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第七天国 7th Heaven (1927)

幸薄い女性と掃除夫の青年の恋を描く、製作ウィリアム・フォックス、監督フランク・ボーゼイギ、主演ジャネット・ゲイナーチャールズ・ファレルベン・バードアルバート・グランデヴィッド・バトラー他共演の恋愛ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ロマンス)


スタッフ キャスト
監督:フランク・ボーゼイギ

製作:ウィリアム・フォックス
原作
オースティン・ストロングSeventh Heaven”(戯曲)
ハリー・H・コールドウェル
キャサリン・ヒリカー
脚本:ベンジャミン・グレイザー
撮影
アーネスト・パーマー
ジョセフ・A・ヴァレンタイン
編集:バーニー・ウルフ
美術・装置:ハリー・オリヴァー

出演
ディアーヌ:ジャネット・ゲイナー
チコ・ロバ:チャールズ・ファレル
ブリザック大佐:ベン・バード
ブール:アルバート・グラン
ゴバン:デヴィッド・バトラー
ゴバン夫人:マリー・モスキーニ
ナナ:グラディス・ブロックウェル
シュヴィヨン神父:エミール・ショタール
ヴァレンタイン:ジェシー・ハスレット
ジョージ:ブランドン・ハースト
ネズミ:ジョージ・E・ストーン
アーレット:リリアン・ウェスト

アメリカ 映画
配給 Fox Film
1927年製作 110分
公開
北米:1927年5月6日
日本:1927年11月
製作費 $1,300,000


アカデミー賞
第1回アカデミー賞

・受賞
監督(ドラマ)
主演女優(ジャネット・ゲイナー
脚色賞
・ノミネート
作品・美術賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
パリ
下水道の掃除夫チコ・ロバ(チャールズ・ファレル)は、同僚のネズミ(ジョージ・E・ストーン)と共に、日々、労働に励んでいた。

チコは、道路清掃夫のゴバン(デヴィッド・バトラー)のような仕事をすることが夢であり、自分は特別な人間だと考え、必ずそうなれると信じていた。

同じスラム街のアパートでは、気の弱い娘ディアーヌ(ジャネット・ゲイナー)が、意地の悪いアル中の姉ナナ(グラディス・ブロックウェル)に折檻されていた。

盗んだ品物のことで愚痴をこぼすディアーヌを罵倒するナナは、アブサンを買ってくるよう指示する。

盗品を売って酒を買う生活を送るナナは、ディアーヌを奴隷扱いしていた。

ナナに逆らうことができないディアーヌは、希望も失っていた。

紳士に盗品を売って金にしたディアーヌは、アブサンを買ってアパートに戻る。
...全てを見る(結末あり)

ナナは、訪ねて来たシュヴィヨン神父(エミール・ショタール)から、伯母ヴァレンタイン(ジェシー・ハスレット)とその夫ジョージ(ブランドン・ハースト)が南海から戻ったことを知らされる。

神父から、金持ちの伯母夫婦が自分たちの面倒を見るそうだと言われたナナは、彼に感謝して見送る。

翌日、ヴァレンタインとジョージは、ブリザック大佐(ベン・バード)と共にアパートに到着する。

ディアーヌに掃除をさせたナナは、余計な話はしないようにと彼女に伝える。

伯母夫婦を迎えたナナは、二人に挨拶する。

ヴァレンタインは、ナナよりもディアーヌのことを気遣い、彼女を抱きしめる。

ジョージから暮らしについて訊かれたディアーヌは、良い娘でなけらば家に入れることはできないと言われ、自分たちの生活は乱れていると話してしまう。

二人を引き取るのをやめたジョージは金を床に投げ捨て、納得できないヴァレンタインと共にその場を去る。

ブリザックは、ディアーヌのことを気にしながら二人の後を追おう。

余計なことを言ったディアーヌに激怒したナナは、逃げた彼女を鞭打ち、路上で彼女の首を絞める。

下水にいたチコはそれに気づき、マンホールから出てナナを制止し、地下に落とすと言って脅す。

二度としないことを約束したナナを追い払ったチコは、意識を失ったディアーヌをそのままにしておくものの、彼女が気になる。

タクシーの運転手ブール(アルバート・グラン)とネズミと共に路上で食事をしたチコは、気がついたディアーヌを気遣いながら、姉を怖がるだけで抵抗しなかった彼女を非難する。

