心の拠り所を失い行き場のない青年の心の葛藤と彼との愛に不安を抱える女性の揺れ動く女心を描く、監督テイラー・ハックフォード、リチャード・ギア、ルイス・ゴセット・ジュニア、デブラ・ウィンガー、デヴィッド・キース共演のラブ・ロマンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督 テイラー・ハックフォード
製作 マーティン・エルファンド
脚本 ダグラス・D・スチュアート
撮影 ドナルド・ソリン
編集 ピーター・ツィンナー
音楽 ジャック・ニッチェ
主題歌
ジェニファー・ウォーンズ
ジョー・コッカー
”Up Where We Belong”
出演
リチャード・ギア:ザック・メイヨ
ルイス・ゴセット・ジュニア:エミル・フォーリー軍曹
デブラ・ウィンガー:ポーラ・ポクリフキー
デヴィッド・キース: シド・ウォーリー
リサ・ブロウント:リネット・ポメロイ
リサ・エイルバッハー:ケーシー・シーガー
ロバート・ロッジア:バイロン・メイヨ
トニー・プラナ:エミリアーノ・デラ・セラ
デヴィッド・カルーソ:トッパー・ダニエルス
ハロルド・シルベスター:ライオネル・ペリマン
グレイス・ザブリスキー:エスター・ポクリフキー
ヴィクター・フレンチ:ジョー・ポクリフキー
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1982年製作 124分
公開
北米:1982年8月13日
日本:1982年12月18日
北米興行収入 $129,795,550
■ アカデミー賞 ■
第55回アカデミー賞
・受賞
助演男優(ルイス・ゴセット・ジュニア)
歌曲賞
・ノミネート
主演女優(デブラ・ウィンガー)
脚本・編集・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ワシントン州、シアトル。
ザック・メイヨ(リチャード・ギア)は、海軍の兵卒だったで、父バイロン(ロバート・ロッジア)に呼び寄せられ、フィリピンで不遇な生活を送った少年時代を思い起こす。
帰国して成長し、父の元を離れる決心をしたザックは、ジェットパイロットを目指し、士官訓練校に入学する。
レーニエ基地内の訓練校に入学したザックは、訓練教官エミル・フォーリー軍曹(ルイス・ゴセット・ジュニア)のしごきに遭いながら、13週間の訓練を受けることになる。
士官候補生の中には、オクラホマ出身の純真な青年シド・ウォーリー(デヴィッド・キース)、ケーシー・シーガー(リサ・エイルバッハー)、エミリアーノ・デラ・セラ(トニー・プラナ)、ライオネル・ペリマン(ハロルド・シルベスター)、トッパー・ダニエルス(デヴィッド・カルーソ)などがいた。
数週間が経ち、はみ出し者のザックは、隠れて装備具の売買をして小銭を稼いだりもしていた。 ザックと同室のペリマンは、そんな彼の規則違反が知られ、連帯責任をとらされることを心配する。 しかし、要領のいいザックは、それを気にすることもなく、優等生のシドと学業の裏取引もして、何とか訓練の日々を続ける。 訓練と”商売”に徹するザックは、候補生の中で孤立するが、シドは彼に親友として接していた。 市民との懇親パーティーの席上、ザックとシドは地元の製紙工場に勤める、ポーラ・ポクリフキー(デブラ・ウィンガー)とリネット・ポメロイ(リサ・ブロウント)と知り合う。 ポーラとリネットは、パイロットの妻になることを夢見て、士官候補生を物色していたのだった。 そして、ザックはポーラと、シドはリネットと付き合うことになる。 短絡的なリネットと違い、ポーラは、ザックが本気で自分を愛しているか不安を抱えながら、それを彼に知られないように恋愛を続けようとする。 フォーリー軍曹のしごきはきつく、格闘技の訓練でもしくじったダニエルスが、水中脱出訓練で命を落としそうになり、ついにDOR(任意除隊)第一号となる。 その後、フォーリーはザックの小遣い稼ぎを見破り、特別メニューの罰を与えDORを迫る。 さらにフォーリーは、利己主義で連帯意識もないザックが、軍隊には向かないと言って罵倒する。 しかし、泣きながら罰に耐えるしかないザックは、行き場所のないことをフォーリーに伝える。 フォーリーは、ザックのその言葉で納得して、彼に兵舎に戻るよう指示する。 休暇を楽しむシドらは、しごかれるザックを励まし、彼は他の候補生にも少しずつ心を開くようになる。 ザックとポーラは愛を深めていたが、シドを逃したくないリネットは、妊娠してしまうことを考える。 卒業まで3週間を切った頃、ザックは、ポーラの両親ジョー(ヴィクター・フレンチ)と、エスター(グレイス・ザブリスキー)らに招待され、気まずい雰囲気の中で食事をする。 席を外したポーラは、結婚などについてをザックに尋ね、ジョーが義父で、実の父親は士官候補生だったことを彼に伝える。 ザックはそれを聞いて驚き、訓練も大詰めを迎えているため、今後は、連絡できるかわからないことをポーラに伝えて立ち去る。 その後、シドのように、真剣に結婚まで考えられない自分に気づいたザックは、ポーラを避けるようになる。 ポーラは、連絡のとれなくなったザックの元に向かおうとするが、これ以上、娘が傷つくのを見ていられない母エスターに、引き止められてしまう。 シドには、故郷に婚約者がいることを知ったザックは、リネットのことは、自分のように断ち切れと助言する。 ザックは、酒場で、ポーラが飛行教官と一緒にいるところを目撃し、彼女とは、お互いけじめをつけたような会話をして別れる。 