1929年に発表された、エーリッヒ・マリア・レマルクの小説”西部戦線異状なし”を基に製作された作品。 戦いの意味も知らないまま戦場に向かった若者が経験する現実を描く、監督ルイス・マイルストン、主演ルイス・ウォルハイム、リュー・エアーズ他共演による、映画史上に残る戦争ドラマの傑作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ルイス・マイルストン
製作:カール・レムリJr.
原作:エーリッヒ・マリア・レマルク”西部戦線異状なし”
脚本
マクスウェル・アンダーソン
デル・アンドリュース
ジョージ・アボット
撮影:アーサー・エディソン
編集:エドガー・アダムス
音楽:デヴィッド・ブロークマン
出演
スタニスラウス・カチンスキー:ルイス・ウォルハイム
ポール・バウマー:リュー・エアーズ
ヒンメルストス:ジョン・レイ
カントレック教授:アーノルド・ルーシー
フランツ・ケメリッヒ:ベン・アレクサンダー
レエル:スコット・コルク
ペーター:オーウェン・デイヴィスJr.
ベーム:ウォルター・ブラウン・ロジャース
アルバート・クロップ:ウィリアム・ベイクウェル
ミュラー:ラッセル・グリーソン
ウェストフ:リチャード・アレクサンダー
デテリング:ハロルド・グッドウィン
チャーデン:スリム・サマーヴィル
ベルチンク中尉:G・パット・コリンズ
バウアー夫人:ベリル・マーサー
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1930年製作 136分
公開
北米:1930年4月21日
日本:1930年10月24日
製作費 $1,200,000
北米興行収入 $3,270,000
■ アカデミー賞 ■
第3回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
・ノミネート
脚本・撮影
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
第一次大戦下、ドイツ国。
軍靴の音が響く町で、戦果の知らせに自国を誇りに思う市民は、志願して戦場に向かうことを望んだ。
大学教授カントレック(アーノルド・ルーシー)は、戦いが必要であることを生徒達に伝え、その意味を教える。
学生達はその言葉に応え、戦う意思をカントレック教授に伝えて志願する。
ポール・バウマー(リュー・エアーズ)、フランツ・ケメリッヒ(ベン・アレクサンダー)、レエル(スコット・コルク)、ペーター(オーウェン・デイヴィスJr.)、ベーム(ウォルター・ブラウン・ロジャース)、アルバート・クロップ(ウィリアム・ベイクウェル)、ミュラー(ラッセル・グリーソン)らは、宿舎で軍服に着替える。
そこに、町の郵便配達員だったヒンメルストス(ジョン・レイ)が、軍曹として現れる。 学生達は、顔見知りのヒンメルストスが上官であることを無視して話しかける。 ヒンメルストスは、兵士となった学生達を整列させて、気の緩みを批判し鍛え直すことを伝える。 厳しい訓練は始まり、軍隊生活を遊びの延長程度に考えていた学生達は、その時点でようやく現実を知る。 そして、一応、軍人らしくはなったポールらは、ついに出撃命令を受ける。 その夜、ポールらは酔ったヒンメルストスを待ち伏せして痛めつけ、泥の中に落としてしまう。 前線に向かったポールらは、食料もないまま廃墟の宿舎に向かう。 ポールは、古参兵のウェストフ(リチャード・アレクサンダー)、 食料を調達しに行った兵士スタニスラウス・カチンスキー(ルイス・ウォルハイム)は、豚を盗んで宿舎に戻る。 カチンスキーは、新兵に豚を食わせる代わりに物資を受け取り、ポールらは空腹を満たす。 その後、鉄条網張りの仕事を命ぜられたカチンスキーは、新兵達と共に現場に向かう。 不躾で粗野なカチンスキーだったが、砲撃の音に怯える新兵達を気遣い、ポールは彼に親しみを感じる。 作業中に砲撃が始まり、ベームが目を負傷して取り乱し、ケメリッヒが助けに行くものの死亡する。 カチンスキーは、勝手に助けに行ったケメリッヒを注意する。 後方に戻った中隊は、移動命令を受けてその場を離れる。 塹壕の避難所で、食料もないまま砲撃の音に耐えていた兵士だったが、親友ベームを失ったことがショックだったケメリッヒは悪夢にうなされる。 他の兵士も怯え、ケメリッヒは叫び始めてその場から逃げようとする。 ポールが彼を引き止め、カチンスキーは、ケメリッヒを落ち着かせるために殴る。 しかし、激しい砲撃に耐えきれなくなったケメリッヒは、塹壕を飛び出してしまう。 中隊長ベルチンク中尉(G・パット・コリンズ)がケメリッヒを助け、重傷を負った彼はポールに見守られながら搬送される。 その後、カチンスキーが粗末な食料を持って現れ、兵士達はそれを貪る。 その時、大量のネズミが現れ、兵士達はそれを叩き潰して殺す。 敵軍の突撃で戦闘が始まり、激しい肉弾戦も交えながら兵士達は戦い抜く。 