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十二人の怒れる男 12 Angry Men (1957)

レジナルド・ローズの原案で1954年に放映されたテレビ・ドラマを彼自身の脚色でヘンリー・フォンダと共に製作して映画化した作品。
監督シドニー・ルメットリー・J・コッブマーティン・バルサムE・G・マーシャルジャック・ウォーデン他共演による法廷ドラマの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ルメット

製作
レジナルド・ローズ
ヘンリー・フォンダ
原案:レジナルド・ローズ(TVドラマ)
脚本:レジナルド・ローズ
撮影:ボリス・カウフマン
編集:カール・ラーナー
音楽:ケニヨン・ホプキンス

出演(陪審員番号順)
1:マーティン・バルサム/高校のフットボール・コーチ
2:ジョン・フィードラー/銀行員
3:リー・J・コッブ/会社経営者
4:E・G・マーシャル/株の仲買人
5:ジャック・クラグマン/スラム育ちの若者
6:エドワード・ビンズ/ペンキ職人
7:ジャック・ウォーデン・セールスマン
8:ヘンリー・フォンダ/建築家
9:ジョセフ・スィーニー/高齢者
10:エド・ベグリー/ガレージのオー^ナー
11:ジョージ・ヴォスコヴェック/時計職人
12:ロバート・ウェッバー/広告業者

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1957年製作 96分
公開
北米:1957年4月13日
日本:1959年8月
製作費 $350,000


アカデミー賞 ■
第30回アカデミー賞

・ノミネート
作品・監督・脚色賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ニューヨーク、ある法廷。
18歳の少年による父親殺害事件の審理が終わる。

少年は、12人の陪審員が陪審室へと向かうために退席する姿を、希望を失ったような眼差しで見つめている。

スラム街で育ち、札付きの不良といわれていた少年に、無罪になる可能性はなかった。

そして、形式上の話し合いに思われる陪審員の評決を決めるために、高校のフットボールコーチで、陪審長の1番(マーティン・バルサム)が一回目の決をとる。

そこで、建築家の8番(ヘンリー・フォンダ)ただ一人が、有罪に疑問を感じるという発言をする。
...全てを見る(結末あり)

