1994年に発表された、ジム・ラヴェルとジェフリー・クルーガーの小説、”Lost Moon”を基に製作された作品。 アポロ11号の月面着陸の大偉業にも拘らず1年も経たない内に関心が薄れてしまったアポロ計画を襲った最大の危機に立ち向かう宇宙飛行士とNASA関係者の決死の救出劇を事実に基づき描く、製作ブライアン・グレイザー、監督ロン・ハワード、主演トム・ハンクス、ケヴィン・ベーコン、ビル・パクストン、エド・ハリス、ゲイリー・シニーズ、キャスリーン・クインラン他共演によるドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロン・ハワード
製作:ブライアン・グレイザー
原作
ジム・ラヴェル”Lost Moon”
ジェフリー・クルーガー
脚本
ウィリアム・ブロイルスJr.
アル・レイナート
撮影:ディーン・カンディ
編集
マイク・ヒル
ダン・P・ハンリー
SFX:デジタル・ドメイン
美術・装置
マイケル・コーレンブリス
メリデス・ボスウェル
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演
トム・ハンクス:ジム・ラヴェル
ケヴィン・ベーコン:ジャック・スワイガート
ビル・パクストン:フレッド・ヘイズ
エド・ハリス:ジーン・クランツ
ゲイリー・シニーズ:ケン・マッティングリー
キャスリーン・クインラン:マリリン・ラヴェル
クリント・ハワード:サイ・リーバーゴット
ローレン・ディーン:ジョン・アーロン
ジーン・スピーグル・ハワード:ブランチ・ラヴェル
クリス・エリス:ディーク・スレイトン
デヴィッド・アンドリューズ:ピート・コンラッド
サンダー・バークレー:ヘンリー・ハート
ジム・ラヴェル:揚陸艦イオー・ジマ艦長
ウォルター・クロンカイト:本人(ナレーション/実況映像)
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1995年製作 140分
公開
北米:1995年6月30日
日本:1995年7月22日
製作費 $62,000,000
北米興行収入 $173,837,930
世界 $334,100,000
■ アカデミー賞 ■
第68回アカデミー賞
・受賞
編集・録音賞
・ノミネート
作品
助演男優(エド・ ハリス)
助演女優(キャスリーン・クインラン)
脚色・作曲・美術・視覚効果賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1960年代初頭。
1960年代中に、人類の月面着陸を達成させるというケネディ大統領が推進した、アメリカの威信をかけたプロジェクトは、アポロ1号の悲劇などを乗り越えて、ついに達成する日がやってくる。
1969年7月20日。
アポロ11号が人類初の月面着陸に成功し、 ニール・アームストロングが月面に降り立つ。
その様子をテレビで見つめる、バックアップ・クルーのジム・ラヴェル(トム・ハンクス)、フレッド・ヘイズ(ビル・パクストン)さらに予備要員ケン・マッティングリー(ゲイリー・シニーズ)、ジャック・スワイガート(ケヴィン・ベーコン)の面々は、月に向かう夢を膨らませていた。 1969年10月30日、フロリダ、ケネディ宇宙センター。 ラヴェルは、”マーキュリー・セブン”の一人でもある、宇宙飛行士育成主任ディーク・スレイトン(クリス・エリス)に呼ばれる。 そして、アラン・シェパードの耳の病気により、ラヴェルのクルーが繰上げでアポロ13に乗り込むことになる。 ラヴェルの妻マリリン(キャスリーン・クインラン)は、喜ぶ夫を励ますが、”13”という数字が気になっていた。 船長のラヴェル、月着陸船パイロットのヘイズ、指令船パイロットマッティングリーの3人は、順調に飛行訓練を続ける。 1970年3月30日、打ち上げ2週間前。 打ち上げ4日前。 しかし、ラヴェルはフライトへの期待を語り、これが最後の飛行になることを記者らに告げる。 1970年4月9日、打ち上げ2日前。 