イギリス人作家イアン・マキューアンが2001年に発表した”Atonement”を基に製作された作品。 使用人の息子と令嬢の恋と2人の運命を描く、監督ジョー・ライト、主演ジェームズ・マカヴォイ、キーラ・ナイトレイ、シアーシャ・ローナン、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ロモーラ・ガライ他共演のロマンス。 |
・ジェームズ・マカヴォイ / James McAvoy / Pinterest
・シアーシャ・ローナン / Saoirse Ronan / Pinterest
・ベネディクト・カンバーバッチ / Benedict Cumberbatch 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョー・ライト
製作総指揮
ライザ・チェイシン
リチャード・エアー
ロバート・フォックス
デブラ・ヘイワード
製作
ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
ポール・ウェブスター
原作:イアン・マキューアン”Atonement”
脚本:クリストファ・ハンプトン
撮影:シーマス・マクガーヴェイ
編集:ポール・トーシル
美術・装置
サラ・グリーンウッド
ケイト・スペンサー
衣装デザイン:ジャクリーヌ・デュイラン
音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演
ジェームズ・マカヴォイ:ロビー・ターナー
キーラ・ナイトレイ:セシーリア・タリス
ロモーラ・ガライ:ブライオニー・タリス(18歳)
シアーシャ・ローナン:ブライオニー・タリス(13歳)
ブレンダ・ブレッシン:グレイス・ターナー
ヴァネッサ・レッドグレイヴ:ブライオニー・タリス(77歳)
パトリック・ケネディ:リオン・タリス
ハリエット・ウォルター:エミリー・タリス
ベネディクト・カンバーバッチ:ポール・マーシャル
ジュノ・テンプル:ローラ・クインシー
ダニエル・メイズ:トミー・ネトル
ノンソ・アノツィー:フランク・メイス
アンソニー・ミンゲラ:インタビュアー
イギリス 映画
配給
ユニバーサル・ピクチャーズ(世界)
フォーカス・フィーチャーズ(北米)
2007年製作 123分
公開
イギリス:2007年9月7日
北米:2007年12月7日
日本:2008年4月12日
製作費 $30,000,000
北米興行収入 $50,921,740
世界 $129,266,060
■ アカデミー賞 ■
第80回アカデミー賞
・受賞
作曲賞
・ノミネート
作品
助演女優(シアーシャ・ローナン)
脚色・撮影・美術・衣装デザイン賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1935年、イングランド、夏のある日、タリス邸。
小説家を夢見る末娘ブライオニー(シアーシャ・ローナン)が、休暇で帰省するの兄リオン(パトリック・ケネディ)らを歓迎するための戯曲“アラベラの試練” を書き上げ、母エミリー(ハリエット・ウォルター)に傑作だと褒められる。
ブライオニーは、家庭の問題でタリス家に預けられている、いとこのローラ(ジュノ・テンプル)と双子の弟に役をつけるが、遊び盛りの子供達は稽古を放り出してしまう。
ケンブリッジ大学を卒業したブライオニーの姉セシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、将来進むべき道を見つけられず、屋敷内で平凡な毎日を過ごしていた。
屋敷の使用人の息子ロビー・ターナー(ジェームズ・マカヴォイ)も、ブライオニーの父の援助を受け、セシーリアと同じケンブリッジを卒業し医学生になる準備を進めていた。 セシーリアがロビーを避けている雰囲気に気づいたブライオニーだったが、セシーリアは、身分が違うだけだと答える。 稽古が進まず呆然と庭を眺めていたブライオニーは、噴水の前で言い争いをするセシーリアとロビーに気づき、セシーリアが服を脱ぎ始めるのを目撃して動揺する。 実は、セシーリアが屋敷から持ってきた花瓶が壊れ、割れた破片を彼女が噴水から拾っただけの些細なことだった。 やがて、友人のポール・マーシャル(ベネディクト・カンバーバッチ)を伴い、兄リオンが屋敷に帰ってくる。 リオンに再会しポールを紹介されたロビーは、夕食会に招待される。 ロビーは、噴水でのセシーリアへの態度を詫びた手紙をタイプし始めるが、彼女に対する思いで猥雑な文面になってしまう。 正装して夕食会のために屋敷に向かうロビーは、その途中でブライオニーに出くわし、セシーリアに手紙を渡してもらうために、彼女にそれを預ける。 