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バリー・リンドン Barry Lyndon (1975)

1844年に発表された、ウィリアム・メイクピース・サッカレーの小説”The Luck of Barry Lyndon”を基に、スタンリー・キューブリックが、製作、監督、脚色した作品。
平凡な青年の数奇な運命と凋落を描く、ライアン・オニールマリサ・ベレンスン他共演の壮大なドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:スタンリー・キューブリック

製作総指揮:ヤン・ハーラン
製作:スタンリー・キューブリック
原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
編集:トニー・ローソン
美術・装置
ケン・アダム

ロイ・ウォーカー
ヴァーノン・ディクソン
衣装デザイン
ウーラ=ブリット・ソーダーランド

ミレーナ・カノネーロ
音楽:レナード・ローゼンマン

出演
レドモンド・バリー/バリー・リンドン:ライアン・オニール

レディー・ホノリア・リンドン:マリサ・ベレンスン
ポツドルフ大尉:ハーディ・クリューガー
ノーラ・ブレディ:ゲイ・ハミルトン
グローガン大尉:ゴッドフリー・クイグリー
シュヴァリエ・ド・バリバリ:パトリック・マギー
サミュエル・ラント牧師:マーレイ・メルヴィン
ラッド卿:スティーヴン・バーコフ
ベル・リンドン:マリー・キーン
チャールズ・レジナルド・リンドン卿:フランク・ミドルマス
ブリンドン卿:レオン・ヴィタリ
ブリンドン卿(少年期):ドミニク・サヴェージ
ハラム卿:アンソニー・シャープ
ジョン・クイン大尉:レナード・ロシター
ウェンドーヴァー卿:アンドレ・モレル

イギリス/アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ

1975年製作 184分
公開
イギリス:1975年12月18日
北米:1975年12月18日
日本:1976年7月3日
製作費 $11,000,000
北米興行収入 $20,000,000


アカデミー賞 ■
第48回アカデミー賞

・受賞
撮影・美術・衣装デザイン・音楽賞
・ノミネート
作品・監督・脚色賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■

● 第1部
”レイモンド・バリーが、どのよういにしてバリー・リンドンの生活、そして称号を我がものとしたか”

1750年代、アイルランド
レドモンド・バリー(ライアン・オニール)の父親は、数頭の馬を仕入れる際の争いで決闘になり命を落とした。

バリーの母ベル(マリー・キーン)は、多くの男達の求婚を断り、息子の成長と夫への想いを胸に生きることを誓った。

やがてバリーは、従姉のノーラ・ブレディ(ゲイ・ハミルトン)に恋心を抱くようになる。

当時、フランスによる侵略に備えるイングランドは、ブレディの町にも、ジョン・クイン大尉(レナード・ロシター)率いる軍を配備した。
...全てを見る(結末あり)

バリーは、ノーラに近寄るクインに嫉妬するが、財政的に問題を抱えていたブレディ家にとっては、高年収で家柄もよいクインと娘の縁談を望んだ。

二人が結婚することになったことを知ったバリーは、クインをノーラの家族の前で侮辱してしまい、二人は決闘することになる。

バリーは、親しくなったグローガン大尉(ゴッドフリー・クイグリー)やノーラの兄が立会う決闘で、クインを倒して逃亡することになる。

母親に別れを告げ、20ギニーを持ったバリーは、ダブリンに向かうものの、途中で追いはぎに遭い、無一文になってしまう。

その後、バリーは立ち寄った村で、たまたま募集していたイングランド軍の募集兵に志願する。

訓練を受けて逞しい兵士となったバリーは、集結した軍隊と共に、現れたグローガンと再会する。

バリーは、決闘が、自分を追い払うために、実弾を使わずに行われ、実はクインが生きていて、彼とノーラが結婚したことをグローガンから知らされる。

プロシアを支援するイングランドと、フランスロシアなどとの戦争(七年戦争)で、バリーはグローガンと共に出撃する。

グローガンは敵の銃弾を受け、バリーが後方に連れ戻すが息を引き取る。

友人の死後、バリーは服役期間を6年も残し、脱出することばかりを考え始める。

ある日、バリーは将校の軍服と通行証を盗むチャンスを得て、プロシア軍の陣地に向かう。

その場を通過し、ある村で夫が出征している女性との束の間の愛で癒されたバリーは、その後、プロシア軍の部隊の指揮官ポツドルフ大尉(ハーディ・クリューガー)に出会い行動を共にすることになる。

