2012年に発表された、アメリカ海軍特殊部隊”Navy SEALs”隊員クリス・カイルの自伝(スコット・マキュアン、ジム・デフェリスとの共著)を基に製作された作品。 史上最強のスナイパーと言われた”Navy SEALs”隊員クリス・カイルの戦いと苦悩を描く、製作、監督クリント・イーストウッド、製作、主演ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス他共演の実録戦争ドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:クリント・イーストウッド
製作
クリント・イーストウッド
ロバート・ロレンツ
ピーター・モーガン
アンドリュー・ラザール
ブラッドリー・クーパー
原作
”Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History”
クリス・カイル
スコット・マキュアン
ジム・デフェリス
脚本:ジェイソン・ホール
撮影:トム・スターン
編集
ジョエル・コックス
ゲイリー・D・ローチ
出演
クリス・カイル:ブラッドリー・クーパー
タヤ・レネー・ステュードベーカー・カイル:シエナ・ミラー
コルトン・カイル:マックス・チャールズ
マーク・リー:ルーク・グライムス
ゴート=ウィンストン:カイル・ガルナー
マーテンス大佐:サム・ジェーガー
ライアン“ビグルス”ジョブ:ジェイク・マクドーマン
“D”ダンドリッジ:コリー・ハードリクト
シャイフ・アル=オボーディ:ナヴィド・ネガーバン
スニードDIA捜査官:エリック・クローズ
スクワール:エリック・ラディン
トニー:レイ・ガイエゴス
ドーバー:ケヴィン・ラーチ
ギレスピー大尉:ブライアン・ハリセイ
ウェイン・カイル:ベン・リード
デビー・カイル:エリース・ロバートソン
ジェフ・カイル:キーア・オドネル
ロール教官:レオナルド・ロバーツ
ムスタファ:サミー・シーク
”ブッチャー”アミール・ハラフ・ファヌス:ミド・ハマダ
サラ:マーネット・パターソン
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
2014年製作 132分
公開
北米:2014年12月25日
日本:2015年2月21日
製作費 $58,000,000
北米興行収入 $350,126,370
世界 $547,426,370
■ アカデミー賞 ■
第87回アカデミー賞
・受賞
音響編集賞
・ノミネート
作品
主演男優(ブラッドリー・クーパー)
脚色・編集・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
イラク、ファルージャ。
アメリカ海軍特殊部隊”Navy SEALs”のスナイパー、クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は、ある建物のの屋上で狙撃体制に入る。
バルコニーに出て来た男を監視し、彼が電話をかけていることを本部に連絡したカイルは、自分の判断で狙撃するようにと言われる。
男は建物内に入り、その場から道路に出て来た女性は、ロシア製の対戦車手榴弾(RKG-3)を、一緒にいた子供に渡す。
それを報告したカイルは、判断は任せると言われる。
間違えたら軍刑務所行きだと、護衛兵の海兵隊員ゴート=ウィンストン(カイル・ガルナー)から言われたカイルは、戦車に向かって走る子供に照準を合わせる。
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テキサス。 1998年。 ケニアとタンザニアでのアメリカ大使館爆破事件を見て心を痛めたカイルは、愛国心に目覚め、”SEALs”に入隊するための選抜訓練を受ける。 厳しい訓練に耐えるカイルは、バーでタヤ・レネー・ステュードベーカー(シエナ・ミラー)に出会う。 SEALsだと知らせたカイルは祖国を守ることをタヤに伝え、彼女と意気投合する。 その後、射撃訓練が始り、カイルはその才能を発揮する。 2001年9月11日。 式の会場で出撃を知らされたカイルは、SEALs隊員として戦地に向かうことになる。 第一回 派遣 イラク、ファルージャ。 それを報告したカイルは、判断は任せると言われる。 間違えたら軍刑務所行きだと、護衛兵の海兵隊員ゴート=ウィンストンから言われたカイルは、戦車に向かって走る子供に照準を合わせる。 