芸能界の地位や名誉欲に執着する野心家の女性と彼女に翻弄される業界人を描く、製作、監督、脚本ジョセフ・L・マンキーウィッツ、ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、セレステ・ホルム共演のドラマ。マリリン・モンローも脇役出演する。 |
・ドラマ
・ベティ・デイヴィス / Bette Davis / Pinterest
・マリリン・モンロー / Marilyn Monro / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
製作:ダリル・F・ザナック
脚本:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
撮影:ミルトン・クラスナー
原作:メアリー・オアー”The Wisdom of Eve”
編集:バーバラ・マクリーン
美術・装置
ライル・R・ウィーラー
ジョージ・デイヴィス
トーマス・リトル
ウコルター・M・スコット
衣装デザイン:イデス・ヘッド
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演
マーゴ・チャニング:ベティ・デイヴィス
イヴ・ハーリントン/ガートルード・スレシンスキー:アン・バクスター
アディソン・デウィット:ジョージ・サンダース
カレン・リチャーズ:セレステ・ホルム
ビル・サンプソン:ゲイリー・メリル
ロイド・リチャーズ:ヒュー・マーロウ
マックス・フェビアン:グレゴリー・ラトフ
バーディー・クーナン:セルマ・リッター
クローディア・カズウェル:マリリン・モンロー
フィービー:バーバラ・ベイツ
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1950年製作 138分
公開
北米:1950年10月13日
日本:1951年9月21日
北米興行収入 $63,460
■ アカデミー賞 ■
第23回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
助演男優(ジョージ・サンダース)
脚本・録音・衣装デザイン賞
・ノミネート
主演女優(ベティ・デイヴィス/アン・バクスター)
助演女優(セレステ・ホルム/セルマ・リッター)
編集・撮影(白黒)・美術(白黒)・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アメリカ演劇界最高の栄誉”セイラ・シドンズ賞”をイヴ・ハリントン(アン・バクスター)が受賞することになる。
しかし、会場の喝采を受けるイヴを、複雑な表情で見つめる数人の出席者がいた。
__________
8ヶ月前。
劇作家ロイド・リチャーズ(ヒュー・マーロウ)の妻カレン(セレステ・ホルム)は、大女優であるマーゴ・チャニング(ベティ・デイヴィス)に憧れ、毎晩、彼女の楽屋口に訪れるイヴを気にかけていた。
ある晩、劇場の裏口で、イヴに声をかけられたカレンは、サインねだりか非行少女だと言い張るマーゴを説得して彼女にイヴを紹介する。
マーゴは、ロイドや付き人のバーディー・クーナン(セルマ・リッター)とで、イヴの語る身の上話を聞き感銘を受ける。
そこに、マーゴの恋人で、演出家のビル・サンプソン(ゲイリー・メリル)が現れる。 ビルはハリウッドに向かうために、マーゴに見送りの準備を急がせる。 イヴはビルに挨拶した後、その場を去ろうとするが、マーゴは彼女を引き止める。 ロイドとカレンは、イヴに別れを告げて楽屋を去り、残ったビルは、どうして演劇界からハリウッドに向かうかでイヴと議論になる。 イヴは、マーゴがビルを見送る空港に同行し、その後、住み込みで彼女の身の回りの世話をすることになる。 マーゴはイヴを近くに置き、ビルのいない寂しさを紛らそうとした。 イブは驚くほど有能で、家の中は整頓され、ビルの誕生祝の電話まで手配する。 マーゴは、自分のプライバシーに立ち入り過ぎるイヴに対し、 彼女を嫌うバーディーと共に、次第に警戒心を抱き始める。 その後、戻ってきたビルの誕生パーティーの席上、マーゴは、ビルに対するイヴの態度に激怒して彼と言い争いになる。 