しかし、身分がばれてしまったバリーは、ポツドルフの下で兵卒となることで許される。

激しい戦闘が続く中、バリーは、ポツドルフを助けた功績で金貨を与えられ、やがて戦争は終わる。

ベルリン
その後バリーは、ポツドルフの友情の証として、警察長官の伯父への口添えで、警察本庁に勤務することになる。

バリーは、オーストリア皇帝の手先でありスパイと思われる、アイルランド人の賭博師シュヴァリエ・ド・バリバリー(パトリック・マギー)の召使となり、正体を探る命令受ける。

シュヴァリエに雇われることになったバリーだったが、異国の地で同胞に接し、思わず感極まってしまう。

英語が話せないふりをして、イカサマに加担して召使に成り切ったバリーは、シュヴァリエと共に国を脱出し、二人は手を組み賭博師となり、上流社会で歓迎されるようになる。

危ない橋も渡りながら、ヨーロッパを転々としていた二人だったが、バリーのロマンスへの熱も冷めていた。

ベルギー
しかしバリーは、あるホテルのテラスで、莫大な富と美貌を持った貴婦人レディー・ホノリア・リンドン(マリサ・ベレンスン)に、一目で惹かれる。

レディー・リンドンはその後、バリーの人生に大きな影響を与えることになる。

その夜、レディー・リンドンと夫のチャールズ・R・リンドン卿(フランク・ミドルマス)、サミュエル・ラント牧師(マーレイ・メルヴィン)は、バリーとシュヴァリエと同じカードのテーブルに着き向かい合う。

そして、バリーとレディー・リンドンは、お互いを意識し合って恋に落ち、二人を疑う彼女の夫リンドン卿は急死する。

● 第2部
”バリー・リンドンの身にふりかかる、不幸と災難”

1773年6月15日。
バリーとレディー・リンドンは結婚し、彼はこの上ない地位を得ることになる。

バリーは、国王の認可を受け”リンドン”の称号を名乗ることになるのだが、レディー・リンドンへの情熱は冷めてしまう。

レディー・リンドンの前夫との子ブリンドン卿(ドミニク・サヴェージ)は、バリーが財産目当てで結婚したと決めつけ、義父を嫌う。

1年後には二人に子供が生まれ、ブライアン・パトリック・リンドンと名付けられる。

その後、二人の生活は別々となるものの、バリーはレディー・リンドンと子供達の元に戻る。

バリーに反抗を続けるブリンドン(レオン・ヴィタリ)は成長し、母には深い愛情を注ぐ。

その後、バリーは母ベルを城に呼び寄せ、ブライアンの成長を見守る。

ベルは将来を考え、財産をブリンドンに奪われないためにバリーに爵位を取ることを勧める。

バリーは、高名な弁護士ハラム卿(アンソニー・シャープ)やウェンドーヴァー卿(アンドレ・モレル)に意見を聞き、彼は爵位を得るために、連日のように高位の人々を招き祝宴を開き、また買収工作を始める。

