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恐喝(ゆすり) Blackmail (1929)

1928年に上演された、チャールズ・ベネットの戯曲”Blackmail”を基に製作された作品。
正当防衛で殺人を犯した女性と彼女を庇う恋人の刑事が犯行を知る男から強請られ対決する姿を描く、監督、脚本アルフレッド・ヒッチコック、主演アニー・オンドラジョン・ロングデンサラ・オールグッド他共演による、イギリス映画初のトーキー作品。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック

製作総指揮:ジョン・マクスウェル
原作:チャールズ・ベネット”Blackmail”(戯曲)
脚本
アルフレッド・ヒッチコック

ベン・レヴィ
撮影:ジャック・E・コックス
編集:エミール・デ・ルール
音楽:ジミー・キャンベル&レッグ・コネリー

出演
アリス・ホワイト:アニー・オンドラ

ホワイト夫人:サラ・オールグッド
ホワイト:チャールズ・ペイトン
フランク・ウェバー:ジョン・ロングデン
トレイシー:ドナルド・カルスロップ
クルー:シリル・リチャード

イギリス 映画
配給
BIP(イギリス)
Sono Art-World Wide Pictures(北米)
1929年製作 84分
公開
イギリス:1929年6月30日
北米:1929年10月6日
日本:未公開


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ロンドン
スコットランド・ヤード”の刑事フランク・ウェバー(ジョン・ロングデン)は、その日の仕事を終えて、迎えに来た恋人のアリス・ホワイト(アニー・オンドラ)と共にカフェに向かう。

6時半にその場に来ると約束した芸術家のクルー(シリル・リチャード)が現れたため、アリスはフランクに気づかれないように彼に合図を送る。

一度は映画に行くことに同意したアリスがやはり止めると言い出したため、気分を害したフランクは、食事の代金の金を置いてその場を去ってしまう。

店の出口で戻ろうかと考えたフランクだったが、アリスが男性(クルー)と腕を組んで現れたためショックを受ける。

クルーのアパートの前で別れようとしたアリスは、近所の雑貨店が自宅だと伝える。

クルーに誘われて戸惑うアリスだったが、彼を紳士だと信じて部屋に向かおうとする。

それを監視する男(ドナルド・カルスロップ)に声をかけられたクルーは、ただのたかりだとアリスに伝えて建物に入る。
...全てを見る(結末あり)