8番は、有罪が決まれば死刑となる、一人の人間の生死を決めるのだから、時間をかけて話し合うべきだと主張する。

様々な職業、立場の人間が集まる中、それをあからさまに批判し迷惑に思う者もいる。

順番に8番に質問する方法を提案した、広告業者の12番(ロバート・ウェッバー)の意見が採用され、陪審員は番号順に発言を始める。

理路整然と疑問点を投げかける8番に対し、ガレージ・オーナーの10番(エド・ベグリー)は、彼を揚げ足取りの変人扱いする。

色々な意見が出る中、スラム育ちの劣悪な環境が、彼を犯罪に走らせたことが重要視される。

そんな時、発言をパスしていたスラム育ちの5番(ジャック・クラグマン)が、それに不快感を表したあたりから、室内の空気は変化し始める。

冷静沈着な株の仲買人の4番(E・G・マーシャル)は、少年が犯行に使用した”珍しい”種類のナイフが、それを売った店主の証言から動かぬ証拠だと説明する。

似たナイフを、誰かが使用した可能性を指摘する8番に対し、4番と会社経営者の3番(リー・J・コッブ)は、有り得ないことだと反論する。

しかし、8番は少年が犯行に使った物と同じナイフを、取り出して皆に見せる。

それに対しての、8番への反論の集中砲火の中、冷静に話し合おうとする意見、人の命が懸かっていることを重視する言葉が相次いで出始める。

8番は、自分以外で無記名の再投票をして、誰も無罪にしない場合は諦めることを伝える。

そして、一人が無罪に投票し、3番がスラム育ちの件で不快感を示した5番を吊るし上げる。

5番はそれに反論し、3番は容赦なくわめき立てるのだが、無罪に入れたのは、高齢者の9番(ジョセフ・スィーニー)だった。

有罪に確信がもてないという、一人で闘う8番に心打たれた9番は、少年が有罪だとしても、もう少し話し合うべきだと主張する。

老人の意見に呆れた、早く済ませて野球観戦に向かいたいセールスマンの7番(ジャック・ウォーデン)が席を外したため、話し合いは中断して休息になる。

休息は終わり、向かいのアパートの女性が、電車越しに見た犯行や、叫び声を聞いた老人の証言の信憑性が議論の的になる。

9番は、それが注目のためだと意見するが、3番は、彼の言葉をたわ言だと罵る。

その態度を見て、席を立ったペンキ塗り職人の6番(エドワード・ビンズ)は、3番に対し、お年寄りに敬意を払えと彼を一喝し、9番に話を続けさせる。

証言台に立った老人の気持ちを理解する9番は、世間から忘れ去られている存在の老人が、注目を浴びるためにした証言だったと語る。

”殺す”という叫び声にも疑問を抱く8番が、それについて意見し始めた時、5番は無罪にしたいことを陪審長の1番に伝える。

7番は苛立ち、弁護士でさえサジを投げたことを言及するのだが、最初からやる気のない国選弁護士だったと、8番は言い返す。

そこで、時計職人の11番(ジョージ・ヴォスコヴェック)が、少年が、3時間後になぜ犯行現場に戻ったかを疑問視する。

再び投票となり、11番が無罪に票を投じ、3番は憤慨して彼に噛み付くが、11番は自分の意見を貫き通す。

その後、足の悪い老人が”駆け寄った”と証言したことを思い出した5番と6番の意見を聞いた8番は、部屋の見取図で、それを検証しようとする。

その行為に対して怒りを露にする3番は、思わず、”あんな老人の話が信用できるか”と叫んでしまい閉口してしまう。

見取図で位置関係を確認し、目撃証言を再現して見せたた8番は、老人の証言に疑いがあることを立証する。

しかし、3番はそれが意味のないことで、少年を処刑することしか口にしない。

8番は、その姿勢を痛烈に非難し、我慢の限界に達した3番は、”殺してやる”と叫びながら襲い掛かろうとする。

それを皆に制止され、”本気で殺す気なのか”と8番に問われた3番は、再び黙り込んでしまう。

そして、投票を希望する意見が出て、有罪に疑問を感じた銀行員の2番(ジョン・フィードラー)と6番が無罪にする。

これで有罪、無罪が6対6になる。

その後、少年が犯行時間に観ていた、映画館の作品を思い出せないという証言に8番は注目する。

犯行直後の警官の質問に、少年がそれを答えられなかったことは有り得ないと4番は意見する。

8番は4番に質問を始めて、彼の数日間の記憶をたどり、平静ではいられない状況下で、少年が映画の題名も思い出せないことを証明する。

それには、冷静沈着な4番までもが動揺を隠せなかった。

2番が、凶器のナイフの刺され方などに疑問を感じていることを意見したため、3番が8番を相手に、それを実演してみる。

しかし、被害者の父親より遥かに背の低い、少年のナイフの刺し方が違うことを5番が指摘する。

