1927年に発表された、ジョージ・ムーアの小説”The Singular Life of Albert Nobbs”を基に製作された作品。 悲惨な生活から逃れるために男性として生きるしかなかった女性の孤独な人生を描く、製作、脚本、監督ロドリゴ・ガルシア、主演グレン・クローズ、ミア・ワシコウスカ、アーロン・ジョンソン、ジャネット・マクティア、ブレンダン・グリーソン他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・ミア・ワシコウスカ / Gregory Peck / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロドリゴ・ガルシア
製作
グレン・クローズ
ボニー・カーティス
ジュリー・リン
アラン・モロニー
製作総指揮
ピエール=フランソワ・バーネット
原案:サボー・イシュトヴァーン
原作:ジョージ・ムーア”The Singular Life of Albert Nobbs”
脚本
ジョン・バンヴィル
グレン・クローズ
撮影:マイケル・マクドノー
編集:スティーヴン・ワイズバーグ
メイクアップ
マーシャル・コーンヴィル
リン・ジョンソン
マシュー・W・マングル
音楽:ブライアン・バーン
主題歌:シネイド・オコナー
出演
アルバート・ノッブス:グレン・クローズ
ヘレン・ドーズ:ミア・ワシコウスカ
ジョー・マッキンス:アーロン・ジョンソン
ヒューバート・ペイジ:ジャネット・マクティア
ホロラン医師:ブレンダン・グリーソン
マーガレット”マッジ”ベイカー夫人:ポーリン・コリンズ
ポリー:ブレンダ・フリッカー
ヤレル子爵:ジョナサン・リース=マイヤーズ
メアリー:マリア・ドイル・ケネディ
キャスリーン・ペイジ:ブロナー・ギャラガー
エミー:アントニア・キャンベル=ヒューズ
スミス=ウィラード夫人:エメラルド・フェンネル
アイリーン:アニー・スターク
ショーン:マーク・ウィリアムズ
パトリック:ジェームズ・グリーン
ピゴ:ケネス・コラード
アイルランド 映画
配給
ライオンズゲート
Roadside Attractions(北米)
Entertainment One(イギリス)
2011年製作 113分
公開
アイルランド:2012年4月27日
北米:2012年1月27日
日本:2013年1月18日
製作費 $8,000,000
北米興行収入 $3,014,540
世界 $5,634,830
■ アカデミー賞 ■
第84回アカデミー賞
・ノミネート
主演女優(グレン・クローズ)
助演女優(ジャネット・マクティア)
メイクアップ賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
19世紀、アイルランド、ダブリン。
アルバート・ノッブス(グレン・クローズ)は女性であったが、男性として30年もの間、生活を続ける、由緒あるホテル”モリソンズ”のウェイターだった。
完璧に仕事をこなすアルバートは、その日も仕事を終えて部屋に戻り、客から渡されたチップを、細かくチェックして床下に隠す。
ホテル”アードレイン”で働くボーイのジョー・マッキンス(アーロン・ジョンソン)は、常連客の荷物を落として罵倒され解雇されてしまう。
ジョーは職を探すものの、雇ってくれるホテルはなかった。
街をさ迷っていたジョーは、”モリソンズ”で働くはずのボイラー技士に成りすまして職を得る。
ホテルの女主人マーガレット”マッジ”ベイカー(ポーリン・コリンズ)は、塗装業者のヒューバート・ペイジ(ジャネット・マクティア)をアルバートの部屋に泊めようとする。 それを断ろうとしたアルバートだったが、彼は、ためらいながらも承知するしかなかった。 ベイカー夫人は、現れたジョーをボイラー室に案内して、調子の悪い装置を早急に直すよう指示する。 動揺しながら部屋に戻ったアルバートは、ヒューバートの寝ているベッドに横たわる。 ところが、胸についたノミに気づいたアルバートは起き上がり、服を脱ごうとしたところをヒューバートに見られてしまう。 