弟ブライアンも愛せないブリンドンは、バリーに体罰を受け、彼の憎悪は限界に達し、人々の前で母までも侮辱して城から出て行こうとする。

激怒したバリーは、ブリンドンを殴り倒し乱闘騒ぎになり、それにより彼の貴族への道が絶たれてしまう。

やがて、バリーは請求書の山に埋もれ、財政的な窮地に陥り、レディー・リンドンの財産が注ぎ込まれる。

そんなバリーだったが、自分の全てであるブライアンを溺愛し、息子の誕生日に馬を贈ろうとする。

それを待ちきれないブライアンは、一人で厩舎に向かってしまい、調教の終わっていない馬から落馬して重傷を負う。

バリーとレディー・リンドンは手を尽くしたのだが、ブライアンは息を引き取る。

その後、深い悲しみから抜け出すことの出来ないバリーは酒に溺れ、レディー・リンドンは、祈りを捧げる日々を送り塞ぎ込む。

その間、城の管理はベルが仕切り、家庭教師として必要なくなったラント牧師を解雇する。

時折、錯乱状態を引き起こすレディー・リンドンは服毒自殺し、未遂に終わるものの重態となる。

それを知らされたブリンドンは、侮辱を受けたことと合わせてバリーに決闘を申し込む。

ブリンドンは先に撃つ権利を得るが銃が暴発してしまい、その後に銃を構えたバリーは、決闘を終わらせようと地面を撃つ。

バリーの厚意にも満足できないブリンドンは銃を構え、彼の放った弾丸はバリーのすねに当たる。

重傷を負ったバリーは左足ひざ下を切断することになり、城に戻ったブリンドンはベルを追放する。

バリーには、500ギニーの年金がブリンドンから与えられることになるが、条件としてイングランドを去ることを伝えられ、留まった場合は逮捕されることも知らされる。

そして、バリーとベルはアイルランドに戻ることになり、彼は二度とレディー・リンドンに会うことはなかった。

その後のバリーの人生は不明で、おそらくは賭博師として身を滅ぼしたであろう。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1750年代、アイルランド
幼い頃、父親を決闘で亡くしたレドモンド・バリーは、従姉のノーラに恋心を抱く。
しかし、彼女は町に駐留するイングランド軍の大尉クインと親交を持ち結婚することになる。
それに嫉妬したバリーが、クインを侮辱したため二人は決闘することになる。
バリーはクインを倒すものの追われる身となり、彼は20ギニーを持ちダブリンに旅立つ。
途中、追いはぎに遭い、無一文になったバリーは、イングランド軍に志願して戦場に向かう。
親友の死でショックを受け、その場を逃げたくなったバリーは、将校の軍服を奪い同盟国のプロシア軍の陣地を通り故国に帰ろうとする。
しかし、部隊指揮官ポツドルフ大尉に身分がばれてしまい、プロシア軍の兵卒として戦場で戦い、やがて終戦を迎える。
ポツドルフ大尉を救ったことにより、警察機関の仕事を与えられたバリーは、その後、スパイと思われる賭博師シュヴァリエの正体を探る任務を受ける。
バリーは、異国の地で、同胞のシュヴァリエに接して心通わせ、やがて二人は国外に逃亡し、 賭博師として、ヨーロッパ各地の上流社会で歓迎される。
そんな時バリーは、莫大な財産と美貌を合わせ持つ貴婦人、レディー・リンドンに出会い、一目で惹かれてしまう・・・。
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完璧なまでにこだわった、18世紀のヨーロッパ文化を映し出す見事な映像美、妥協を許さない、その雰囲気を伝えるセットと衣装、そしてスタンリー・キューブリックの演出、 予備知識からの想像を遥かに超える、その仕上がりに圧倒されるばかりだ。

少ないセリフの中で、その映像だけで伝える緊迫感や官能の世界、そして喜びと悲しみなどの表現の素晴らしさ・・・。

余りにも有名な、ジョン・オルコットの、ろうそくの光だけを使った撮影技術は、何度見ても唸らされる。

レディー・リンドン(マリサ・ベレンスン)の初登場シーンの美しさに驚いた直後、 彼女とバリー(ライアン・オニール)がカードのテーブルで向かい合い、レディー・リンドンが彼に心を奪われていく、数秒ごとの心の変化を捉えたショットなどは圧巻だ。

演出、撮影、脚本、編集、全てが完璧なまでに調和の取れた、これほどまでに完成度の高い作品はなかなかない。

レナード・ローゼンマンの、主人公の波乱の人生を暗示するような、ダイナミックな主題曲とクラシックな楽曲のバランスも素晴らしい。

第48回アカデミー賞では、作品賞以下7部門にノミネートされ、撮影、美術、衣装デザイン、音楽賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督・脚色賞

演技力にやや不安があり、個性に欠けるライアン・オニールに、その彼の特徴を生かした役柄を演じさせ、上記のように、セリフが殆どないマリサ・ベレンスンを、表情だけで演じさせるなど、キューブリックの演出力の見事さで、3時間のドラマは全く長さを感じさせない。

脱走兵の主人公を、友情を示しながら利用してしまうプロシア軍の指揮官ハーディ・クリューガー、主人公の従姉で初恋の相手ゲイ・ハミルトン、主人公と親交を深める、イングランド軍大尉ゴッドフリー・クイグリー、同胞であり、共に賭博師としてヨーロッパ各地を歩くスパイ、パトリック・マギー、リンドン家に仕える牧師マーレイ・メルヴィン、主人公らがカードで金を巻き上げる貴族スティーヴン・バーコフ、主人公の母親マリー・キーン、レディー・リンドン(M・ベレンスン)の前夫フランク・ミドルマス、その息子レオン・ヴィタリと少年期ドミニク・サヴェージ、貴族アンソニー・シャープアンドレ・モレル、主人公と決闘する大尉レナード・ロシターなどが共演している。


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