1959年に発表された、アレン・ドルーリーのピューリッツァー賞を受賞した同名小説の映画化。 アメリカ大統領の欠員の国務長官指名で候補者が共産主義者だったという疑いがかけられる中での与野党上院議員のせめぎ合いを描く、製作、監督オットー・プレミンジャー、主演ヘンリー・フォンダ、チャールズ・ロートン、ウォルター・ピジョン他共演による社会派ヒューマン・ドラマの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:オットー・プレミンジャー
製作:オットー・プレミンジャー
原作:アレン・ドルーリー
脚本:ウェンデル・メイズ
撮影:サム・リーヴィット
タイトルデザイン:ソウル・バス
音楽:ジェリー・フィールディング
出演
ヘンリー・フォンダ:ロバート・A・レフィングウェル
チャールズ・ロートン:シーブ・クーリー上院議員
ウォルター・ピジョン:ボブ・マンソン上院議員
ドン・マレー:ブリッグ・アンダーソン上院議員
ピーター・ローフォード:レイフ・スミス上院議員
フランチョット・トーン:大統領
リュー・エアーズ:ハーリー・ハドソン副大統領
バージェス・メレディス:ハーバート・ゲルマン
ジーン・ティアニー:ドリー・ハリソン
ポール・フォード:スタンレー・ダンタ上院議員
ジョージ・グリザー:フレッド・ヴァン・アッカーマン上院議員
ウィル・ギア:ウォーレン・ストリクランド上院議員
エドワード・アンドリュース:オーリン・ノックス上院議員
ベティ・ホワイト:ベッシー・アダム上院議員
ポール・スティーヴンス:ルイス・ニューボーン
エディー・ホッジス:ジョニー・レフィングウェル
インガー・スウェンソン:エレン・アンダーソン
ポール・マクグラス:ハーディマン・フレッチャー
フランク・シナトラ:歌声のみ
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1962年製作 138分
公開
北米:1962年6月6日
日本:1965年4月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アメリカ大統領(フランチョット・トーン)は、欠員の国務長官に、政治的にはリベラルなロバート・レフィングウェル(ヘンリー・フォンダ)を指名しようとする。
その連絡を受けた、与党院内総務ボブ・マンソン上院議員(ウォルター・ピジョン)は、同僚議員スタンレー・ダンタ(ポール・フォード)と共に、敵の多いレフィングウェルの指名に懸念を示す。
さらに野党のシーブ・クーリー(チャールズ・ロートン)が、レフィングウェルを目の敵にしていることを大統領に伝えるが、同時に協力も要請される。
マンソンとダンタは、早速レフィングウェルの承認を得るための根回しを始める。
レフィングウェルは、一人息子のジョニー(エディー・ホッジス)に、国務長官の指名を受けるべきだと励まされる。
議会が始まり、クーリーは同僚議員オーリン・ノックス(エドワード・アンドリュース)を使い、レフィングウェルの批判を始める。 発言をノックスから変わったクーリーは、プレイボーイでも知られる若手議員レイフ・スミス(ピーター・ローフォード)の発言をかわし、強烈なレフィングウェル批判で本会議場の傍聴席から拍手を受ける。 マンソンは、レフィングウェルの聴聞会のための小委員会委員長を、ブリッグ・アンダーソン(ドン・マレー)に依頼する。 未亡人ドリー・ハリソン(ジーン・ティアニー)主催のパーティーで、ハーリー・ハドソン副大統領(リュー・エアーズ)は、大統領の病状悪化をマンソンに伝える。 離婚していたマンソンは、ドリーとは愛人関係だった。 翌日、アンダーソンが委員長を担当する小委員会による聴聞会が開かれる。 宣誓して発言を不要としたレフィングウェルは、先陣を切ったノックスからの質問を受け、続いて質問をクーリーが引き継ぐ。 2人は、レフィングウェルが、かつて共産主義を擁護する発言をしたことを追求する。 さらに他の委員からは、レフィングウェルが”左翼や共産主義者と親交があった”という電報を、ハーバート・ゲルマン(バージェス・メレディス)という男から受け取ったことを知らされる。 議論は一進一退を続け昼食になるが、記者に囲まれるレフィングウェルを擁護し、フレッド・ヴァン・アッカーマン上院議員(ジョージ・グリザー)が、中傷のための委員会だと批判する。 委員会再開後、審議は続き、クーリーの発言前に休会となるが、彼はそれを制止し、承認としてゲルマンを委員会に召集する。 レフィングウェルが大学教授時代、講義に出ていたというゲルマンは、その後、電力委員会でレフィングウェルが自分を追い払ったとの発言をする。 そしてゲルマンは、レフィングウェルが共産主義者だと断言し、彼が国務長官に指名されるのを阻止しようとする。 委員会は、レフィングウェルの反論のために、1時間休会する。 レフィングウェルは、ゲルマンの嘘を暴くために、証人としてルイス・ニューボーン(ポール・スティーヴンス)を委員会の証人として呼び寄せる。 ニューボーンは、電力委員会ではゲルマンの上司であり、彼が神経衰弱を患っていたことを証言する。 さらにレフィングウェルは、ゲルマンが大学に在籍はしていたものの、自分の講義は受けていない証拠を委員会に提出する予定があることを明らかにする。 ゲルマンの神経衰弱による妄想は暴かれて、委員会はレフィングウェルに謝罪するが、クーリーは態度を変えずに退席して、ゲルマンの身辺調査に向かう。 レフィングウェルはホワイトハウスに向かい大統領に会い、委員会で偽証したことを告げ、国務長官指名を辞退しようとする。 実はゲルマンが委員会で言ったことは真実で、それを知っているのは彼の現上司である、レフィングウェルの旧友で、財務省のハーディマン・フレッチャー(ポール・マクグラス)だけだった。 