後方に戻った中隊は150人が80人に減り、料理係が十分にある調理した食料を提供しないために騒動を起こす。 そこにベルチンク中尉が現れ、食事を配るよう料理係に命ずる。 存分に食事をした兵士達は翌日、出撃することを知り、ポールらはケメリッヒの様子を見に行くことを考える。 また兵士達は、国家が戦争をする理由や意味などを考える。 見舞いに来てくれたポールらに気づいたケメリッヒは、看護兵に時計を盗まれたことを伝える。 ケメリッヒは、仲間達に右足を切断されたことを知らされてショックを受ける。 林業者になりたかったケメリッヒは、義足を作ってもらえばそれは可能であるし、何より自分の戦争は終わりで故郷に帰れると言われ仲間達に励まされる。 ミュラーは、ケメリッヒのブーツの状態を見て気に入り、それが不要だと彼に言って譲り受けようとするが、ポールは顔をしかめる。 その場を去ろうとしたポールらは、ケメリッヒが精神的に持ちこたえられるかを心配する。 ケメリッヒを傷つけてしまったミュラーは後悔するが、ポールに気にすることはないと言われる。 ポールはケメリッヒの元に戻り、彼が診察を望むため医師に声をかける。 しかし、医師は手を尽くしたことを伝えて治療はせず、ポールは、弱音を吐くケメリッヒを励まし、まだ19歳の彼のために祈る。 死を覚悟するケメリッヒは、ブーツなどの所持品を母親に送ってほしいとポールに伝える。 その様子を見て焦るポールは、医師にケメリッヒのことを伝えるが、他の負傷兵の治療が優先される。 ブーツを手にして仲間達の元に戻ったポールは、それを履こうとするミュラーに、ケメリッヒを看取ったことを伝え、死の意味を語る。 ミュラーはケメリッヒのブーツを履いて得意げに戦場に向かう。 しかし、ミュラーは銃弾に倒れ、彼のブーツを受け継いだ者達は次々と戦死する。 その後も戦いを続けた兵士達は、故郷に帰れた場合の望みなどを語り合う。 塹壕にヒンメルストスが居たことを知ったポールらは、彼をからかうものの出撃の時が来る。 中隊は突撃を開始し、ポールは怯えるヒンメルストスに詰め寄り臆病者呼ばわりする。 ヒンメルストスは気が振れたように叫びだして走り出し、ポールは砲撃に遭いカチンスキーと共に身を潜める。 難を逃れたポールだったが逃げ遅れてしまい、現れた敵兵に襲いかかり、夜までその場に留まる。 瀕死の敵兵に同情してしまったポールは、朝を迎え、兵士が死んだことを知る。 相手を敵として殺そうとして、人間としては助けようとしてしまう、自分の行動が理解できなくなってしまったポールは、なぜ殺し合いをさせるのかを神に問う。 敵兵を殺したことを後悔するポールは、彼の所持品を見て妻子がいることを知る。 家族に対してどのようなことでもすると敵兵に話しかけるポールは、許しを請い泣き崩れる。 戦闘は静まり仲間達の元に戻ったポールは、敵兵を殺してしまったことを動揺しながらカチンスキーに話す。 カチンスキーは、それが戦争であると言ってポールを納得させる。 フランスのある村に移動した中隊は、久し振りの休暇を楽しむ。 ポールは、壁に貼られたポスターの女性を見ながら、アルバートと酒を酌み交わす。 川で体を洗うことにしたポールらは、現れた村の女性に声をかける。 言葉が通じないため相手にされないポールらだったが、チャーデンが食料を見せたことで女性達は彼らを呼び寄せる。 現れた兵士が、川を渡ろうとするポールらを注意したため、女性達は家で待っていることを彼らに伝える。 その夜、川を渡ったポールらは食料を持参して女性達の元に向かい歓迎される。 ポールらに頼まれたカチンスキーはチャーデンを酔わせる。 その理由を知り置いて行かれたことに気づいたチャーデンは、憤慨するものの酔い潰れてしまう。 ポールは一人の女性と愛し合い、心を癒してくれたことに感謝して中隊に戻る。 翌日、中隊は出撃し、ポールとアルバートは負傷して病院に運ばれる。 ポールは出血多量で他の部屋に運ばれ、それが死を意味していると思い込み動揺する。 アルバートは脚を切断され、それを知った彼は取り乱す。 部屋に戻れたポールは喜び、回復した彼は休暇をもらい、失意のアルバートを残して故郷に向かう。 自宅に戻ったポールは姉に迎えられ、病気の母親(ベリル・マーサー)に元気な姿を見せて安心させる。 ポールは町の名士に歓迎され、現実を全く知らずに、机上で戦う理想論ばかり語る彼らに意見するものの聞き入れられない。 大学に向かったポールは、相変わらず愛国心を語るカントレック教授と、その話に目を輝かせる学生の前で話をすることを求められる。 話すことはないと伝えたポールは、ただ単に塹壕で戦い戦死者がいただけだと語り、カントレックが学生を扇動していると言って批判する。 命を犠牲にしてまで祖国と戦う必要はないと付け加えるポールは、学生達に臆病者と言われる。 現実は全く違うと反論するポールは、開戦から3年経っても世間がそのことを理解していないことを嘆く。 