1950年に発表された、ノーベル文学賞受賞作家ペール・ラーゲルクヴィストの小説”Barabbas”を基に製作された作品。 イエス・キリストの代わりに釈放された罪人バラバの苦難の人生を描く、製作ディノ・デ・ラウレンティス、監督リチャード・フライシャー、主演アンソニー・クイン、シルヴァーナ・マンガーノ、アーサー・ケネディ、ジャック・パランス、アーネスト・ボーグナイン、ヴィットリオ・ガスマン他共演の歴史劇。 |
・アンソニー・クイン / Anthony Quinn / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:リチャード・フライシャー
製作:ディノ・デ・ラウレンティス
原作:ペール・ラーゲルクヴィスト”Barabbas”
脚本
クリストファー・フライ
ナイジェル・バルチン
ディエゴ・ファッブリ
撮影:アルド・トンティ
編集
レイモンド・ポールトン
アルベルト・ギャリッティ
音楽:マリオ・ナシンベーネ
出演
バラバ:アンソニー・クイン
ラケル:シルヴァーナ・マンガーノ
ピラト:アーサー・ケネディ
トルヴァド:ジャック・パランス
ペトロ:ハリー・アンドリュース
ルシウス:アーネスト・ボーグナイン
サハク:ヴィットリオ・ガスマン
サラ:ケティ・フラド
ジュリア:ヴァレンティナ・コルテーゼ
ルフィオ:ノーマン・ウーランド
アリマタヤのヨセフ:アーノルド・フォア
ラザラス:マイケル・グウィン
弟子:ローレンス・ペイン
ヴァサシオ:ダグラス・フォーリー
貴族:シャロン・テート
イタリア/アメリカ 映画
配給 ロンビア・ピクチャーズ
1961年製作 137分
公開
イタリア:1961年12月23日
北米:1962年10月10日
日本:1962年8月31日
北米興行収入 $2,900,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
2000年前のエルサレム。
ユダヤ属州総督ピラト(アーサー・ケネディ)は、扇動と冒涜の罪でナザレのイエスを捕え、死刑に処すことを告げる。
一人の男が発言し、ユダヤの習わしで、祝祭の際には一人に恩赦が与えられると言われたピラトは、イエスかバラバかを民衆に選ばせる。
バラバという声が多く、彼が盗賊で人殺しだと言われたピラトだったが、イエスを鞭打ち磔刑に処することを告げる。
鞭打たれたイエスは連行され、バラバ(アンソニー・クイン)は解放される。
バラバは、無抵抗なイエスの姿に何かを感じながら、十字架を背をわされる彼を見つめる。
仲間達の元に戻ったバラバは、サラ(ケティ・フラド)達に歓迎され、恋人ラケル(シルヴァーナ・マンガーノ)に会おうとする。 サラから、ラケルがナザレの予言者で罪人の男に夢中だということを知らされたバラバは、エルサレムの人気者であり王だと言われ、皆と大いに楽しむ。 しかしバラバは、十字架を担ぐイエスの姿が窓から見えたために、騒ぐのをやめる。 深刻な表情で現れたラケルから、あの方を救いたかった、恐ろしいことが起きるが、神は許して下さると言われたバラバは、人が変わってしまったような彼女が気になる。 ラケルに迫るバラバは、イエスは神の使いだと言われ、代わりに釈放されたことで戸惑う。 イエスがゴルゴダの丘で磔刑になると、あたりが暗くなり、昼間なのに不気味だと思いながら、サラは明かりをつけさせる。 目が見えないバラバは暗闇の中で動揺し、ラケルから、イエスを殺したために起きたことだと言われる。 外に出たバラバはゴルゴダの丘に向かい、磔刑になったイエスを見つめる。 天に召されたイエスは十字架から下ろされ、バラバは、彼の教えの信者だった人々の視線を気にする。 埋葬されるイエスを見守るラケルは、ただの人間だと言うバラバに対し、二日で生き返ることを約束したと伝える。 それが信じられるはずもないバラバは、笑いながらサラの元に戻る。 3日目の朝、イエスの墓に向かったバラバ、開いている入り口の前にラケルが座っていることに気づく。 墓の中に入ったバラバは空であることを確認し、神の御業だと言うラケルから、天使が現れたその時の様子を知らされる。 それを信じないバラバだったが、イエスがこのことを予言したと言うラケルに、墓から出る様子を見たのか尋ねる。 