その頃、既にフレッチャーと接触したクーリーは、ゲルマンが、かつて、共産主義者の集会にいた人物だと証言した”モートン”こそフレッチャーだということを調べ上げていた。 フレッチャーは、委員会の委員長アンダーソンにそれを告白するようクーリーに強要される。 それを知ったマンソンは、国務長官指名の表決が大統領に痛手となると見てそれを延期させる。 大統領は、ホワイトハウス記者クラブ主催のパーティーで、レフィングウェルに対する揺ぎ無い指示を表明し、拍手喝采を受ける。 アンダーソンは、レフィングウェル指名を撤回すべきだと大統領に主張するが、大統領はそれを拒み、マンソンは、彼のメンツを保ちつつ、別の候補を探す方法を模索する。 その直後から、アンダーソン宅に不審な脅迫電話がかかってくるようになる。 さらに、フレッチャーがヨーロッパに追いやられたことを知ったアンダーソンは、脅迫や裏工作に対抗するために、レフィングウェルに指名辞退を迫る。 アンダーソンへの脅迫電話は続き、妻エレン(インガー・スウェンソン)は恐怖に怯え、彼は姿を消してしまう。 エレンは同僚議員のレイフに相談して、マンソンと脅迫主を捜す。 アンダーソンは脅迫電話で名前が出ている、軍隊時代の友人を訪ねるが、彼がいた場所は同性愛者が集うクラブだった。 そこから逃げ去ったアンダーソンは、ワシントン行きの機内でハドソン副大統領に出くわす。 ハドソンは、アンダーソンが委員会のことで苦悩していると思い込み彼を気遣う。 その頃、アンダーソンの妻エレンは、何者かによって届けられた封書で、夫には同性愛者だった過去があることを知ってしまう。 そして、ドリーの屋敷でポーカーをしていたマンソンやレイフ、クーリーの元に、アンダーソンが自殺したことが知らされる。 黒幕はアッカーマンだということは分かっていたのだが、国務長官候補を変えるべきだと、マンソンやハドソン副大統領は大統領に提言する。 しかし大統領は、自分の病状悪化と政治路線を理由に、あくまでもレフィングウェルを指名しようとする。 議会では、レフィングウェルの国務長官の承認が議決されるものの、マンソンはアンダーソンの悲劇を考慮して、党議拘束を外し自由投票をすることを提案する。 それを阻止しようとするアッカーマンに対し、マンソンはアンダーソンの件を調査していることを彼に告げる。 レフィングウェルが指名される確立が高くなってきたが、アッカーマンは議場を去りレイフは反対票に投じ、票は同数になる可能性が出てくる。 その時、ハドソン副大統領に大統領の死亡が知らされ、議場は物々しい警戒態勢に入る。 投票の結果は同数に終わり、可否が一任されたハドソン副大統領は投票を拒否し、レフィングウェルの指名に対する動議は否決されてしまう。 副大統領は、大統領死亡を発表して議場を去ろうとするが、大統領就任を前に、国務長官は自分で選ぶことをマンソンに告げる。 マンソンはハドソンに協力を約束し、偉大だった大統領を称え、議長を代わっていたクーリーに休会を要請する。
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*(簡略ストー リー)
アメリカ大統領は、欠員であった国務長官に、政治的にはリベラルなロバート・レフィングウェルを指名しようとする。
与党院内総務のマンソン上院議員は、同僚議員ダンタと共に敵の多いレフィングウェルの指名に懸念を示す。
野党の大物議員クーリーもレフィングウェルを目の敵にしていたため、マンソンは大統領にそれを伝えるが、同時に協力も要請される。
マンソンは、早速、レフィングウェルの承認を得る根回しを始めるが、クーリーも彼の批判を始める。
やがてレフィングウェルが、かつて共産主義を擁護する発言をしたということを、クーリーは追及するのだが・・・。
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オットー・プレミンジャーが得意の、ユーモアと皮肉を込めた心憎い演出で、国務長官承認を巡る、与野党議員入り乱れての根回しや妨害、そして裏工作など、良質のコメディのように描かれ、聴聞委員会委員長の過去を暴こうとする終盤は、サスペンス・タッチで仕上げられ、全編飽きることない、実に見応えのある作品。
音楽は、1970年代に大作、話題作で活躍するジェリー・フィールディングで、オットー・プレミンジャーとは名コンビの、ソウル・バスのタイトル・デザインは本作ではやや地味だ。
ドラマの舞台ともなる、再現されたアメリカ議会上院本会議場のセットも見事で、映画用に狭く作られていると思われるかもしれないが、各州2人の定員100名の上院議員数なので、作品中のセットの大きさは実物大だ。
注:下院の定数は435人。
物語のキーマン、ヘンリー・フォンダが主演ではあるが、登場場面が少ないのは、多くの重要人物が登場する、ドラマの構成上致し方ないところだろう。
しかし、要所要所で登場する彼の落ち着き払った存在感は際立っている。
その主人公を敵対視する、長老議員チャールズ・ロートンの皮肉たっぷりな余裕と貫禄の演技も見ものだ。
重厚な演技が光る与党院内総務、ウォルター・ピジョン、終盤ドラマ展開にインパクトを与える悲劇の若手議員ドン・マレー、伊達男ぶりが彼らしいピーター・ローフォード、病に倒れる大統領フランチョット・トーン、議員から慕われる副大統領リュー・エアーズ、主人公の過去を暴く男バージェス・メレディス、政財界の華ジーン・ティアニー、裏工作で委員長を追い詰める議員のジョージ・グリザー、同僚議員ポール・フォード、エドワード・アンドリュース、野党院内総務のウィル・ギア、委員長夫人インガー・スウェンソン、そして、フランク・シナトラが声だけで登場する。