戻るべきではなかったと語るポールは、最前線では生きるか死ぬかだけであり、いずれは敗戦に向かっていることにも皆が気づくと語る。 ポールは、死と隣り合わせの日々を理解することは不可能であることもカントレックに伝える。 休暇は残っているが、この場にいる気になれないと言い残したポールは立ち去る。 自分の身を案ずる母親が、祈っていてくれるという話を聞きながら、ポールは翌日、旅立とうとする。 中隊に戻ったポールは、その場に配属された、まだ子供のような新兵を見て驚く。 食料を調達しに行っていたチャーデンは手ぶらで戻り、新兵は不平を言うが、ポールは故郷から持参した食べ物を差し出す。 ポールに気づいたチャーデンは食べ物を新兵に分けて、まともな食料支給もなくなったことを伝える。 顔ぶれが変わったことを尋ねられたチャーデンは、ウェストフは負傷し、故郷の農場を気にしていたデテリングは逃亡して逮捕されたまま行方不明、そして元気なカチンスキーは食料を探しに行っているとポールに話す。 カチンスキーと再会したポールは、故郷で命の大切さを語るものの臆病者と言われたことなどを伝える。 気心知れた二人は、お互いが頼りだということを確認するが、敵機の爆撃を受けてカチンスキーが脚を負傷してしまう。 カチンスキーを担いで中隊に戻ろうとするポールは、終戦後に二人で何かをすることを彼に提案する。 再び爆撃を受けながら歩き続けたポールは、野戦病院にカチンスキーを連れて行くものの、彼は爆撃で傷を負い息を引き取っていた。 その後も戦いは続き、塹壕で見張りをしていたポールは、目の前の蝶に気づき監視穴から手を伸ばす。 手が届かないため、土嚢越しに蝶を捕まえようとしたポールは、敵兵に狙撃される。
...全てを見る(結末あり)
デテリング(ハロルド・グッドウィン)、チャーデン(スリム・サマーヴィル)らに食料のことについて尋ねるが、何もないと言われて笑い飛ばされる。
*(簡略ストー リー)
第一次大戦下、ドイツ国。
自国の戦果の報告に沸くある町で、大学教授カントレックは、愛国心と戦争の必要性を学生達に熱く語る。
その意見に賛同するポール・バウマーら学生達は志願して出征するが、彼らは戦いを遊びの延長程度に考えていた。
やがて、厳しく辛い訓練を受ける日々が続いていたポールらに出撃命令が下り、彼らは前線に向かう。
新兵は中隊に加わり、ポールは、不躾で粗野ではあるが、面倒見がよく頼りにもなる古参兵カチンスキーに親しみを感じる。
前線での作業中に攻撃を受けた中隊は早くも死者を出し、新兵は怯えて苦しむ日々を送ることになる。
そしてポールは、理想と現実の違いに気づき、生と死が隣り合わせの戦場で、その意味についてを考えるのだが・・・。
__________
反戦的内容と判断され、当時のドイツ国では所持が禁じられたエーリッヒ・マリア・レマルクの原作での物語の描き方とは違うものの、本作でも登場人物の苦悩などは生々しく描かれている。
第一次大戦後10年以上が経ち、次の大戦を考える時期でもない時代ではあるが、この内容を反戦”的”と言うのに余りにも曖昧で、紛れもなく本作は反戦映画である。
自身も第一次大戦の兵役経験があり、若き演出家ルイス・マイルストンの力強いメッセージが伝わる意味深い作品だ。
激しい戦いの場面が多用される本作は、戦闘ではない場で主人公が命を落とすという、ショッキングとも言えるシーンで本編は締めくくられる。
その直後、中隊の新兵が初めて前線に向かう映像のバックに、無数の十字架が映し出されることでも分かるように、戦争の悲惨さや、現場の兵士の苦悩を一瞬で表現するラストは実に印象的だ。
兵士達の信頼関係や友情、そして人情物語も押しつけがましくなく描かれるユーモアも交えた内容は、トーキー初期の作品にして既に非常に完成度の高い仕上がりとなっている。(サイレント版も公開された)
当然、本作は絶賛され、第3回アカデミー賞では、作品、監督を受賞した。
・ノミネート
脚本・撮影
1990年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
当時としては破格の、120万ドルをかけた製作費による戦闘場面などの凄まじさはかなり本格的で、北米興行収入も約330万ドルのヒットとなった。
翌年、役作りのための急激な減量のために急死する(胃癌説有り)、頼もしい豪快な古参兵を人間味豊かに演ずるルイス・ウォルハイム、戦争の悲惨さと現実を知る青年を好演するリュー・エアーズ、彼と共に戦う新兵ベン・アレクサンダー、スコット・コルク、オーウェン・デイヴィスJr.、ウォルター・ブラウン・ロジャース、ウィリアム・ベイクウェル、ラッセル・グリーソン、古参兵リチャード・アレクサンダー、スリム・サマーヴィル、ハロルド・グッドウィン、中隊長G・パット・コリンズ、軍曹ジョン・レイ、若者に愛国心と戦争の必要性を訴える教授アーノルド・ルーシー、主人公の母親ベリル・マーサーなどが共演している。