ドラマの主人公である弁護士のジャン・シュリットマンが1980年代に扱った大手化学会社”グレース”及び”ベアトリス食品”を相手取った環境汚染裁判を事実を基にして描いた物語。 拝金主義者の弁護士がある住民訴訟をきっかけに人間性や正義感などに目覚め人々のために尽くす姿を描く、製作ロバート・レッドフォード、監督、脚本スティーヴン・ザイリアン、主演ジョン・トラヴォルタ、ロバート・デュヴァル他共演の社会派ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・ザイリアン
製作
スコット・ルーディン
ロバート・レッドフォード
レイチェル・ファイファー
原作:ジョナサン・ハー”A Civil Action”
脚本:スティーヴン・ザイリアン
撮影:コンラッド・L・ホール
編集:ウェイン・ワーマン
音楽:ダニー・エルフマン
出演
ジョン・トラヴォルタ:ジャン・シュリットマン
ロバート・デュヴァルジェローム・ファッチャー
トニー・シャルーブ:ケヴィン・コンウェイ
ウィリアム・H・メイシー:ジェームズ・ゴードン
ダン・ヘダヤ:ジョン・ライリー
ジェリコ・イヴァネク:ビル・クローリー
ブルース・ノリス:ウィリアム・チーズマン
ジョン・リスゴー:スキナー判事
キャスリーン・クインラン:アン・アンダーソン
ジェームズ・ガンドルフィーニ:アル・ラヴ
ピーター・ジェイコブソン:ニール・ジェイコブ
メアリー・マーラ:キャシー・ボイヤー
スティーヴン・フライ:ジョージ・ピンダー博士
シドニー・ポラック:アル・ユースティス
ダニエル・フォン・バーゲン:グレンジャー
キャッシー・ベイツ:判事
アメリカ 映画
配給
タッチストーン・ピクチャーズ(北米)
パラマウント・ピクチャーズ(世界)
1998年製作 114分
公開
北米:1998年12月25日
日本:2000年2月5日
製作費 $60,000,000
北米興行収入 $56,702,900
■ アカデミー賞 ■
第71回アカデミー賞
・ノミネート
助演男優(ロバート・デュヴァル)
撮影賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ボストン。
4人の同僚と共に法律事務所を運営するジャン・シュリットマン(ジョン・トラヴォルタ)は、利益を優先する辣腕弁護士だった。
ある日、ラジオ番組に出演中のジャンは、2年前に子供を白血病で亡くした女性アン・アンダーソン(キャスリーン・クインラン)からの質問を受ける。
子供を扱う訴訟は”ドラマ”になると考えたジャンだったが、同僚のケヴィン・コンウェイ(トニー・シャルーブ)やビル・クローリー(ジェリコ・イヴァネク)、財務担当のジェームズ・ゴードン(ウィリアム・H・メイシー)に反対され、仕方なくその依頼を断るためにアンの元に向かう。
ウーバン。 しかし、勝訴の可能性は低く金になりそうもない相談に対し、ジャンは弁護を断ってしまう。 帰り道で、行きでも切られたスピード違反の切符を再び切られてしまったジャンは、警官に止められた橋の下の川が気になり調べてみる。 被害者から言われた、製革会社”ライリー”の工場などから汚染された排水が川に流れていることに気づいたジャンは、大手化学会社”グレース”及び”ベアトリス食品”の運搬トラックなども目撃する。 この案件が金になると考えたジャンは、早速、関係する2社”グレース”と”ベアトリス”に対して訴訟を起こす。 ”ベアトリス”の弁護士ジェローム・ファッチャー(ロバート・デュヴァル)と”グレース”の弁護士ウィリアム・チーズマン(ブルース・ノリス)は、訴状を受け取る。 チーズマンから連絡を受けたファッチャーは、不当な訴えでジャンの事務所に罰金を払わせようとするチーズマンに、相手を叩きのめすのが”闘い”だと伝えて電話を切る。 テレビ・カメラの前でジャンは、子供の写真を差し出し、自分達の訴えが金目当てでないというパフォーマンスをする。 ウォルター・スキナー判事(ジョン・リスゴー)の下で審理は始り、チーズマンの審理却下の申し立ては、考慮に値しないと判断されて却下される。 地質学者のジョージ・ピンダー博士(スティーヴン・フライ)と現地を視察したジャンは、調査に興味を示した彼にそれを依頼する。 