しかしロビーは、手紙を渡した後で、それが書き直したものでないことに気づく。 ロビーはブライオニーを呼び戻すことができず、彼女はそれを読んでしまいショックを受ける。 ブライオニーから手紙を渡されたセシーリアは、それを読まれたことを知り困惑する。 屋敷に着いたロビーは、セシーリアと話して謝罪し、もう一通の手紙を書いたことも伝える。 そして、求め合う二人は書斎で愛し合ってしまう。 その様子を目撃したブライオニーは動揺し、彼女に気づいた二人は、何も言わずに書斎から立ち去る。 夕食が始まり、ローラと喧嘩をした双子が家出してしまい、屋敷の者たちで手分けをして二人を捜し始める。 そんな中、ローラが何者かに襲われ、それを目撃したブライオニーは、ロビーを犯人だと決めつける。 ブライオニーは、警察にロビーが犯人だと話し、母エミリーに彼がセシーリアに書いた手紙を渡してしまう。 その後、双子を連れ戻したロビーが屋敷に帰ってくるが、彼は警官に逮捕される。 ブライオニーは、警官に連行されるロビーとの別れを惜しむセシーリアを見つめていた。 4年後、1939年、北フランス、ダンケルク。 トミーとフランクは、フランス語を話すロビーに、上流の人間がどうして前線にいるのか尋ねる。 ロビーは、犯罪者である自分は仕方なく兵役を選び、上流の出でもないことを語りながら、セシーリアへの想いが脳裏を過ぎる。 半年前。 セシーリアは、あの事件をきっかけにして家族と絶縁状態になり、屋敷を離れ看護師になっていた。 ロビーは、家族との連絡も途絶えたセシーリアを気遣い、3年半前の書斎のことを思い出し涙する。 そして二人は、次の休暇で、海辺の別荘で会うことを約束して別れる。 その後、ロビーが受け取ったセシーリアからの手紙には、ブライオニーが大学に進学もせずに、看護師の訓練を受けているという内容が綴られていた。 自分のしたことの意味を理解したブライオニーは、罪を償いたいらしいということだった。 そんなロビーは、戦場で子供たちの多数の遺体を見つけて、かつて、ブライオニーを川で助けた時のことを思い出す。 ブライオニーはロビーをからかっただけだったが、彼は激怒して彼女を激しく叱りつける。 ブライオニーは、”あなたは命の恩人で、ご恩は一生忘れません”とロビーに伝えて、彼に恋心を抱いていたために素直に謝まる。 しかしロビーは、無言のまま立ち去る。 ロビーは、”必ず戻ってきて”と言ったセシーリアとの約束を果たすために、トミーとフランクと戦場をさ迷う。 そして海岸線にたどり着いたロビーらは、ドイツ軍に追われて撤退しようとする30万人以上の味方を確認する。 気の遠くなるような帰国の順番待ちに愕然としたロビーは、 やがて、戦場で受けた傷口が悪化してしまう。 3週間前、ロンドン。 ブライオニーは同僚との会話で、一度だけ恋をした相手(ロビー)がいることを告白する。 そして病院に多数の負傷兵が運び込まれ、ブライオニーはある兵士をロビーと間違えてしまう。 名誉の帰還を果たす兵士のニュース映像を見ていたブライオニーは、あの事件の日、兄と共に屋敷を訪れたポール・マーシャルが、いとこのローラと結婚することを知りショックを受ける。 ブライオニーは、二人が結婚する教会に出向き、あの事件でローラを襲ったのはポールだということを知りながら、ロビーを陥れ姉セシーリアとの仲を裂いてしまった罪悪感で、胸が張り裂ける思いをする。 その足でセシーリアのアパートに向かったブライオニーは、証言を変える考えを伝えるが、セシーリアは彼女を突き放す。 その時、寝室から帰還していたロビーが現れ、声を荒げた彼はブライオニーに言い寄り責める。 それを制止したセシーリアは、ロビーに、”戻ってきて、私のところへ・・・”と伝える。 ロビーは、事件の証言が偽りだったという供述書を弁護士と作り、署名して送るようブライオニーに指示して戦場に戻ろうとする。 犯人がローラと結婚したポールだとブライオニーから知らされたロビーとセシーリアは、もはやローラは証言しないだろうと考えて絶句する。 そしてロビーは、心から謝罪するブライオニーに対して、”やれと言ったことをやれ、供述書は飾らない内容で書面にし、二度と自分たちに関わるな”と伝えて、彼女をその場から追い出してしまう。 1999年。 これが最後の作品になると言うブライオニーは、主治医から脳血管性認知症だと診断され、死が近いことも告白する。 ブライオニーは、それ故に書かなければならなかったことと、これが真実だということを語り始める。 実は、セシーリアに謝ろうとしたブライオニーは怖気づき、彼女には会いに行けず、告白は自分の想像で書き綴ったものだった。 1940年6月1日、ロビーは帰還を待つ海岸で敗血症のため亡くなった。 ブライオニーと仲直りできないまま、セシーリアも10月15日の空襲で死亡し、結局ロビーとは再会することができなかったのだ。 その事実を書いても、読者が希望や満足感を得られるかに疑問を抱いたブライオニーは、本の中では、二人が失ったものを取り戻してあげたかったのだった。 それが自分にできる最後のことだと・・・。 そしてブライオニーは、二人が休暇を過ごすはずだった海岸での幸せな日々を想いながら、インタビューを締めくくる。
