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カンタベリー物語 A Canterbury Tale (1944)

イギリス映画界の至宝マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガー(製作、監督、脚本)の映画製作会社”The Archers”の作品。
第二次大戦中、カンタベリーの隣町で若者3人が奇妙な出来事をきっかけに巡礼の町で神の恵みを受けるまでを描く、主演エリック・ポートマンシーラ・シムデニス・プライス共演によるコメディ・タッチのドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(コメディ)


スタッフ キャスト ■
監督
マイケル・パウエル

エメリック・プレスバーガー
製作
マイケル・パウエル

エメリック・プレスバーガー
脚本
マイケル・パウエル

エメリック・プレスバーガー
撮影:アーウィン・ヒラー
編集:ジョン・シーボーンSr.
音楽:アラン・グレイ

出演
トーマス・コルペパー:エリック・ポートマン

アリソン・スミス:シーラ・シム
ピーター・ギブス:デニス・プライス
ボブ・ジョンソン:ジョン・スウィート
ネッド・ホートン:ジョージ・メリット
トーマス・ダケット:チャールズ・ハウトリー

イギリス映画
配給
General Film Distributors

Eagle-Lion Films
1944年製作 125分
公開
イギリス:1944年8月21日
北米:1949年1月21日
日本:未公開
製作費 $650,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1943年8月27日、チリンボーン。
大聖堂があり、聖地巡礼者が数多く訪れるカンタベリーの前の駅で、そこが目的地と間違えた、アメリカ陸軍軍曹ボブ・ジョンソン(ジョン・スウィート)は汽車を降りてしまう。

ボブと、駐屯地に向うイギリス陸軍軍曹ピーター・ギブス(デニス・プライス)、ロンドンのデパートの店員だった、農業促進婦人会の紹介で、ある農場で働くというアリソン・スミス(シーラ・シム)は、駅長代理のトーマス・ダケット(チャールズ・ハウトリー)に、農場主で治安判事でもあるトーマス・コルペパー(エリック・ポートマン)の命令だということで、市役所に向うよう指示される。

ダケットと別れ、市役所に向おうとした三人だったが、何者かが、アリソンの頭に粘り気のある物をかけて逃げ去る。

不審者を追った三人は、市役所方向に向かい、犯人がその建物に隠れたと判断する。
...全てを見る(結末あり)

ピーターが駐屯地に行くと言ってその場を去り、アリソンとボブは市役所で、相次いで出現している”糊男”の存在を知る。

その場の二階にいたコルペパーは、自分の農場で働くために訪れたというアリソンが、”糊男”の被害に遭い、犯人が建物内にいるという報告を受ける。

アリソンは、糊を洗い流してもらおうとするが、なかなかそれが落ちずに苦労する。

ボブに会ったコルペパーは、彼の宿の手配をして、アリソンにも会い、雇えないことを伝える。

アリソンはその理由を問い、コルペパーは、近くの駐屯地には兵士達がいて、労働者が女性だというのは問題だと指摘する。

扉の向こうから、物音がすることに気づいたアリソンは、コルペパーにそこを開けてもらうが、その中には何着かの軍服があった。

仕方なくボブと同じ宿に向ったアリソンは、寝ていた彼を起し、どこか怪しいコルペパーについてを話し、町を調べのに協力してもらおうとする。

翌朝、アリソンが、宿屋で働く夫人の農場に雇われたことを知ったボブは、彼女が、ネッド・ホートン(ジョージ・メリット)の鍛冶屋で、荷馬車の車輪を直していることを知りその場に向う。

アリソンは、昨晩、自分が”糊男”の被害にあったことをホートンに伝え、彼は、国で父が家具職人だった、本人はかんな職人だというボブを気に入り昼食に招待する。

その後、アリソンは、ボブを荷馬車に乗せてその場を去り、途中、草刈をするコルペパーを見かける。

アリソンは、手紙もよこさないというボブの恋人の話などを聞き、自分の恋人は戦死したことを伝えて彼と別れる。

農場で働き始めたアリソンは、自分が見た”糊男”が、軍服を着ていたことを気にしていたが、兵士が来る前には、それが出現しなかったという話も聞く。

アリソンは、犯人が町の人間で、兵士との行動を女性に警告するために、犯行を続けていると推測し、自分がこの事件を解決して見せると意気込む。

その後、巡礼路を通っていたアリソンは、軍の装甲車に囲まれてしまう。

その中にはピーターがいて、ボブのことなどを聞かれたアリソンは、兵士が参加する”コルペパー研究会”なる、彼の発掘作業などについての催しに、参加することを約束させられてしまう。

