1919年に発表された、P・G・ウォードハウスの小説”A Damsel in Distress”を基にした、彼とイアン・ヘイによる戯曲の映画化。 アメリカ人エンターテイナーと貴族の令嬢との恋を描く、監督ジョージ・スティーヴンス、主演フレッド・アステア、ジョージ・バーンズ、グレイシー・アレン、ジョーン・フォンテイン、レジナルド・ガーディナー他共演のミュージカル・コメディ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョージ・スティーヴンス
製作:パンドロ・S・バーマン
原作
”A Damsel in Distress”
P・G・ウォードハウス
イアン・ヘイ
脚本
P・G・ウォードハウス
アーネスト・パガノ
S・K・ローレン
撮影:ジョセフ・オーガスト
編集:ヘンリー・バーマン
美術・装置:キャロル・クラーク
音楽
ジョージ・ガーシュウィン
ロバート・ラッセル・ベネット
出演
ジェリー・ハリデー:フレッド・アステア
ジョージ:ジョージ・バーンズ
グレイシー:グレイシー・アレン
レディ・アリス・マシュモートン:ジョーン・フォンテイン
ケグス:レジナルド・ガーディナー
レジー:レイ・ノーブル
レディ・キャロライン:コンスタンス・コリアー
ジョン・マシュモートン卿:モンタギュー・ラヴ
アルバート:ハリー・ワトソン
ミス・ラグルズ:ジャン・ダガン
アメリカ 映画
配給 RKO
1937年製作 98分
公開
北米:1937年11月19日
日本:1938年11月
製作費 $1,035,000
■ アカデミー賞 ■
第10回アカデミー賞
・受賞
ダンス監督賞
・ノミネート
美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
イングランド、トットニー城。
スタッフを集めた執事のケグス(レジナルド・ガーディナー)は、城主ジョン・マシュモートン卿(モンタギュー・ラヴ)の娘で、若くて美しいレディ・アリス(ジョーン・フォンテイン)が結婚を決意したらしいということを話す。
そこでケグスは、その幸運な男性は誰かという賭けをすることを考えて皆にクジ引きを提案し、正解者は掛け金をすべて手に入れられると皆に伝える。
クジを引かせたケグスは、最後に帽子の汗止めに隠してあったクジを引く。
ケグスは、ほぼ間違いない相手であるジョンの姉レディ・キャロライン(コンスタンス・コリアー)の養子レジー(レイ・ノーブル)のクジを手にして満足し、クジを引いていないアルバート(ハリー・ワトソン)に候補者は残っていないと伝える。
”ミスターX”でもいいと言うアルバートは、アリスの相手が知らない人物なら自分の勝ちにしてほしいとケグスに伝えて、皆もそれを了承する。
アルバートは、アリスが去年スイスでアメリカ人に恋したことを知っているとケグスに話して自信を示す。
アリスがロンドンに向かったことを知ったケグスは、ミスターXに会うためだと知り焦り出かける。
ケグスは車で向かうアリスを追い、アルバートも自転車で続く。
アメリカ人エンターテイナーのジェリー・ハリデー(フレッド・アステア)の広報担当ジョージ(ジョージ・バーンズ)は、父親が後援者であるために仕方なく雇っている、無能な秘書のグレイシー(グレイシー・アレン)に手を焼いていた。 いつもファンに追い回されるジェリーは不満を抱き、ジョージの指示を聞く気になれなくなり、彼と意見が合わずにその場を去る。 ファンに追われるジェリーは車に乗り、ケグスに気づいて逃げようとするアリスが乗り込んでくる。 アリスを追っかけのファンだと思ったジェリーは、伯母キャロラインに指示された監視役から逃げていると言われ、現れたケグスを追い払おうとする。 ケグスは、誰もいないと言うアメリカ人のジェリーを疑って車を調べようとするが、追い払われてしまう。 ジェリーがアメリカ人だと知ったアルバートは彼と話し、アリスを諦めるなと伝える。 車に追いついたケグスは、その場にいた警官に話をする。 ジェリーは、警官をケグスと間違えて傘で殴りトラブルになり、その間にアリスは車を降りる。 警官は車に誰もいないことを確認し、ジェリーは逃げるものの人々に囲まれてしまい、踊ってほしいと言われて仕方なく歌い始める。 通りに出たジェリーは、バスに乗り込みその場から逃げる。 貴族とは思えないジョンは、いつも使用人のように庭の手入れをしていた。 城に戻ったアリスは、父から、好きになれない風変わりなレジーと結婚して彼を連れ出してほしいと言われるものの、それを断る。 