1961年にブロードウェイの”オーガスト・ウィルソン・シアター”で上演されたロバート・ボルトの同名舞台劇の映画化。 国家権力に抵抗し信念を貫いた法律、思想家トマス・モアの晩年を描く、製作、監督フレッド・ジンネマン、主演ポール・スコフィールド、ウェンディ・ヒラー、ロバート・ショウ、オーソン・ウェルズ、スザンナ・ヨーク他共演によるヒューマン・ドラマの秀作。 |
・ドラマ
・オーソン・ウェルズ / Orson Welles / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:フレッド・ジンネマン
製作総指揮:ウィリアム・N・グラフ
製作:フレッド・ジンネマン
脚本:ロバート・ボルト
撮影:テッド・ムーア
編集:ラルフ・ケムプレン
衣装デザイン
エリザベス・ハッフェンデン
ジョアン・ブリッジ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演
トマス・モア:ポール・スコフィールド
アリス・モア:ウェンディ・ヒラー
トマス・クロムウェル:レオ・マッカーン
ヘンリー8世:ロバート・ショウ
トマス・ウルジー枢機卿:オーソン・ウェルズ
マーガレット・モア:スザンナ・ヨーク
ノーフォーク公/トマス・ハワード:ナイジェル・ダヴェンポート
リチャード・リッチ:ジョン・ハート
ウィリアム・ローパー:コリン・レッドグレイヴ
アン・ブーリン:ヴァネッサ・レッドグレーヴ
マシュー:コリン・ブレイクリー
イギリス 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1966年製作 120分
公開
北米:1966年12月12日
日本:1967年7月
製作費 $2,000,000
世界 $25,000,000
■ アカデミー賞 ■
第39回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
主演男優(ポール・スコフィールド)
脚色・撮影(カラー)・衣装デザイン賞(カラー)
・ノミネート
助演男優(ロバート・ショウ)
助演女優賞(ウェンディ・ヒラー)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1528年。
イングランド国王ヘンリー8世(ロバート・ショウ)の離婚問題で、枢密院の議員トマス・モア卿(ポール・スコフィールド)は、大法官秘書トマス・クロムウェル(レオ・マッカーン)を介して枢機卿トマス・ウルジー(オーソン・ウェルズ)に呼び出される。
”ハンプトン・コート宮殿”のウルジー枢機卿を訪ねたモアは、王妃キャサリン・オブ・アラゴンが世継ぎを産めないために、愛人アン・ブーリン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)との結婚を望むヘンリー8世の離婚を承認するように、ローマ教皇の”クレメンス7世”への取り計らいをウルジー枢機卿に要請される。
しかし、モアはそれを拒絶してしまい、ウルジー枢機卿の怒りを買ってしまう。
帰宅したモアは、宮廷入りを狙うリチャード・リッチ(ジョン・ハート)に、賄賂で動く人間のようにならぬよう、教師になることを勧める。
その後モアは、娘マーガレット(スザンナ・ヨーク)の恋人ウィウィリアム・ローパー(コリン・レッドグレイヴ)の訪問を受ける。 ローパーは、マーガレットとの結婚を切り出しモアの承諾を受けようとする。 しかし、ローパーをルター派の異端者と見なすモアは、それを許可するわけにはいかなかった。 マーガレットがローパーと夜通しいたと知った母親のアリス(ウェンディ・ヒラー)は、ふしだらだと憤慨するが、モアがそれをなだめ彼女を寝かしつける。 アリスは、ノーフォーク公(ナイジェル・ダヴェンポート)がモアを大法官に推薦していることを彼に伝えるが、モア自身は枢機卿が生きている間は、大法官は変わらないことを悟っていた。 1529年。 国王は、ウルジー枢機卿亡き後、モアに、何としても離婚成立のために助力するよう圧力をかける。 さらに国王は、ノーフォーク公やクロムウェルらを信用していないことを告げるが、モアはなかなか首を縦に振らない。 モアに対し友好的に話しかけていた国王だったが、彼のあまりの頑なな態度に気分を害し、そそくさと宮廷に引き返してしまう。 リッチは、モアに粗末に扱われたと思い込み、枢密院の秘書官になったクロムウェルに接触し、ヨークの収税官の地位と引き換えに、国王の離婚を成立させる裏工作に加担させられる。 1534年11月。 モアは大法官の地位を潔く退くが、娘婿になったローパーが、それに口出しして彼に叱責される。 地位を失ったモアは、召使のマシュー(コリン・ブレイクリー)らを解雇して静かな生活を送ろうとするが、妻アリスは不満をもらす。 しかし、モアは自分の考えを決して他言しないことをアリスに伝え、その重要性を理解させる。 やがてクロムウェルは、モアが裁判官の頃、銀杯の賄賂を受け取ったということをでっち上げ、彼を陥れようとする。 