神に願っても何も起きないため無神論者になったチコは、現れたシュヴィヨン神父から、自分が不運な人間ではないと言われても気にしない。

神父から、道路清掃夫任命書を渡されたチコは、いつか役に立つ時がくると言う彼から、信仰のお守りとなるペンダントも譲られる。

喜んだチコは、仕事を終えたゴバンに任命書を見せる。

今後のことを考えると耐えられないディアーヌは、ナイフで命を絶とうとするものの、チコに制止される。

絶望するディアーヌは、チコからまだ希望をあると言われるものの、その望みはなかった。

そこに、盗みが見つかり警官に連れられたナナが戻り、ディアーヌも共犯者だと言い張る。

ディアーヌは警官に連行されそうになり、チコは、彼女が自分の妻であることを伝えて、その場は許してもらう。

後日、調べると言う警官は、ナナを連れて立ち去る。

妻と言ってしまったことを後悔したチコは、警察が来るまで家に置いてもらい、調べが終わったら出て行くというディアーヌの考えに賛成する。

ブールに妻ディアーヌを紹介したチコは、本当の夫婦ではないと彼女に念を押して、愛車のタクシー”エロイーズ”でアパートに送ってもらう。

ディアーヌを7階の部屋に案内したチコは、職場は地の底でも住むのは星のそばだ言って夜空を見せ、天国に思える彼女に、ここは”第七の天国”だと伝える。

もっときれいな星をディアーヌに見せようとしたチコは、窓から出た渡り板を怖がる彼女に、下は見ずに、勇気をもちいつも上を見るようにと伝える。

ディアーヌは、それを実行していると言いながら前向きに生きるチコに惹かれる。

ベッドをディアーヌに譲ったチコは、渡り板の向こうから寝間着を調達して戻り、それを彼女に渡す。

水を汲んできたチコは、体を拭いて服を脱ぎ、星の見えるベランダで眠る。

その様子を見ていたディアーヌは幸せを感じ、神の贈りもののように思えた。

翌朝、目覚めたチコは、朝食の準備を整えたディアーヌに”おはよう”と言って、彼女に手伝ってもらい着替えをする。

戸惑いながらも朝食を食べたチコは、警察が来たら出て行くようにとディアーヌに伝える。

隣人のゴバンが挨拶しに現れ、チコは同僚として仕事に向かおうとする。

ゴバンから、妻にキスを忘れていると言われたチコは、照れながらディアーヌにキスするものの、今のは自分の考えではないので、出て行くようにと伝えて仕事に向かう。

愛しいチコを見送るディアーヌは、怖がってはいけないと言う彼の言葉を思い出し、板を渡ってみる。

道具を運び道路に向かったチコは、ゴバンに仕事を教わる。

その後、相変わらず口は悪いものの、チコはディアーヌとの生活を楽しんでいた。

現れた警官に対応したチコは、ディアーヌのことを妻だと伝えて信用してもらう。

ディアーヌは約束通り出て行こうとするものの、チコから、いたいなら好きにしろと言われて喜び、神を信じることを彼に伝える。

幸せを感じるディアーヌは、チコが自分を愛し求婚してくれることを願う。

ある日、チコからウェディングドレスをプレゼントされたディアーヌだったが、愛しているという言葉を口にできない彼が、”チコ、ディアーヌ、天国”と言って愛情を表現してくれたことで満足する。