光がまぶしくて目を覆ってしまったと話すラケルは、見えた時には男女が花園にいたと伝える。 男女は直ぐに姿を消し、影しか見えなったがイエスに違いないと言うラケルは全て真実だと伝えて、殺される前にウソをつくはずがないと話す。 イエスが話したことを尋ねたバラバは、”愛し合うように”と言ったことを知る。 何もかも信じられないバラバはその場を去ろうとするが、ラケルから、陶器市場の古い家の住人が詳しい話を知っていると言われる。 死体泥棒だと言うバラバに、真実を知るのが怖いからだと伝えたラケルだったが、聞き入れてもらえない。 陶器市場に向かい、ペトロ(ハリー・アンドリュース)らイエスの信者に会ったバラバは、彼らから、自分達も待っていると言われる。 人は現世の暗い海で死んでも、光の中で生き返ることができると言われたバラバは、イエスが蘇って導いてくれると信じるペトロらに、真実を知る男の元に案内される。 生き返ったというラザラス(マイケル・グウィン)から、イエスは神の子だと言われたバラバは死について尋ね、それは”無”だということを知らされる。 仲間達の元に戻り酔ってサラを連れだしたバラバは、ラクダを連れた男達と喧嘩になり、相手を叩きのめす。 サラが酔い潰れてしまったためにバラバはその場を離れ、イエスが死んだのは自分のせいではなく、自分は生きる権利があるはずだと言って嘆く。 信者達と集まっていたラケルは、イエスが現れることを信じ、熱心に彼の教えを皆に伝える。 そこに現れたバラバは、ラケルが不幸を招く女だと伝えるものの、彼女から信じたくないだけだと言われる。 その場の意見は分かれ、死病の谷に向かい自由の訪れを告げると言うラケルだったが、そこに現れた番兵は、罪人の彼女を捕えて連行する。 それを制止しようとしたバラバは、番兵に殴り倒される。 石うちの刑に処せられたラケルは、神を見ながら穏やかな表情で息絶える。 仲間達に合流したバラバは盗賊となるが、ローマ兵に捕らえられてしまう。 祝日に命を救われた者は死刑にはできないと言われたバラバは、死が訪れるまでシチリアの硫黄鉱山での重労働を命ぜられる。 死を覚悟し望んでいたバラバは、それが叶わないために、イエスの仕業だと考えて彼を憎む。 シチリア。 何人もの相棒が死に、サハク(ヴィットリオ・ガスマン)と鎖につながれることになったバラバは、自分の名前を訊いて驚く彼から、釈放された男か訊かれる。 サハクに襲われたバラバは、イエスが身代わりになったために、彼を信ずる者は皆が憎むと言われる。 二人の喧嘩を止めた看守に呼ばれたバラバとサハクは、罰として特別な仕事をさせられる。 未だにイエスの噂が広まっていることに驚くバラバは、サハクから、自分達に存在を示すのが神の意思であり、心から信じていると言われる。 イエスに会った唯一の人間であり、全てを見ていたのに口を閉ざしている理由と何を恐れているのかを問われたバラバは、目にしたことは錯覚で、イエスは普通の人間と同じように死んだとサハクに伝える。 バラバは、墓が空だったのは遺体が盗まれたからだと話す。 疲労困憊で体が弱るサハクを励ますバラバは、鎖を外されて連れて行かれる彼を見守るしかなかった。 その時、落盤が起きて作業場は混乱し、サハクを助けたバラバは、ほぼ全員が死亡する中、奇跡的に救出される。 20年もの間、地下で生活していたバラバは、目隠しをして地上に引き上げられ、総督ルフィオ(ノーマン・ウーランド)の計らいで畑仕事に回される。 回復したサハクと共に、陽の光の下で労働する喜びを感じるバラバは、神に感謝して力を感じると言うサハクに、その話はたくさんだと伝える。 神を感じながらそれを否定し、代わりに死んだイエスを心から追い出すこともできないと言われたバラバは、反論することができなかった。 自分のメダルをサハクに渡したバラバは、それに十字架を彫らせる。 妻ジュリア(ヴァレンティナ・コルテーゼ)を伴い農地を視察していたルフィオは、地下から生還したバラバとサハクを呼び寄せて名前を聞く。 ジュリアは、頼もしい二人を見てサハクの体に触れる。 二人を作業に戻したルフィオはローマからの伝令を受けて、元老院議員に選ばれたことをジュリアに伝える。 バラバとサハクの力のお陰であり、触れてよかったと言うジュリアは、二人をローマに連れて行くことをルフィオに提案し、大都市に向かえることを喜ぶ。 