ノーフォーク公を巻き込むために、クロムウェルは、その件を巧みに利用して国王への協力をさせようとする。 その後、ノーフォーク公は国王に協力し、ヘンリー8世は、王妃キャサリンと離婚、アン・ブーリンを王妃に迎える。 しかし、クロムウェルの思惑に反し、モアを結婚式に呼ぶことが出来なかった。 平民に成り下がっていたモアは、クロムウェルに呼ばれて尋問を受ける。 クロムウェルは、側近になっていたリッチと共に、モアに対して国王の怒りを伝えるが、彼はクロムウェルの子供じみた誘導尋問に全く動じない。 ノーフォーク公もモアに探りを入れるが、彼の信念を貫こうとする態度に怒りすら感じ、その場を立ち去る。 あくまでカトリック信徒の立場を貫こうとするモアだったが、新法令が制定されて彼は宣誓を強いられ、それに逆らえば反逆罪になってしまうことになる。 当然のごとく宣誓を拒否したモアは幽閉され、やがて時は流れ。リッチモンド宮殿に呼び出される。 モアは、ノーフォーク公やクロムウェルらの査問委員会から、法令に宣誓することを求められるが、彼は理由を言わずにそれを拒絶する。 アリスやマーガレットが、モアの元に面会に現れ、彼に宣誓するよう求める。 しかし、モアはそれを拒み、妻や娘らに国を出るよう指示して別れを告げる。 そしてモアは、国王のイングランド国教会首長の肩書きを否定した罪で裁判にかけられるが、彼はそれに反論して、”沈黙は承認”だと主張する。 しかし、ウェールズの法務長官になっていたリッチが、出世のために偽証までしてモアに不利な証言をする。 判決は有罪となり、モアはロンドン塔に移されることになり、最後の発言を許され、首長の法令は神と教会に背くものであると断言する。 1535年7月6日。 モアの首は獄門にさらされ、その後、娘マーガレットが彼を葬った。 クロムウェルは、5年後に反逆罪で斬首刑に、大司教は火刑に処せられた。
...全てを見る(結末あり)
ウルジー枢機卿の病が悪化し、国王はモアを大法官に任命する。
遂に、国王ヘンリー8世は国王至上法を制定しイングランド国教会首長となることを宣言する。
斬首台上のモアは、”国王の僕としてではなく、神の僕として死ぬ”と言い残し処刑される。
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*(簡略ストー リー)
1528年。
有識者として信望の厚い法律家で、思想家でもあるトマス・モアは、国王ヘンリー8世の離婚問題についての協力を、枢機卿トマス・ウルジーに要請される。
モアは、王妃キャサリン・オブ・アラゴンが世継ぎを産めないために、愛人アン・ブーリンとの結婚を望むヘンリー8世の考えに反対する立場をとり、ウルジー枢機卿の怒りを買う。
その後、モアは大法官に任命されるが、国王は国王至上法を制定し、イングランド国教会首長となることを宣言してしまう。
しかしモアは、イングランド国教会を認める法令の宣誓をカトリック信徒の立場から頑なに拒み、国王側近の謀略に巻き込まれて、反逆罪に問われてしまう・・・。
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舞台でトマス・モアを演じたポール・スコフィールドが主演し、同じく違う役で出演したレオ・マッカーンがトマス・クロムウェルを演じている。
第39回アカデミー賞では、作品賞をはじめとして8部門にノミネートされ、作品、監督、主演男優(ポール・スコフィールド)、脚色、撮影(カラー)、衣装デザイン賞(カラー)を受賞した。
・ノミネート
助演男優(ロバート・ショウ)
助演女優賞(ウェンディ・ヒラー)
「地上より永遠に」(1953)に続き2度目のアカデミー賞受賞となったフレッド・ジンネマンの、製作を兼ねた意欲作であり、若かりし日に製作者達と意見の相違で第一線を退き、気に入らない脚本を次々断っていた、映画人としての彼の信念を、あたかも主人公のトマス・モアに投影させたような、力感溢れる演出は見応えがある。
芸術又は美術品を見ているような、アカデミー賞受賞の衣装デザインや、中世の雰囲気を見事に再現したセット、ロケーションも素晴らしい。
アカデミー主演賞を取るべくして受賞したという感じの、主人公トマス・モアを演じたポール・スコフィールドは、演じていることを感じさせない、自然な演技で観る者を圧倒する。
10代から舞台で活躍していた、ベテランとしての実力を見事に発揮した渾身の演技は秀逸だ。
夫の頑なさに不満を感じながらも、支え続けるトマス・モアの妻ウェンディ・ヒラー、主人公を説得できずに罪を追求するトマス・クロムウェル役のレオ・マッカーン、ヘンリー8世を豪快に演ずるロバート・ショウ、出番が少ないのが残念だが、迫力ある演技を見せるトマス・ウルジー枢機卿役のオーソン・ウェルズ、モアの娘であるマーガレット役のスザンナ・ヨーク、ノーフォーク公役のナイジェル・ダヴェンポート、強かに出世していくリチャード・リッチ役のジョン・ハート、モアの娘婿であるウィリアム・ローパーのコリン・レッドグレイヴ、アン・ブーリン役で、コリンの実姉ヴァネッサ・レッドグレーヴなどが共演している。