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時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange (1971)

1962年に発表された、アンソニー・バージェス同名小説の映画化。
生活や仕事が完全にコントロールされている近未来を描く、製作、監督、脚本スタンリー・キューブリック、主演マルコム・マクダウェルパトリック・マギーマイケル・ベイツアドリエンヌ・コリ共演によるSF犯罪ドラマの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


SF


スタッフ キャスト ■
監督:スタンリー・キューブリック
製作:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
編集:ビル・バトラー

音楽:ウォルター・カルロス

出演
マルコム・マクダウェル:アレックス・デラージ
パトリック・マギー:フランク・アレクサンダー
マイケル・ベイツ:バーンズ看守長
アドリエンヌ・コリ:アレクサンダー夫人
ウォーレン・クラーク:ディム
ジェームズ・マーカス:ジョージー
マイケル・ターン:ピート
アンソニー・シャープ:内務大臣
ミリアム・カーリン:ウェザース夫人
スティーヴン・バーコフ:トム
デヴィッド・プラウズ:ジュリアン

イギリス/アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1971年製作 136分
公開
イギリス:1972年1月13日
北米:1972年2月2日
日本:1972年4月29日
製作費 $2,200,000
北米興行収入 $26,589,360


アカデミー賞 ■
第44回アカデミー賞
・ノミネート
作品・監督・脚色・編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
近未来のロンドン、無法がはびこる退廃した世界。

アレックス・デラージ(マルコム・マクダウェル)をリーダーとする不良少年グループ、ディム(ウォーレン・クラーク)、ジョージー(ジェームズ・マーカス)、そしてピート(マイケル・ターン)は、強姦や暴力沙汰を起こす毎日を送っていた。

その日も4人は、無抵抗なホームレスの老人をで袋叩きにして、廃墟で女性に暴行しようとする他のグループと乱戦を繰り広げ、彼らを半殺しにして車で逃走する。

街道では車を暴走させたアレックスらは、対向車などを次々と事故に巻き込み、そして、ある郊外の邸宅に向かう。

事故を起こしたと言って、作家フランク・アレクサンダー(パトリック・マギー)の家に押し入った4人は、彼を痛めつけて縛り上げ、”Singin’ in the Rain”を唄いながら、目の前で妻(アドリエンヌ・コリ)をレイプする。
...全てを見る(結末あり)

エネルギーを消費しきった4人は、クラブ”コロバ”に戻り、就寝前の一杯で一日を終わらせる。

帰宅したアレックスは、ルードウィッヒ(ベートーベン)を聴きながら眠りにつく。

翌朝、アレックスは体調不良を装い、学校に1週間も登校しない彼は、訪れた保護観察官に小言を言われる。

その後、街に出たアレックスは二人の女性に声をかけ、自宅に向かいベッドを共にする。

ある日アレックスは、グループのリーダーの自分に反旗を翻し、新体制を築くと言い始めた仲間達の意見を退ける。

誰がリーダーかを仲間達に理解させたアレックスは、次なる獲物を追う。

グループは、一人暮らしの富豪ウェザース夫人(ミリアム・カーリン)を襲うことを考える。

しかし、その手口が、新聞で読んだ作家夫妻の事件に似ていると気づいた夫人は、警察に通報する。

家に侵入して、抵抗する夫人を叩きのめしてしまったアレックスは、パトカーのサイレンに驚き逃げ出そうとするが、仲間に裏切られ警察に捕らえられてしまう。

アレックスは、トム(スティーヴン・バーコフ)ら警察官に尋問されながら痛めつけられる。

現れた保護観察官に無実を訴えるアレックスだが、夫人が死亡したことを知らされる。

アレックスは、14年の刑で刑務所行きとなり、バーンズ看守長(マイケル・ベイツ)に迎えられる。

厳格なバーンズは、アレックスに容赦なく指示を与えて、刑務所生活の厳しさを教え込む。

アレックスは、自分の上をいく悪党や変態の中で刑務所生活を始め、日曜礼拝の神父の助手などをする。

2年間を過ごしたアレックスは模範囚となり、新しく考案された治療法を受けると直ぐに出所できること知った彼は、それを神父に話す。

受療すれば、出所後に戻ることがないという”ルトビゴ式心理療法”に志願したアレックスは、善人になりたいと言って、治療を受けようとして、まだ実験段階だという神父を説得する。

