フレデリック・ノットの戯曲”Dial M For Murder”を映画化したアルフレッド・ヒッチコックの傑作「ダイヤルMを廻せ!」(1954)のリメイク。 妻の財産を狙う破産寸前の投資家の殺人計画を描く、監督アンドリュー・デイヴィス、主演マイケル・ダグラス、グウィネス・パルトロウ、ヴィゴ・モーテンセン他共演のサスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:アンドリュー・デイヴィス
製作
ピーター・マクレガー=スコット
クリストファー・マンキウィッツ
アーノルド・コペルソン
アン・コペルソン
戯曲:フレデリック・ノット”Dial M For Murder”
脚本:パトリック・スミス・ケリー
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演
マイケル・ダグラス:スティーヴン・テイラー
グウィネス・パルトロウ:エミリー・ブラッドフォード・テイラー
ヴィゴ・モーテンセン:デヴィッド・ショー
デヴィッド・スーシェ:モハメッド・カラマン
コンスタンス・タワーズ:サンドラ・ブラッドフォード
サリタ・チョウドリー:ラクエル・マルティネス
マイケル・P・モラン:ボビー・フェイン
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1998年製作 107分
公開
北米:1998年6月5日
日本:1998年10月24日
製作費 $5000-60000万
北米興行収入 $67,629,110
世界 $128,038,370
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク。
ウォール街のヘッジファンド・マネージャー、スティーヴン・テイラー(マイケル・ダグラス)は、資金運用に失敗して大打撃を受けてしまう。
上流階級出身で、国連大使の側近を務めるスティーブンの妻エミリー(グウィネス・パルトロウ)は、年齢差のある彼への愛情が薄れ、若い画家のデヴィッド・ショー(ヴィゴ・モーテンセン)との密会を続けていた。
二人が密会中、デビッドの住まいにスティーヴンから絵が見たという連絡が入り、彼に電話番号を教えた覚えのないエミリーは不審に思う。
デヴィッドは、スティーブンを自分のアトリエ兼住まいに招くが、彼は二人の仲を既に知っていた。 さらにスティーブンは、デヴィッドの犯罪歴や生い立ちまで詳細に調べ上げていた。 スティーヴンは、デヴィッドが資産家でもある妻の財産目当てで付き合っていると主張し、全てをバラし破滅するか50万ドルで妻エミリーを殺害するかを選択させる。 翌日エミリーからの電話を受けたデヴィッドは、彼女を安心させてからスティーヴンの元に向かう。 スティーヴが企んだ、エミリー殺害計画を聞いたデヴィッドは、前金の10万ドルを手にしてその場を立ち去る。 ランチをデヴィッドと約束していたエミリーは、スティーヴンに誘われて苛立つ。 その夜、エミリーは、スティーブンに別れ話を切り出すことをデヴィッドに電話で話すが、彼は、考えがあるので早まらないようにと伝える。 スティーヴンは、アリバイを作るためにカードクラブに出かけ、エミリーは屋敷への侵入者に気づきもせず、一人静かな時を過ごす。 予定通りスティーヴンが自宅に電話し、入浴中のエミリーがその無言電話に出た瞬間、侵入者は彼女に襲い掛かる。 しかし、抵抗するエミリーは、その男の首に温度計を突き刺して気を失ってしまう。 帰宅したスティーヴンは、血だらけのエミリーとキッチンに倒れている男を見て、咄嗟に彼が隠し持っているはずの鍵を探し、駆けつけた警察官を迎える。 現場検証が始まり、犯人がデヴィッドではないことを知ったスティーヴンは驚いてしまう。 その表情を見ていたモハメッド・カラマン警部(デヴィッド・スーシェ)はスティーヴンに不信感を抱く。 デヴィッドは自らの手でエミリーを殺せず、札付きの犯罪人に殺人を依頼したのだった。 エミリーは、実家の母サンドラ(コンスタンス・タワーズ)の元に向かい静養することになり、母にスティーヴンと別れるつもりだということを話す。 デヴィッドを呼び出したスティーヴンは、事態が納まった頃を見計らい、再び犯行を実行させようとする。 友人ラクエル・マルティネス(サリタ・チョウドリー)のアパートに住むことに決めたエミリーは、一旦、自宅に寄るが入り口のドアの鍵が合わないのに気づき不思議に思う。 事件のあったキッチンで、エミリーは恐怖に怯えるが、スティーヴンが現れて引っ越すことを提案する。 しかし、エミリーはそれを拒否してスティーヴンを拒絶してしまい、ラクエルの元に向かう。 エミリーは、金が一番の殺人動機になることと、自分が死ねばスティーヴンに1億ドルが入ることに気づく。 その後、エミリーは大使の配慮で商取委員に会い、不法取引で、スティーヴンが破産寸前だということを知る。 