1952年にアメリカを追放されたチャールズ・チャップリンが製作、監督、脚本、音楽をてがけた、アメリカ社会を痛烈に皮肉った風刺コメディ。 マクシーン・オードリー、ジェリー・デズモンド他共演。 |
・コメディ
■ スタッフ キャスト ■
監督:チャールズ・チャップリン
製作:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
撮影:ジョルジュ・ペリナール
編集:ジョン・シーボーンSr.
音楽:チャールズ・チャップリン
出演
イゴール・シャドフ王:チャールズ・チャップリン
アイリーン王妃:マクシーン・オードリー
ヴーデル首相:ジェリー・デズモンド
ジョミエ大使:オリバー・ジョンストン
アン・ケイ:ドーン・アダムズ
ジョンソン:シド・ジェイムズ
モナ・クロムウェル:ジョーン・イングラムズ
ルパート・マカビー:マイケル・チャップリン
マカビー:ジョン・マクラーレン
校長:フィル・ブラウン
弁護士:ハリー・グリーン
エレベーター・ボーイ:ロバート・アーデン
教育長:アラン・ギフォード
連邦保安官:ロバート・コードロン
原子力委員会の委員:ジョージ・ウドブリッジ
イギリス 映画
配給 Attica Film Company
1957年製作 104分
公開
イギリス:1957年9月12日
北米:1972年3月8日
日本:1959年2月28日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
革命のために国を追われたエストロヴィア国王イゴール・シャドフ王(チャールズ・チャップリン)は、アメリカに亡命するために空路ニューヨークに向かう。
現地に到着したシャドフは、信用していないヴーデル首相(ジェリー・デズモンド)が、国から持ち出した有価証券などを管理していることを知り不安になる。
記者会見を始めたシャドフは、予想通りヴーデル名義の金庫にそれを預けてあることを知る。
ヴーデルは、財産の手続きは入国審査の後だとシャドフに伝え、記者達の質問を受ける。
シャドフは、閣僚が平和利用に反対して原爆を欲しがったたことを批判し、興奮しながら亡命の理由を語り始める。
ヴーデルは、入国審査があると言って会見を打ち切り、シャドフは手続きを済ませて滞在先に向かう。 財産の管理を再度ヴーテルに確認したシャドフは、一先ず納得して、ジョミエ大使(オリバー・ジョンストン)と夜の街に出かける。 映画館に向かったシャドフは、上映前の余興で、騒がしいだけの音楽に熱狂する人々に驚きながら、ジョミエと共に最前列の席に座る。 暴力、そして性転換を描写する意味不明な解釈の作品の予告篇だけを観て席を立ったシャドフは、落ち着いて食事をしようとする。 ところが、レストランでは派手なバンド演奏が始り、映画館以上に騒がしい状態だった。 ホテルに戻ったシャドフは、ヴーデルが、現金と証券を奪って、南米に亡命したことをジョミエから知らされる。 ジョミエは、破産したシャドフの気持ちを察するが、彼は自分の考える原子力計画が利益を生むことを信じていた。 シャドフは、到着したアイリーン王妃(マクシーン・オードリー)には、今回の破産の件は内緒にするようジョミエに伝え彼女を迎える。 アイリーンの幸せを思い、離婚を決意していたシャドフは、食事をした後、パリに向かう彼女を見送る。 シャドフは、出版社とテレビ局を所有するモナ・クロムウェル夫人(ジョーン・イングラムズ)から、何度もパーティーへの誘いを受けていたのだが、彼はそれを断る。 バスルームに向かったシャドフは、隣部屋からの歌声に誘われて鍵穴から中を覗く。 若くて美しい女性アン・ケイ(ドーン・アダムズ)に見とれてしまったシャドフは、叫び声が聞こえたため隣のバスルームに入り、彼女を助けようとする。 アンがパーティーに出席することを知ったシャドフは、再びかかってきたクロムウェル夫人からの電話に対し、気が変わったので出席すると伝える。 シャドフは、クロムウェル夫人に歓迎されるのだが、実はテレビ局員だったアンは、自分がホストを務める番組の”サプライズ・パーティー”に、彼を登場させるために近づいたのだった。 食事の席に隠しカメラが配置され、シャドフは、隣の席で奇妙な言葉を発するアンを不思議に思う。 それは、アンが、カメラに向かって語ったCMのセリフだったのだが、シャドフは全く気付かない。 