ヒューバートは、アルバートが女であることに気づき、女が一人で生きるために、この方法しかなかったと怯えながら話す彼を落ち着かせる。 アルバートを哀れんだヒューバートは、ベイカー夫人には話さないことを約束して二人は同じ部屋で眠ることになる。 ボイラーなど触ったこともないジョーだったが、適当に整備した挙句に装置に打撃を加えたところ、それを直すことができる。 翌朝、寝過ごしてしまったアルバートは、ヒューバートと夜遅くまで話していたことを、メイドのヘレン・ドウズ(ミア・ワシコウスカ)とエミー(アントニア・キャンベル=ヒューズ)に聞かれて動揺する。 ベイカー夫人は、徹夜でボイラーを直したジョーを使用人達に紹介して、彼をホテルの一員として歓迎する。 アルバートはヒューバートの動向が気になり、度々、彼の様子を窺いに行く。 そんなアルバートに胸を見せたヒューバートは、彼に自分も女だということを知らせる。 驚いたアルバートは、一旦その場を離れた後ヒューバートの元に戻り彼の身の上話を聞く。 暴力を振るう夫を痛めつけて逃げたというヒューバートは、今も結婚をしていて、妻の名がキャスリーンだとアルバートに伝え彼を驚かせる。 アルバートは、女と結婚していることをヒューバートに確かめて、そのような人生もあることを知る。 作業を終えたヒューバートはホテルを去る際に、同性と結婚する方法をアルバートに聞かれ、行動に移すだけだと答える。 アルバートはその件が気になり、ヒューバートの妻が”帽子作り”だと言っていたことを思い出し、家を訪ねてみることを考える。 翌日、ホテルでは仮装パーティーが開かれ、ベイカー夫人とホロラン医師(ブレンダン・グリーソン)のダンスが始まる。 その場に現れたジョーはヘレンを見つめて、その様子にアルバートが気づく。 ジョーは、表に出て来たヘレンにキスして、彼女の名前を聞く。 その夜アルバートは、半年後には600ポンドの蓄えができることを確認する。 翌朝、二日酔いのホロランに紅茶を勧めたアルバートは、何か悩み事があるのかと尋ねられる。 アルバートは、事業を始める考えがあり、小さなタバコ店を持つ希望があることをホロランに伝える。 理想的な貸店舗を見つけたアルバートは、夢を膨らませる一方、妻を持つことなども想像して、ヒューバートが妻と過ごす寝室のことなども気にする。 ある日、同僚達と出かけた際に近くに寄ったという理由で、アルバートはヒューバートの家を訪ねる。 ヒューバートに妻キャスリーン(ブロナー・ギャラガー)を紹介されたアルバートは、部屋に落ちていた仕事着のボタンを届けに来たことを伝える。 アルバートが、結婚相手を探したい様子に気づいたヒューバートは、彼の身の上を尋ねる。 私生児だったアルバートは、実母が誰かも知らされないまま成長し、少女時代に男達に乱暴された。 ウェイターの募集を知り男として採用され、各地で働いた末に”モリソンズ”で働き始めたのだった。 ヒューバートらと食事をしたアルバートは、彼がヘレンを気に入っている話しなどを聞かされ、店舗を持つ計画は良い考えだと言われる。 ヘレンとジョーは親交を深め、やがて愛し合うようになる。 ホテルに戻る途中アルバートは、タバコ店を開業して、キャスリーンやヘレンを使う自分を想像する。 数日後アルバートは、ヘレンを散歩に誘うものの、彼女にジョーと付き合っていると言われて諦める。 それを知ったジョーは、アルバートから金を搾り取ることを考え、ヘレンに彼と付き合うように指示する。 ヘレンと外出したアルバートは、チョコレート店に入り、彼女の望む買い物をする。 アルバートは、かつてヘレンがある店で働き、その二階に住んでいたことを知り、自分の夢にダブル話にほくそ笑む。 部屋に戻ったアルバートは、このままヘレンと付き合った場合に出費が嵩むことに気づくが、彼女との暮らしを想像して、予想よりも早く話がまとまることもあり得ると割り切って考える。 ヘレンは、どこか普通の男性と違うアルバートを、騙し続けることにためらいも感じるが、ジョーのアメリカ行きの夢を叶えることに協力するため指示に従う。 次回も酒と帽子を買い与えられたヘレンは、アルバートが借りようとする店舗を見せられ、将来の話も聞かされる。 