プロデューサーのマックス・フェビアン(グレゴリー・ラトフ)を伴って現れたロイドとカレンは、 不穏な空気が漂うマーゴとビルの様子に気づく。 マーゴは、批評家のアディソン・デウィット(ジョージ・サンダース)に同伴した、新人女優のクローディア・カズウェル(マリリン・モンロー)の相手役を引き受ける交換条件として、マックスに、イヴを引き取ってもらうことを考える。 イヴの野心も徐々に表面化していき、カレンに手を回しマーゴの代役に推薦してもらおうとする。 その後、舞台に対する熱い思いを語るイヴに、ビルやカレン、そしてアディソンまでもが聞き入ってしまう。 マーゴは来客の相手もせず一人酔ってしまい、ついに人前で、イヴへの嫌悪感を露わにする。 それを見たカレンは、マーゴを批判してイヴに同情してしまう。 イヴは気落ちするものの、カレンに代役の件で念を押すことを忘れなかった。 その後、代役で、クローディアを相手にオーディションを受けたイヴをアディソンは絶賛し、それをマーゴに伝える。 マーゴは、知らぬ振りをしてステージに向かい、謙遜するイヴを尻目に、彼女の素晴らしさを語るビルやロイドの相手をする。 なぶり者にされたことに気づいたロイドは憤慨し、マックスと共に劇場を去る。 イヴを過剰に意識して癇癪を起こし、自分との仲まで疑うマーゴを見限り、ビルは彼女に別れを告げる。 帰宅したロイドは、カレンにマーゴへの不満をぶつけるが、カレンはマーゴのわがままだと考え、彼女を少し懲らしめようとする。 カレンは、旅行の際に車に細工をして、マーゴを舞台に立たせない方法を考える。 予定通り車は止まってしまい、ロイドが近くの民家に行っている間、冷静に自分の行動を反省するマーゴを見てカレンは罪悪感を感じる。 その頃、イヴはマーゴの代役を無事に務め、アディソンは彼女の楽屋に向かう。 そして、イヴがビルを誘惑し、彼がそれを拒絶してしまうところをアディソンは見てしまう。 アディソンはイヴの本性を見抜き、彼女に探りを入れて利用することを考える。 各新聞記事はイヴを褒め称えるが、なぜ記者達がイヴに注目したのかうカレンは疑問に思う。 アディソンのコラムを読んだカレンは驚き、それを持参してマーゴの元に向かう。 イヴを絶賛し、自分の時代が終わったかのように伝えるそのコラムを読んだマーゴに、怒りと悲しみがこみ上げる。 コラムを読んだビルはマーゴの元に戻り、それを見たカレンは安心して帰宅する。 しかし、カレン女は、イヴが自分の夫ロイドに接近してきていることを知る。 今回のコラムをきっかけに、イヴを見る目が変わってきたカレンは、新作でイヴを使う考えのロイドを批判する。 カレンの同意なしでは、イヴの起用はないことをロイドは伝え、二人はマーゴとビルに誘われてクラブに向かう。 イヴの魂胆が見えてきたマーゴの周辺は、以前のようにまとまりを見せる。 結婚を決めたマーゴとビルを祝福するロイドとカレンだったが、そこにイヴからのメッセージが届き、カレンが彼女に呼び出される。 カレンはイヴを軽蔑の眼差しで見つめて接するが、いつものように謙遜して語り始めたイヴに、カレンは再び同情し始める。 しかし、イヴは態度を豹変させ、ロイドが書いた舞台の主役を演じられるよう、旅行の車の件を持ち出して、カレンを脅迫する。 カレンは不安げに席に戻るが、配役が年齢に合わないことや、結婚の幸せに浸るために、マーゴは、自らその役を辞退してこの件は解決してしまう。 その後、ロイドはイヴを主役に舞台の準備をはじめ、ビルもそれに誘われる。 ビルとロイドはイヴの演技で衝突し、そこにつけこみ彼女はロイドをカレンから奪おうとする。 そして、ロイドと結婚するとまで言い出し、有頂天になるイヴにアディソンが牙を剥き始める。 アディソンはイヴの身の上調査をして、嘘で固められたその正体を見抜き、彼女を影で操ろうとする。 そして、イヴの舞台は大成功して、彼女はついに”セイラ・シドンズ賞”を受賞することになる。 賞を受けたイヴに、マーゴ達は上辺だけ祝福する。 受賞式の夜、帰宅したイブの部屋には、高校のレポートのため入り込んだという、フィービー(バーバラ・ベイツ)と名乗る少女がいた。 アディソンはフィービーを見て、そんなに賞が取りたければ、イヴに総てを聞くように伝え立ち去る。 イヴに、アディソンのことは伝えなかったフィービーは、8ヶ月前のイヴのような、野心を抱いた少女だった。 そしてフィービーは、喝采を浴びる自分を想い描きながら、像を手にイヴのガウンをまとい、鏡の前で何度も会釈する。
