1983年に発表された、ディック・キング=スミスの児童小説”The Sheep-Pig”を基に製作された作品。 牧場主に引き取られた食べられる運命の子ブタが牧羊犬の代わりになろうと奮闘する姿を描く、製作、脚本ジョージ・ミラー、監督、脚本クリス・ヌーナン、主演ジェームズ・クロムウェル、マグダ・ズバンスキー、クリスティーン・カヴァナー、ミリアム・マーゴリーズ、ヒューゴ・ウィーヴィング他共演のコメディ・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:クリス・ヌーナン
製作
ジョージ・ミラー
ダグ・ミッチェル
ビル・ミラー
原作:ディック・キング=スミス”The Sheep-Pig”
脚本
ジョージ・ミラー
クリス・ヌーナン
撮影:アンドリュー・レスニー
編集
マーカス・ダルシー
ジェイ・フリードキン
美術・装置
ロジャー・フォード
ケリー・ブラウン
音楽:ナイジェル・ウェストレイク
出演
アーサー・ホゲット:ジェームズ・クロムウェル
エズメ・コーデリア・ホゲット:マグダ・ズバンスキー
ホゲットの娘婿:ポール・ゴダード
ベイブ:クリスティーン・カヴァナー
フライ:ミリアム・マーゴリーズ
レックス:ヒューゴ・ウィーヴィング
フェルディナンド:ダニー・マン
メー:ミリアム・フリン
ダッチェス:ルーシー・テイラー
ナレーター:ロスコー・リー・ブラウン
オーストラリア/アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1995年製作 92分
公開
オーストラリア:1995年12月14日
北米:1995年8月4日
日本:1996年3月9日
製作費 $30,000,000
北米興行収入 $66,600,000
世界 $254,134,900
■ アカデミー賞 ■
第68回アカデミー賞
・受賞
視覚効果賞
・ノミネート
作品・監督
助演男優(ジェームズ・クロムウェル)
脚色・美術・編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
収穫祭に来ていた農場主のアーサー・ホゲット(ジェームズ・クロムウェル)は、体重当てコンテストの賞品である子ブタを見た瞬間に何かを感じる。
子ブタの体重を伝えたアーサーは、妻エズメ(マグダ・ズバンスキー)に呼ばれたため、彼女の元に向かう。
翌日、電話を受けたアーサーは、子ブタが当たったことを知らされて取りに行く。
アーサーが連れ帰った子ブタが気になった牧羊犬の母犬フライ(ミリアム・マーゴリーズ/声)は、子供達を連れてそれを見に行く。
子ブタに話しかけたフライは、彼がベイブ”赤ちゃん”(クリスティーン・カヴァナー/声)と呼ばれていたことを知る。 ママに会いたいと言って泣き出したベイブを励ますフライは、独り立ちできるまで自分が面倒をみることを伝える。 その様子を見ていたフライの夫レックス(ヒューゴ・ウィーヴィング/声)は、甘やかすのはよくないと彼女に伝える。 フライの子供達は、新しい友達ができたことを喜ぶ。 翌朝、アーサーの餌を与える合図を聞いたフライは、子犬達を連れて家に向かうが、ベイブには入れないことを伝える。 家の中に入れないベイブは、自分をクリスマスの料理に使おうとするエズメの考えも知らずに、外で彼女から餌を与えられる。 その後、フライと子犬達はアーサーと共に羊の元に向い、ベイブはそれについて行けない。 年老いた羊メー(ミリアム・フリン/声)の元に向かい話をしたベイブは、オオカミに警戒するようにと言われる。 フライも危険だと言うメーは、付き合わない方がいいとベイブに伝える。 夕方、戻って来たフライを警戒するベイブは、優しく語りかけられ、メーの言ったことは間違いだと思い、疑いや悪意を持つのは止めようと考える。 翌朝、アーサーとエズメが出かけた後、悪だくみを考えるアヒルのフェルディナンド(ダニー・マン/声)は、ベイブを連れて家に向かう。 