三人共にバックアップ・クルーと入れ替わるか、又は指令船パイロットのみを交替させるかで、それを一任されたラヴェルは、予備要員スワイガートとマッティングリーを交替させる決断をする。 打ち上げ2日前の決断に、スワイガートは同時訓練を受けていたものの、焦りを見せ失敗を繰り返すが、既に後戻りは出来なかった。 打ち上げ前日の夜、家族達と最後の面接をしていたクルー達だったが、ラヴェルの元に来るはずではなかったマリリンも現れる。 1970年4月11日、ケネディ宇宙センター。 ヒューストン(ジョンソン宇宙センター)。 緊張感が漂う中、指令船のハッチは閉められ、ヒューストンのクランツの指揮の下、現地時間13時13分、アポロ13は、マリリンらに見守られながら打ち上げられる。 発射は成功するが、”サターンV”ロケット第一段(S-IC)と打ち上げ脱出システムを切り離した直後、中央エンジンが停止する。 飛行には問題なしと判断され、第二段(S-Ⅱ)も切り離され、アポロ13は、無事に地球の周回軌道に乗る。 その後、第三段(S-ⅣB)が閉鎖され、アポロ13は月軌道に乗る。 指令船(オデッセイ)は第三段から切り離され、スワイガートは、月着陸船(アクエリアス)とのドッキングを成功させてアポロ13は月に向かう。 3日目、4月13日。 ヒューストンに招待されて、船内中継を見る予定のマリリンと子供達だったが、 テレビ中継もされないことを報道官のヘンリー・ハート(サンダー・バークレー)から知らされる。 地球から32万キロ離れた、月に到着する直前の指令船内では、スワイガートがヒューストンからの指示を受け、酸素タンク撹拌スイッチを入れる。 その瞬間、船体は激しく振動し、機械船で爆発が発生する。 ラヴェルは、ヒューストンにトラブル発生を報告し管制室は混乱する。 ラヴェルは、ヒューストンに、タンクから酸素が噴射していることを報告し、管制官クランツは、各担当官の報告を冷静に聞こうとする。 EECOM(電力・環境制御)担当のサイ・リーバーゴット(クリント・ハワード)は、死にかけている指令船の、燃料電池の反応バルブを閉じることをクランツに提案して、直ちにそれがアポロ13に連絡される。 その作業が、月面着陸を諦めることだと理解したラヴェルは落胆するが、彼はヒューストンの指示に従う。 しかし、酸素流出は止まらず、ラヴェルは月着陸船の起動をヘイズに命令する。 クランツも、クルーを、救助船として使うことになった月着陸船に避難させる準備を始める。 指令船の電力が切れる約15分の間に、誘導システムを月着陸船に移す必要があった。 その頃、関心が薄れていたアポロ13の飛行は、 皮肉にも事件をきっかけに大スクープとなり世界中で報道されて、マリリンは夫ラヴェルの安否を気遣う。 何とかシステムの移動を終えたスワイガートは、地球に帰還する際に再び指令船が起動できるかに不安を抱えながら、制御スイッチを切り月着陸船に移る。 ヒューストンや船内の三人は、酸素、電力、水が供給不能になり、地球への帰還も危ぶまれて危機的な状態に陥る。 事態が悪化する一方、クランツは冷静な判断で各担当官に支持を出し、考えられるあらゆる技術や頭脳を結集し三人の命を救おうとする。 4日目。 その後、EECOMの担当官ジョン・アーロン(ローレン・ディーン)は、電力を確保することが、三人を帰還させる最大のポイントであることをクランツに伝える。 クランツは、宇宙での初の死亡事故を避けるため、電力カットを各担当官に指示し、そのためのシュミレーションの準備を始める。 そして、フライトから外されたマッティングリーが、その間、最小限の電力で帰還するシュミレート・プログラム作成に取り組むことになる。 その頃、船内の二酸化炭素量が増加し、濾過フィルターの模型がヒューストンで作られることになる。 一躍時の人となったラヴェルの家には、マスコミが殺到するが、マリリンは断固として取材を拒否する。 5日目。 ヘイズは、酸素タンク撹拌の件をスワイガートに確認するが、彼は苛立ち二人は言い合いになり、ラヴェルがそれを鎮める。 ラヴェルらはヒューストンの指示に従い、二酸化炭素の濾過フィルターを作製しようとする。 その間、NASAは記者会見を開き、今回の事件が宇宙開発計画史上最悪のケースだということを発表する。 