アンの隣で上機嫌のシャドフは、その場で”ハムレット”を演じて見せる。 ところが、部屋で休んでいたジョミエが、シャドフがテレビ・カメラの前で”ハムレット”を熱演していることに気づき驚いてしまう。 独演を終えたシャドフは出席者に賞賛され、彼は、アンが再び関係ない歯磨きの話しを始めたこと疑問に思うのだがうまくかわされてしまう。 何も気付かないまま部屋に戻ったシャドフは、怒りのために眠れないでいたジョミエに、テレビ出演を断っておきながら、独演、そして悪ふざけまでした彼を非難する。 ようやく隠し撮りだったことに気付いたシャドフは、ナイトクラブに出かけて気分を落ち着かせようとする。 ジョミエは、今回の件で、シャドフの王としての権威は失われ、彼の原子力計画をまともに聞く者はいないと嘆く。 ところが、シャドフの出演はアメリカ人に大いに受けて、彼への問い合わせが殺到してしまう。 テレビ局の宣伝部長であるジョンソン(シド・ジェイムズ)が現れ、1万ドルでチーズ・メーカーのCMの出演を依頼するが、シャドフはそれを断る。 不本意ながらアンの訪問を受けたシャドフは、渡された2万ドルの小切手を破り彼女を追い払う。 しかしシャドフは、預金残高が900ドル余りと知らされて驚き、小切手を貼り合わせようとする。 その後、進歩的教育を実施する小学校を見学したシャドフは、学校新聞の編集長で歴史通の10歳の少年ルパート・マカビー(マイケル・チャップリン)を紹介される。 マルクスの著書を読むルパートに、シャドフは共産党員かと尋ねたるのだが、持論をまくし立てる少年に手を焼く。 ホテルに戻ったシャドフは、原子力委員会からの連絡がないことを気にする。 ジョミエは、入国時の会見で、原子力により理想郷を建設すると言ったシャドフの発言のせいではないかと指摘する。 ホテルの請求書と借金、預金もゼロとなったシャドフは、テレビに出演することも考える。 そこにアンとジョンソンが現れ、シャドフに、ウィスキー・メーカーのCM出演料5万ドルを提示する。 シャドフは、興味を示さないような振りをしてジョンソンの話を聞き、それを受け入れ、早速、撮影が始まる。 準備を始めたシャドフは、許すことをアンに伝えて迫るが、スタッフが現れたため焦ってしまう。 撮影は始まるのだが、シャドフはウィスキーが気管に入り入り、むせて失態を演じてしまう。 ところが、そのCMを視聴者はギャグだと思い込み大いに受けて、他の企業からもオファーが殺到する。 次の撮影で、シャドフを若く見せたいアンは、何のためらいもなく整形手術をするべきだと提案する。 現在と若返った顔を比べれば、出演料10万ドルの契約が取れると自信を見せるアンに、シャドフは驚いてしまう。 指示通りに整形手術を受けたシャドフだったが、アンは、変わり過ぎたその顔では、CMには出られないと言って焦る。 元に戻せると伝えたアンは、引きつる顔のシャドフと共に、気分転換のためナイトクラブに向かう。 コメディアンが登場し、シャドフだけが笑えずにいたのだが、我慢できずにいた彼は、吹き出してしまった拍子に顔が崩れてしまい、結局、元に戻すことになる。 雪の中、自分を訪ねて来たルパートを部屋に招き入れたシャドフは、彼を温かい風呂に入れて、食事を与えようとする。 学校でトラブルを起こし、逃げ出してきたというルパートだったが、ジョミエは、彼の親が共産党員だと疑い警戒する。 原子力委員会の委員が、ワシントンD.C.を発ったという連絡を受けたシャドフは、彼らがいつ着くは分からないまま外出する。 すれ違いで委員らは到着し、部屋にいた、甥ということになっていたルパートが、シャドフが戻る間、彼らの相手をする。 シャドフとの関係を、委員に穏やかに話していたルパートは、反政府的会話に到り興奮して持論を語り始める。 そこにシャドフが戻りルパートを制止するが、その後のテレビ中継で、”非米活動委員会”に呼ばれた彼の両親が、共産党員だったことを認め、父親マカビー(ジョン・マクラーレン)が質問を受ける。 発言を拒否したマカビーは、委員会に対する侮辱罪を問われてしまう。 それを見ていたルパートは、悲しむ間もなく、その場に現れた連邦保安官と共に学校に戻る。 シャドフは、傷心のルパートに優しく声をかけながら、翌日、学校を訪問することを伝えて彼を見送る。 その頃テレビ局では、マカビーの侮辱罪での召喚と共に、彼の息子ルパートがシャドフと関係していたことが分かり特ダネのチャンスとなる。 