チーズマンが立ち合い、ジャンの質問を受けた製革会社”ライリー”の従業員アル・ラヴ(ジェームズ・ガンドルフィーニ)は、使用した溶液はドラム缶に入れ、それが工場の裏に廃棄されたと話す。 付近の住民に異状が出ているのを黙って見ていられないラヴは、会社側に不利になる証言をするかを悩み、チーズマンは、今後の彼の対応を気にする。 被害者住民に与えた影響は、水質汚染が原因ではないことを検証してみるファッチャーは、彼らを証人に呼ぶことが不利になると考える。 ピンダーのチームと共に工場付近の地質調査などを始めたジャンだったが、製革会社社長ジョン・ライリー(ダン・ヘダヤ)は、それに抗議する。 裁判所命令だと言ってライリーを追い払ったジャンは、作業を続けさせる。 しかし、廃棄物の調査、ライリーの聴取など、事務所総出でこの件にのめり込んだ結果、出費が嵩み、ジャン達は資金難に陥ってしまう。 取引銀行に向かったジャンとゴードンは、何とか60万ドルの融資を受ける。 8人の子供を抱えるラヴは将来への不安から、アンを訪ねて相談をして、会社の不正をジャンに話す決心をする。 ラヴに続き次々と不正についての証言を得られたジャンは、チーズマンを追い詰める。 勝ち目が出てきたジャンに対し、”グレース”と自分を外してほしいと伝えたファッチャーは、今までの経費分負担を条件にするものの、それを拒まれる。 自分達の利益だけを考えていたジャンだったが、住民の悲痛な訴えが彼の心を動かし始める。 和解を求めてきたチーズマンに対し、3億2000万ドルの賠償金を要求したジャンは、それを拒否されて、ついに裁判になる。 財務担当のゴードンは裁判費用の不足を懸念するが、ジャンの考えは変わらなかった。 そして裁判は始まり、ゴードンは、事務員のキャシー・ボイヤー(メアリー・マーラ)と共に資金繰りに奔走する。 汚染されている土地のことを、調査結果を基にライリーに追及するジャンだったが、決定打になる答えは得られない。 あらゆる経費を削り何とか持ちこたえようとするゴードンはだったが、銀行の追加融資を断られてしまう。 被害者家族を証言台に立たせて悲しませるよりも、地質学データなどの証明を優先すべきだと考えるスキナー判事とファッチャーの意見が尊重され、それに従うしかない情況のジャンは、長引く裁判に苦しむ。 判決が下る日、陪審員の評議を待つ間にジャンは、20ドル札をソファに置き、”0”を6つつけるとと言うファッチャーから、2000万ドルの和解金を提示される。 20ドル札を手にして考えるジャンだったが、それを破ってその場に置き席を立つ。 判決の結果、”グレース”に対する評決は1問が有罪となり、裁判は第二段階に移行する。 溶液による汚染容疑では”ベアトリス”に対する評決は無罪となり、他の2問は却下され審理は終了する。 法廷を出てアンと共にマスコミに囲まれたジャンは、汚染をばらまく企業への警告ができたと言って、落胆していないことを印象付ける。 ”グレース”副社長のアル・ユースティス(シドニー・ポラック)との示談交渉も可能なジャンは、800万ドルで手を打つようにとゴードンから言われる。 家を担保に入れることを提案したジャンは、自分とケヴィン、そしてビルの家、老後年金、生命保険も担保に入れて借金しているとゴードンから言われる。 ニューヨーク。 ”グレース”のビルに向かいユースティスのオフィスに招かれたジャンは、和解金800万ドルを提示される。 それに納得しないジャンだったが、ゴードンから資金繰りに万策尽きたことを知らされ、仕方なく和解金を受け取る。 その後、アンら被害者は、経費の350万ドルと和解金の28%を差し引いて平等に分ける分配金が37万5000ドルになることをゴードンから知らされる。 アンらは、金ではなく、あくまで会社側の謝罪を要求する。 自分にはこれ以上どうすることもできないジャンは、住民達を見捨てることができず、諦めるようにと言うケヴィンに、目撃者が一人もいないことが疑問だと伝える。 出直すことを考えるジャンだったが、ケヴィン、ゴードン、ビルは彼の元を去っていく。 小さな事務所を構えて一人で細々と仕事を始めたジャンは、どうしても汚染された町のことが頭から離れず、もう一度、関係資料をチェックし直す。 そしてジャンは、ライリーが汚染物質の廃棄を命じたことを、社員のグレンジャー(ダニエル・フォン・バーゲン)から聞き出す。 