チコの愛を確かめたディアーヌは、彼に自分たちは教会で結婚するのか尋ねる。

無神論者なのでその気はないと言うチコは、シェヴィヨン神父から渡されたお守りのペンダントに気づくが、信仰に興味がなかった。

現れたゴバンに頼まれていた、妻(マリー・モスキーニ)のためのスープとドレスを持ったディアーヌは、彼女に見せに行くと言って板を渡ろうとする。

危険なので心配したチコだったが、怖くないと言うディアーヌは、それを渡って見せる。

ディアーヌは、身重のゴバン夫人にスープを運びドレスを見せる。

その時、国家総動員法が発令され、人々が騒ぎ始める。

第一次大戦が勃発してフランスドイツに宣戦布告したため、チコとゴバンも1時間以内に出発することになる。

ディアーヌと結婚していないチコは旅立つ気になれないが、ゴバンから、自分の場合は愛する妻や生まれてくる子を守るのが役目だと言われて納得する。

戻ってきたゴバンから、チコと話をするようにと指示されたディアーヌは、部屋を借りてドレスを着る。

チコは、ドレスを着て戻ったディアーヌの美しい姿を見て複雑な気持ちになり、彼女を抱きしめて愛していると伝える。

感激したディアーヌは幸せを実感するものの、チコがゴバンと共に戦場に向かうことを知り、下を見ずに上を向いて生きるべきだと言って彼を励ます。

あなたの言葉で変わったと言うディアーヌは、自分も特別な人間なので、どんなことがあってもくじけないとチコに伝える。

時間が迫るチコはディアーヌと離れる気になれなかったが、シュヴィヨン神父が役に立つと気があると言っていたペンダントを、互いの首にかけて永遠の愛を誓い結婚式をする。

ゴバンは、妻に別れを告げてチコの部屋に向かい、先に出発する。

ディアーヌに別れを告げるチコは、時計が11時を告げたために、毎日この時間に君の元に戻ると伝えて立ち去る。

悲しむディアーヌは、その直後にナナが現れたために驚く。

怯えるディアーヌは、ペンダントを奪ったナナに立ち向かい、それを奪い返そうとする。

ナナを凝らしめたディアーヌは、彼女を追い払う。

ディアーヌは、戦わなかったためにチコに非難されたことを思い出し、戦場に向かう彼を見つめながら、自分は勇敢になったと心の中で叫ぶ。

その後、戦火はパリに迫り、ブールは、兵士から戦況を聞きながら、ディアーヌやゴバン夫人のために食料を調達する。

ディアーヌはブールが食料を盗んだことに気づくものの、二度としないと約束させて彼に感謝する。

フランス軍は、攻勢を仕掛ける敵をマルヌ川で食い止めるために、あらゆる車両を動員して戦おうとする。

多数の車両と共に、ブールのエロイーズも兵士を乗せて戦場に向かう。

ドイツ軍は攻撃を開始してフランス軍も反撃し、激しい戦いが始まる。

爆撃を受けたエロイーズは大破してしまい、ブールは悲しむ。

その頃ディアーヌは、チコの帰還を願いながら軍事工場で働く。

ディアーヌに迫るブリザック大は、生活の面倒を見させてほしいと伝えるものの、チコを想う彼女はそれを拒む。

ゴバンとネズミと共に同じ部隊に配属されていたチコは、伍長に昇進したので、終戦までには将軍になれると冗談を言う日々を送っていた。

将校用のチキンを奪ったネズミは、チコやゴバンと共にそれを食べる。

チコは毎日11時にディアーヌを想い、彼女も同じ時刻に呼びかける、”チコ、ディアーヌ、天国”と。

その後も、チコを待つディアーヌは、工場で懸命に働いていた。

戦いが始まり(マルヌ会戦)、塹壕から突撃して負傷したチコは、ネズミに助けられて介抱される。

チコは視力を失うものの、11時にはディアーヌに呼びかける。

敵を倒しチコを味方の塹壕に運んだネズミは、爆撃で負傷する。

その場にいたシェヴィヨン神父は、ネズミを励ましてチコの元に向かう。

力尽きたチコは、神父にお守りのペンダントを渡す。

チコはペンダントディアーヌに渡すことを神父に頼み、自分は上を向いたまま死んだと伝えてほしいと言って息を引き取る。

チコの帰りを待つディアーヌは、訪ねて来たブリザック大佐を歓迎する気になれない。

ブリザックから悪い知らせだと言われ、戦死者名簿のチコの名前を見せられたディアーヌは、それを信じない。

ディアーヌは、チコは毎日11時に、自分のところに戻ると約束したとブリザックに伝える。

片腕を失いながら帰還したゴバンから、チコは死んだと言われたディアーヌは、それも信じない。