アルバートの話に興味のないヘレンは、買い物の礼を言って立ち去る。 ヘレンはジョーに酒を渡し、次は現金を受け取るようにと彼から強要される。 そんなことも知らないアルバートは、自分が女だということをヘレンにいつ話すか、結婚前か初夜の時かなどで悩む。 アルバートは警察に捕まることまで想像して、ヒューバートがどう対処したのかを考える。 そんな時、エミリーがチフスを発症し、感染した最高齢のウェイター、パトリック(ジェームズ・グリーン)が亡くなり、客は去りホテルは閉鎖されてしまう。 アルバートも発病して苦しみ、部屋に閉じ籠る。 ヘレンは妊娠したことをジョーに伝え、彼は動揺するものの、面倒を見ることを伝える。 ベイカー夫人は破滅だと言って嘆くが、ホロランに励まされる。 回復したアルバートは、ヘレンが無事だったことを確認し、パトリックが亡くなったことを知り悲しむ。 チフスが国中に広がっていたため、ヒューバートを訪ねたアルバートは、キャスリーンが亡くなったことを知る。 アルバートは、一緒に事業をするか、もしくは同居して孤独を癒すことをヒューバートに提案する。 キャスリーンを愛し、彼女が全てであったヒューバートは、アルバートと共に、クアスリーンが仕立てた婦人服を着て外出する。 アルバートは、正常なはずのその姿が、自分達の生きる道ではないことを悟らされる。 新たな人生に必要な相手を求めるなら、その人物を捜すべきだと、アルバートはヒューバートに助言される。 ホテルに戻ったアルバートは、ヘレンは自分には不向きで、妊娠した彼女は、アメリカ行きを考えるジョーに捨てられると同僚のポリー(ブレンダ・フリッカー)に言われる。 ヘレンを誘ったアルバートは、二人の男性と付き合っていることが不自然だと語り、店の手付金を払ったことも伝える。 二人で営業して暮らす店が成功するだろうと、その計画と考えだけを語るアルバートに対し、ヘレンは、男女の愛情表現もない状況で結婚する話までする彼を理解できない。 ヘレンは、キスもしないことこそ不自然だとアルバートに伝え、彼はそれに応える。 頬にキスしたアルバートに対し、彼に強引に唇にキスしたヘレンは、愛しているのならこうして欲しいと伝える。 アルバートに変人だとまで言ったヘレンは、その場から去ろうとするが、彼は、ジョーが一人でアメリカに向かい置き去りにされると告げる。 ヘレンは動揺しながらそれを否定して涙し、アルバートは自分が世話をすると言いながら彼女を抱きしめて、愛を実感する。 しかし、ヘレンはアルバートに別れを告げてその場を去る。 ホテルは再開して顧客は戻り、失意のアルバートは仕事を続けるしかなかった。 その後ジョーは、自分が父親にはなれないことをヘレンに伝え、彼女と口論になる。 それに気づいたアルバートは、ヘレンの部屋に向かい、彼女に結婚を申し込み子供も面倒を見ることを伝える。 憤慨したジョーと揉み合いになったアルバートは、壁で頭を打ち、朦朧としながら部屋に戻る。 ヘレンはジョーを見限り、同僚のメアリー(マリア・ドイル・ケネディ)らになだめられながら部屋に戻る。 落ち着いたヘレンは、アルバートの部屋に向かうものの、返事がないために戻る。 翌朝ヘレンは、姿を現さないアルバートの様子を見に行き、彼の異常に気づきホロランを呼ぶ。 ホロランはアルバートが息を引き取っていることを確認し、彼が女性だということに気づく。 アルバートの哀れな人生について考えながら、ホロランは遺体が運ばれた彼女の部屋を出る。 ベイカー夫人は、アルバートの遺品の中の手帳を確認し、彼女が大金を所持していることを知り、それを手に入れようとする。 隠されていた金を手に入れたベイカー夫人は、ホテルを改装する。 夫人は、アルバートが女だったことを現れたヒューバートに伝える。 ホロランは、関係を持っていたメアリーとイングランドに向かい、ジョーはヘレンと子供を残してアメリカに渡り、彼女を慈悲で雇い続けていることも夫人は語る。 建物全体の塗装を依頼されたヒューバートは、資金が入ったと言うベイカー夫人が、アルバートの金を手に入れたのではないかと考える。 