カイルは子供を狙撃し、手榴弾を拾った女性も射殺する。 手榴弾は部隊の戦車の手前で爆発したため、味方に被害は出なかった。 宿舎に戻ったカイルは、昼間の出来事を同僚のマーク・リー(ルーク・グライムス)から聞いたと言うライアン“ビグルス”ジョブ(ジェイク・マクドーマン)に、母親と子供を撃った複雑な思いを伝える。 海兵隊員を10人は救った的確な行為だと、ビグルスはカイルに伝える。 その後もカイルは、次々と敵を狙撃して”レジェンド”と言われるようになる。 タヤと電話で話したカイルは、妊娠している彼女を想い、弟ジェフがイラクに派遣されたことを知らされる。 ヨルダン生まれのテロリストで”アル=カーイダ”のNo.2のアブー・ムスアブ・アッ=ザルカーウィーを殺害または捕える最優先作戦に、カイルはマークらと共に参加することになる。 アル=カーイダのスナイパーであるシリア人の元オリンピック選手ムスタファ(サミー・シーク)の存在をゴート=ウィンストンから知らされたカイルは、建物を虱潰しに捜索する海兵隊に加わる。 小隊に合流し、効率的な方法があると言ってある家に押入ったカイルは、家族と共にその場にいたシャイフ/長老、アル=オボーディ(ナヴィド・ネガーバン)を尋問する。 カイルは、残忍で恐ろしい”悪魔の息子”と言われるザルカーウィーの右腕”ブッチャー”の存在をアル=オボーディから知らされる。 ブッチャーの情報を得ようとしたカイルは、アル=オボーディから10万ドルを要求され、その男が存在するかを疑う。 アル=オボーディは、手首を失った家族の腕を見せて、カイルからブッチャーの名前を訊かれ、”アミール・ハラフ・ファヌス”だと答える。 本部に戻ったカイルは、DIA/国防情報局捜査官スニード(エリック・クローズ)にその件を伝え、ブッチャー(ミド・ハマダ)の名前”ファヌス”が本名なら、アル=オボーディに会うと言われる。 それを確認したスニードは、カイルとマークと共にアル=オボーディの家に向かう。 途中、タヤと電話で話し、子供が男の子だと知らされたカイルは、ムスタファの狙撃を受けて運転手が殺されたため車を降りる。 アル=オボーディの子供がブッチャーに連れて行かれるのを確認したカイルは、発煙弾を投げて屋上に向かう。 銃撃戦を知ったタヤは、カイルの身を案じて病院の前で動揺する。 ブッチャーは、ドリルを使って子供の脚を傷つける。 子供を助けようとしたアル=オボーディは射殺される。 アメリカ軍と話す者は殺すと言って警告するブッチャーは、その場を去る。 安全確保の失敗を上官から責められたマークは、捜索は中止し基地に戻るよう指示され、カイルもそれを知らされて苛立つ。 産婦人科でのタヤの診察に同行したカイルは、自分の様子を気にする医師に血圧を測定され、静かに座っているだけなのに血圧が高いのは異常だと言われる。 帰りの車の中でその件を心配するタヤの言葉を気にしないカイルは、彼女が産気づいたため病院に戻る。 その後カイルは、ムスタファがアメリカ兵を殺す映像を売っていることを知る。 心が家に戻って来ていないことを気にするタヤは、それをカイルに伝える。 第2回 派遣 イラクに着いたカイルは、帰国するジェフに気づき声をかけるが、彼がこの戦いに疑問を抱いていることを知りながら見送る。 上官の中佐と話したカイルは、懸賞金18万ドルで敵から命を狙われていることを知らされる。 特別チームを組みブッチャーを追いたいことを伝えたカイルは、中佐から情報提供を約束され、必ず捕えるよう命ぜられる。 チームを組んだカイルは、マークもこの戦いに疑問を抱いていることを知り、自分達が祖国を守っていることを自覚させる。 作戦は開始され、ある家に立て篭もり、出入りの激しい店を監視するカイルは、家の主人から”イード・アル=アドハー/犠牲祭”の食事に招待されるが、持て成す主人の挙動が気になり家を調べる。 床下に隠されていた大量の武器を見つけたカイルは、主人を脅して店を調べようとする。 主人が店に向い、ドアを開けた瞬間に出て来た男は狙撃される。 銃を手にした主人を射殺したカイルらは店に突入して、切断された体や拷問を受けた死体を発見する。 激しい銃撃戦の末に、逃亡するブッチャーを殺したカイルは、戻ることを部隊に伝える。 その様子を確認した妻は、ムスタファに連絡する。 主人の死体を担ぎながら暴徒化する住民とのトラブルを避け、カイルらはその場から引き揚げる。 ムスタファは、カイルを仕留めるのを諦める。 