ジュリアを伴いローマに到着したルフィオは、連れてきたバラバとサハクを剣闘士の養成所に入れる。 ルフィオは、皇帝ネロが三度の自由を与えた無敵の剣闘士トルヴァド(ジャック・パランス)を紹介される。 その様子を見ていたバラバは戦い抜くことをサハクに伝え、血の匂いにより人は正気を失うと言われるものの気にしない。 剣闘士には年をとり過ぎたバラバが不死身だと言われたトルヴァドは、彼を挑発して力の差を見せつける。 その後、厳しい訓練の日々を続けたバラバとサハクは、それに耐え抜く。 そんな時サハクは、奴隷のルシウス(アーネスト・ボーグナイン)がキリスト教徒であることを知る。 パンの割り方で信者と分かったと言われたサハクは、バラバがイエスに会ったことをルシウスに伝える。 驚いたルシウスは、自分達が絶滅させることをサハクに話し、イエスの使途ペトロが来ている教会に案内すると伝え、カタコンベで集会が開かれることを知らせる。 闘技場での闘いが始まり、相手を倒し観客から止めを刺すようにと促されたサハクはそれを拒む。 剣闘士達から、皇帝がいたら逆らえないので従うしかないと言われたサハクは、神は命を尊ぶと伝える。 バラバに制止されるものの、真の神は人間の創造を超えていると言うサハクは、その偉大さを伝えて、至る所にいる主の教えは愛することだと話す。 明日、皇帝の前で命の尊さを訴えると言うサハクは、生前の神の子を見ているバラバが全てを知っていると伝える。 しかし、バラバとサハクは扇動と反乱の罪で逮捕されてしまい、ルフィオから非難される。 サハクが、国家を混乱させているキリスト教の信者だと知ったルフィオは、自分は国ではなく神のものだと言われる。 メダルの印を確認したルフィオから信者かと問われたバラバは、それを否定し、自分には神はないが、1度だけ信じようとしたと伝える。 自分の言葉は偽りだと認めれば命だけは助けると言われたサハクは、それを拒み主を選んだため、ルフィオは、有罪を確定して明朝、処刑することを決める。 バラバのメダルの印を消したルフィオは、信じていないのにつけていることはないと伝える。 生き残るのは神の意思だとバラバに伝えたサハクは、主の目的に彼が必要とされていると考える。 翌朝、雨の中、闘技場に連れて行かれたサハクは、バラバらの前で処刑されることになる。 処刑人が槍を外したために、それを手にしたトルヴァドは、サハクに槍を放ち、楽になれたと言ってその場を去る。 バラバは、サハクの遺体を闘技場の外の穴に運ぶ。 戦車で闘技場に向かい皇帝ネロの前に雄姿を見せたトルヴァドは、立ち向かってくる剣闘士を二人倒す。 自分の番になったバラバは慎重に戦い、苛立つトルヴァドの隙を見て、彼が持つ網を戦車の車輪に絡める。 戦車に引きずられたトルヴァドは傷つき、剣を渡されたバラバは、観客から止めを刺すことを促される。 皇帝に剣をかざしたバラバは、トルヴァドの喉を突き刺す。 観客はバラバを称え、皇帝に呼ばれた彼は、伝説の人物であり民衆にも認められているため自由を与えられ、その証であるバトンを渡される。 それを見ていたルフィオとジュリアは満足する。 遺体を信者に渡したバラバは、その場にいたルシウスから、こうなる前に救うべきであり、今更、助けても遅いと言われる。 自分には何もできず、サハクは自ら死を選んだとルシウスに伝えたバラバは、自分が生きることが神の意思だと言っていたと話す。 全てを否定し、主が招いた時も拒んだと言われたバラバは、生き続けよという言葉だけを信じる理由を訊かれる。 今だけ神を信じるのはまやかしの信仰だと言われたバラバは、姿を消したルシウスを捜す。 迷いながら出口にたどり着いたバラバは”ローマの大火”に気づき、キリスト教徒の放火だと知らされる。 古い世界が燃えて新しい王国が出現すると考えたバラバは、神を信じ従うことを誓う。 松明を手にして酒蔵や屋敷に火を放ったバラバは、兵士に捕らえられながら、主が新しい世界を創造されると伝えて抵抗する。 キリスト教徒の元に連れて行かれたバラバは、イエスに代わり釈放された者だと知られる。 自分達は放火犯ではなく、そんなことでは王国は来ないと、かつて会ったペトロから言われたバラバは、放火は皇帝の仕業だと知らされる。 