1971年に発表された、ジャージ・コジンスキーの同名小説”Being There”の映画化。 庭師として働き数十年もの間、屋敷の外に出たことのなかった男性があるがままの姿で外界の人々に接する様を描、監督ハル・アシュビー、主演ピーター・セラーズ、シャーリー・マクレーン、メルヴィン・ダグラス、ジャック・ウォーデ他共演による社会や人々へのメッセージが秘められたシニカル・コメディ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ハル・アシュビー
製作総指揮:ジャック・シュワルツマン
製作:アンドリュー・ブラウンズバーグ
脚本:ジャージ・コジンスキー
撮影:キャレブ・デシャネル
編集:ドン・ジンマーマン
音楽:ジョニー・マンデル
出演
ピーター・セラーズ:チャンシー・ガーディナー
シャーリー・マクレーン:イヴ・ランド
メルヴィン・ダグラス:ベンジャミン・ターンブル・ランド
ジャック・ウォーデン:大統領
リチャード・ダイサート:ロバート・アレンビー医師
リチャード・ベースハート:ウラディミール・スカピノフ
ルース・アタウェイ:ルイーズ
デイヴィッド・クレノン:トーマス・フランクリン
フラン・ブリル:サリー・ヘイズ
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1979年製作 130分
公開
北米:1979年12月19日
日本:1981年1月31日
北米興行収入 $30,177,510
■ アカデミー賞 ■
第52回アカデミー賞
・受賞
助演男優賞(メルヴィン・ダグラス)
・ノミネート
主演男優賞(ピーター・セラーズ)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ワシントンD.C.。
ある冬の朝、邸宅で老主人が亡くなる。
その屋敷の使用人チャンシー・ガーディナー(ピーター・セラーズ)は、それをメイドのルイーズ(ルース・アタウェイ)から知らされ、主人が横たわる部屋に向かい、彼の亡骸の横に表情を変えず腰掛ける。
ルイーズは、屋敷を出る決意をして”永遠の少年”チャンスに別れを告げる。
そして、法律事務所から派遣された遺産管財人トーマス・フランクリン(デイヴィッド・クレノン)とサリー・ヘイズ(フラン・ブリル)が屋敷を訪れる。
二人はチャンスの精神が正常でないことを理解しながら、彼が庭師として数十年屋敷に住んでいた証拠を聞き出し、彼に立ち退きを言い渡す。 チャンスは、字の読み書きも出来ず、屋敷から一歩も外に出たことがないにも拘らず、トーマスに言われた通りに屋敷を出る準備を始める。 どこに行っていいかも分からないままに、チャンスは街中を歩き始め、誰彼かまわず声をかけ変人扱いされる。 やがて夜になり、テレビ好きのチャンスがショールームのテレビに気を取られている時に、彼に高級車がぶつかってしまう。 車に乗っていた婦人イヴ・ランド(シャーリー・マクレーン)は、チャンスを気遣い、車に乗せて病院に連れて行こうとする。 チャンスは、イヴの主人ベンジャミン・ターンブル・ランド(メルヴィン・ダグラス)が病気で、看護師らが待機している屋敷に向かうことになる。 大邸宅に迎えられたチャンスは、車椅子に乗せられ、丁重な扱いを受ける。 アレンビー医師(リチャード・ダイサート)の診察を受けたチャンスは、何日か様子を見るためランド邸に滞在することになる。 ベンジャミンと対面したチャンスは、イヴが聞き間違えて、”チョンシー”と呼ばれるようになる。 チャンスを気に入ったベンジャミンだったが、アレンビーは、彼の異常に気づき様子を窺う。 政財界に影響力のあるベンジャミンを、大統領(ジャック・ウォーデン)が、フォーラムのスピーチのアドバイスを受けに、見舞いを兼ねて屋敷を訪れることになり、そこにチャンスも同席することになる。 チャンスは、テレビでよく大統領を見ていたので、彼に親しみを感じる。 大統領に意見を求められたチャンスは、庭いじりのことを話し始めるが、それをベンジャミンが洞察力が鋭いと評価し、大統領も清々しい楽観的意見に満足してしまう。 大統領は、早速チャンスの経歴を調べる指示を出し、邸宅を後にする。 チャンスは、この屋敷の主人も亡くなるのではないかと不安になるが、ベンジャミンに優しく声をかける。 大統領はフォーラムで、ベンジャミンの”相談役”であるチャンスの言葉を引用して声明を発表する。 ”チョンシー・ガーデナー”の名前は、一躍全米の注目を浴びるようになり、彼に対する問い合わせが、ランド邸に殺到する。 