前年亡くなったジョン・フォードの恩人にして盟友ハリー・ケリー(1947没)に捧げられた作品。 出産で死亡した女性の子供の名付け親になった三人の銀行強盗が命懸けで子供を助けようとする姿を描く、製作、監督ジョン・フォード、主演ジョン・ウェイン、ペドロ・アルメンダリス、ハリー・ケリーJr.、ウォード・ボンド他、フォード一家総出演による異色の西部劇。 |
・西部劇
・ジョン・フォード / John Ford 作品一覧
・ジョン・ウェイン / John Wayne 作品一覧
・ジョン・ウェイン / John Wayne/Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード
製作
ジョン・フォード
メリアン・C・クーパー
原作:ピーター・B・カイン
脚本
ローレンス・スターリングス
フランク・S・ニュージェント
撮影:ウィントン・C・ホック
編集:ジャック・マリー
音楽:リチャード・ヘイグマン
出演
ジョン・ウェイン:ロバート・マーマデューク・ハイタワー
ペドロ・アルメンダリス:ペドロ”ピート”フエルテ
ハリー・ケリーJr.:ウィリアム・カーニー/アビリーン・キッド
ウォード・ボンド:パーリー”バック”スウィート連邦保安官
メエ・マーシュ:スウィート夫人
ミルドレッド・ナトウィック:幌馬車の婦人
ベン・ジョンソン:民警団
ジェーン・ダーウェル:フローリー夫人
ガイ・キビー:判事
ドロシー・フォード:ルビー・レイサム
チャールズ・ホルトン:オリヴァー・レイサム
フランシス・フォード:酒場の飲んだくれ
ハンク・ウォーデン:カーリー保安官補
ジャック・ペニック:ルーク
クリフ・ライオンズ:民警団/モハーヴェ・タンク
リチャード・ヘイグマン:酒場のピアノ弾き
アメリカ 映画
配給 MGM
1948年製作 106分
公開
北米:1948年12月1日
日本:1953年5月6日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アリゾナ準州、ウェルカム。
三人組の強盗であるロバート・ハイタワー(ジョン・ウェイン)、ペドロ”ピート”フエルテ(ペドロ・アルメンダリス)、ウィリアム・カーニー/アビリーン・キッド(ハリー・ケリーJr.)は、銀行を襲う目的で町に現れる。
ハイタワーは、ある家の”B・SWEET”(優しく)という表札を見て思わず笑ってしまう。
三人は、気のいい夫婦パーリー”バック”スウィート(ウォード・ボンド)と夫人(メエ・マーシュ)に、文字通り親切にしてもらうがスウィートは町の連邦保安官だった。
スウィートは、三人が怪しい男達だと察し警戒する。 その後、三人は、東部から町に戻って来た、銀行の頭取オリヴァー・レイサム(チャールズ・ホルトン)の娘ルビー(ドロシー・フォード)に挨拶して銀行に向かう。 そして、スウィートが、保安官補カーリー(ハンク・ウォーデン)と手配書を確認していると銃声が響く。 三人は金を奪って逃げるが、キッドはスウィートに肩を撃たれてしまう。 スウィートは、砂漠に逃げ込んだ三人の水袋を撃ち、鉄道の駅に向かう。 駅で、民警団員(ベン・ジョンソン他)らを召集したスウィートは、汽車に乗り三人の先回りをしようとする。 水袋が撃たれたことを知ったハイタワーは、傷で弱ってきたキッドを救うために、モハーヴェ・タンク(貯水タンク)に向おうとする。 その後、タンクを目前にはしゃぐ三人だったが、スウィートらを乗せた汽車が到着し、数人(クリフ・ライオンズ他)を降ろす。 その場の水を諦め、スウィートの裏をかき北に向かった三人は、砂嵐に遭い野宿するが、翌朝、馬に逃げられてしまい、歩いて水場に向かう。 ”アパッチ・ウェルズ”の貯水タンクに着いたスウィートは、そこを管理するフローリー夫人(ジェーン・ダーウェル)に、三人組が来ていないことを確認し、カーリーらと共に汽車を降りて捜索に向かう。 ようやく水場に着いた三人だったが、ハイタワーがそこで一台の幌馬車を見つける。 