CIA工作本部技術部のアントニオ・J・メンデスの著書”The Master of Disguise”と、月刊誌の”WIRED”に2007年に掲載されたジョシュア・バーマンの記事”The Great Escape”を基に製作された作品。 ”イラン・アメリカ大使館人質事件”での6人のアメリカ大使館員を救い出す作戦”カナダの策謀”を描く、製作、監督、主演ベン・アフレック、ブライアン・クランストン、アラン・アーキン、ジョン・グッドマン他共演のサスペンス・ドラマ。 |
・ジョージ・クルーニー / George Clooney 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:ベン・アフレック
製作総指揮
クリス・ブリガム
チェイ・カーター
ティム・ヘディントン
グレアム・キング
デヴィッド・クローワンズ
ニーナ・ウォラースキー
製作
ジョージ・クルーニー
グラント・ヘスロヴ
ベン・アフレック
原作
アントニオ・J・メンデス”The Master of Disguise”
ジョシュア・バーマン”The Great Escape”
脚本:クリス・テリオ
撮影:ロドリゴ・プリエト
編集:ウィリアム・ゴールデンバーグ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演
アントニオ”トニー”J・メンデス:ベン・アフレック
ジャック・オドネル:ブライアン・クランストン
レスター・シーゲル:アラン・アーキン
ジョン・チャンバーズ:ジョン・グッドマン
ケネス・D・テイラー:ヴィクター・ガーバー
ボブ・アンダース:テイト・ドノヴァン
コーラ・ライジェク:クレア・デュヴァル
マーク・ライジェク:クリストファー・デナム
ジョー・スタッフォード:スクート・マクネイリー
キャシー・スタッフォード:ケリー・ビシェ
ヘンリー・L・シャッツ:ロリー・コクレーン
ハミルトン・ジョーダン大統領首席補佐官:カイル・チャンドラー
マリノフ:クリス・メッシーナ
ロバート・ペンダー:ジェリコ・イヴァネク
ジョン・ベイツ:タイタス・ウェリヴァー
サイラス・ヴァンス国務長官:ボブ・ガントン
マックス・クレイン:リチャード・カインド
ピーター・ニコルス:リチャード・ディレイン
ジャック・カービー:マイケル・パークス
ロッド:トム・レンク
トム・アハーン:クリストファー・スタンリー
パット・テイラー:ペイジ・レオン
クリスティーン・メンデス:テイラー・シリング
宇宙研究所看護師:アシュリー・ウッド
レザ:オミッド・アブタヒ
エリザベス・アン・スウィフト:カリーナ・ローグ
ニーナ:エイドリアン・バーボー
コミテフ:フアード・ハジ
スタンズフィールド・ターナーCIA長官:フィリップ・ベイカー・ホール
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
2012年製作 120分
公開
北米:2012年10月12日
日本:2012年10月26日
製作費 $44,500,000
北米興行収入 $136,019,450
世界 $232,324,130
■ アカデミー賞 ■
第85回アカデミー賞
・受賞
作品・脚色・編集賞
・ノミネート
助演男優(アラン・アーキン)
音響編集・録音・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
イラン革命により失脚したパーレビ国王が、癌治療という名目でアメリカに入国したため、イラン国民は、テヘランのアメリカ大使館に押し寄せ、元国王の引き渡しを迫る。
1979年11月4日、イラン、テヘラン、アメリカ大使館。
暴徒化する民衆はフェンスを越え、門を突き破り敷地内に入る。
大使館員らは、書類等の処分を指示され、避難の準備を始める。
海兵隊員は襲撃に備えるが、発砲や相手を撃つことなどは禁じられる。
建物の入り口は破られ、職員は拘束されるものの6人が裏口から逃れる。
国務省。
外務局担当官ロバート・ペンダー(ジェリコ・イヴァネク)やジョン・ベイツ(タイタス・ウェリヴァー)は情況を確認して、サイラス・ヴァンス・国務長官(ボブ・ガントン)の元に向かい、6名がカナダ大使ケネス・D・テイラー(ヴィクター・ガーバー)公邸に保護されたことが報告される。
ホワイトハウス。
ハミルトン・ジョーダン・大統領首席補佐官(カイル・チャンドラー)は6人の報告を受けるが、大使館の約60人の救出を優先させる。
69日後。