...全てを見る(結末あり)
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そこに、車に賞の像を忘れたイヴに、アディソンがそれを届けに現われる。
*(簡略ストー リー)
劇作家ロイド・リチャーズの妻カレンは、大女優マーゴ・チャニングに憧れ、毎日劇場に足を運ぶ貧しい女性イヴを気にかけ、カレンはイヴをマーゴに紹介する。
イヴを気に入ったマーゴは、彼女を付き人にするが、プライバシーにまで干渉し始めるイヴを、マーゴは次第に嫌い始める。
カレンは、その後もイヴを支え続けるが、マーゴの代役を務めた彼女は、マーゴの恋人で演出家のビルや、ロイドにまで接近し始める。
イヴの周囲が、彼女の行動に警戒し始めた頃、批評家アディソンはイヴの正体を暴き、彼女を影で操ろうと画策する・・・。
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前年の「三人の妻への手紙」(1949)に続いて、2年連続でアカデミー監督賞と脚本賞に輝く快挙を成し遂げたジョセフ・L・マンキーウィッツの、演劇界の内幕を描いた重厚なドラマで、冒頭の謎が解けていくクライマックスまでの展開は、さながらミステリーのような面白味もある。
第23回アカデミー賞では12部門にノミネートされ、作品賞以下6部門で受賞した映画史上に残る名作。
・受賞
作品・監督
助演男優(ジョージ・サンダース)
脚本・録音・衣装デザイン賞
・ノミネート
主演女優(ベティ・デイヴィス/アン・バクスター)
助演女優(セレステ・ホルム/セルマ・リッター)
編集・撮影(白黒)・美術(白黒)・作曲賞
1990年、アメリカ議会図書館が国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
火花を散らすベティ・デイヴィスとアン・バクスターをはじめとした、主な出演者それぞれの個性を見事に生かした、ジョセフ・L・マンキーウィッツの、迫力さえ感じさせる演出は見事だ。
誰もが平伏す大女優、それを蹴落とそうとする強かな女性、さらには、その上手をいく策略家の登場という、目まぐるしいストーリー展開にも圧倒される。
華やかな世界と、うごめく人間模様を見事に表現するアルフレッド・ニューマンの音楽、艶やかな演劇界、特に女優陣の衣装を担当したイデス・ヘッドの確かな仕事も素晴らしい。
主演のベティ・デイヴィスは、”悪女女優を見事に演じた”などと記してあるコメントをよく見かけるが、”秀でた才能の大女優を演じた”と言った方が正しいだろう。
この位のパワーがなければ、その世界のトップの座を勝ち取れるはずもなく、現実の彼女を投影しているような役柄も実に興味深い。
へたな男優が、10人位束になってもかないそうもない雰囲気も彼女らしい。
彼女は、恋人役のゲイリー・メリルと、撮影終了直後に結婚している。
ベティ・デイヴィスと揃ってアカデミー主演賞候補になったアン・バクスターこそ、強かな悪女役で、ハリウッドの女優にしては、小柄で地味でもあり、そして誠実そうなイメージとのギャップが、見事な効果を上げている。
その彼女の上をいく”悪人”ジョージ・サンダースの隙のない策略家は、当時44歳とは思えない貫禄と共に、圧倒的な存在感がある。
彼は1972年に睡眠薬自殺をするが、発見された遺書には「退屈だからこの世を去る」とあったという。
本作の彼を見ていると、そのような命の絶ち方をしそうな雰囲気がある。
こちらも揃ってアカデミー助演賞にノミネートされた、セレステ・ホルムやセルマ・リッターらの、実力派俳優の好演も見ものだ。
*セルマ・リッターは、後半、全く姿を見せなくなってしまうのは残念だ。
女優人に関るゲイリー・メリル、ヒュー・マーロウ、グレゴリー・ラトフも、それぞれがいい味を出している
まだ20代半ばのマリリン・モンローの美しさが際立つ出演も印象に残る。
そして、ラストを飾る、次の野心家役でバーバラ・ベイツが出演している。