1937年に発表された、アンリ・ラ・バルトの小説”Pepe le Moko”を基に製作されたフランス映画「望郷」(1937)のハリウッド版リメイク。 アルジェのカスバに潜む犯罪者と観光客の女性との恋を描く、製作ウォルター・ウェンジャー、監督ジョン・クロムウェル、主演シャルル・ボワイエ、シグリッド・ガリー、ヘディ・ラマー、ジョセフ・カレイア、アラン・ヘイル、ジーン・ロックハート他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・ヘディ・ラマー / Hedy Lamarr / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・クロムウェル
製作:ウォルター・ウェンジャー
原作:アンリ・ラ・バルト”Pepe le Moko”
脚本
ジェームズ・M・ケイン
ジョン・ハワード・ローソン
撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ
編集:ウィリアム・H・レイノルズ
美術・装置:アレクサンダー・トルボフ
作曲
ヴィンセント・スコット
モハメド・イゲルボシェン
出演
ペペ・ル・モコ:シャルル・ボワイエ
イネス:シグリッド・ガリー
ギャビー:ヘディ・ラマー
スリマン警部:ジョセフ・カレイア
グランペール:アラン・ヘイル
レジス:ジーン・ロックハート
ルーヴァン主任警部:ウォルター・キングスフォード
ジャンヴィエ:ポール・ハーヴェイ
カルロス:スタンリー・フィールズ
ピエロ:ジョニー・ダウンス
マックス:チャールズ・D・ブラウン
ジロー:ロバート・クレイグ
ラルビ:レオニード・キンスキー
アイシャ:ジョーン・ウッドベリー
タニア:ニナ・コシェッツ
マリー:クラウディア・デル
ギル:ベン・ホール
ベルティエ:バート・ローチ
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1938年製作 99分
公開
北米:1938年8月5日
日本:未公開
製作費 $691,830
■ アカデミー賞 ■
第11回アカデミー賞
・ノミネート
主演男優(シャルル・ボワイエ)
助演男優(ジーン・ロックハート)
撮影・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アルジェ。
フランスから逃れてきた犯罪者ペペ・ル・モコ(シャルル・ボワイエ)は、カスバに潜んで君臨し、フランス警察は長年彼を追っていた。
地元警察のルーヴァン主任警部(ウォルター・キングスフォード)は、フランス政府から派遣されたジャンヴィエ(ポール・ハーヴェイ)からのペペの逮捕要求に対し、カスバでの困難な捜査状況を伝える。
ペペをよく知るスリマン警部(ジョセフ・カレイア)が、カスバの住人ととトラブルを避けているような対応に不満を抱くジャンヴィエは、自分が逮捕すると言って、12人の刑事を貸すことをルーヴァンに要求する。
その頃ペペは、短気なカルロス(スタンリー・フィールズ)と気弱な若者ピエロ(ジョニー・ダウンス)らを従えて、故売屋のグランペール(アラン・ヘイル)に真珠を売ろうとしていた。
ルーヴァンとジャンヴィエらの手入れが始まり、カスバの住人は警戒する。 グランペールの名を書いたメモをルーヴァンに渡したレジス(ジーン・ロックハート)は、ペペの情婦イネス(シグリッド・ガリー)の元に向かうが、彼女は捜査があることを知っていた。 ペペに好かれたいレジスは、自分が知らせに来たと彼に伝えてほしいと言いながら、部屋を出て行くイネスを見送る。 現れたイネスとピエロから、包囲されたことを知らされたペペは、居場所が分かったことを不思議に思う。 ピエロが窓から発砲してしまい、彼を責めないペペは、無駄な戦いは避けるとだけ伝える。 壁の隠し扉から隣り部屋に移ったペペは、この場所のことを誰かに話したかイネスに尋ねる。 ペペは、レジスが警察が来ると知らせるまで、イネスが部屋にいたことを知る。 警察が部屋を調べていることに気づいたペペらは、その場から逃げる。 屋上に向かいペペらを見つけたルーヴァンらは、発砲しながら彼らを追う。 その頃、フランスから到着した美しい女性ギャビー(ヘディ・ラマー)は、銃声を聴いて驚き、その場にいたスリマンが彼女をアイシャ(ジョーン・ウッドベリー)の部屋に避難させる。 そこに現れたペペは、怪我をした腕をアイシャに治療してもらう。 ペペは、その場にいたギャビーの美しさや宝石が気になる。 自分が必ず捕らえると言うスリマンの話を聞き流したペペは、カルロスらを従えてその場を去る。 ペペに傷を負わせたことを確信するジャンヴィエは、逮捕は可能だという連絡をパリに入れる。 ペペをカスバの外に出せば逮捕できるとルーヴァンに伝えたレジスは、ピエロの母親からの手紙を利用して、彼をおとりに使う方法を提案する。 