カラマン警部に、スティーヴンに犯行動機があることを話したエミリーだったが、彼には、犯行時間のアリバイがあった。 ただ、犯人が鍵を持っていなかったことに疑問を抱いていることを、ラマンはエミリーに伝える。 資金難で窮地に立たされたスティーヴンだったが、今度はデヴィッドが、殺人依頼の会話を録音したテープで彼を脅し、残金の40万ドルを要求する。 犯人の住所を知ったエミリーは、自分の持っている鍵で、犯人のアパートのドアが開いたことに驚きながら、部屋を調べる。 40万ドルを貸し金庫から出したスティーヴンだったが、オフィスに戻るとエミリーが待ち構えていた。 犯人の鍵を、自分のホルダーに付けることが出来たのはスティーヴンしかいないことを、エミリーは彼に問い詰める。 しかし、スティーヴンは事前に自分宛てに送っておいた、密会写真が同封されたデヴィッドからの脅迫状をエミリーに見せ、彼女を守るためにやったことだと説明する。 スティーヴンは、デヴィッドの犯罪歴もエミリーに知らせ、彼女の自分への信頼を取り戻させる。 その後スティーヴンは、デヴィッドの録音テープと40万ドルを交換する。 逃亡しようとするデヴィッドを、スティーヴンは急行列車内で殺害し、現金を取り戻して自宅に戻る。 デヴィッドが、テープのコピーをエミリーに送ったことを知ったスティーヴンは、郵便物の中からそれを抜き取る。 そしてスティーヴンは、デヴィッドのアトリエから持ち帰った指輪をエミリーに渡す。 エミリーは、スティーブンにはそぐわない、汚れた空の袋を持っていることを疑問に思う。 番号を知っていたスティーヴンの貸し金庫を開け、隠されていた録音テープを取り出したエミリーは、彼にそれを突きつける。 逃げようとしたエミリーをスティーヴンは制止し、争いとなった二人だったが、エミリーがスティーヴンを射殺する。 その後カラマン警部は、エミリーからテープを聞かされ、犯人が鍵を持っていなかった理由を知り、彼女は正当防衛と認められる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ニューヨーク。
ウォール街のヘッジファンド・マネージャー、スティーヴン・テイラーは、資金運用に失敗してしまう。
資産家令嬢であるスティーブンの妻エミリーは、年齢差のある夫への愛が薄れ、若い画家デヴィッド密会を続けていた。
しかし、二人の仲を知るスティーブンは、犯罪歴もあるデヴィッドの素性を調べ上げていた。
スティーブンは、全てをバラすか、多額の保険金がかけられているエミリー殺害を50万ドルで請け負うかをデヴィッドに選択させる。
スティーブンから、前金を受け取ったデヴィッドは、エミリーに気づかれぬまま犯行の日となり、彼女は侵入した何者かに襲われる。
エミリーは犯人を殺してしまうのだが、帰宅したスティーブンは、その犯人がデヴィッドでないことを知り驚いてしまう・・・。
__________
オリジナル「ダイヤルMを廻せ!」(1954)を”彷彿”させるという程度の作品なので、それほど旧作を意識する必要のないサスペンス。
ウォール街の投資家の夫や、新鋭の画家の隠された正体などが現代風にアレンジされ、ニューヨークの街並みなどを含め、洗練された雰囲気が漂う仕上がりになっている。
「逃亡者」(1993)などのサスペンスで、既にその実力を評価されていたアンドリュー・デイヴィスだが、辻褄合わせが見え見えな演出が気になり、結局、彼は本作以降、あまり良い作品に恵まれていない。
北米興行収入は約6800万ドル、全世界では約1億2800万ドルのヒットとなった。
一瞬、ヒッチコック作品を思わせるような、ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽は緊迫感を盛り上げる。
キーポイントとなる”鍵”が、自宅の鍵と犯人の物と見分けがつかないのかなど、あまり細かいことを追求しないで観ることをお勧めします。
邦題の”ダイヤルM”も全く意味不明。
「ウォール街」(1987)の役柄に似ているマイケル・ダグラスは、私生活そのままの優雅な(破産寸前だが)富豪の役柄が、彼のイメージにマッチしている。
どうしても、オリジナルのグレイス・ケリーと比較してしまうグウィネス・パルトロウの美しさは際立ち、彼女は同年の「恋におちたシェイクスピア」(1998)でアカデミー主演賞を受賞することになり、その実力の片鱗を見せる好演を見せてくれる。
若くは見えるが、実はこの年に40歳になる、着実にキャリアを重ねていたヴィゴ・モーテンセンの魅力が評判になった作品でもあり、彼は、同じ年の別のヒッチコック作品、完全リメイク版の「サイコ」にも出演している。
当初からスティーヴン(M・ダグラス)を疑う警部のデヴィッド・スーシェ、かつて、ジョン・フォード作品などでも活躍したエミリー(G・パルトロウ)の母親コンスタンス・タワーズ、エミリーの友人サリタ・チョウドリーなどが共演している。