テヘランの大使館人質事件は、小康状態を続けていた。
バージニア州、CIA本部。 オドネルは、カナダ側が限界を訴え、6人を見捨てようとしている現状と、大使館にある職員の写真付き名簿が、シュレッダーにかけられたものの、復元される可能性をメンデスに伝える。 6人が捕まれば公開処刑は必至だと知らされたメンデスは、人質奪還のプロとしての立場で、オドネルと国務省に向かう。 会議は始まり、外務局担当官ペンダーは、領事館補のボブ・アンダース(テイト・ドノヴァン)ら、脱出した6人についての説明を始める。 ペンダーは、検問があり車が使えないために、6人を自転車で山中に向かわせて、国境を越える計画を伝える。 馬鹿げた考えに意見したメンデスは、身分証を偽装して空港から民間機で脱出させる考えと、様々な状況を考慮し、素人(国務省)には実行できないことを率直に語るが、結局は結論は出ない。 帰宅して、別居中の妻と住む息子に電話したメンデスは、「最後の猿の惑星」を観ていると言われたために、自分もチャンネルを合わせる。 それで閃いたメンデスは、特別な撮影場所を必要とするSF映画の撮影ロケハンを装い、6人を救出する案を国務省側に提案する。 メンデスは、「猿の惑星」のメイクでオスカーをとった、ジョン・チャンバーズ(ジョン・グッドマン)の協力を得られることを伝え、他の方法より現実的だと語る。 テヘラン。 メンデスは、オドネルからロサンゼルス行きを命ぜられて現地に向かう。 1980年1月19日、バーバンク。 6人とメンデスの、計画の役割を決めたチャンバーズは、大物プロデューサーであるレスター・シーゲル(アラン・アーキン)の屋敷を訪ねる。 シーゲルは、困難な計画ではあるものの、協力することを二人に伝える。 良い脚本が必要だと考えるシーゲルは、偽映画であっても妥協しない考えだった。 脚本選びが始り、計画案を数日中に長官に知らせることを、オドネルに指示されたメンデスは、SF冒険映画の”アルゴ”の脚本に目を止める。 脚本家マックス・クレイン(リチャード・カインド)に会い、強引に仕事を引き受けさせたシーゲルは、イランを欺くために派手に宣伝したいと言う、メンデスの要望を聞き入れてマスコミを利用する。 ”ビバリー・ヒルトン” テヘラン、1980年1月23日。 1980年1月25日、国務長官室。 最悪案の中でも”最高”と答えたメンデスとオドネルは、ターナー長官から、計画実行の許可を得る。 死を覚悟しながら、息子に手紙を出したメンデスは単独で旅立つ。 1980年1月27日、トルコ、イスタンブール、アヤソフィア。 メンデスは、映画製作者だと語り入国の許可を得る。 マスコミに6人の件が漏れてしまい、ペンダーはそれをオドネルに伝え、メンデスだけが頼りの状況になる。 テヘラン。 カナダ大使テイラーに会ったメンデスは、準備についてなどを打ち合わせるが、メイドが気づいた可能性を知らされる。 大使公邸に着いたメンデスは、”ケヴィン・ハーキンス”と名乗り、6人を前に救出に来たことを伝える。 メンデスは6人に”アルゴ”の脚本を配り、ロケハン偽装の脱出計画を知らせ、それに疑問を抱く彼らに話し合いをさせる。 計画に頼るしかないと判断した6人は、各役柄を与えられて、その人物に成りきることが成功の鍵だとメンデスに言われる。 ホテルに戻ったメンデスは、文化イスラム大臣から届いたロケハンの許可通知を受け取り、翌日、バザールでクルーが担当者と会うことをオドネルに連絡する。 6人は、危険を伴うバザール行きで議論となり、ためらうジョー・スタッフォード(スクート・マクネイリー)とキャシー(ケリー・ビシェ)夫妻に、メンデスは本名を語り、自分を信じて欲しいと言って説得する。 メンデスは、車を用意して6人と共にバザールに向かい、担当者レザ(オミッド・アブタヒ)に案内される。 その後、美術監督役のキャシーが、写真を撮ったことで騒ぎが起き、視察は中止される。 大使公邸のメイドは、当局の者の質問を受けるが、客が2日しか滞在していないことを伝える。 ホワイトハウス。 その夜、大使公邸では、各自の履歴を頭に叩き込むようにと、6人はメンデスに指示される。 そこにオドネルからの連絡が入り、計画中止の連絡を受けたメンデスは、陸軍が”デルタフォース”を派遣し、人質救出作戦の準備を始めたことを知らされる。 メンデスは、6人に対しての責任を伝えるが、オドネルは、命令に従う義務があると答える。 迷うメンデスは、パスポートを焼却するよう指示されたテイラーから、6人には何も伝えずに姿を消すよう言われてその場を去る。 