テレビ局は、夕方のニュースで、シャドフの原子力に関係するスパイ疑惑を報道するものの、彼はそれを気にする様子も見せない。 しかし、ジョミエの恐怖に怯える姿を見たシャドフは、さすがに警戒を始め、弁護士(ハリー・グリーン)に連絡して彼の元に向かおうとする。 報道を知ったアンの協力で、密かにホテルを出ようとしたシャドフは、たちまち人々に囲まれてサイン攻めに遭う。 その後、シャドフには”非米活動委員会”からの召喚状が届き、ルパートも両親の件で当局から質問を受ける。 召喚状を受取り弁護士と話し合い、シャドフは法廷に向かおうとするが、エレベーター内で、消防ノズルから指が抜けなくなり騒動となる。 仕方なくシャドフは、ホースを引きずったまま法廷に向かい、火事だと勘違いした職員が、放水ホースにそれをつないでしまう。 シャドフは外れたノズルで、裁判長席に向かい放水してしまい、法廷は大混乱となる。 その後、証人喚問の末にシャドフの疑惑は晴れて、彼はアメリカを離れることになる。 別れの挨拶に来たアンは、人気者になったシャドフならば、この地で幸せに暮らせると伝えるものの、彼はそれを断る。 そこに、アイリーンから、離婚の考えがないという電報が届き、アンとの別れを惜しみながら、シャドフは学校に向かう。 教育長(アラン・ギフォード)に会ったシャドフは、ルパートが当局に協力したため、両親が釈放されたことを知らされる。 シャドフは、両親のため、自分の考えに逆らい仕方なくしたことに涙するルパートを慰める。
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*(簡略ストー リー)
エストロヴィア国王イゴール・シャドフは、革命で国を追われアメリカに亡命する。
ニューヨークに着いたシャドフだったが、首相に財産を奪われ破産してしまう。
そんなシャドフに目を付けていたテレビ局が、アナウンサーのアンを彼に接近させる。
シャドフは、何も気づかぬままに、アンの魅力に誘われてパーティーに出席するが、それは彼女の番組収録の現場だった。
シャドフに付き添うジョミエ大使がそれに気づき、ホテルの部屋に戻ったシャドフは、自分がアメリカ社会の餌食になったことを知る。
国王としての権威も失うような行為をしてしまったシャドフは、亡命のきっかけになった原子力計画を、まともに聞く者もいなくなったことをジョミエに指摘され落胆する。
ところが、シャドフのテレビ出演はアメリカ人に大いに受け、CMの出演依頼が入っていることをアンに知らされる。
プライドのあるシャドフは、それを断るものの、手元の資金が底を突き、仕方なくアンの申し出を受け入れるのだが・・・。
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アメリカと決別したチャールズ・チャップリンが、その象徴的な大都市ニューヨークを舞台にして、アメリカ社会、文化を徹底的に攻撃しているように思えるのだが、自分を育ててくれた第二の故郷への敬意のようなものも感じる。
当時としては、かなり過激な描写もあるが、第二次大戦以降の世界をリードするアメリカが、この程度の風刺で怯むはずのないことをチャップリンは承知して製作したのも確かだ。
とは言え、1972年4月10日に行われた第44回アカデミー賞授賞式で、チャップリンが名誉賞を受賞し再びハリウッドに迎えられた直前の3月まで、アメリカ国内では上映されることはなかった。
最後の主演作となった60代後半のチャップリンだが、絶妙な驚きの表情や細やかな仕草なども健在で、古風なギャグもきっちりと盛り込まれている、実に愉快な作品だ。
序盤に登場するだけの王妃マクシーン・オードリー、同じく国王を裏切る首相のマクシーン・オードリー、国王に付き添う大使オリバー・ジョンストン、典型的なキャリアウーマンとしてテレビ局員を演ずるドーン・アダムズ、同じく宣伝部長シド・ジェイムズ、テレビ局のオーナー、ジョーン・イングラムズ、チャップリンとウーナ・オニールの息子で、熱演が注目の共産党員の息子役マイケル・チャップリン、その父親ジョン・マクラーレン、学校の校長フィル・ブラウン、弁護士のハリー・グリーン、エレベーター・ボーイ、ロバート・アーデン、教育長アラン・ギフォード、連邦保安官役のロバート・コードロン、原子力委員会の委員のジョージ・ウドブリッジなどが共演している。