クローダーは、ディリップからキリストについて知りたいと言われるが、気安く話せることではないことを伝える。

しかし、酔ってミサに現れたディーンが、キリストは身近な存在になるべきだと語ったため、シスター・クローダーは憤慨し、以後、修道院に足を踏み入れることのないよう伝えて彼を追い払う。

シスター・クローダーは、シスター・ルースが、その様子を見ていたことを知る。

シスター・ルースを呼んだシスター・クローダーは、彼女の体調を気にして、ディーンに対しての気持ちなどを問い質す。

感情的になるシスター・ルースは、シスター・クローダーこそが、ディーンに心を奪われていると指摘する。

ディーンの行動を非難するシスター・クローダーは、彼を好意的に思うことが危険であることをシスター・ルースに伝えて下がらせる。

やがて春となり、香炉の鎖を盗んだカンチがアヤに折檻される。

その場に現れ、後の処置を任されたディリップは、渡された鞭を捨ててカンチに寄り添う。

シスター・フィリッパの行動に、疑問を感じたシスター・クローダーは、彼女が思い悩み転任を希望していることを知る。

畑仕事が楽しいために、修道会の教えを忘れてしまうという、シスター・フィリッパの考えが理解できないシスター・クローダーは、留まるべきだと彼女を説得する。

しかしシスター・フィリッパは、この地では、ディーンか聖者の生き方に従うしかないことを告げる。

その後、修道院に病気の赤ん坊が運び込まれるのだが、シスター・プライオニーは、手遅れだと判断して母親と共に帰してしまう。

赤ん坊は死亡し、村人はそれを尼僧達のせいにして修道院に近づかなくなる。

シスター・ハニーは、子供のためを思いひまし油を与えたのだが、その行為が誤解を招いたと判断したシスター・クローダーは、ディリップに助けをも求めようとするが、彼はカンチと駆け落ちしまっていた。

シスター・クローダーは、仕方なくディーンを呼び助言を求めるが、彼は、村人の前でひまし油を飲み、害のないことを証明して見せたことを伝える。

尼僧達が警戒する中、ディーンを理解し始めたシスター・クローダーは、故郷アイルランドで、自分との結婚より夢を選びアメリカに向かった恋人のことなどを話す。

それが理由で修道会に入ったのだが、この地に来てから、何度もその恋人を思うことを語りながら、シスター・クローダーは涙する。

ディーンはシスター・クローダーを気遣うが、彼女は、シスター・フィリッパがこの地を去り、シスター・ルースは誓願を更新しない考えであることも語る。

人々は自分ではなくディーンを頼り、何一つ思い通りに決断できないと、シスター・クローダー嘆く。

ディーンは、今すぐこの地を去るべきだと言って、ここが修道院には向かない場所だと指摘する。

二人の様子を物陰から見ていたシスター・ルースは、その夜、僧服を脱いでいた。

それに気づき、シスター・ルースが正気を失っていると感じたシスター・クローダーは、彼女と同じ部屋で夜を明かそうとする。

シスター・クローダーが眠ってしまった隙に、錯乱状態に陥ったシスター・ルースは部屋を飛び出す。

シスター達やアヤは、シスター・ルースを捜し始めるが見つからず、彼女はディーンの家に向かう。

尼僧ではなくなったことをディーンに伝えたルースは彼に愛を告げる。

しかし、ディーンはそれを受け入れず、ルースを拒み修道院に送ろうとする。

しかし、ルースはシスター・クローダーに嫌われていることを伝え、彼女の名を叫びながら気を失ってしまう。

目覚めたルースは、修道院に帰ることをディーンに伝えて、送るという彼の言葉を遮りその場を去る。

外で祈りを捧げていたシスター・クローダーは朝を迎え、礼拝の準備をさせようとする。

眠気を振り払い、鐘を鳴らし始めたシスター・クローダーに、狂人と化したルースが背後から襲いかかり、彼女を崖下に突き落とそうとする。

何んとかそれを逃れたシスター・クローダーだったが、ルースが崖下に転落する。

その後、修道院は元の状態に戻り、人々が集まるようになる。

ディリップは、シスター・クローダーの元に謝罪に現れ、後悔していることを伝え慎み深く生きることを誓う。

シスター・クローダーらは、モプ宮殿を去ることになり、彼女は転任先では、院長から主任に降格することをディーンに告げる。

試練に耐える決意を、シスター・クローダーはディーンに告げて、ルースの墓を守ることを頼み二人は握手して別れる。

突然降り出した雨の中、ディーンはシスター・クローダーらをいつまでも見つめる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
聖公会の尼僧であるシスター・クローダーは、ヒマラヤ山麓のモプ宮殿に、4人の尼僧と共に派遣されることになる。
宮殿は、ライ将軍により修道院と診療所となる計画が進み、イギリス人の代理人ディーンが修道女らの手助けをすることになる。
ところが、厳しい環境など、様々な状況を考慮したディーンは、この計画が困難であることを告げる。
しかし、強い使命感の下シスター・クローダーは、ディーンの、皮肉とも言える言葉に動じなかった。
その後、修道院と診療所には村人達が押し寄せ、不慣れな環境下で、尼僧達は苦難の日々を送ることになる。
そんな時、同行していたシスター・ルースが、シスター・クローダーの厳しい態度などにより信仰の道から挫折しかける。
そして、精神的に不安定になったシスター・ルースは、ディーンへの想いも募り、それが、シスター・クローダーへの嫉妬心へと変わり始める・・・。
__________

辺境の地に赴いた、修道女達の苦難の布教活動という内容だけでも成り立つような物語なのだが、終盤はサスペンス・スリラーのような展開も見せる見応えのある作品。
それは、凄まじい愛憎のドラマとなっていくという、マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガーの演出と脚本にはいつもながら脱帽だ。

信仰、伝道の苦悩、愛や肉体的欲求などが、役者の表情一つで表現される演出なども見事だ。

当時としては最高の技術で撮影されたであろう、美しいジャック・カーディフの映像表現は秀逸だ。

状況を考えるとロケとは思えない気がする、グラスペイントを使ったのだろうか、奥行きを感じさせる山々や谷底の特撮的な描写も、終戦直後にして素晴らしい仕上がりとなっている。

第20回アカデミー賞では、撮影(カラー)と美術賞(カラー)を受賞した。

失敗から学び成長した安堵の表情と、固い信念を感じさせる表情が実に印象的な、僧服がよく似合うデボラ・カー、挫折する寸前で主人公に支えられるフローラ・ロブソン、まだ10代だが、衝撃的とも言える存在の村娘ジーン・シモンズ、人間味を感じさせながら個性的な役を好演するイギリス人の代理人デヴィッド・ファーラー、現地の統治者役のエズモンド・ナイト、その息子サブー、キー・パーソンとなる、半狂乱の尼僧で、デボラ・カーと共に、カラー画面で美しさが際立つキャスリーン・バイロン、尼僧ジュディス・ファースジェニー・レアード、宮殿の管理人メイ・ハラットなどが共演している。


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