マリリンは、ラヴェルの母親ブランチ(ジーン・スピーグル・ハワード)に事故を報告するが、彼女は息子の帰還を信じていた。 フィルターが完成し、二酸化炭素量を下げることに成功したラヴェルらは、凍えるような船内で睡眠を強要されて、健康状態を監視する、生理モニターのセンサーを外してしまう。 6日目。 大気圏再突入の準備を始めたいことをヒューストンに伝えたラヴェルは、マッティングリーが、そのプログラムを作るシュミレーションを行っていることを知らされる。 それに苦労していたマッティングリーは、月着陸船の電力を指令船に逆流させることを考え、プログラムを完成させて管制室に入る。 マッティングリーは、指令船に乗り込んだスワイガートに起動の手順の指示を出す。 再び軌道を修正するため、指令船に月の積載物分の重量を補充する。 7日目。 そして、爆発のあった機械船を切り離し、ラヴェルらはその破壊された状況を見て驚くと共に、指令船の耐熱シールドの状態が心配される。 世界中の人々が三人のために祈りを捧げる中、指令船オデッセイは地球軌道に到達し、ラヴェルは、操縦席を指令船パイロットのスワイガートに譲る。 そして、救命艇として活躍した月着陸船を切り離し、いよいよ大気圏再突入となる。 1970年4月17日。 再突入を前にクランツは、悲観的なスタッフに対し、NASA始まって以来の快挙を信じると言い放つ。 オッデッセイ船内では最後の難関を前に、ラヴェルがヘイズとスワイガートを称える。 世界中が見守る中、通常なら、再突入は3分間の通信不能のはずだが、それを過ぎても応答がなかった。 4分が経過し管制室に緊張が走るが、パラシュート降下するオデッセイから、ラヴェルの帰還報告が響き渡る。 管制室は興奮に包まれ、クランツは安堵の表情を浮かべ、それを見守っていたマリリンらも涙する。
...全てを見る(結末あり)
アラン・シェパードらの乗るアポロ13の組み立が行われる中、 ラヴェルは、既に達成した月面着陸の意義についてを見学者に問われていた。
何事も楽観的な夫(ラヴェル)とは違い、あらゆることが不安となり、自分に襲い掛かるマリリンは、 怯える日々が続き、発射に立ち会わないことをラヴェルに告げる。
”13”という、不吉な数字の質問を記者から受けるラヴェルらは、前年11月のアポロ12号の月面着陸の成功もあり、 アポロ計画は、当初のようなの注目度がなくなっていたことにも触れられる。
マッティングリーが風疹感染者と接触していることが分かり、抗体のない彼は乗組員から外されることになる。
発射を控え、ラヴェルらクルーはその準備を進めていたが、その頃、モーテルでシャワーを浴びていたマリリンは、結婚指輪を排水溝に落としてなくしてしまう。
アポロ13の主席管制官ジーン・クランツ(エド・ハリス)の元に、恒例となる妻からのベストが届けられる。
順調なフライトは続くが、既に国民の興奮と関心は薄れていた。
地球への帰還軌道を外れたアポロ13は、 軌道修正をした後、月の周回軌道に乗り、自分達が降り立つ予定だった月面を愛しく眺める。
船内温度の低下と水分不足によりヘイズは腎炎になり、スワイガートの計算で、大気圏再突入の角度が浅いことが分かり、それが議論となる。
大気圏再突入の角度が浅いことがヒューストンでも確認され、電力不足でコンピューターが使えないため、ラヴェルらは手動でエンジンを噴射し軌道修正に成功する。
スワイガートは指令船の起動に成功し、衰弱していたヘイズは彼の働きを称え、わだかまりは消える。
南太平洋上では、着水するオッデッセイとクルーを回収するため、揚陸艦イオー・ジマが配備される。
*(簡略ストー リー)
人類は月面着陸に成功するものの、 その後の関心が薄れる中、アポロ計画は、予定通り3度目の月面着陸ミッションを迎える。
アポロ13のバックアップクルー、ジム・ラヴェル、フレッド・ヘイズ、ケン・マッティングリーは、正規のクルーの病気で繰り上げ搭乗が決まる。
しかし、マッティングリーが、風疹発病の疑いで外され、急遽ジャック・スワイガートが代役を務めることになる。
1970年4月11日13時13分。