会にはボブも参加し、アリソンとピーターとも顔を合わせる。

コルペパーは、600年前の巡礼者達が、今見る光景と同じものを目にしながら巡礼路を歩いたということを伝え、祖先が皆の側にいることを感じとれるはずだと語る。

その後、夜の通りで、事件を検証し始めたアリソン、ボブ、ピーターらは、コルペパーが怪しいという話になる。

その時、駐屯地行きのバスが到着したために、ピーターは二人に別れを告げる。

翌日、ボブは、戦争ごっこをする子供達と行動を共にして、”糊男”についての情報を得る。

一方アリソンも、被害に遭った女性達に会い、宿に戻り、ボブとピーターとで集めた情報をまとめてみる。

それほどの収穫はない三人だったが、食料雑貨店の主人を父に持つ子供が、その帳簿をボブに届ける。

その中で、コルペパーが糊のような物を買った形跡はなく、ボブがあることを思いつき、ピーターはコルペパーの屋敷を訪ねることになる。

ピーターはコルペパーに探りを入れて、彼が事件当日は火災警備をしていたことを知る。

そこに、ボブが手配した子供達が廃品回収に現われて、コルペパーが席を外した隙に、ピーターは壁に貼られていた、火災警備の当番票を持ち去る。

それをボブに見せたピーターは、コルペパーの当番日が、全ての犯行の日と同じことに気づく。

子供達の回収品を調べたボブとピーターは、その中から、ゴム糊なども売る事務洋品店の領収書を見つけ、子供達に報酬を払い感謝する。

巡礼路を歩いていたアリソンは”カンタベリー大聖堂”が見える場所で、馬のひづめの音や人の話し声を聞く。

その時、その場にいたコルペパーがアリソンに声をかけ、彼女が聞いたのは、内に秘めたものだと言って、二人で話を始める。

二人はお互いに、今までの態度を謝罪し合い、そこに現われたボブとピーターの他愛もない話を、身を隠して聞き入る。

コルペパーは、二人がなぜか、自分のことを好意的に思っていると言いながら立ち去ったのを確認して、アリソンと共にその場を離れる。

翌日、カンタベリーに向おうとしたアリソン、ボブ、ピーターは、裁判のために汽車に乗車したコルペパーと同席する。

ボブは軍隊に戻る前に、観光を兼ねてそこに立ち寄り、アリソンは農業委員会に、そしてピーターは警察に行くということだった。

三人は、”糊男”についてなどを、コルペパーに対して率直に質問し、やがて、カンタベリーに到着する。

コルペパーは三人と別れて法廷に向かい、アリソンは、ボブを大聖堂に案内して、ピーターは警察に出向く。

ピーターは、大聖堂に向ったという警視に会うためにその場を訪れ、教会のオルガン奏者だった彼は、立派なオルガンに興味を示す。

自分の恩師を知っていたオルガン奏者の厚意で、ピーターは演奏することを許可されバッハを弾く。

内部を見学していたボブは、その見事な演奏を聴きながら、故郷の教会を祖父が建てたことを考える。

アリソンは自動車修理工場に向かい、かつてこの地を訪れた時に使用した、恋人のトレーラーハウスを見せてもらう。

想い出が甦ったアリソンは涙するが、そこに彼女がいると考えたコルペパーが姿を現わし声をかける。

その直後アリソンは、工場の主人から、恋人の生存を彼女に知らせるために、その父親が2週間もホテルに滞在して待っていることを知らされる。

驚いたアリソンは、誇りや虫だらけのトレーラーハウスを掃除しようとするが、コルペパーの姿はなかった。

町で戦友に偶然出くわしたボブは、オーストラリアにいた、婦人陸軍部隊に入隊した恋人から送られてきた、何通もの手紙を受取る。

アリソンは恋人の父親と共に、コルペパーに見守られながら大聖堂に向かい、ボブも恋人の手紙を手にしてそれに続く。

そして、二人と同じ気持ちになり、神の恵みを受けた思いで演奏していたピーターは、警視への報告を止めて、兵士達の賛美歌のために演奏を続ける。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1943年8月、カンタベリーの隣町の駅で、間違って下車してしまったアメリカ陸軍軍曹ボブは、駐屯地に向うイギリス陸軍軍曹ピーターと、その地の農場で働く予定のアリソンと共に市役所に向う。
途中アリソンは、何者かに頭にべとつくものをかけられ、三人は犯人を追う。
ピーターは駐屯地に向かい、アリスとボブは市役所で、町では”糊男”が出現し、犯行を重ねていることを知る。
農場主でもある、治安判事トーマス・コルペパーに二人は面会するが、アリソンは彼の農場で働くことを拒まれてしまう。
アリソンとボブは、どことなく怪しいコルペパーの存在を気にしながら、事件を調べてみることにする。
そして、ピーターも含めた三人は、600年前の巡礼者の思いなど体現しながら、その怪奇極まりない事件の謎を追い始めるのだが・・・。
__________

なんとも知れない雰囲気で始まるコメディ・タッチのドラマは、カンタベリーに向う巡礼路のある田舎町で、意味不明な怪奇事件の発生と共に、ファンタジックな物語に変貌して行き、やがて感動の結末を迎える。

亡くなった恋人や遠く離れた故郷などを想いながら、奇妙な事件に関っていくうちに、やがて、神の恵みへと導かれる主人公達の運命をドラマチックに描く、マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガーの、魅力溢れる脚本と演出は必見の一編としてお勧めできる。

戦火を間近で感じながら、戦時中に、これだけのドラマを製作できる、二人の意欲には驚かされる。

その二人の作品の常連であり、人々を神の道に導く使者のような存在を演ずるエリック・ポートマンが主演なのだが、個性的な三人の若者の熱演は光る。

翌年リチャード・アッテンボローと結婚する、農業従事者として現地を訪れる女性シーラ・シム、現役のアメリカ陸軍軍曹でもあった、素朴な青年を実に魅力的に演ずるジョン・スウィート、二人の協力者であり、”カンタベリー大聖堂”で清らかな気持でオルガンの演奏をする、爽やかな表情も印象的なデニス・プライス、鍛冶屋ジョージ・メリット、駅長代理チャールズ・ハウトリーなどが共演している。


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