ホテルに戻り思案するメンデスは、翌朝、自分が全責任を負うことを約束し、6人を出国させることだけをオドネルに伝えて電話を切る。 オドネルは、7人の出国手続きの確認をするが、既に取り消され、カーター大統領の承認がなければ無理だということを知り愕然とする。 大使公邸に現れたメンデスは、テイラーと妻パット(ペイジ・レオン)に感謝して空港に向かう。 オドネルは、長官に作戦続行を伝えそれを大統領に報告するよう、声を荒げて上司を説得し、メンデスら7人を救おうとする。 更にオドネルは、ジョーダン・首席補佐官を捜すよう部下マリノフ(クリス・メッシーナ)に指示する。 何んとかジョーダンに連絡できたオドネルは、6人の救出作戦は決行中で、大統領の承認がないと拘束されることを伝える。 ”ハリウッド作戦”は大統領に承認され、空港に着いたメンデスらは、搭乗予約が確認される。 オドネルは、閉鎖指示が出されていた”アルゴ”のオフィスに、待機する連絡を入れるようマリノフに命ずる。 ”メヘラーバード空港”。 搭乗直前、別室に移されチェックを受けたメンデスらだったが、ペルシャ語を話せるスタッフォードが、映画について説明を始める。 メンデスは、オフィスに電話をするよう係官に名刺を渡し、彼は電話をする。 閉鎖と言われたため、シーゲルと共にオフィスを離れていたチャンバーズはその電話に出て、”ハーキンス”はロケハンで国外にいることを伝える。 係官はメンデスらの搭乗を許可し、当局員はカナダ大使公邸に押し入るが、既に誰の姿もなかった。 空港にその連絡が入り、係官らはメンデスらを追うが、スイス行きの便に搭乗した彼らの機は、追跡を振りきり離陸する。 機内では、イラン領空を出たというアナウンスがされ、6人は喜び合いメンデスは安堵する。 それがマリノフからオドネルにも伝えられ、連絡を受けたシーゲルも、メンデスらが無事にイランを離れたことをチャンバーズに知らせる。 テイラー夫妻もすでに出国し、彼らを裏切らなかったメイドもイラクに入国する。 オドネルは関与を否定して、報道で事件を知ったことにする意向をマリノフらに伝え、カナダに感謝する。 米国民に感謝されたカナダ側は、3か月間、6人の救出方法を考えていたことを発表し、イランはその代償を支払わせると言って正式に抗議する。 その後メンデスは、”アルゴ”関連の資料を保管庫に預ける。 メンデスは、諜報活動に対する最高功労賞”CIAスター勲章”授与をオドネルから知らされ、息子を呼び寄せることを考える。 しかし、機密作戦扱いされたことで授賞式も極秘だと知らされ、勲章は授与されるが戻されることになる。 オドネルは、大統領が、”偉大なアメリカ人”だと語ったことをメンデスに伝えて本部に向かう。 ”新作”はボツということになり、チャンバーズはオフィスを閉鎖する。 そしてメンデスは、妻クリスティーン(テイラー・シリング)と息子の元に向かう。 1981年1月20日。 カナダ大使とCIAの協力により成功した6人の救出作戦は、政府間の国際協力の理想的なモデルとなった。 その後6人は、全員が外務局に復帰した。 アカデミー賞受賞者ジョン・チャンバーズは、民間人として”CIA勲章”を受け、2001年に他界するまでメンデスとの親交は続いた。 1997年、クリントン大統領が、”アルゴ”作戦の機密扱いを解除し、”CIAスター勲章”はメンデスに返還された。 アントニオ”トニー”J・メンデスは、メリーランド州の田舎町で、家族と共に暮らしている。
工作本部技術部のアントニオ”トニー”J・メンデス(ベン・アフレック)は、上司のジャック・オドネル(ブライアン・クランストン)に呼び出され、大使館から6人が脱出したことを知らされる。
...全てを見る(結末あり)
6人は先の見えない展開に苛立ち始めるが、イラン側も、大使館の職員リストの人数が合わないことに気づく。
”バーバンク・スタジオ”のチャンバーズを訪ねたメンデスは、映画製作偽装作戦についてを話し、彼の協力を確認する。
スタッフ、キャストが集合し、”アルゴ”の脚本読みが始る。
人質は、大使館地下室に連れて行かれて、処刑されそうになる。
オドネルと共にヴァンス長官とCIA長官スタンズフィールド・ターナー(フィリップ・ベイカー・ホール)に会ったメンデスは、自転車での脱出などより成功の可能性がある、映画製作計画について説明を求められる。
連絡員ピーター・ニコルス(リチャード・ディレイン)に会い、イラン入国についての情報を得たメンデスは、現地イラン領事館に向かう。
現地入りし、指導省に向かったメンデスは、担当者から許可を検討すると言われる。