廃棄物が投棄された場所は、若者達が爆竹で遊んでいる際に炎上したのだった。 その後ジャンは、グレンジャーの証言テープと大量の関係証拠書類を環境保護庁に送る。 いつものように、休憩時間に資料室に閉じこもり、ラジオで”レッドソックス”の実況を聴いていたファッチャーは、環境保護庁からの書類を受け取る。 ライリーの証拠隠滅をスキナー判事が認め、1990年に製革工場は取り壊される。 チーズマンも書類を受け取り、”グレース”は、環境保護庁より”トリクロロエチレン”他、薬品使用の虚偽供述を大陪審に告発され、1990年に工場は閉鎖される。 裁判の再会を避けた2社は、東部では最も高額の6490万ドルの土壌浄化費を支払うことになる。 それを新聞記事で知ったアンは、心の中でジャンに感謝する。 法廷でジャンは、銀行預金14ドルとポータブルラジオ以外の全ての物を失い自己破産した理由を、判事(キャッシー・ベイツ)から問われるものの答えられない。
アン他、被害者家族と話しをしたジャンは、賠償金ではなく、原因の追求と、環境汚染を起こした可能性のある工場側からの謝罪が欲しいだけだと言われる。
...全てを見る(結末あり)
ケヴィンらと共に、資金抱負と見せかけるために高級ホテルのスイートルームに宿泊したジャンは、”ハーバード・クラブ”に向かい、ユースティスに会うものの、その場では仕事の話はしないと言われる。
*(簡略ストー リー)
同僚4人と法律事務所を運営する辣腕弁護士ジャン・シュリットマンは、ある環境汚染の問題に目を付ける。
それが利益を生みそうにないという判断で、住民の依頼を断ろうとしたジャンだったが、付近の工場などが汚水を流す現実と、それに大手化学会社”グレース”と”ベアトリス食品”が関っていることを知り、金になると判断して訴訟を起こす。
2社の弁護士ファッチャーとチーズマンは、環境汚染を疑われる、関連する現地の製革工場での内部告発の現状を見て、示談に持ち込もうととする。
しかし、金目当てだったジャンは、住民の悲痛な訴えに心を動かされ、破格の賠償金を要求してしまう。
会社側は当然それを拒否して裁判となるが、長引く法廷論争に、ジャンの事務所の経費が嵩み、彼らは追い込まれてしまう・・・。
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1995年に発表された、ジョナサン・ハーの”A Civil Action”の映画化。
アメリカの弁護士社会の仕組みや弁護士の駆け引きなどを赤裸々に描き、脚本家でもある監督スティーヴン・ザイリアンの丁寧な演出が見所の作品。
コメディ・タッチで始まる冒頭シーンから、徐々にシリアスな展開に変わり、クライマックスはヒューマン・ドラマのような展開で終わる社会派実録ドラマであり、様々な要素が含まれたストーリーになっている。
第71回アカデミー賞では、助演男優(ロバート・デュヴァル)と撮影賞にノミネートされた。
絶頂期を迎えているジョン・トラヴォルタの、自信溢れる充実した演技は見もので、軽いノリのオープニングから、中盤以降は、人々のために尽くそうとする人間味のある人物を好演している。
クライマックスで、破産してしみじみと自分の弁護士人生を振り返る、穏やかな彼の表情が印象的だ。
ロバート・デュヴァルの、感情を抑えた”ベアトリス食品”の老練弁護士役も忘れがたい名演だ。
主人公と共に自分を犠牲にしてまで裁判に挑むものの、力尽き事務所を離れるトニー・シャルーブ、ウィリアム・H・メイシー、ジェリコ・イヴァネク、廃棄物隠滅を隠し通そうとする製革工場社長のダン・ヘダヤ、裁判を担当する判事のジョン・リスゴー、子供を白血病で亡くした原告側住民のキャスリーン・クインラン、子供の将来を考え、会社の不正を証言する製革工場の従業員ジェームズ・ガンドルフィーニ、大手化学会社”グレース”の副社長シドニー・ポラック、自己破産する主人公に対処する判事キャッシー・ベイツ、”グレース”の弁護士ブルース・ノリス、その同僚ピーター・ジェイコブソン、主人公の事務所のスタッフ、メアリー・マーラ、汚染地帯を調査する地質学者スティーヴン・フライ、廃棄物処理を指示される製革工場の従業員ダニエル・フォン・バーゲンなどが出演している。