帰国したカイルは、息子コルトン(マックス・チャールズ)と共に自動車整備工場に向かう。 その場でカイルは、かつて自分に命を救われたと言う兵士から声をかけられ、片足を失っただけで済んだ彼から、帰還した兵士が心を病んでいることを知らされる。 カイルを退役軍人の会に誘った兵士は、コルトンに父親はヒーローだと伝え、敬意を表して敬礼してその場を去る。 娘が生まれたことを喜ぶカイルだったが、タヤは、夫を家族から奪うSEALsを憎み、戦争で影響を受けない者はない、必ず心が蝕まれると彼に伝える。 第3回 派遣 偵察中のカイルらは、攻撃を受けたために車から降りる。 建物の屋上に向い安全を確保したカイルは、ビグルスが撃たれたため、狙撃したと思われるムスタファを捜す。 援軍が来たためビグルスをハンヴィーに運び部隊に戻ったカイルは、ムスタファが1000メートルの距離で狙撃してきたことを仲間に話す。 警戒しながら敵の拠点に向かったカイルらは、その場で攻撃を受ける。 銃弾を受けたマークは即死し、カイルは、彼や他の仲間の遺体と共に帰国する。 タヤと共にマークの葬儀に参列したカイルは、遺族がその場で読んだ彼の手紙の内容に触れ、マークが戦意を失っていたと彼女に伝える。 失明したビグルスを見舞ったカイルは、戦場に戻り敵を討つことを約束する。 自分に何かあったら再婚していいとタヤに伝えたカイルは、再びイラクに向かおうとする理由を訊かれ、家族を守るためだと答える。 国のために戦うと言うカイルの考えに納得できないタヤは、どうしても行く気なら、帰って来た時には自分達はいないと伝える。 第4回 派遣 シーア派の拠点”サドルシティ”の様子と仲間達のことを“D”ダンドリッジ(コリー・ハードリクト)から聞いたカイルは、ビグルスが手術の最中に死んだことを知らされてショックを受ける。 屋上で狙撃体制を整えるカイルは、ロケット弾を構えた男を狙撃する。 ロケット弾に近づいた子供を見ながら拾うなと呟くカイルは、それを担ぎ上げた子供を狙い狙撃しようとする。 引き金を引く寸前で子供がロケット弾を捨てて去ったため、カイルは撃つのを止めて動揺する。 マーテンス大佐(サム・ジェーガー)から、防護壁でアル=カーイダを封じ込め、建設要員を狙撃している者を殺害するようカイルらは命ぜられる。 サドルシティ。 ムスタファに一人が狙撃され、方角を誤ったことに気づいたカイルは、1920m先に何かを確認する。 標的を捕捉したカイルは、QRF/即応部隊を要請し、20分後の到着を確認して、ムスタファの次の狙撃を予測する。 ギレスピー大尉(ブライアン・ハリセイ)から撃つなと指示されたカイルは、確信があるなら撃てとDから言われ、ムスタファを狙撃する。 命中したことを確認したカイルらだったが、その場に敵が襲い掛かる。 激しい銃撃戦が始り、弾薬も残り少なくなり、ギレスピーは、自分達の座標を本部に知らせて爆撃を要請する。 命令を受けた攻撃ヘリコプター・ヴァイパー(映像はAH-1W スーパーコブラ)が目標に向かう。 タヤに電話をしたカイルは、除隊して家に帰ることを伝えるが、互いの声がよく聴こえない。 ヴァイパーからミサイルが発射されて建物に命中し、砂嵐が迫る。 その場から脱出した小隊は、到着したQRFの車両に乗り込むものの、カイルは逃げ遅れる。 仲間達に声をかけられながら、カイルは何んとか車両に乗り込む。 帰国したカイルは、あるバーでタヤからの電話を受け、既に帰国していることを伝える。 少し時間が欲しいと言うカイルは、自分の思いをうまく伝えられないまま、帰ることをタヤに伝える。 家に戻ったカイルは、バーベキューの際に、タヤの前で子供とじゃれ合っている犬を殴ろうとしてしまう。 医師の診察を受けたカイルは、敵を160人殺したことで、それを経験しなければよかったと思ってはいないかと訊かれる。 蛮人から仲間達を救ったと考えていると語るカイルは、救えなかった兵士のことで悔やんでいることを医師に伝える。 戦地へは行きたいが除隊したと伝えたカイルは、救いたければ、助けを求めている兵士がこの場にも大勢いると言われ、彼らに会ってみることにする。 手足を失った兵士達と話をしたカイルは、家族よりも彼らと過ごす時間が多くなる。 その理由を元兵士から訊かれたカイルは、助け合う必要があると答える。 2013年2月2日。 そのカイルの姿を、タヤは玄関で見守る。 その日、クリス・カイルは、助けになろうとして一緒に射撃場に向かった元兵士に射殺された。