ジョーダン・大統領首席補佐官は、6人が翌日に出国する”アルゴ”作戦を、その時点で知らされる。
出国手続きを行っていた7人だったが、当局は、バザールで撮った7人の写真と、大使館の復元写真が一致することに気づく。
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”イラン・アメリカ大使館人質事件”(444日)は、全ての人質が解放されて解決する。
*(簡略ストー リー)
1979年11月4日、イラン、テヘラン。
イラン革命により失脚した、パーレビ国王がアメリカに入国し、それを受け入れたことに抗議したイラン国民は激怒して集結し、民衆はアメリカ大使館に押し入る。
大使館は占拠され職員は拘束されるものの、領事館補アンダースら6人は、密かに脱出してカナダ大使公邸に向かい保護される。
それを知ったCIAのオドネルは、人質奪還のプロである、アントニオ”トニー”J・メンデスを伴い国務省に向かう。
馬鹿げた方法で6人を救出しようとする国務省側に対し、メンデスはパスポートを偽装して、民間機で彼らを救い出す方法を考える。
メンデスは、テレビで観た「最後の猿の惑星」をヒントに、特殊な場所での撮影を必要とするSF映画のカナダ人スタッフを装い、6人を脱出させる方法を提案する。
「猿の惑星」のメイクでオスカーを受賞した、ジョン・チャンバーズと大物プロデューサーのシーゲルの協力を得たメンデスは、”アルゴ”という三流映画の脚本に目をつけて、その架空の製作準備を始める。
そして、ターナー・CIA長官とヴァンス・国務長官の許可を得たメンデスは、死を覚悟して単独で現地に向かうのだが・・・。
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ジョージ・クルーニーと盟友グラント・ヘスロヴ、そして監督、主演を兼ねるベン・アフレックが製作を担当する意欲作でもある。
エンディングで明記される、1997年の機密作戦扱い解除に伴い全容が明らかになった、”イラン・アメリカ大使館人質事件”に関連する”カナダの策謀”を、ドキュメンタリー・タッチでリアルに描いた”快心”作と言える作品。
敢えて”快心”と言ったのは、サスペンス重視の作品に思える内容の中で、アメリカ人の愛する文化”映画産業”への皮肉と共に、それに携わる者の、”戦い”とも思える物造り魂が伝わってくるからだ。
冒頭での、”ワーナー・ブラザーズ”のロゴ・マークに気づいただろうか?
1970年代の当時のデザインをそのまま使っているのだが、個人的には、それを見た瞬間に映画人の作品への思い入れを感じて、100%本作を支持する思いになり、観終わった際には、期待を裏切られずに痛快ささえ感じた。
主人公アントニオ”トニー”J・メンデスがラテン系であるため、髭を蓄えそれらしく見せているベン・アフレックは、終始、冷静さを保つ役柄を好演しているが、主演は他のスターに譲り演出に専念すれば、オスカー(監督賞)を受賞できたのではないかとも考えてしまう。
やや出来過ぎにも思える、空港の脱出シーンや、作戦を指揮する本国を含めた描写だが、映画製作を文化として世界に誇る業界人が、その手本を見せるがのごとく、スリリングに展開される。
ベン・アフレックの演出の他、クリス・テリオの見事な脚本など、正に職人芸を堪能できるクライマックスは圧巻だ。
第85回アカデミー賞では、作品・脚色・編集賞を受賞した。
・ノミネート
助演男優(アラン・アーキン)
音響編集・録音・作曲賞
北米興行収入は約1億3600万ドル、全世界では2億3200万ドルのヒットとなった。
キャスティングの良さも注目で、主人公を支える上司ブライアン・クランストン、ハリウッドのプロデューサーを快演するアラン・アーキン、メイクアップ・アーチスト、ジョン・チャンバーズ、ジョン・グッドマン、カナダ駐イラン大使ケネス・D・テイラーのヴィクター・ガーバー、その妻役ペイジ・レオン、彼らに保護される、6人の大使館員役のテイト・ドノヴァン、クレア・デュヴァル、クリストファー・デナム、スクート・マクネイリー、ケリー・ビシェ、ロリー・コクレーン、ハミルトン・ジョーダン・首席補佐官のカイル・チャンドラー、スタンズフィールド・ターナー・CIA長官フィリップ・ベイカー・ホール、サイラス・ヴァンス・国務長官のボブ・ガントン、CIA局員のクリス・メッシーナ、脚本家リチャード・カインド、CIA連絡員リチャード・ディレイン、主人公の妻テイラー・シリングなどが共演している。