即刻その希望が叶うことはなかったアレックスだったが、内務大臣(アンソニー・シャープ)の刑務所視察中に直訴して、新療法の最初の受療者に選ばれる。

極悪人を矯正するその療法を受けるため、アレックスは、彼の動向に納得できないバーンズ看守長に連れられて医療センターに向かう。

ある薬を投与されたアレックスは、瞼が閉じぬよう固定されて、暴力的映画を強制的に観させられ、それが延々と続く。

苦痛を感じ始めたアレックスだったが、瞼を閉じることと映像から眼を話すことができない。

翌日も療法は続き、限界に達したアレックスは改心したことを医師に告げる。

そしてアレックスは、内務大臣と共に、その結果を披露する会場のステージに立つ。

突然、現れた男がアレックスを痛めつけると、彼は吐き気をもよおし、裸の女性を前にしても同様の症状が出てしまい、それを見た内務大臣やっ出席したバーンズも満足する。

そして、内務大臣により、実験の成功が宣言される。

釈放されたアレックスは、自宅で、自分の部屋を占領する下宿人に殴りかかろうとするが、治療の効果で吐き気をもよおしてしまう。

下宿人を追い出す訳にはいかないという、両親の言葉にショックを受けて苦しむアレックスは、家を出て川辺で物思いに耽る。

アレックスは、現れたホームレスの老人に小銭を恵んであげる。

しかし、かつてアレックスらに袋叩きにされたことに気づいた老人は、仲間達と共に彼に襲いかかる。

2人の警官に救われたアレックスだったが、なんと彼らは、不良グループ仲間ディムとジョージーだった。

アレックスを森に連れて行ったディムとジョージーは、彼を痛めつけて置き去りにしてしまう。

嵐の中、アレックスは、作家アレクサンダーの家に辿り着く。

アレックスらに痛めつけられ、車いす生活を強いられていたアレクサンダーは、同居人のジュリアン(デヴィッド・プラウズ)が抱きかかえてきたアレックスの様子を見て驚く。

アレクサンダーは、警官に殴られたというアレックスが、新聞で報道された、新治療を受けた囚人だと知り介抱する。

浴室のバスタブで湯に浸かりながら、”Singin’ in the Rain”を歌うアレックスが、妻をレイプし死自追いやり、自分を半身不随にした男だとアレクサンダーは気づく。

アレックスに食事を与えたアレクサンダーは、、妻がこの場で暴力を受けたことなどを伝えて、彼を救いたい人物に連絡したことを伝える。

アレクサンダーは、現れた友人にアレックスへの質問をさせて、彼が暴力とセックス意外に、ベートーベンの”第九”に拒否反応を示すことを知る。

アレックスのワインに睡眠薬を入れたアレクサンダーは、眠った彼を部屋に監禁する。

その後アレクサンダーは、アレックスに”第九”を聴かせて、彼を発狂させてしまう。

そしてアレックスは、部屋の窓から飛び降り自殺を図る。

一命を取り留めたアレックスの自殺未遂は、非人道的な政府の犯罪矯正に非難を集中させることになる。

意識の戻ったアレックスは順調に回復し、内務大臣が見舞いに現れる。

内務大臣は、アレクサンダーらの反権力者が、政府を落としいれようとして、アレックスを利用したことなどを伝える。

アレックスに対して謝罪した内務大臣は、今後の厚遇を約束し、彼に世論を操作するための協力を求める。

それを理解して承知したアレックスに、内務大臣は贈り物を用意する。

アレックスと内務大臣は、その場で、マスコミに対して友情を示す。

そして、アレックスの前では、用意されたスピーカーから”第九”が流れ、彼は”完治”したことを実感する。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ロンドン
無法がはびこる退廃した近未来の世界、暴力やセックスに明け暮れる不良グループのリーダー、アレックス・デラージは、仲間を引き連れて無法の限りを尽くす毎日を送っていた。
しかしアレックスは、ある女性殺害事件で、自分に反発し始めた仲間に裏切られ、警察に捕らえられてしまう。
アレックスは、14年の刑で刑務所行きとなってしまうが、自分の上をいく悪党や変態の中で2年を過ごし模範囚となる。
そんなアレックスは、新治療法を受けることで出所できること知り、内務大臣に直訴して、最初の受療者に選ばれるのだが・・・。
__________

生活や仕事が完全にコントロールされている近未来の管理社会、表向きとは裏腹にはびこる暴力とセックス、悪の限りを尽くす不良少年を捕え実験台として”矯正療法”を試し悪を一掃しようとする国家が、結局はそれが原因で滅びそうになってしまうという、皮肉や風刺を込めて生々しく描くSF犯罪ドラマ。

”時計じかけのオレンジ”というタイトルは、作品のテーマそのもので、管理社会に支配されている”人間”(オレンジ)を比喩している。

第44回アカデミー賞では、作品、監督、脚色、編集賞にノミネートされた。

舞台は近未来となっているが、機械的に発達した社会を映しだすのではなく、セットのデザインや美術品、”ナッドサット”などのスラングを多用し未来感を表現しているところなど、スタンリー・キューブリックの天才的な映像センスは冴え渡る。

クラシックやバロック音楽を、主人公の心理描写と共に、効果的に使っているのも素晴らしい。

暴力表現により、それをシニカルに描いた作品ではあるが、本作を観て影響されたアーサー・ブレマーは、アラバマ州知事ジョージ・ウォレスを銃撃した。

また、A・ブレマーの著書を参考にしてポール・シュレイダーが「タクシードライバー」(1976)の脚本を書き、その出演者ジョディ・フォスターに憧れる、ジョン・ヒンクリーが、レーガン大統領の暗殺未遂事件を起こすという皮肉の連鎖が起きる。

”矯正療法”で、暴力映画を強制的に観せられるシーンで、瞼を見開かされる機械により失明しかけたというエピソードもある主演のマルコム・マクダウェルは、実に表現力豊かで、強烈なインパクトを与えてくれる。

出演者の中では、管理社会の象徴的存在として厳格な看守長を演ずる、「パットン」(1970)でモントゴメリー将軍を演じたマイケル・ベイツが印象的で、6年後「スター・ウォーズ」(1977)でダース・ベーダーを演ずるデヴィッド・プラウズが、作家(パトリック・マギー)の同居人、警官役スティーヴン・バーコフが登場するのも注目だ。

主人公に暴行される作家夫人アドリエンヌ・コリ、不良仲間役のウォーレン・クラークジェームズ・マーカスマイケル・ターン、内務大臣アンソニー・シャープ、被害者の夫人ミリアム・カーリン、などが共演している。


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