一方、リネットが、妊娠したことが分かったシドは動揺するが、ザックは、卒業を控える自分のことを優先して考えるよう助言する。 責任感が強いシドはそれに納得できず、オクラホマの両親の期待や婚約者のことが負担になり、精神的にまいってしまう。 そして、除隊することになったシドを止めようとするザックは、それを認めたフォーリーに事情を説明して食ってかかる。 しかし、シドはDORを申請したことと、両親のために死んだ兄の身代わりで、軍人になろうとしたことをザックに伝える。 リネットとの結婚を決意したシドだったが、彼女から妊娠は間違いだったと知らされる。 さらに、リネットから結婚を断られたシドは、彼女が、パイロットの妻になり、外国に行くことが夢だったと告げられて絶望してしまう。 ザックは、姿を消したシドを捜すため、ポーラとリネットの家に向かい事情を聞く。 愛のために軍を捨てたシドを、田舎者の男となど結婚できないと吐き捨てるリネットだった。 リネットに失望したザックとポーラは、その場を立ち去りシドを捜す。 そして、ザックとポーラは、モーテルで自殺したシドを見つける。 ザックは、薬物を飲んで自殺した母親とシドの死が、自分の責任だと言って思い悩むが、ポーラが彼を慰める。 しかし、動揺したザックは、ポーラを突き放して、シドのDORを受理したフォーリーを恨み、決着をつけようとして彼を呼び出す。 しかし、フォーリーがそれに応じないため、ザックはDORを宣言してしまう。 フォーリーは、仕方なくザックの言い分を聞き入れ、二人は、格納庫の格闘技場で殴り合いを始める。 激しい闘いを繰り広げた二人だったが、ザックは、フォーリーに叩きのめされる。 13週間の訓練を終え、卒業式を迎える候補生の中にザックもいた。 式も終わり、フォーリーは、少尉となったザックに敬意を表する。 ザックもこの訓練で、軍人、そして人としての成長を手助けしてくれたフォーリーに感謝する。 そしてザックは、次期候補生に厳しく接するフォーリーの姿を見ながら、製紙工場で働くポーラの元に向かう。 ザックはポーラを抱きかかえ、リネットや母エスターに祝福されながら、新たな人生を歩む決意をする。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
幼い頃に母親を自殺で亡くし、父親の愛情も得られないで育った青年ザック・メイヨ は、ジェット・パイロットを目指して、士官訓練校に入学する。
訓練教官フォーリーのしごきを受けながら、同期のシドとのみ親交を深めたザックは、やがて地元の工員ポーラと出会う。
一時の恋愛と考える、ザックの心を察しながらも、ポーラは、彼への愛情を深めていく。
しかし、心に深い傷を負っていた、ザックの捉えどころのない性格に、ポーラの心は揺れ動く・・・。
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日本では、青春ロマンス映画の決定版のように言われている作品ではあるが、”若者向け映画”で終わらせるには相応しくない、実に奥深い作品でもある。
ラストの、主人公達の”完結する愛”の場面以外、多少のシーンを除き、かなり悶々とした展開が続き、ストレスが溜まる雰囲気で進行する。
それでも、中盤からクライマックスにかけて、ロマンスとして描き切るテイラー・ハックフォードの演出は、当然ではあるが、女性客の心を捉えることになる。
逆に、痞えたものがようやくとれたような、ラストシーン(主題歌を含め)にしか興味を持てなかった男性客も多かったはずだ。
興行収入は、北米のみでも1億3000万ドルに迫る大ヒットとなった。
第55回アカデミー賞では、助演男優(ルイス・ゴセット・ジュニア)と歌曲賞を受賞した。
・ノミネート
主演女優(デブラ・ウィンガー)
脚本・編集・作曲賞
アカデミー賞を受賞して大ヒットした、ジェニファー・ウォーンズとジョー・コッカーが歌う主題曲”Up Where We Belong”は、映画史上に残る名曲と言っても過言ではない。
若くて凛々しいチャード・ギアの人気がブレイクした、言わずと知れた彼の出世作で、トップ・スターへと伸し上がるきっかけになった作品。
どこか東洋的な顔立ちの、脂ぎってない素朴な彼の魅力は、本作以後、多くのファンを魅了することになる。
アカデミー助演賞を受賞したルイス・ゴセット・ジュニアの鬼軍曹役は、彼の熱演がなければ、本作がこれほど評価されなかったであろうと言えるほど、強烈なインパクトを与えている。
また、本作以降、こういうタイプの鬼教官が、スクリーンに登場する回数が増えたような気がする。
同じく、アカデミー主演賞にノミネートされたデブラ・ウィンガーの演じた、堅実な人生を見つめていこうとする女性像も多くの共感を得た。
容姿に似合わない、ハスキーボイスも非常に魅力的だ。
翌年の「愛と追憶の日々」(1983)でも、共演したシャーリー・マクレーンと共にアカデミー賞にノミネートされたことで、その実力を確かなものにした。
(シャーリー・マクレーンは主演賞受賞)
本位でない軍役や、恋に翻弄され、絶望して自殺する士官候補生役のデヴィッド・キース、その恋人リサ・ブロウント、主人公の父ロバート・ロッジア、候補生のリサ・エイルバッハー、トニー・プラナ、デヴィッド・カルーソ、ハロルド・シルベスター、ポーラ(D・ウィンガー)の両親ヴィクター・フレンチとグレイス・ザブリスキーなどが共演している。