ヒューバートはアルバートの部屋に滞在することになり、その場で、彼女の実母と思われる写真を見つける。 裏庭で子供を抱くヘレンの元に向かったヒューバートは、彼女に挨拶する。 子供を抱かせてもらったヒューバートは、アルバート=ジョーという名前を知らされ、”男の子”だと確認する。 ヘレンは、ベイカー夫人の慈悲で雇われているのではなく、自分の恥ずべき行為を話さない代わりに、ただ働きさせられていることをヒューバートに話す。 それに従わなければ子供が取り上げられ、自分が追い出されることになると涙して語るヘレンに、そうならないようにすることをヒューバートは約束する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
19世紀、アイルランド、ダブリン。
由緒あるホテル”モリソンズ”のウェイターとして働くアルバート・ノッブスは、女性であったが、生きていくために30年もの間、男性として生活していた。
全ての仕事を完璧にこなすアルバートは、受け取ったチップを貯めて、事業を始めることを考えていた。
ある日、ホテルの塗装を依頼されヒューバートという業者が現れ、アルバートの部屋に泊まることになる。
男性と夜を過ごすことで動揺するアルバートは、彼に自分が女だということを知られてしまう。
困惑するアルバートだったが、実はヒューバートも女性だったことを知り驚く。
ヒューバートが、女性と結婚して暮らしているということにも興味を持ったアルバートは、小さなタバコ店を経営し、自分も女性と結婚して幸せを掴む夢を膨らませる。
そしてアルバートは、ボイラー技士ジョーと関係を持つ、同僚ヘレンに好意を抱き、彼女と暮らす人生を考えるのだが・・・。
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生きるためにひたすら働き続ける、下層階級の者達の孤独と苦悩を見事に描いた作品。
実力派ベテラン女優グレン・クローズが、製作と脚本も担当した意欲作であり、「彼女を見ればわかること」(2000)で組んだロドリゴ・ガルシアの演出の下、完璧なまでの名演を見せる注目のドラマ。
物語は淡々と進むのだが、ロドリゴ・ガルシアの丁寧な人物描写、無駄のない脚本でスムーズに展開する内容、ドラマ全体に広がる清楚な雰囲気と”異質な美”に引き込まれる。
第84回アカデミー賞では、主演女優(グレン・クローズ)、助演女優(ジャネット・マクティア)、メイクアップ賞にノミネートされた。
脚本で注目したいのは、ホテルの顧客、子爵役のジョナサン・リース=マイヤーズが、曲者的にインパクトのある登場をするのだが、結局は物語に大きく絡むこともなく、単なる脇役程度に終わる。
これは、ドラマのポイントともなる若い使用人役アーロン・ジョンソンを、序盤では目立たせないようにするカモフラージュにも思える。
使用人(A・ジョンソン)がアメリカに渡ったことになるクライマックスで、再びJ・R=マイヤーズが登場し、姿の見えない使用人(A・ジョンソン)の存在を際立たせるという見事な脚本と演出だ。
作品自体の評価はそれほど高くはなかったが、主人公を演ずるグレン・クローズの迫真の演技は、各方面で絶賛された。
予備知識があるために、グレン・クローズと共に”男性”ではなく”男装”にしか見えないことはさて置き、孤独な主人公に理解を示すジャネット・マクティアの好演も光る。
185cmの彼女の長身も際立っていた。
主人公に好意を寄せられながら、アメリカ行きの夢がある若い使用人アーロン・ジョンソンに捨てられる、後半、重要な役を演ずる哀れな女性ミア・ワシコウスカ、ホテルに滞在する医師ブレンダン・グリーソン、女主人のポーリン・コリンズ、使用人のブレンダ・フリッカー、医師と関係を持つマリア・ドイル・ケネディ、アントニア・キャンベル=ヒューズ、マーク・ウィリアムズ、ジェームズ・グリーン、ホテルの顧客役ジョナサン・リース=マイヤーズ、ケネス・コラード、エメラルド・フェンネル、ヒューバートの妻ブロナー・ギャラガー、チョコレート店店員のアニー・スターク、などが共演している。