テレビ出演することになったチャンスは、司会者の質問の意味が理解できずに受け答えするが、それが抜群のユーモア・センスと受け止められ、庭いじりの話が再び的を得た意見として評価されてしまう。 それを見ていたルイーズは、チャンスの精神障害を仲間達に伝え、自分達黒人と違い、白人であれば、チャンスのような人間でも評価されると非難する。 そんなチャンスの言動を絶賛するベンジャミンは、彼を自分の代理として、要人のパーティーにイヴと出席させることにする。 そんなイヴは、年齢差のあるベンジャミンや友人達に満足しきれず、次第にチャンスに惹かれていく。 一方、テレビ番組を見た、チャンスのいた屋敷の弁護士トーマスとサリーは、彼が実は賢い人間で、ランド邸で何かを企んでいるのではと考え始める。 大統領や側近、ワシントン・ポストなどは躍起になってチャンスの身元を探るが、彼に関する情報は皆無のままだった。 チャンスからトーマスのことを聞いていたアレンビー医師は、彼に会いチャンスの情報を仕入れようとする。 イヴとパーティーに出席したチャンスは、ソ連大使のウラディミール・スカピノフ(リチャード・ベースハート)の心までも捉えてしまう。 世界各国への捜査に及んだチャンスの件で、頭を悩ます大統領は、FBIやCIAが絡んでいる隠ぺい工作かもしれないことを知らされる。 アレンビーはベンジャミンに、チャンスについての意見を伝えようとする。 しかし、チャンスが屋敷に来て依頼、死を恐れなくなったベンジャミンは、彼についての雑念を求めなかった。 チャンスへの思いがつのるイヴは、愛を求めるのだが、彼はテレビで放映されている「華麗なる賭け」を参考に、見よう見まねでイヴを受け入れる。 テレビが”見たい”という、チャンスの言葉を勘違いした彼女は、チャンスの前でもだえ始める。 その後、ベンジャミンの様態が悪化し、彼はチャンスにイヴのことを託して息を引き取る。 大統領も出席するベンジャミンの葬儀の最中、大統領選を勝ち抜くためには、国民から圧倒的な支持を受け、影響力のある”チョンシー・ガーデナー”の存在が不可欠であることが話し合われる。 チャンスは何も知らぬまま、葬儀の終了を待たずに、その場を立ち去ってしまう。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ワシントンD.C.。
主人が亡くなり、数十年間その屋敷で使用人をしていた庭師チャンシー・ガーディナーは、遺産管財人から立ち退きを言い渡されてしまう。
精神が正常でないチャンスは、字の読み書きも出来ず屋敷から一歩も外に出たことがないにも拘らず、屋敷を出る準備を始める。
行く当てもなく屋敷を出たチャンスは、夜の街角で、ある高級車にぶつかってしまう。
車に乗っていた婦人イヴ・ランドは、怪我をしたと思われるチャンスを気遣い、車に乗せて彼女の大邸宅に向かう。
その後、丁重に迎えられたチャンスは、重病の主人ベンジャミンのいる屋敷に滞在することになるのだが・・・。
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邪心や雑念を持たない、生まれたままの、自然の状態を維持して成長した男性が起こす奇跡、ラストで、池の水面を歩く主人公の姿は、キリストが起こした奇跡をそのまま表現している。
第52回アカデミー賞では、メルヴィン・ダグラスが助演男優賞を受賞し、主演男優賞のピーター・セラーズはノミネートに終わった。
チャンスが屋敷から退去を命ぜられ、当てもなく街に出て行くシーンで使われている、リヒャルト・シュトラウスの交響詩”ツァラトゥストラはかく語りき”に編曲が印象的だ。
純真無垢で子供のような庭師を演ずる主演のピーター・セラーズは、その特異な役柄の演技に非常に苦労したようで、その様子がエンディングで紹介される。
公開順で言うと最後ではないが、翌年、長年患っていた心臓の発作で亡くなる彼の、遺作にしてベストと言ってもいい作品だ。
周囲の人々と同様チャンスに惹かれ、次第にそれがエスカレートしていく、欲求不満の女主人シャーリー・マクレーン、主人公を全く疑わない大富豪メルヴィン・ダグラス、主人公の存在が気になり、翻弄される大統領ジャック・ウォーデン、外界で唯一人、彼の正体に気づくものの、それを見守る医師役リチャード・ダイサート、ソ連大使リチャード・ベースハート、チャンスを育て、屋敷で共に生活していたメイド役のルース・アタウェイ、その屋敷の遺産管財人デイヴィッド・クレノンとフラン・ブリルなどが共演している。
また、ハル・アシュビーも、ワシントン・ポスト社内の場面で出演している。