ロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世の末娘である第4皇女アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァが処刑を免れ生存していたという伝説を基に上演された舞台劇の映画化。 監督アナトール・リトヴァク、主演イングリッド・バーグマン、ユル・ブリンナー、ヘレン・ヘイズ、アキム・タミロフ他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・イングリッド・バーグマン / Ingrid Bergman / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:アナトール・リトヴァク
製作:バディ・アドラー
原案:マルセル・マレー
脚本:アーサー・ローレンツ
撮影:ジャック・ヒルデヤード
編集:バート・ベイツ
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演
アンナ・コレフ/アナスタシア:イングリッド・バーグマン
セルゲイ・パヴロヴィッチ・ボーニン:ユル・ブリンナー
マリア・フョードロヴナ皇太后:ヘレン・ヘイズ
ボリス・チェロノフ:アキム・タミロフ
フォン・リーヴェンバウム男爵夫人:マルティタ・ハント
ポール大公:イヴァン・デニ
ピョートル・ペトロヴィン:サッシャ・ピトエフ
ロシア高官:フェリックス・アイルマー
リッセンスカヤ:ナタリー・シェイファー
ミハイル・ヴラドス:カレル・ステパネック
ブロンド女性:キャサリン・カス
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1956年製作 105分
公開
北米:1956年12月13日
日本:1957年4月
■ アカデミー賞 ■
第29回アカデミー賞
・受賞
主演女優賞(イングリッド・バーグマン)
・ノミネート
音楽賞(ドラマ・コメディ)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1917年。
ロシア革命によってロマノフ王朝が倒され、皇帝ニコライ2世とその家族は軟禁された後に処刑された。
その後、生存する家族がいるとの噂が飛び交い、ある女性が現れる。
それは、ニコライ2世の末娘、第4皇女アナスタシアだった。
__________
1928年、パリ、ロシア正教の復活祭。 生き延びた、ニコライ2世の末娘”アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ”だと、病院で言ったことが噂となったアンナだったが、彼女は動揺しその場を立ち去ってしまう。 飢えと絶望の果てに、セーヌ川に身投げしようとしたアンナは、ボーニンに救われて保護される。 ボーニンは、仲間である元銀行家ボリス・チェロノフ(アキム・タミロフ)と元神学生ピョートル・ペトロヴィン(サッシャ・ピトエフ)にアンナを紹介する。 ロンドンの銀行に保管されている、ニコライ2世の遺産1000万ポンドを狙うボーニンらは、生存の噂のあったアナスタシア皇女に偽装する女性を探していたのだった。 アンナの特徴や体の傷、そして時折見せる振る舞いなどは、アナスタシアと思わせることもあった。 しかし、ボーニンらにとってはそれはどうでも良いことであり、とにかくアンナを、アナスタシアに仕立てあげることが先決だった。 翌日から、アンナに”アナスタシア”としての教育を始めたボーニンらは、銃殺刑から逃れた経緯や直前の逃走経路などを教え込む。 皇族の多くも殺害されていたために、”アナスタシア”生存の噂を広めようと、ボーニンは、ニコライ2世の側近や仕えていた者達をアンナに面会させる。 アンナは、元使用人らに皇女だったことを信じ込ませることに成功し、本人と見間違う素振りなどを見せるが、あくまでボーニンは彼女を偽者として教育する。 皇族の家系、礼儀作法、ダンス、仕草や発生方法までを教え込み、ボーニンはアンナを完璧な貴族にしようとする。 しかし、自分が誰なのかがわからなくなり、混乱したアンナは、悪夢にうなされ取り乱してしまう。 そして、高貴な人々との会見の場が設けられ、アンナを多数の者が”アナスタシア”と認めるが、辛辣な言葉や見事な演技と言う意見も出される。 ボーニンは最後の手段として、”アナスタシア”の祖母にあたる、デンマークのマリア・フョードロヴナ皇太后(ヘレン・ヘイズ)に、アンナを会わせようとする。 笑い者にされたアンナは、ボーニンの元から去ろうとするが、説得された彼女はコペンハーゲンに向かう。 現地入りしたボーニンとアンナは、チェロノフとペトロヴィンに合流するが、マリア皇太后が、彼女には会わないだろうということを知る。 そして、皇太后の侍女フォン・リーヴェンバウム男爵夫人(マルティタ・ハント)からの情報で、オペラハウスに皇太后が現れることを知ったボーニンは、アンナを伴い劇場に向かう。 しかしアンナは、桟敷席の陰に、皇太后がいると伝えられただけで動揺してしまう。 第一幕が終わり、ボーニンは、皇太后の甥ポール大公(イヴァン・デニ)に、アンナを”アナスタシア皇女”だと言って紹介する。 二人を残し、ボーニンはマリア皇太后の元に向かうが、彼女は次々と現れる孫と名乗る者達にうんざりしていた。 ボーニンは根気よく皇太后を説得するのだが、彼女は、これ以上皇族を名乗る者と会うことは拒絶する。 第二幕が始まり、席に戻ったアンナは、マリア皇太后が自分を観察しているのに気づく。 