5番は、スラム育ちの人間のナイフの使い方を見せて、それを使い慣れていたはずの、少年の犯行とは思えないことを語る。

無罪の主張者を見て、早く済ませ野球に行きたい7番は、意思のないまま無罪にしてしまう。

そこで8番は投票を希望し、1番と12番も無罪にすると、それを見た10番は少年を罵倒し始め、全員から愛想を尽かされてしまう。

その後、向かいの女性の目撃証言が、有罪の決め手だと言う4番の意見を聞いた12番は、有罪に転向してしまう。

目の疲れを気にした4番が、メガネを外した姿を見た9番は、女性もメガネをかける跡が鼻についていて、それを気にしていたことを指摘する。

女性は、自分を若く見せるために着飾り、メガネを外して法廷に現れたのだろうと9番は推測する。

何人もが女性のメガネの跡を目撃していて、4番もそれを認め、12番は無罪に戻し、10番も無罪にする。

そして、ようやく確信が持てた4番も、それに納得して無罪を認め、3番一人が有罪ということになる。

3番は、ただ単に有罪を主張しわめき続けるが、自分と反りの合わない息子を少年に投影し、意地を張っていただけだった。

そして彼も、泣き崩れながら無罪にする。

評決は無罪となり、お互い名前も知らない12人は、それぞれの生活に戻ろうとする。

8番は3番を労わり、法廷の外で9番が8番に声をかけ、お互い名前を聞いただけでその場を立ち去る。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)

父親殺害の罪で起訴された少年の審理が終わり、その後、12人の陪審員に評決が委ねられる。
陪審室に入った陪審員は、有罪は確定だろうという雰囲気で最初の決をとるが、ただ一人、建築家の8番が有罪に疑問を感じるという意見を述べて無罪を主張する。
一人の人間の生死の問題を、時間をかけて話し合うべきだという8番の意見に、不満を感じる者もいたが、12人は話し合いを始める。
やがて、理路整然と疑問点を指摘する8番を批判する意見も多い中、スラム育ちの不良少年を、犯罪者と決め付けて行われた裁判に疑問を感じて、8番に同調する者が出始めるのだが・・・。
__________

テレビの演出も担当したシドニー・ルメットが、初めて映画界に進出した記念すべき作品。

30代前半の彼は、デビュー作にも拘らず、いきなりアカデミー監督賞候補になり、その計り知れない才能を世に知らしめた。

2007年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

第30回アカデミー賞では、作品、監督、脚色賞にノミネートされた。

ドラマのほとんどが陪審室という、密室の中で展開され、真夏の蒸し暑さと議論の熱気が画面から伝わる、監督シドニー・ルメットの計算し尽くされた演出は見事だ。

実力派揃いのキャストの中で、製作も兼ねた主演のヘンリー・フォンダと、最後まで彼に対抗して有罪を主張し続けるリー・J・コッブ、また、野球の試合に気を取られる意志薄弱な男を演ずるジャック・ウォーデンの好演が、特に印象に残る。

実際の陪審員の評決が、ここまで白熱するかは別として、製作者の意図することは、正義感や良心をふまえて自己主張した結論こそが、民主主義の根幹だということなのだろう。

お年寄りに敬意を示さない会社経営者のリー・J・コッブに、肉体労働者のエドワード・ビンズが、自分の意見を臆することなく主張し、一喝して黙らせてしまうシーンなどは、それを象徴している。

また、告発された少年の表情にも、正義に対する絶望と、わずかに残った希望とが入り混じり、貧しい移民の子であろう、悲しみや苦悩が窺い知れる。

互いの名も知らず、今後も会うことがないだろう12人が別れていくラストも素晴しい。
ヘンリー・フォンダジョセフ・スィーニーだけが言葉を交わし別れる。

高齢者を演ずるジョセフ・スィーニーは、これが遺作となり、時計職人のジョージ・ヴォスコヴェックと彼の二人が、TVのオリジナル・キャストである。
出演(陪審員番号順)
1:マーティン・バルサム/高校のフットボール・コーチ
2:ジョン・フィードラー/銀行員
3:リー・J・コッブ/会社経営者
4:E・G・マーシャル/株の仲買人
5:ジャック・クラグマン/スラム育ちの若者
6:エドワード・ビンズ/ペンキ職人
7:ジャック・ウォーデン・セールスマン
8:ヘンリー・フォンダ/建築家
9:ジョセフ・スィーニー/高齢者
10:エド・ベグリー/ガレージのオー^ナー
11:ジョージ・ヴォスコヴェック/時計職人
12:ロバート・ウェッバー/広告業者


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