エズメが使う目覚まし時計を盗むと言うフェルディナンドは、アヒルは人間に食べられる運命だと話す。 毎朝、鶏に代わり時を伝える仕事を思いつき、人間に自分が必要だとアピールしていたフェルディナンドだったが、目覚まし時計にそれを奪われたのが理由だった。 ブタは家に入れないと言うベイブは、フェルディナンドが猫アレルギーだったため、自分が行くしかなかった。 中で寝ている猫のダッチェス(ルーシー・テイラー/声)に気づかれないように、二階に向かおうとしたベイブだったが、足に毛糸が引っかかる。 それを見ていたフェルディナンドは仕方なく家に入り、ベイブの糸を外す。 自分がやると言ってベイブを外に出したフェルディナンドは、二階の寝室に向かう。 ベイブがついて来てしまったことに驚いたフェルディナンドは、時計をテーブルから落とす。 それをベイブがくわえて居間に向かい、フェルディナンドは、ダッチェスに気づかれないようにして家から出ようとする。 フェルディナンドはクシャミしそうになり、それを止めようとしたベイブは時計を落してしまい、鳴った目覚ましの音で、眠っていたダッチェスが目を覚まし騒動になる。 その後、帰宅したアーサーとエズメは、ペンキだらけのダッチェスと荒れ放題の居間に驚き、フェルディナンドとベイブの足跡に気づく。 主人に忠実なレックスは、問題を起こしたベイブを厳しく叱り、姿を消したフェルディナンドと付き合うことを禁ずる。 納屋ではレックスの説教が続き、家では、クリスマスの料理をブタの丸焼きにするかアヒルのオレンジ風味にするかで、アーサーとエズメの意見が割れていた。 数日後、子供達を売りに出されたフライは悲しむが、ベイブにママと呼ばれて彼を可愛がる。 クリスマス。 ベイブを料理することばかり考えるエズメに、来年まで太らせれば、市場のハムの部で優勝できるとアーサーは伝える。 結局、料理されたのは鶏のロザンナで、それを知ったフェルディナンドは我慢の限界に達して出て行こうとする。 門を開けてフェルディナンドを見送ったベイブは、敷地から出てはいけないと知りながら、牧場で異変が起きていることに気づく。 羊泥棒が牧場に戻っていたメー達を追い回し、ベイブは、それをアーサーに知らせようとして家に戻る。 ベイブは、フライとレックスにそれを伝え、騒ぎに気付いたアーサーは牧場に向かう。 多くの羊が連れ去られるが、アーサーは、知らせてくれたベイブを褒める。 その後ベイブは、レックスとフライと共に牧場に連れて行かれ、アーサーから牧羊犬の役割を教わる。 ところが、ベイブは羊達にバカにされてしまい、フライに弱音を吐く。 ベイブを励ますフライは、相手を見下すように指示するが、レックスはそれを止めさせようとする。 もう一度、羊達の元に向かったベイブは威嚇して、一匹に噛みつく。 しかし、羊に説教されたベイブは、心優しい子ブタがオオカミのようになれるはずがないと言われる。 レックスは、自分達が先祖代々続く誇りある牧羊犬であることをフライに伝え、子ブタごときに仕事を取られると言って怒りをぶちまける。 ベイブは羊達と和やかに話し、オオカミの真似などしないで、礼儀正しく頼めばいいと言われる。 暫くして、ベイブが羊達を整列させて歩かせているのに気づいたフライは、それをアーサーに知らせる。 諦めかけていたアーサーは、その様子を見て驚く。 どうやったのかをフライに聞かれたベイブは、礼儀正しく頼んだと答える。 フライから命令すればいいと言われるものの、ベイブは、話し合えば分かると伝える。 レックスとも話し合ってみようかと考えたベイブだったが、夫のことは自分に任せるようにとフライに言われる。 その夜、態度を変えないレックスに意見したフライは、彼と争いになり、それに気づいたアーサーが制止する。 フライは怪我をしてしまい、まだ話し合いで解決できると思ったベイブは、鎖につながれたレックスに謝罪する。 納得いかないレックスがベイブに襲いかかろうとしたため、アーサーは獣医を呼んでレックスに鎮静剤を打ってもらう。 