準備は整い、アポロ13は無事発射されるものの、2日後の4月13日、機械船の酸素タンクが爆発し、船体は制御不能状態になってしまう。
電力、酸素、水が不足する極寒の船内で、月面着陸を断念せざるを得なくなったクルー達は、NASA職員の総力を結集した救援支援の下、地球への生還に向けての闘いを始める・・・。
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映画用にかなりドラマチックに仕上げてあり、本作しか観なければ大満足するところだろうが、この事件を詳細に伝える、質の高いドキュメンタリーなどを見てしまうと、当時の最先端技術を駆使したCG映像も、いかにも作り物のような感じで、物足りなさを感じる。
本作公開の前年だっただろうか、テレビ放映された、立花隆氏がアドバイザー務めた、ドキュメント番組は見応えがあった。
アポロ計画以前のソ連との宇宙開発に、アメリカの威信をかけて挑むドラマ、「ライトスタッフ」(1983)に比べると、盛り上がりを重視し過ぎているような感じも受ける。
しかし、アメリカを象徴するような巨大なサターンVロケットの打ち上げシーンなどの緊張感と迫力は、本物にはかなわない映像ではあるが、他の場面も含めて見所は多くある。
無重力状態の映像や、NASA内部の管制室、宇宙船内などのセットの出来は素晴しい。
北米興行収入は約1億7400万ドル、全世界では約3億3400万ドルのヒットとなった。
第68回アカデミー賞では、編集、録音賞を受賞した。
・ノミネート
作品
助演男優(エド・ ハリス)
助演女優(キャスリーン・クインラン)
脚色・作曲・美術・視覚効果賞
主演のトム・ハンクスは、「フィラデルフィア」(1993)と翌年の「フォレスト・ガンプ」(1994)で2年連続でアカデミー主演賞を獲得して挑んだ意欲が窺える。
ケヴィン・ベーコンとビル・パクストンらも、極限状態の中での、任務遂行を成し遂げるクルーを好演している。
事故発生後、3人の飛行士が船内で言い争う場面などがあるのだが、これは映画のための演出で、実際は言い争っている暇などなかったようだ。
あらゆる失敗を想定したシュミレーション訓練を受けている宇宙飛行士の資質として、パニックに陥らないことが第一条件ということだ。
三人を補助するエド・ハリスとゲイリー・シニーズの、作品に重みを加える熱演は見ものだ。
特に絵に描いたような理想の指揮官、沈着冷静なジーン・クランツを演じたエド・ハリスの好演は光。
エド・ハリスと共にアカデミー助演賞にノミネートされたキャスリーン・ クインランも、主人公の妻を印象深く演じている。
原作者でもある船長ジム・ラヴェルは、揚陸艦イオー・ジマの艦長役で出演している。
EECOM(電力・環境制御)担当サイ・リーバーゴット役のクリント・ハワード、同担当ジョン・アーロン役のローレン・ディーン、R・ハワードとC・ハワードの母親でジム・ラヴェルの母親役ジーン・スピーグル・ハワード、ディーク・スレイトン役のクリス・エリス、宇宙飛行士ピート・コンラッド役デヴィッド・アンドリューズ、報道官サンダー・バークレーなどが共演している。
ジェームズ・ホーナーの音楽は、なんとなく、2年後の「タイタニック」(1997)に似ている。
ドラマにするために、仕組まれたような不吉な数字、”13”がよくこれだけ揃うものかと思う。
アポロ13、打ち上げ日1970年4月11日を数字のみ足すと”13”、打ち上げ現地時間13時13分、事故発生現地時間4月13日となる。
ユニバーサル・スタジオ内に作られた、ジョンソン宇宙センター(ヒューストン)の管制室のセットなどは、働く管制官の服装を含め、当時の雰囲気を良く出している。
また、冒頭のナレーションも務めるウォルター・クロンカイトなどの、当時のニュース映像などもうまく使われている。
個人的には、史実としてこの事件を見た時に最も感心することは、主席管制官ジーン・クランツをはじめ、指揮官達の年齢の若さだ。
これだけの重大なミッションの責任者を、当時36歳のジーン・クランツに任せる、アメリカという国の度量の広さには感心するばかりだ。