父ウェイン(ベン・リード)からライフルの撃ち方を教わったカイルは、弟ジェフと共に厳しく育てられた。
...全てを見る(結末あり)
カウボーイのカイルは、ジェフ(キーア・オドネル)とロデオに出場して優勝し続けていたが、恋人のサラ(マーネット・パターソン)の浮気を知り彼女を追い出す。
”同時多発テロ”が起きたことを知ったカイルとタヤは、心を痛めて動揺する。
ある建物の屋上で狙撃準備を整えたカイルは、道路に出て来た女性が、ロシア製の対戦車手榴弾(RKG-3)を一緒にいた子供に渡すのを監視する。
搬送されたカイルらは、ある建物の屋上で監視体制に入る。
家族との生活を楽しむようにもなったカイルは、昔に戻ったことを喜ぶタヤに、悩んでいる元兵士の母親に頼まれ、彼に射撃を教えると伝えて家を出る。
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*(簡略ストー リー)
”911”で愛国心に目覚め国のために尽くすことを決めて、アメリカ海軍特殊部隊”Navy SEALs”のスナイパーとなったクリス・カイルは、タヤと出会い結婚する。
イラクに派遣されたカイルは、”アル=カーイダ”のNo.2ザルカーウィーの捜索作戦に参加する。
その後カイルは、スナイパーとしての役目を見事に果たし、多くの仲間達を救い”レジェンド”とまで言われるようになる。
英雄視されるカイルは、この戦争に疑問を抱く仲間や、自分の身を案ずる妻タヤのことを考えつつ、家族や国を守る使命を果たそうとするのだが・・・。
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アメリカ軍史上最強のスナイパーと言われた、海軍特殊部隊”Navy SEALs”隊員クリス・カイルの戦いと苦悩を描くドラマ。
80歳を過ぎても全く衰えを見せることのないクリント・イーストウッドが製作を兼ねた作品で、同じく製作を兼ねる人気スターのブラッドリー・クーパーが、主人公のクリス・カイルを演じて話題となった。
徹底的にリアリズムを追及した戦地の戦闘映像は迫力十分で、帰国する度に変化していく主人公の心理を繊細に描く、クリント・イーストウッドの奥深い演出が見所の作品。
戦場の体験による影響を受ける多くの兵士が抱える問題を描く内容で、PTSD”心的外傷後ストレス障害”を克服し、退役後も悩む兵士を救おうとする主人公が、新たな人生を歩もうとする矢先に命を絶たれたと紹介されるラストは、人々の心に訴えるメッセージを残す。
原作との違いなどが指摘されているが、それ以前に、SEALsの基礎水中爆破訓練のシーンで、クリス・カイルが30歳と言っているのは間違いで、”911”(2001年)以前に入隊する1974年生まれの彼の年齢設定をミスしている。
それほど細かいことではないために、気づかないのが理解できない。
それはともかく、本作は概ね高い評価を受け、第87回アカデミー賞では作品賞以下6部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞した。
・ノミネート
作品
主演男優(ブラッドリー・クーパー)
脚色・編集・録音賞
戦争アクションではなく人間ドラマと言える地味な内容ではあるが、北米興行収入だけでなんと3億5000万ドル、全世界では5億4700万ドルという大ヒットとなった。
クリス・カイルを演ずるブラッドリー・クーパーは、役作りのために体重を20キロ近く増やして肉体を鍛え上げ、苦悩する主人公を好演している。
主人公の妻タヤ・レネー・ステュードベーカー・カイルを演ずるシエナ・ミラー、その息子マックス・チャールズ、主人公と共に戦い戦死するマーク・リー役のルーク・グライムス、主人公に付き添い護衛する海兵隊員のカイル・ガルナー、部隊を指揮する大佐のサム・ジェーガー、主人公の同僚兵士ジェイク・マクドーマン、コリー・ハードリクト、エリック・ラディン、レイ・ガイエゴス、ケヴィン・ラーチ、上官のブライアン・ハリセイ、主人公に情報を提供するイラク人のナヴィド・ネガーバン、DIA/アメリカ国防情報局捜査官のエリック・クローズ、主人公の両親ベン・リードとエリース・ロバートソン、主人公の弟キーア・オドネル、SEALsの訓練教官レオナルド・ロバーツ、敵のスナイパー、サミー・シーク、残虐なザルカーウィーの護衛ミド・ハマダ、主人公の恋人マーネット・パターソンなどが共演している。