それは、”ニュー・エルサレム”から来た夫婦の馬車で、水場は、夫がダイナマイトで爆破してしまい使い物にならず、彼は死亡したらしいことが分かる。 問題は、馬車にいた身重の婦人(ミルドレッド・ナトウィック)が出産間近だということで、これにはさすがのハイタワーも困惑してしまう。 子供がいたピートが出産に立会うことになり、生まれる子供のために、ハイタワーとキッドはサボテンから水を搾り取る。 その後、無事に男の子が生まれ、婦人は三人に感謝して名付け親になってもらう。 婦人は三人に子供を託し、”ロバート・ウィリアム・ペドロ・ハイタワー”と、その子の名前を呼びながら息を引き取る。 婦人を埋葬した三人は、生まれたばかりの子供の世話に梃子摺ってしまう。 幌馬車にあったミルクや育児手引書に従い、子供に車輪用のグリースを塗るなどして、三人は懸命に世話をする。 一方、ハイタワーの考えを見抜いたスウィートは、”アパッチ・ウェルズ”を後にして、北の水場に向かう。 ミルクなどはあるのだが、このままでは自分達が生きていけないことに気づいた三人は、聖書に従いニュー・エルサレムの町を目指すことになる。 その後、スウィートは幌馬車に到着するが、それが自分の家を訪ねる予定だった姪の馬車だと気づく。 更にスウィートは、三人が水場を壊し姪を殺したと思い込み、怒りに震えながら追跡を続ける。 三人は塩湖を渡らなければならなくなり、傷の癒えないキッドは、死を覚悟して子供のために前進する。 しかし、キッドは力尽き、ピートに祈りを捧げられながら息を引き取る。 ピートは、山の向こうのニュー・エルサレムに急ぐようにとハイタワーに指示し、用心のために拳銃を預かり、その後、自ら命を絶つ。 スウィートらに追われながら、ハイタワーは懸命に前に進むが、ついに力尽きたその時、彼は再び聖書の導きで現れたラバに救われる。 クリスマスの夜、ハイタワーはニュー・エルサレムにたどり着き、子供を心配しながら、後を追って来たスウィートの前で意識を失ってしまう。 その後、ハイタワーは逮捕されるものの、スウィートは事情を知り彼に感謝して、身内である子供を引き取ろうとする。 やがてハイタワーの裁判が始まり、判事(ガイ・キビー)が彼のミドルネームを”マーマデューク”と呼んだため、スウィートはそれを聞き大笑いしてしまう。 ”パーリー”と言って笑い返したハイタワーは、教育や一般常識と目上の者への敬意を教えるなら、子供を一時的に引き渡すと妥協するが、スウィートは子供を養子にしたいことを伝える。 判事は、ハイタワーに禁固20年を宣告するが、スウィートに子供を譲り、二度と町に足を踏み入れないという条件で無期限猶予を言い渡す。 しかしハイタワーは、ピートやキッド、それに婦人との約束を果たすためにそれを拒否し、刑を受ることを判事に伝える。 判事は、ハイタワーのその心意気に心打たれ、最低の刑である、禁固1年と1日という判決を改めて言い渡す。 ハイタワーは一躍英雄となり、子供をスウィート夫妻に預けて刑務所に向うことになる。 スウィートに別れを告げたハイタワーは、銀行の頭取の娘ルビーにも声をかけられる。 そしてハイタワーは、スウィート夫妻、フローリー夫人や町の人々に見送られながら、保安官補カーリーと共に汽車に乗り旅立って行く。
...全てを見る(結末あり)
その後、ハイタワーとピートは塩湖を渡りきるが、ピートが足を痛めてしまう。
*(簡略ストー リー)
三人の強盗ロバート・ハイタワー、ペドロ、キッドは、ウェルカムの町に到着する。
保安官のスウィートに警戒されながらも、三人は銀行を襲撃して逃亡する。
スウィートは、キッドに傷を負わせて三人の水袋を撃ち、彼らの向かう場所に見当をつけて追跡する。
その後、貯水タンクに向かった三人は、スウィートに先回りされてしまったため他の水場に向かう。
途中、三人は、夫が水場を壊して死亡し、独り残された、出産を控えた婦人を発見する。
三人は、婦人を救うために協力し合い、彼女は無事に男の子を出産する。