大家の部屋に向い、男が訪ねて来たことを確認したクルーは、最上階の部屋にアリスを案内する。

その場にあったパレットに興味を持ったアリスは、クルーから筆を渡され二人で絵を描く。

ドレスあることに気づいたアリスはモデルをしてみたいことを伝え、クルーにそれを着てみるようにと勧められる。

戸惑いながらドレスを着たアリスは、クルーに迫られてキスされ帰ると言い出す。

クルーは着替えるアリスの洋服を隠してしまい、下着姿の彼女に襲いかかる。

抵抗するアリスは、テーブルにあったナイフでクルーを刺し殺してしまう。

服を着たアリスはピエロの絵を破り、クルーと描いた絵のキャンバスに書いた自分の名前を消し、忍び足で階段を下りて建物から出る。

その様子を男が目撃していた。

呆然としながら街を歩くアリスは、カクテルのシェイカーのネオンがナイフの動きに見えてしまう。

夜が明けても歩き続けるアリスは、路上で寝ている浮浪者が死体に思える。

その頃、アパートの大家がクルーの死体を発見して警察に通報する。

現場に駆け付けたフランクは部屋の様子を見て回り、落ちていた女性用の手袋を見つけて、それを上司に知らせようとする。

被害者がアリスとカフェを出た男(クルー)だと知ったフランクは驚き、手袋が彼女のものだと気づく。

帰宅したアリスは階段を駆け上がり洋服のままベッドに入り、現れた母(サラ・オールグッド)は、アリスが寝ていたものと思い込む。

近所で殺人があり警察の捜査が始まったと母から知らされたアリスは、飾ってあった警察官姿のフランクの写真を気にする。

着替えて店に出たアリスは、フランクに電話をしようとするものの思い止まり、父(チャールズ・ペイトン)に顔色が悪いと言われる。

朝食の席に着いたアリスは、馴染みの客に殺人の凶器のナイフについての話を聞かされて動揺する。

パンを切るよう父に指示されナイフを手にしアリスは、それを投げ捨ててしまう。

父はアリスの行動を気にするが、そこにフランクが現れ、自分が殺人事件を担当していることを伝える。

電話を借りると言ってボックスにアリスを呼んだフランクは、昨夜、何があったかを尋ねる。

何も答えられないアリスに、現場で見つけた手袋を見せたフランクは、証拠はこれだけだと言って報告していないことを伝える。

そこに、店の外から様子を窺っていた男(ドナルド・カルスロップ)が現れ、”スコットランド・ヤード”に連絡したいので電話を貸してほしいと二人に伝える。

男はカウンターに向い、一番上等の葉巻をホワイトに出してもらう。

ホワイトが葉巻を用意している間に男は、事件の進展がないと言うフランクのポケットから手袋を取り出す。

何の関係があると言われた男は、昨夜、探したのだが片方しかなかったと伝え、同じ手袋をフランクとアリスに見せる。

ホワイトから葉巻を渡された男はそれを吸い、所持金がないと言ってフランクに代金を払わせる。

仕方なく支払ったフランクは、男が友人なのかをホワイトから聞かれ、友人になる予定だと男が答える。

アリスは父に食事をするよう伝え、男は事件のことを話し始める。

言い寄るフランクと動揺するアリスに、秘密を知っているのは自分だけだと伝える男は、悪人ならゆすり行為をするだろうと語る。

そんなことは自分にはできないと伝えた男は、要求は何かとフランクに聞かれ、食事をしながらは話すと答える。

トレイシーと名乗るフランクの友人を両親に紹介したアリスは、彼を食事に誘う。

不審に思った母はトレイシーが何者なのかをアリスに問うが、フランクの友人だ言われただけだった。

その頃、警察でアパートの家主が、クルーを訪ねて来た男のことを聞かれる。

家主から人相を聞き逮捕歴のある者のリストからトレイシーの名が浮かび上がり、署に呼び出し事情聴取を行うことになる。

居座るトレイシーを気にする母に、自分とフランクのためだと伝えるアリスは、早く帰すように言われる。

警察署から連絡を受けたフランクは、ある男を連行するよう言われ、それが前科者のトレイシーだったために驚く。

居間に戻ったフランクは、アリスに部屋の鍵をかけさせ、事件現場付近で前科のある不審者が目撃されたことをトレイシーに伝え、警察がその男を捜し回っていることを知らせる。

クルーを殺したことは事実のアリスは動揺し、犯人にさせられるのを恐れるトレイシーは、捕まった場合は全てを話すことを伝える。

フランクは、警察は前科者の話より善良な市民を信じることを伝え、余裕を見せて警察を待とうとする。

アリスとの対決だと言うトレイシーも覚悟を決める。

動揺するアリスを落ち着かせるフランクは、自分に任せるよう彼女に言い聞かせる。

焦るトレイシーは冗談でやったと言い出すが、フランクは納得しない。

話を聞き入れられないトレイシーは、諦めて勝負することを伝えるが、そこに警官が現れる。

それに気づいたトレイシーは、窓を破ってその場から逃走する。

指名手配されたトレイシーは逃亡を続ける。

今後のことを考えるアリスは不安が募る。

大英博物館”に逃げ込んだトレイシーは、フランクらに見つかり追い詰められて屋上に逃れる。

自分が犯人ではないことを伝え、その件はフランクに聞くようにと警官に向い叫んだトレイシーは、円形閲覧室に落下する。

その頃、思い詰めていたアリスは、罪をトレイシーに着せることはできないと考え、自首することを伝える手紙をフランクに書く。

スコットランド・ヤード”。
今回の事件の情報を警部に話そうとしたアリスは、対応した警官にそれを伝える。

フランクも同席する警部のオフィスに通されたアリスは、事件のことを話そうとする。

いまさら聞くことはないと言うフランクの意見を遮り、アリスの話を聞いた警部だったが、そこに電話が入る。

警部は後の話を聞くようにフランクに指示し、彼とアリスは部屋を出る。

犯人は自分だと言うアリスは、襲われたため仕方がなかったことをフランクに伝えて正当防衛を主張する。

受付の警官に、犯人の名前をアリスから聞いたと伝えたフランクは、彼女の方が警察より上手だと言われ三人は笑い始める。

クルーの部屋にあったピエロの絵と二人で描いた絵が、署内に運び込まれるのを確認したアリスの表情は曇る。


解説 評価 感想 ■

★ヒッチコック登場場面
上映から約10分”ロンドン地下鉄”に乗車している男性がアルフレッド・ヒッチコック
約20秒間もの間、正面を向いて座り、隣の席の少年に悪戯されて親に注意する役を演ずるので非常に分かり易い。

*(簡略ストー リー)
ロンドン
雑貨店の一人娘アリス・ホワイトは、”スコットランド・ヤード”の刑事である恋人のフランクとカフェに向かう。
その場で芸術家のクルーと待ち合わせていたアリスは、映画に行かないと言われ気分を害したフランクが去った後、クルーと出掛ける。
クルーのアパートで別れようとしたアリスは彼の部屋に誘われ、興味本位でその場に向かう。
とろが、紳士だと思ったクルーに乱暴されたアリスは、彼をナイフで刺殺してしまう。
動揺しながらその場を去ったアリスだったが、その様子を監視する男がいた。
動揺して翌朝まで街をうろついていたアリスは帰宅し、殺人事件の担当になったフランクは、彼女とカフェから出た男が被害者だったことを知る。
その場に落ちていたアリスの手袋に気づいたフランクは彼女の元に向かうのだが、現場を監視していた男トレイシーが現れ、二人を脅迫する・・・。
__________

サイレント映画として製作されるものの、イギリス映画初のトーキーとして公開された作品。
しかし、音響設備のない劇場のためにサイレント版も用意された。

物語の内容や役者の演技などはまずまずといったところなのだが、その後のアルフレッド・ヒッチコック作品に通じる、工夫を凝らした映像が楽しめる貴重な一作。

ヒロインと殺害される被害者がアパートの階段を上って行くシーンや、殺人を犯したヒロインが動揺して呆然としながら眺めるカクテルのシェイカーが、振り下ろされるナイフに見えてしまうシーンなどは見事な演出だ。

また、1920年代の作品ということを考えると、魅力的なことこの上ない、チェコ国籍の美しいアニー・オンドラの下着姿や脚のアップなどは、当時としてはかなり過激な映像であったはずだ。

ヒロインの母親サラ・オールグッド、父親チャールズ・ペイトン、恋人であり刑事のジョン・ロングデン、二人を強請る悪党のドナルド・カルスロップ、ヒロインに襲いかかり殺害される芸術家のシリル・リチャードなどが共演している。


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