訪ねて来たシュヴィヨン神父を歓迎したディアーヌは、チコのペンダントを見せられ、上を向いたまま死んだと伝えるようにと言われたことを知らされる。

ショックを受けたディアーヌは気を失いかけ、チコは毎日来ていなかったと言って悲しむ。

そこに現れたブールは、休戦協定が結ばれ戦争が終わったことを皆に知らせる。

神父らは窓際に向かい、終戦を喜ぶ市民の様子を見つめる。

しかし、希望を失ったディアーヌだけは喜ぶ気にはなれなかった。

チコのペンダントを首にかけてくれた神父から、神の御心を疑ってはならないと言われたディアーヌは、この部屋を天国だと思い信じてきた神を憎む。

その頃、生存していたチコは、群衆をかき分けてアパートに向かう。

ブリザックに抱きしめられながら、面倒を見ると言われたディアーヌは、階段を上るチコが自分の名を呼ぶ声に気づく。

時計は11時を告げ、現れたチコは、見えない目でディアーヌを見つめながら、彼女を抱きしめる。

自分の大きな考えこそ神だったと言うチコは、神は自分の心の中にいる、失明してもはっきり見えるとディアーヌに伝える。

チコは、自分の目は、今でも4年前の美しい君の姿で満たされているとディアーヌに伝える。

ディアーヌから、自分があなたの目になると言われたチコは、目は閉じ続けるわけではなく、いつか必ず見えるようになると彼女に伝える。

いつものように、自分は特別な人間なんだと言うチコは、ディアーヌを抱きしめて愛を確かめ合い、二人の魂は一つとなる。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
パリ
下水道の掃除夫チコは無神論者であるが、自分は特別な人間だと思い、いつかは”上”の世界で成功できると信じていた。
スラム街で暮らすディアーヌは、意地の悪いアル中の姉ナナに虐げられていた。
ディアーヌのせいで、裕福な伯母夫婦の世話になれなかったナナは激怒し、ディアーヌを痛めつける。
それを阻止したチコはディアーヌを気の毒に思い、盗みで逮捕されたナナから彼女を引き離し、妻ということにしてアパートに連れて行く。
7階の部屋に向かったチコは、仕事は地の下でも、ここは星のそばの”第七天国”だとディアーヌに伝える。
幸せとはかけ離れた日々を送っていたディアーヌは、天国のようなチコの部屋で希望を見つけ、彼に惹かれるのだが・・・。
__________

1922年に上演されたオースティン・ストロングの舞台劇”Seventh Heaven”を基に製作された作品。

1937年に、監督ヘンリー・キングシモーヌ・シモンジェームズ・ステュアート主演でリメイクされた。

第1回アカデミー賞では、作品賞以下5部門でノミネートされ、監督(ドラマ)、主演女優(ジャネット・ゲイナー)、脚色賞を受賞した。
・ノミネート
作品・美術賞

1995年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

涙を誘うロマンスを得意とするフランク・ボーゼイギは持ち味を活かし、繊細な人物描写による見事な演出により、記念すべき第1回アカデミー賞で監督賞(ドラマ)を受賞した。

主人公二人が”第七天国”と言って暮らす7階建てのアパートやパリの街並みのセット、戦場シーンなどの映像の素晴らしさも見逃せない。

主演のジャネット・ゲイナーは、姉の虐待に耐えながら希望を失い、常に前向きに生きる青年との出会いで、ささやかな幸せを手に入れる主人公を見事に演じ、アカデミー主演女優(ジャネット・ゲイナー)の最初の受賞者となった。
勇気と希望を手に入れた彼女が、愛らしい天使のように変貌する姿が印象的だ。

主人公と愛が芽生える、無神論者ではあるが常に希望を抱く楽天家の青年を好演するチャールズ・ファレル、主人公に惹かれて言い寄る大佐のベン・バード、主人公二人の友人であるタクシー運転手を愉快に演ずるアルバート・グラン、主人公の仕事仲間である隣人のデヴィッド・バトラー、その妻マリー・モスキーニ、主人公を奴隷のように扱う意地の悪いアル中の姉グラディス・ブロックウェル、主人公らの心の支えとなる神父エミール・ショタール、主人公の伯母ジェシー・ハスレット、その夫ブランドン・ハースト、チコ(チャールズ・ファレル)と共に働く掃除夫ジョージ・E・ストーン、他リリアン・ウェストなどが共演している。


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