アンナを、本物とは思わないポール大公だったが、遺産に興味のある彼は、皇太后に会いたがるボーニンへの協力を考える。 ポール大公は、早速、マリア皇太后にアンナの件を話しに行くが、皇太后は、ポールが彼女に丸め込まれたとしか思えず、彼を追い払ってしまう。 ポール大公の説得が、失敗したことを知ったボーニンだったが、アンナのことが気になったマリア皇太后は、彼女の滞在先のホテルに現れる。 それを聞いたアンナは動揺するものの、ついに彼女は皇太后と対面する。 皇太后は、アンナが確かに孫の”アナスタシア”に似ていることを認めるが、彼女を演技上手な詐欺師扱いする。 孫娘の生存を、望まないわけでない皇太后は、ボーニンに声をかけられたことがきっかけで、このようになったと、咳き込みながら話すアンナに目をやる。 ”怯えると咳き込む”と言うアンナが、”アナスタシア”の幼い頃の癖を証明していると確信した皇太后は、彼女を抱きしめて神に感謝する。 パリに戻り、マリア皇太后によりアンナが正式に皇族として認められ、合わせて彼女がポール大公との婚約を発表するパーティーが開かれることになる。 アナスタシア皇女(アンナ)は、各国記者を前にした会見で、1920年に、ルーマニアの病院に入院していたという彼女を引き取った、ミハイル・ヴラドス(カレル・ステパネック)という男に言い寄られる。 アンナはそれを認めて記者達はざわめくが、そこでボーニンが会見を終了させる。 その後、くつろぎながら会話を弾ませるボーニンとアンナだったが、遺産のために彼女と結婚するポール大公や取り巻きの餌食になろうとするアンナに、ボーニンはそれを説明して警戒するよう伝える。 やがてパーティーが始まり、遺産放棄もほのめかしながら、ポール大公とワルツを踊るアンナをボーニンは見つめる。 マリア皇太后と面会したボーニンは、役目を終えたことを彼女に告げる。 皇太后は驚き、ボーニンの功績を称えるが、アンナが婚約を心から望んでいないことを、彼はそれとなく皇太后に伝える。 ボーニンが、アンナに惹かれていることを悟った皇太后は、彼に部屋で待つように指示を出す。 ポール大公との婚約発表を前に、アンナもボーニンを愛していることを知った皇太后は、彼女に女としての幸せを選ぶよう助言する。 そしてアンナを抱きしめた皇太后は、彼女をボーニンの元に向かわせる。 ボーニンが現れずアンナも姿を消し、うろたえるチェロノフとペトロヴィンだったが、マリア皇太后は困惑するポール大公を従えてホールに向かう。 皇太后は、招待客に伝える言葉をポール大公に知らせる。 ”芝居は終わった”と。
教会のミサに現れた、記憶を失ったみすぼらしい女性アンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)は、ロシア風クラブを経営する、ロシア帝国皇帝ニコライ2世の元侍従武官セルゲイ・パヴロヴィッチ・ボーニン(ユル・ブリンナー)に突然、声をかけられる。
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*(簡略ストー リー)
パリ。
ロシア帝国皇帝ニコライ2世の元侍従武官セルゲイ・パヴロヴィッチ・ボーニンは、記憶を失ったみすぼらしい女性アンナ・コレフが、身を投げようとしているところを救う。
家族と共に処刑されたと思われた、ニコライ2世の末娘の”アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ”だと、アンナが言ったことが噂となっていたからだ。
ボーニンは、仲間のチェロノフとペトロヴィンの元で、アンナを皇女アナスタシアに仕立て、ロンドンの銀行に保管されている、ニコライ2世の遺産1000万ポンドを奪う謀略を企てる。
その後、ボーニンの演出で、アンナは完璧な貴族として生まれ変わり、彼女を、皇族を知る要人達に引き合わせていく。
それが疑わしき事実と言う声が囁かれる中、ボーニンは最後の手段として、アナスタシアの祖母である、デンマークのマリア皇太后にアンナを対面させるのだが・・・。
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”アナスタシア”の偽装者として有名なアンナ・アンダーソンをモデルにした作品でもあり、1000万ポンドという莫大な遺産が絡んでいるミステリアスな物語を、演技派スター達の火花散る競演で力強く描く、ウクライナ出身でもあり、ドラマの主人公の”アナスタシア”と同じ時代を生きた、アナトール・リトヴァクの意欲と思い入れを感じさせてくれる作品。
第29回アカデミー賞でイングリッド・バーグマンが「ガス燈」(1944)以来12年ぶりに主演女優賞を受賞した。
他、ドラマチックな音楽が印象的なアルフレッド・ニューマンが音楽賞(ドラマ・コメディ)にノミネートされた。
記憶が定かでない浮浪者としてみすぼらしい姿で登場するものの、皇女教育を進める過程で、見事に輝きを増し更に深みのある神秘的な演技を見せる、40歳にして円熟の極に達しているとも言えるイングリッド・バーグマンの美しさも際立つ。
半年前の「王様と私」(1956)、そして2ヶ月前に「十戒」が公開され、「王様と私」では見事に同年のアカデミー主演賞を受賞することになる、正に当たり年のユル・ブリンナーは、30代半ばとは思えない貫禄の演技で、人間的な魅力も兼ね備えた強かな詐欺師を見事に演じている。
主演二人の演技に後半割って入る形の、威風堂々とした演技でマリア・フョードロヴナ皇太后を演ずるヘレン・ヘイズ、皇女偽装計画の加担者で元銀行家のアキム・タミロフと元神学生のサッシャ・ピトエフ、皇太后の侍女役マルティタ・ハント、大公イヴァン・デニなどが共演している。