...全てを見る(結末あり)
出征していたロビーは、トミー・ネトル(ダニエル・メイズ)とフランク・メイス(ノンソ・アノツィー)と共に部隊からはぐれ、その後フランス兵と合流する。
ロビーは、ロンドンでセシーリアと再会していた。
__________
__________
市内の病院で厳しい看護師訓練を受けるブライオニーは、消灯後に部屋を抜け出して、密かにセシーリアとロビーを題材にした物語「噴水の二つの人影」を綴っていた。
21作目の小説「つぐない」を発表する77歳になっていたブライオニーが、テレビ番組の司会者(アンソニー・ミンゲラ)からインタビューを受ける。
*(簡略ストー リー)
1935年、夏のイングランド、タリス邸。
小説家を夢見る末娘ブライオニーが、休暇で帰省しているリオンと友人ポールを、自作の劇で歓迎しようとする。
ケンブリッジ大学を卒業するものの、進路を決めかねていたブライオニーの姉セシーリアは、あることをきっかけに使用人の息子ロビーとの愛に気づく。
しかし、ロビーに恋心を抱くブライオニーは、彼とセシーリアの関係を、自らの思い込みと妬心の目で見てしまう。
そんな時、屋敷内でいとこのローラが襲われる事件が起き、ブライオニーはロビーが犯人だと証言してしまい、彼は警官に逮捕されてしまう。
4年後、出所の条件として従軍兵となっていたロビーは、最前線の地で、セシーリアとの再会だけを信じて生きる毎日を送っていた・・・。
__________
原作者イアン・マキューアンは1998年の「アムステルダム」でブッカー賞を受賞している。
ジョー・ライト他、「プライドと偏見」(2005)とほぼ同じスタッフ、同作の主演女優キーラ・ナイトレイが再び組んだ作品ということで話題になった。
少し年上の大人達の行為を汚らわしく感じてしまった少女が、どこにでもある純粋な愛を引き裂いてしまう悲劇、それを理解しないでもない恋人達の思い、そして、 砕け散る愛の切なさに容赦なく襲い掛かる戦争の残酷さなどを、30代半ばのジョー・ライトが、繊細且つ緻密に描くミステリアスなラブ・ストーリーの秀作。
第80回アカデミー賞では、作品賞をはじめ7部門でノミネートされた。
美しくも、時に波乱を感じさせるメロディが印象的なダリオ・マリアネッリが作曲賞を受賞した。
・ノミネート
作品
助演女優(シアーシャ・ローナン)
脚色・撮影・美術・衣装デザイン賞
北米興行収入は約5100万ドル、全世界では約1億2900万ドルのヒットとなった。
主人公達が集う森の中の大邸宅や、別荘の建つ海辺の自然の美しさ、ダンケルクで撤退を待つ大軍や、戦中のロンドン市内のセットなども手抜きがない。
看護師となり、姉に許しを請いに行こうとするブライオニーが、生身の人間でないかのような冷めた表情を一瞬浮かべ、作り話と暗示させるような細やかな描写なども注目だ。
知的で思慮深い青年らしく、運命に逆らわずに一途に愛を追い求めようとする主人公のジェームズ・マカヴォイと、恵まれた環境を捨ててまで彼を待つキーラ・ナイトレイの、二人の悲劇的な愛の結末は涙を誘う。
両者共に、今やハリウッドを代表するイギリス人俳優として注目されているだけあり、若さ故のひ弱さを感じさせない見事な演技を見せてくれる。
意地悪い小悪魔でもなく純情で幼いが故に、その”罪”を許してあげたくもなる、少女期のブライオニーを熱演したシアーシャ・ローナンは、中盤までの出演となるが、アカデミー助演賞にノミネートされただけあり、姉役のキーラ・ナイトレイを上回るほどの、印象に残る演技を見せてくれる。
終盤登場の18歳のブライオニー役ロモーラ・ガライ、そしてクライマックスで小説家となった77歳のブライオニーを演ずるヴァネッサ・レッドグレイヴの、短い出演ながらベテランらしい重みのある演技も光る。
セシーリア(キーラ・ナイトレイ)の兄パトリック・ケネディ、母親役のハリエット・ウォルター、主人公の友人のベネディクト・カンバーバッチ、セシーリアの従妹ジュノー・テンプル、主人公の戦友ダニエル・メイズとノンソ・アノツィーなどが共演している。
ヴァネッサ・レッドグレイヴにインタビューするTV司会者で、翌年亡くなるアンソニー・ミンゲラがゲスト出演している。