婦人は三人に感謝して、彼らに子供の名付け親になってもらう。
しかし、婦人は息を引き取り、埋葬を終えた三人は、彼女との約束を果たすためにその場を離れる。
そして三人は、聖書に導かれながら砂漠をさ迷い、”ニュー・エルサレム”の町を目指すのだが・・・。
__________
前年に亡くなった、ジョン・フォードの恩人にして盟友ハリー・ケリー(1947没)に捧げられた作品であり、冒頭で、彼を偲ぶシルエットと共に紹介される。
1913年に発表された、ピーター・B・カインの同名小説を基に製作されたハリー・ケリーが主演した、「恵みの光」(1919)のリメイクであり、この物語が気に入っているジョン・フォードは何度か映画化している。
1929年、ウィリアム・ワイラーも「砂漠の精霊」という題名でリメイクしている。
本作は、クリスマス・シーズンに公開されたということもあり、主人公達が、聖書に導かれる物語というところがキーポイントだ。
ミルドレッド・ナトウィックが子供を産む幌馬車は、キリストが生まれた馬小屋のようでもあり、ドラマに登場する”ニュー・エルサレム”や”ウェルカム”といった町などが、神に導かれる物語らしい設定となっている。
西部劇としての醍醐味の他、フォード作品の楽しさの要素も、ふんだんに盛り込まれている。
銀行強盗、原野の追跡、酒場の盛り上がりと、逞しくユーモアのある登場人物etc.・・・。
とにかく、フォード一家総出演であることが、私のような大ファンにとっては、全編、感激シーンの連続であり、何十回見ても飽きない作品だ。
ジョン・ウェインが一度も拳銃を抜かなかったり、育児手引書に従い、生まれたばかりの子供に、幌馬車の車軸用のグリースを塗る場面なども実に興味深い。
ジョン・ウェインは悪党として登場するが、聖書、そしてクリスマスがテーマの物語らしく、最後には子供と母親のために潔く刑を受ける、善玉、英雄としても描かれている、心地よい気分が味わえる物語だ。
ジョン・ウェインと共に熱演するペドロ・アルメンダリスの婦人に対する優しさ、ハリー・ケリー追悼ということで起用された、彼の息子、本作以後フォードに可愛がれることになるハリー・ケリーJr.も、若者らしい演技で好演し、皮肉にも、最初にして、これがベスト作品だったと言えなくもない。
途中から、悪者に見えてくるのが不思議な連邦保安官で、三人を追うウォード・ボンドの迫力の演技も見ものだ。
さて、多数のフォード一家の出演者の中で、ハンク・ウォーデンが、やや頼りない保安官補として登場して、珍しくかなり出演場面が多い。
保安官夫人メエ・マーシュ、貯水タンクの管理人役ジェーン・ダーウェル、民警団員のベン・ジョンソン、子供を産む婦人のミルドレッド・ナトウィック、判事ガイ・キビー、汽車の乗務員役のジャック・ペニック、民警団員クリフ・ライオンズ、そして、酒場の飲んだくれフランシス・フォードなどなど・・・。
見ていて、本当に幸せな気分になってしまうほどの面々だ。
「駅馬車」(1939)、「アパッチ砦」(1948)、「黄色いリボン」(1949)、「幌馬車」(1950)など、こちらもフォード作品の常連であるリチャード・ヘイグマンの音楽も素晴しいのだが、彼は、酒場のピアノ弾きで出演もしている。
クライマックスで、主人公ジョン・ウェインに好意を寄せる、銀行の頭取チャールズ・ホルトンの娘役ドロシー・フォードが、長身のウェインと、背丈があまり変わらないのに驚いた方はいただろうか?
彼女は、なんと身長が188cmだということだ。
*ジョン・ウェインは193~194cm。
「静かなる男」(1952)で自分を、6.4 and half(194cm)と言うシーンがある。
また、冒頭、ジョン・ウェインが、ウォード・ボンドの役名”スウィート”をからかうシーンがあるのだが、1970年代のテレビ放映時の吹き替えでは、これを”シュガー”として、日本人向けに笑いを誘おうとしていた、ちょっとした工夫なども懐かしく思い出す。