翌日ペペは、スリマンからギャビーのことを聞き、真珠のネックレスの話などをする。 ラルビ(レオニード・キンスキー)が持っていたピエロ宛の手紙が気になるアイシャは、自分が渡すと言ってそれを持ち去る。 アイシャから手紙を受け取ったピエロは、レジスにそれを渡す。 ペペに呼ばれたピエロは、信用できないレジスにはかまうなと言われ、仕事以外は指図されたくないと反論したために頬を叩かれる。 ピエロを許したペペは、グランペールらとカードを続ける。 レジスに手紙を読んでもらったピエロは、母親がアルジェの街に来ていると言う彼と共にその場に向かう。 ギャビーは、友人のマリー(クラウディア・デル)に、富豪のジロー(ロバート・クレイグ)との結婚に疑問を持ち始めていることを伝える。 デパートの売り子だったことを考えると、夢のような結婚だったために、マリーは贅沢な話だとギャビーに伝える。 ギャビーとマリーは、ジローとベルティエ(バート・ローチ)、そしてスリマンが待っているカフェに向かう。 ペペの話になり、自分のことが話題になったとスリマンから知らされたギャビーは、彼と会う手配をしてもらう。 イネスと話をしたペペは、カスバでの2年の生活にウンザリしていることを伝える。 ペペは、カスバ以外に行き場がないイネスを悲しませてしまう。 その後ペペは、母親からの手紙を受け取ったピエロが、レジスと街に向かったことをアイシャから知らされる。 1人で戻ったレジスの元に向かったペペは、一緒に街に行ったピエロのことを尋ね、彼が母親に会いに行ったことを知る。 カルロス、マックス(チャールズ・D・ブラウン)、ギル(ベン・ホール)、そしてグランペールらが現れ、動揺して怯えるレジスは去ろうとするものの帰してもらえない。 ペペからピエロを捜すよう指示されたイネスは、スリマンと共に現れたギャビーらが気になる。 スリマンらが来たことを知ったペペは彼らを歓迎し、イネスはその様子を見つめる。 マリーとベルティエは音楽を楽しみ、ペペとギャビーはパリの話で盛り上がる。 カルロスからレジスの様子を聞いたペペは、ギャビーの真珠を奪う話をする彼を黙らせる。 ペペにブレスレットを見せたギャビーは、彼に手を握られて動揺しながら、誘われて踊る。 ギャビーにキスしようとしたペペは拒まれ、彼女を連れてテラスに向かうとする。 ギャビーは、別の日に会うことをペペに約束して去ろうとする。 その様子を見ていたイネスに気づいたペペは、ピエロを捜しに行ったかを確認する。 そこに傷ついたピエロが戻り、レジスに裏切られ警察に痛めつけられたことをペペに話す。 ピエロに銃を向けられたレジスは、怯えて命乞いをする。 ピエロは意識を失い、カルロスがレジスを射殺する。 ピエロは息を引き取り、ペペは、ギャビーらが去ったことをイネスから知らされる。 翌日、酔ったペペは、ピエロを埋葬したスリマンから話を聞き、自分も生きてカスバから出ることはできないと言われて苛立つ。 昨日の件を気にするギャビーとは二度と会えないと言われたペペは、彼女に惹かれたことを否定する。 ペペは、その件で口出しするイネスを追い払い、自分のやり方でここを出て行くと言って街に向かおうとする。 それをグランペールから知らされたイネスは、ペペを追う。 ルーヴァンも、ペペが街に向かっていることを知る。 イネスに引き留められたペペは、ギャビーが部屋にいることを知り、その場に向かう。 それが、自分を行かせないためのイネスのウソだったとことを知ったペペは、冷静になり彼女の気持ちを察する。 現れたギャビーに気づき驚いたペペは、彼女と共に人目を避ける。 スリマンは、ペペとギャビーを目撃する。 ギャビーと話をしたペペは、彼女にキスしてカスバから出る気はないか訊かれ、逃げ道はないと答える。 明日も来ることを約束したギャビーは、ペペにもう一度キスされてその場を去る。 カルロスから宝石のことを訊かれたペペは、意味不明なことを言って彼を相手にしない。 スリマンは、ギャビーが街に戻ることを知る。 翌日、ギャビーを待つペペは、窓で靴を磨きながら陽気に歌い、通りの住人を喜ばせる。 デートだと言ってペペが出て行ったために、イネスは苛立つ。 ペペと話をしたスリマンは、自分たちのことを見ていたイネスの部屋に向かう。 ジローと話をしたスリマンは、ギャビーが何度もカスバに出向いていることを知らせて、危険だと伝える。 ジローは、出かけようとしたギャビーが、カスバに向かいペペに会おうとしていることを知る。 ギャビーは、愛情がなくても構わないと言ったはずで、結婚までは自由にするとジローに伝えて出かけようとする。 出かけるなら婚約は解消だと言うジローに別れを告げたギャビーは、その場にいたスリマンから、ペペが逮捕されて死んだことを知らされる。 