ロンドンでケグスに邪魔されたことを話したアリスは、1年、会っていないものの、愛したアメリカ人を諦めないと父に伝える。 ケグスは逮捕され、一晩留置場に入れられて城に戻り、その件を知ったキャロラインは、昨日あったことをアリスから聞く。 アルバートは、”困っているので、城の解放日に会いに来てほしい・・・”という愛もほのめかす内容の、アリスが書いたように見せかけた手紙をジェリーに送る。 その手紙を受け取ったジェリーは、城の場所や所有者を調べ、ジョージはいい宣伝になると考える。 城の解放日。 ジェリーに気づいたケグスは追い払い、ジョージとグレイシーを含めた観光客の案内を始める。 アルバートは、城に入れないジェリーに話しかけて、アリスに会わせようとする。 案内するケグスは、城のバルコニーの説明を始めて、令嬢と密会したレナード卿が勇敢に飛び降りた、18世紀の出来事を話す。 ジェリーは、キャロラインが主催する音楽会に紛れ込む。 ジェリーに気づいたケグスは、それをキャロラインに伝えて、2階に向かった彼を追い出すよう指示される。 アルバートに案内されたジェリーは、現れたアリスに、急いできたことを伝る。 ジェリーが来た理由が分からないアリスは、自分が愛しているアメリカ人のことを彼が話していると思う。 そこにキャロラインとケグスが現れ、アリスはジェリーをバルコニーに向かわせる。 キャロラインは男性のことをアリスに追及し、ジェリーはアルバートの助けで屋上に上る。 キャロラインはバルコニーを調べ、アリスは、その場にいなかったジェリーが、レナード卿のように勇敢に跳んだと考える。 ジョージとグレイシーと共に去ろうとしたジェリーは、ジョンを庭師だと思い、いつでも助けるという内容のアリスへの伝言を渡す。 その後、キャロラインに呼ばれたジョンは、アリスが捜している男と連れの男女の話をされ、レナード卿の館にいる彼らを追い払うよう指示される。 その話を聞いていたアルバートはジェリーの元に向かい、ジョンが追い出しに来ることを伝える。 そこに現れたジョンを城の使用人だと思い話すジェリーは、隠れていたアルバートを見つけた彼が城主だと知り驚く。 動揺するジェリーは、アリスからの手紙を受け取り、貴族の地位にこだわらないジョンが自分の味方だと知る。 姉キャロラインが、養子のレジーをアリスと結婚させようとしているため、それを娘が拒める環境になることをジョンは望んでいた。 今日の午後アリスはレジーとカーニバルに向かい、キャロラインがそこでプロポーズさせる気だとジェリーに話したジョンは、彼が娘を奪いに行く気があることを確認する。 ジョンは、キャロラインに訊かれたら、自分に叩き出されたと言うようにとジェリーに伝えてその場を去る。 ジョージとグレイシーと共にカーニバルに向かったジェリーは、レジーとアリスに気づく。 それぞれ遊戯に乗ったジェリーとアリスは近づき、昨日の話をする。 グレイシーはレジーと話し、意気投合する。 バルコニーから跳んだと思っているアリスは、勇敢だと言ってジェリーに惹かれる。 しかし、キスされたアリスはジェリーの頬を叩き、乗り物を降りてレジーと立ち去る。 戸惑うジェリーだったが、ジョージとグレイシーと共に遊戯を楽しむ。 翌日アリスは、捜していた男性を愛していないことに気づいたと父に話す。 ジェリーを愛していることを伝えたアリスは、キスされたために叩いてしまったことを父に話し、気にする必要はないと言われて励まされる。 その話を聞いていたアルバートは、自分の思い通りになりそうなので喜ぶ。 ケグスに盗み聞きがバレたアルバートは、通常なら解雇だが今回は見逃すと言われるものの、ミスターXとレジーのクジの交換を強要される。 解雇されたくないアルバートは、仕方なくそれに従い、ケグスにクジを渡す。 館に訪ねて来たアリスと話したジェリーは、気まずい思いをしながらパリに行くことを伝える。 叩いたことを謝罪したアリスは、捜していた男性を好きでないことに気づいたと伝えるものの、ジェリーは、その代わりに彼女が誰を好きになったのか分からない。 アリスは鈍感なジェリーに腹を立て、愛したのが間違いだと言ってその場を去る。 ようやくアリスの愛に気づいたジェリーは、彼女を追いそれを確かめる。 ジェリーは城に戻るアリスを送り、キャロラインに邪魔されることを気にするものの、ジョンが許してくれると言われて館に戻る。 その夜、ジョージと共に城に招待されたグレイシーは、ジョンからジェリーのことを訊かれ、招待されなかったので来ないと答える。 アルバートは、クジをケグスに渡したために、今度はアリスとジェリーの恋の邪魔をしようとする。 