羊達に薬を飲ませるのに梃子摺るアーサーは、仕方なくベイブに牧羊犬の代わりをさせる。 ベイブの頼みを聞いた羊達は、アーサーの指示に従い薬を飲む。 そんな時ベイブは、牧羊犬の競技会があることをフライから知らされる。 レックスは最強の牧羊犬だったのだが、かつて、冬の大雨で水の中に取り残された多くの羊を助けられず、自分も聴力を失いかけた。 そのせいでレックスが気難しいことを知ったベイブは、その事件の後で行われた牧羊犬競技会で、レックスは力を発揮できずに、辛い思いをしたという話をフライから聞かされる。 ベイブを競技会に出すことを考えたアーサーは準備を始めるが、彼の行動が正気とは思えないエズメは呆れてしまう。 ある朝、皆がまだ目覚めない前に牧場に向かったベイブは、羊達が野犬に襲われているのに気づく。 ベイブは犬を追い払うが、傷ついたメーが息を引き取る。 涙しながらメーの死を悲しんだベイブだったが、その場に現れたアーサーは、鼻に血をつけていたベイブが殺したと考える。 ベイブが殺したとは思えないフライは、羊達に誰が犯人かを尋ねるが、頭が鈍い羊達は明確に答えない。 家に戻ったアーサーは、銃を持ち出してベイブを殺そうとする。 ベイブに助けられたと羊達に言われたフライは、足を引きずりながら急いで家に戻る。 アーサーはベイブに銃を向けながら、フライの吠える声に気づき、エズメに呼ばれる。 警察から電話があったことをアーサーに伝えたエズメは、他の牧場の羊が野犬に襲われたことを知らせる。 納得したアーサーは、銃の弾丸を抜き取る。 婦人会の全国大会のため、エズメは数日間、家を留守にすることになるが、何か普段と違うアーサーが心配ではあった。 アーサーは、遠慮なしに家に入れたベイブを、牧羊犬の競技会に参加させることを決めて申込書を書き、参加する動物の名前は”ブタ”と記入する。 娘夫婦にもらったFAXで、アーサーは申込書を送信する。 アーサーは、ベイブをいじめるダッチェスを表に出してしまう。 その後、雷雨で停電になり、ベイブに近づいたダッチェスは、いじめたことを謝罪する。 しかしダッチェスは、ブタが世の中のためになるのは、食べられる時だけだと言ってベイブを怖がらせる。 ショックを受けたベイブはフライの元に向い、ダッチェスに言われたことを話す。 ブタが食用であることをフライが認めたため、ベイブは益々、悲しくなる。 翌朝、ベイブが姿を消したことを知ったフライは、レックスに助けを求める。 アーサーにそれを知らせるようフライに指示したレックスは、墓地で怯えていたベイブを見つけて、優しく語り掛ける。 家に帰っても元気がないベイブを、アーサーは獣医に診せて、ベイブに寄り添うレックスは、彼を励ます。 ベイブのことを気遣うアーサーは、柄にもなく歌って踊り、動物達はそれを見て驚く。 元気が出たベイブが餌を食べたことを知ったアーサーは、出場順を最後にしてもらい、競技会の会場に向かう。 競技会は始りテレビ中継もされ、会場に着いたアーサーは、ベイブとフライを羊の檻の前で待たせる。 ベイブが羊達に話しかけるものの無視されたため、フライは脅しをかけて羊達を怯えさせる。 ホテルに着いたエズメも、他の夫人達と共に競技会の様子をテレビで見る。 フライから羊達のことを聞いたレックスは、牧場に向う。 最後の競技者として、アーサーがベイブと出場することを知ったエズメは卒倒しそうになる。 牧場に着いたレックスは、競技会の羊がベイブの言うことを聞いてくれないことを羊達に伝える。 羊達は、自分達に優しく接することをレックスに約束させて、今日限りしか使わないことを条件に、秘密の暗号を教える。 ブタの出場を許可するかについて競技会では話し合いが行われ、アーサーが連れてきた動物を拒否する項目はないという結論になる。 レックスは競技場に向かうため、嵐で断線した電線を直した工事業者のトラックに飛び乗る。 出場する意思があればそれを拒まないと委員長に言われたアーサーは、競技場に向かう。 