犬死にだと言うバラバに、殉教者の死や20年の苦しみは無益だと思うのかと問うペトロは、人間はそんな存在ではなく、一人一人が一つの世界だと伝える。 教えとは正反対なことをしていたと言うバラバは、神が身代わりになった理由を考え、ペトロから、正反対だからこそ近い存在だったと言われる。 主は常にそばにいたのであり、心の中で戦いを繰り返したことこそが神への道であり、悩むことで神を知り、それにより神の到来を促すと話すペトロから、バラバは、王国は自分達の心の中にあると言われる。 恐れることはなく、この後も殉教は何年も続くだろうと言うペトロは、世の中は簡単には変わらないが、人々は自分達の時代を振り返り、希望を思い出すと伝える。 その後、信者達と共に磔にされたバラバは、神に全てを委ねて息を引き取る。
...全てを見る(結末あり)
二人一組で鎖につながれて重労働に従事させられたバラバは、何年もそれに耐え抜く。
*(簡略ストー リー)
2000年前のエルサレム。
ユダヤ属州総督ピラトは、扇動と冒涜の罪でナザレのイエスを捕えて死刑に処すことを告げるものの、罪人を解放するという祝日の習わしに従い、民衆にイエスか盗賊のバラバかを選ばせる。
その結果バラバは釈放され、イエスは磔刑に処せられる。
仲間達の元に戻ったバラバは、イエスの教えの信者となっていた恋人ラケルから、主は二日後に生き返ると言われる。
それを信じないバラバだったが、墓から姿を消したイエスが生き返ったことを信じるラケルが、ローマに捕らえられて処刑されたために悲しみ、再び盗賊生活に戻る。
捕らえられたバラバは死罪は免れるものの、ピラトの命令でシチリアの硫黄鉱山での重労働を課せられる。
20年もの間、地下での生活に耐え抜いたバラバは、イエスの信者であるサハクと共に作業をすることになる。
サハクと鎖でつながれたバラバは、神を信じることの意味を考える日々を送ることになるのだが・・・。
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1951年にノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの作家ペール・ラーゲルクヴィストが、前年に発表した小説”Barabbas”を基に製作された作品。
自分が釈放されたことで身代わりとなり死んだ、イエス・キリストの存在や教えを受け入れることができずに悩み続けるバラバの苦難の人生を描く、宗教的観点から描く歴史叙事詩の超大作。
製作はイタリアの大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスであり、撮影は”チネチッタ・スタジオ”他イタリア各地で行われた。
イエス・キリストの教えをテーマにし、重労働を課せられながらローマ貴族の計らいで闘いの場で生きる運命となる主人公が辿る人生は、製作が近かった「ベン・ハー」(1959)の内容にやや似ている。
2000年前のエルサレムの街並み、宮殿や”フォロ・ロマーノ”、剣闘士闘技場の様子など、リチャード・フライシャーのスケール感のある演出と映像他、個性派スター豪華競演も見どころの作品。
終始、自省的ムードが漂うストーリーなのだが、歴史スペクタクル大作としての見せ場も多く、観る者に深く訴えるドラマでもあり見応え十分だ。
主人公のバラバを演ずるアンソニー・クインは、粗野な悪党でありながら人間味を感じさせる、圧倒的な存在感でスクリーンを支配する。
バラバの恋人であり、イエスの教えを信ずるようになるシルヴァーナ・マンガーノ(当時のディノ・デ・ラウレンティス夫人)、バラバを釈放してイエスの処刑を命ずるユダヤ属州総督ピラトのアーサー・ケネディ、最強の剣闘士を迫力で演ずるジャック・パランス、バラバのイエスの教えを説くペトロのハリー・アンドリュース、バラバに関わるキリスト教徒の奴隷アーネスト・ボーグナイン、バラバと運命を共にするキリスト教徒のヴィットリオ・ガスマン、バラバの愛人ケティ・フラド、シチリア総督ノーマン・ウーランド、その妻ヴァレンティナ・コルテーゼ、イエスの遺体を引き取るアリマタヤのヨセフのアーノルド・フォア、生き返った者としてバラバに死の意味を説くマイケル・グウィン、その他ローレンス・ペイン、ダグラス・フォーリー、そしてシャロン・テートが貴族として闘技場の場面に登場する。