アリスは、自分が28人目のジェリーの恋の犠牲者という新聞記事をアルバートから見せられて驚く。 ジェリーに2度と会わないことを決めたアリスは、庭にいた彼を見つめる。 ジョンは、アリスがジェリーを城に入れるなと指示していることを使用人から知らされる。 城に入れてもらえないジェリーは、急に態度を変えて好意的に接するケグスに中に入れてもらう。 パーティーの合唱団に加わり歌ったジェリーは、キャロラインに見つかりそうになったために、その場を離れて2階に向かう。 階段を下りてきたアリスに声をかけたジェリーだったが、冷たい態度の彼女に相手にされない。 アルバートとジェリーの会話を聞いたケグスは、アルバートにクジを返すよう指示し、ミスターXのクジを渡す。 苛立つアルバートは、クジを破いてしまう。 庭にいたレジーとグレイシーは、結婚の約束をする。 オペラ好きのケグスの楽譜を持ち去っていたアルバートは、それを女性に渡してピアノで弾いてもらう。 その曲を聴いたケグスは、城の中で歌うことをキャロラインに禁じられていたために、外に出て歌い始める。 ジョンは、アリスと気まずい雰囲気のジェリーと話し、彼を励まして娘の部屋に向かわせる。 アリスと話したジェリーは、ジョンのアドバイスを参考にして強引に迫る。 新聞を見せられたジェリーは、アリスがそれで心変わりしたとことを知り、事実ではないと言って、架空の人物を作り上げていると話し納得してもらう。 ジョンと話をしていたキャロラインは、アリスの部屋の一大事を知り、スキャンダルを避けるために、アリスとジェリーを結婚させることを考えて2階に向かう。 キャロラインにドアを開けるようにと言われたアリスは、バルコニーから跳ぶようにとジェリーに指示する。 木に飛び移ったジェリーは無事に地上に下り、ジョンの指示で城に入る。 ジョージが自分と結婚する気になったと思うグレイシーは、レジーを置いてその場を去る。 ジョンからアリスとの結婚を祝福されたジェリーは、彼女と共に旅立つ。
...全てを見る(結末あり)
ジョージとグレイシーと共に到着したジェリーは、入り口にいたケグスに気づき、知らぬフリをして入ろうとする。
*(簡略ストーリー)
ロンドン。
アメリカ人エンターテイナーのジェリー・ハリデーは、恋した男性を捜す貴族の令嬢アリスに出会う。
アリスの住居であるトットニー城の執事ケグスは、監視していた彼女を捜すものの逃げられてしまう。
同じ使用人の少年アルバートは、ケグスらとアリスの結婚相手を当てる賭けをしていた。
アルバートは、誰も知らない”ミスターX”に賭けていたために、アリスとジェリーを結びつけようとする。
ジェリーは、アルバートが書いたとは知らずにアリスからの手紙を受け取り、広報のジョージと秘書のグレイシーと共に城に向かうのだが・・・。
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P・G・ウォードハウスの小説”A Damsel in Distress”を基にした、彼とイアン・ヘイによる戯曲の映画化。
アメリカ人エンターテイナーと貴族の令嬢との恋を描くミュージカル・コメディ。
短編などを含めキャリアを重ねていたジョージ・スティーヴンスの監督作品であり、「有頂天時代」(1936)に続く、彼とフレッド・アステアのコンビ作品。
また、アステアとジンジャー・ロジャースが組まない最初のRKO作品で、抜擢されたジョーン・フォンテインが踊れないことが問題になり、興行的に失敗した最初のアステア作品となってしまった。
とは言え、ミュージカル・パフォーマンスなどは高く評価され、第10回アカデミー賞ではダンス監督賞を受賞し、美術賞にノミネートされた。
ジョージ・ガーシュウィン作曲、アイラ・ガーシュウィン作詞による作品であり、ジョージは撮影中に脳腫瘍で亡くなり、彼の死から4か月後に本作は公開された。
主演のフレッド・アステアは、ひょんなことから貴族の令嬢に恋してしまうエンターテイナーを軽快に演じ、カーニバルでのダンスシーンなど、彼のパフォーマンスは存分に楽しめる。
主人公の広報を演ずるジョージ・バーンズと秘書役のグレイシー・アレンは、実生活で夫婦であり、息の合った演技で大いに笑わせてくれる。
デビュー間もないあどけなさも残る、撮影当時19歳のジョーン・フォンテインは、紆余曲折の末に主人公と結ばれる美しい令嬢を上品に演じている。
城の執事を愉快に演ずるレジナルド・ガーディナー、ヒロインの父親である城主のモンタギュー・ラヴ、その姉コンスタンス・コリアー、その養子レイ・ノーブル、掛け金を手に入れようとする使用人の少年ハリー・ワトソンなどが共演している。