ところが、現れたのが犬ではなくブタだったために驚いた観客は、アーサーとベイブを見て嘲り笑う。 それを知ったエズメは、気を失ってしまう。 競技に間に合ったレックスはベイブに暗号を教えて、フライと共に彼を見守る。 競技は始り、アーサーに指示されて羊達に駆け寄ったベイブは、暗号を伝える。 暫くその状態は続くが、整列して歩き出した羊達は、ベイブの指示に従いサークルの中に入り、その様子を見た観客席は静まり返る。 そしてベイブは、アーサーの開けた木の柵の中に、羊達を誘導する。 アーサーが柵の扉を閉めた瞬間、観客の大歓声で会場はどよめく。 感激したエズメは、涙を流して喜ぶ。 審査員は全員が100点を出し、ベイブの優勝が決定し、歓声は鳴りやまない。 アーサーとベイブは、満足感に満たされながら寄り添っていた。 電気が復旧したアーサーの家では、居間のテレビの中継を外から見ていた動物達が、アーサーとベイブの優勝を知り喜ぶ。 いつも物静かなアーサーは、ベイブを称賛する。 ”よくやった、よくやったぞ” ベイブは、笑顔のアーサーを見つめる。
...全てを見る(結末あり)
アーサーとエズメは、孫達を連れてきた娘夫婦を歓迎する。
参考:
・「ベイブ」(1995)
・「ベイブ/都会へ行く」(1998)
*(簡略ストー リー)
農場主のアーサーは、収穫祭の体重当てコンテストで子ブタを手に入れる。
子ブタのベイブは、クリスマスの料理として食べられることを知らぬまま、牧羊犬の母犬フライを母親のように慕う。
それを良く思わないフライの夫レックスは、言い争いになり彼女を傷つけてしまう。
アーサーは、鎖につなぎ鎮静剤を打ったレックスの代わりに、ベイブを牧羊犬ならぬ牧羊ブタにしようとする。
何とかクリスマスの料理になることを免れたベイブは、牧羊犬の競技会があることを知り、アーサーも、ベイブと共にそれに出場することを真剣に考えるのだが・・・。
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食べられる運命の子ブタが、牧羊犬の代わりになるため、周囲に励まされながら努力する姿を通し、人生の厳しさ、優しさ、勇気、そして正直に生きることの大切さなどをストレートに描く、クリス・ヌーナンの繊細な演出が光る、お勧めの感動作。
「マッドマックス」シリーズなどで世界的知名度を得た、ジョージ・ミラーが製作を担当した意欲作で、心温まる作品に仕上がっている。
ジョージ・ミラーは、続編「ベイブ/都会へ行く」(1998)では監督し、製作と脚本を兼ねている。
世界的な評価を得た本作は、第68回アカデミー賞で作品賞をはじめ7部門でノミネートされ、視覚効果賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
助演男優(ジェームズ・クロムウェル)
脚色・美術・編集賞
北米興行収入は約6700万ドル、全世界ではなんと2億5400万ドルの大ヒットとなった。
CGなどを駆使した視覚効果は見事なのだが、本物の動物達の演技がとにかく素晴らしい。
*動物達は総数500匹以上が使われた。
紛れもない現代劇なのだが、舞台となる農場の風景などを含め、ファンタジックな雰囲気も楽しめる作品。
また、キッズ・ムービー的な要素もあるのだが、食べられる運命のブタや動物の厳しい現実などもキッチリと描き、人生について様々なことを教えてくれる内容は、あらゆる年齢層に支持された。
人生の年輪を感じさせてくれる、仕事一筋で寡黙な牧場主を見事に演じ、アカデミー助演賞にノミネートされたジェームズ・クロムウェル、その妻マグダ・ズバンスキー、二人の娘婿ポール・ゴダード、動物達の声、子ブタのベイブのクリスティーン・カヴァナー、優しい牧羊犬の母犬ミリアム・マーゴリーズ、気難しいその夫ヒューゴ・ウィーヴィング、トラブルばかり起こすアヒルのダニー・マン、老羊のメーミリアム・フリン、意地悪猫のルーシー・テイラー、そして、ナレーターはロスコー・リー・ブラウンが担当している。