ペペは、約束の時間を過ぎてもギャビーが現れないために苛立ち、イネスに話しかけられても相手にしない。 その様子を見ていたカルロスは、自分がギャビーから宝石を奪うと妻のタニア(ニナ・コシェッツ)に伝える。 ジローは一等船室を4人分予約し、考え込むギャビーを気遣う。 カルロスが街に向かうことを知ったペペは、ギャビーへの手紙を託す。 その後、カルロスを待っていたペペは、ラルビから、ピエロの手紙が警察の罠だったことを知らされる。 レジスが書いたものだと知っていたら断っていたと言うラルビは、ペペに謝罪し、カルロスが逮捕されてことを伝える。 ペペは、警察でカルロスに会ったラルビが、手紙をホテルのギャビーに届けるよう頼まれたことを知る。 それを届けたことを確認したペペは、監視されているために返事は書けなかったと言うラルビから、ギャビーが待っていることを知る。 ラルビがウソをついていることに気づいたペペは、彼を脅してスリマンの差し金だと知る。 自分が死んだと思っているギャビーが、今朝の船で発つことを知ったペペは、街に向かおうとする。 引き止めるイネスの話を聞かずに、ペペは、パリの街のことを考えながらカスバを出る。 街に着いたペペは、客船のチケットを購入する。 スリマンの元に向かったイネスは、ペペが港に行ったことを伝える。 スリマンから裏切りだと言われたイネスは、ペペをギャビーに渡したくないと涙しながら彼に伝える。 乗船したペペは、ギャビーの船室を窓から覗くものの、スリマンらに銃を向けられる。 手錠をかけようとしたスリマンは、ここでは困ると言うペペの頼みを聞く。 船室から離れた場所で手錠かけられたペペは船を降り、その場に現れたイネスを見つめながら連行される。 ペペから出港を見届けたいと言われたスリマンは、それを許す。 デッキのギャビーに気づいたペペは、彼女の名を呼ぶものの、その声は汽笛にかき消される。 ギャビーは、ペペに気づかすに船室に戻る。 船を追うペペは刑事に撃たれてしまい、駆け寄ったスリマンは彼に謝罪する。 ようやく逃げられたとスリマンに伝えたペペは、友に別れを告げて息を引き取る。 船は、何事もなかったかのように出港する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストーリー)
アルジェ。
フランスから逃れてきた犯罪者ペペ・ル・モコは、カスバに潜んで君臨し、フランス警察は長年彼を追っていた。
地元警察のスリマン警部は、ペペとの友情を築きつつ、住人とのトラブルを避けようとしていた。
ある日ペペは、フランス人観光客の美しい女性ギャビーと出会い、彼女に惹かれる。
ペペは、情婦イネスに嫉妬されながら、ギャビーとの時間を過ごすようになり、故郷への思いが募りカスバを出ることを考えるのだが・・・。
__________
前年の1937年に公開されたフランス映画「望郷」(1937)のハリウッド版リメイク。
アルジェのカスバに潜む犯罪者と観光客の女性との恋を描くドラマ。
製作はウォルター・ウェンジャー、多くの話題作を手掛けていたジョン・クロムウェルが監督し、フランス人スターのシャルル・ボワイエを主演に起用した作品。
主人公が惹かれるフランス人観光客の女性を演ずるヘディ・ラマーの美しさは話題になり、彼女にとってはセンセーショナルなハリウッド・デビューとなった。
また、1942年の「カサブランカ」の脚本が、本作からインスピレーションを得たことはよく知られている。
舞台設定の雰囲気、登場人物の設定や関係がよく似ていることに注目して両作を鑑賞すると実に興味深い。
アルジェの街と入り組んだカスバの様子を見事に描写する、ジェームズ・ウォン・ハウの映像は秀逸だ。
第11回アカデミー賞では、主演男優(シャルル・ボワイエ)、助演男優(ジーン・ロックハート)、撮影、美術賞にノミネートされた。
主人公のペペ・ル・モコを、雰囲気ある演技で見事に演じたシャルル・ボワイエなのだが、前年に公開されたばかりのオリジナル作「望郷」のリメイクでの役柄を楽しんでいなかったと言われている。
主人公と観光客の女性との関係に嫉妬するペペの情婦シグリッド・ガリー、犯罪者の主人公と不思議な友情で結ばれる地元警察の警部ジョセフ・カレイア、主人公と関係する故売屋のアラン・ヘイル、主人公を裏切る気弱な男ジーン・ロックハート、主人公を捕らえようとする地元警察の主任警部ウォルター・キングスフォード、フランス政府から派遣されて主人公を追うポール・ハーヴェイ、主人公の手下スタンリー・フィールズ、その妻ニナ・コシェッツ、ジョニー・ダウンス、チャールズ・D・ブラウン、ベン・ホール、ギャビー(ヘディ・ラマー)の婚約者ロバート・クレイグ、主人公を裏切る男レオニード・キンスキー、主人公に関わる女ジョーン・ウッドベリー、ギャビーの友人クラウディア・デル、その恋人バート・ローチなどが共演している。